第4話「可能性の塊 part2」
フードを被った男を殴り飛ばした白色の仮面の男は電灯の光に包まれその姿の全貌が晒される。その姿はバスにいた部員や顧問達にも視認出来るようで皆一斉に携帯を取り出し銀色の仮面の男を撮り始める。
「ねぇあいつがクミが言ってた犯人を倒した仮面の人なんじゃないの⁉︎」
「でもエリは黒と黄色の半分こ男て言ってたよ!」
「やっぱりあの仮面の人もこの前みたいに鉄砲持ってたりするのかな!」
外野が騒いでいる中男が立ち上がり様に胸ポケットから柄の長い短刀を取り出した事で外野が黙り込んだ。対向する様に仮面の男も腰のホルスターから警棒を取り出し身構えた。なるほど。勇介は戦闘向けナイフを使うのに対し仮面の男は警棒を使うのか。
男と仮面の男が向かいあって数秒、先に仕掛けたのは男の方だった。短刀を振り回しながら突撃した男に対し仮面の男は声も上げずに左手でガードした。左手には鉄板でも仕込んであるのか短刀と左手がぶつかった瞬間甲高い音が鳴り仮面の男の左手が短刀を持つ男の腕を掴み上げ胴がガラ空きになった男に警棒の連撃が殺到する。複数回攻撃を受けると掴み上げられた短刀が手から滑り落ちそれを合図に仮面の男が一旦距離を開け直後に男の足元と顎を狙った2段蹴りを繰り出し2発とも食らった男は駐車場に落とした短刀はそのままに電灯には照らされない暗闇の部分へと逃走した。それを見届けた仮面の男は真理に近寄り銀色の仮面からは想像出来ない、だが昔聞いた事がある懐かしい声だった。
「勇介によろしくと言っておいてくれよ」
その一言と共に仮面の男は男が逃走した方向とは別の方向に走っていった。
翌日の高校。
本来なら休校のはずなのだが昨日真理達が遭遇した事件についての臨時集会が開かれていた。スクリーンには生徒が巻き込まれた二つの事件の写真(もちろん生徒達への負担を考慮され修正された写真)がアップで写った。当然犯人や凄惨な現場を写した物ではなくそこに写っていたのは黒と黄色の仮面の男(勇介)と昨日私が見た白色の仮面の男の全身を写した写真だった。生徒達の中でどよめきが起こる。
「やっぱり本当だったんだ…仮面の人」
「2人いるのかな?」
「私銀色の方の写真持ってるよ」
その片割れ、黒と黄色の仮面の張本人である勇介は写真を見て青ざめていた。
まさか臨時集会で自分の写真を見せつけられるとは思いもしなかった。写真はおそらく生徒がSNSにアップさせる為に面白半分で撮ったのだろう。気を付けなければ。
真理の話によると白色の仮面の方は例の友人なのだと言う。
しかしならば何故自分の前には姿を見せないのだろうか?真理を助けてくれた事の礼を言いたかったのだが…
家に帰ると舞がリビングで入試の勉強をしていた。真理の家では狭い上にいざとなった時の退路が少ない為一時的に和風建築で横に広い俺の家で待機してもらう事にした。最初は舞を帰らせようとも考えたが東京と舞の地元ではかなりの距離がありそう何度も往復出来ない。と言うことで何としても見学だけはしたいと言う舞の願いを汲み取りこの形に落ち着いた。
「ごめんなさい、勇介兄ちゃん…」
「いいのよ舞ちゃん。私達に任せてれば大丈夫なんだから!」
「だからお前が言うなよ!」
勇介の鋭いツッコミが入る。
「それにね、舞ちゃん」
「?」
「か弱い舞ちゃんや私を守る為にね?勇介のお友達も来てくれるんだから!」
「お友達?」
「うん。昨日も私その人に助けて貰ったんだから。」
真理の割には良いこと言うじゃないか、と素直に驚いた。確かに友人に助けを借りるのは良いアイデアかもしれない。勇介は携帯でその友人に電話をかけた。
「もしもし」
「あぁ吏玖か。今東京にいるんだろ?ちょっと手伝って欲しい事があるんだが…」
「…おかけになった電話番号は現在使われておりま」
「電話出てから居留守つかわないでくれよ」
「今日お前の家寄るから。大事な用があるんだ」
「用なんてあったか?」
「とにかく寄るからよろしく」
電話が切れた。
舞が見学する学校は駅から数百m歩いた場所だし舞と真理をその学校に送った後吏玖を迎えに行くのも悪くないかもしれない。…ん?待てよ?
あ、昨日真理を助けた事の礼を言うの忘れてた
電話での会話の後に舞を学校に送った後駅に向かい吏玖を呼び出したが向こうが電話を切っているらしくまた舞のいる学校に戻ろうとした時だった。
「もしもし勇介⁉︎昨日のフードが門の後ろに隠れてる‼︎どうしよう⁉︎」
息を切らしながら校門に着くとそこには女子校の生徒しかおらず真理と舞の姿は無かった。どこに行ったのか考えていると4階から真理が手を振っているのが見えた。4階の真理達がいる教室に行くとそこには真理と震えている舞がいた。
「勇介!あのね!あの男がさっき勇介と入れ違いでこの学校を出てったの!」
「なら好都合だ。はやく帰ろう」
舞をおぶり真理と共に学校を出て駅まであと少しの所だった。勇介の目の前に昨日の男と更にもう1人がいた。
「2人いたのか…」
2人の男に捕まった後半ば強制的に駅前の空き店舗に連れていかれた。舞と真理はもう1人に捕まり俺は昨日の男からの猛攻に耐え続けていた。装備も仮面も無ければ複数人相手に太刀打ちするのは絶望的だ。何せ2人とも短刀を持っているのだから。あまりの攻撃にガード仕切れず態勢を崩してしまいその隙を突いた男の短刀が勇介の喉元に迫る。
ここまでか…⁉︎諦めるつもりは到底無いがそれでもかなり絶望的な状況であった。徐々に短刀の刃が喉元に迫り来る。
だが、短刀の刃は決して勇介の喉元を切り裂く事は無かった。倒れた勇介にマウントしていた男は蹴り飛ばされていたのだ。
「遅過ぎるんだよ…お前…」
男を蹴り飛ばした白色の仮面を見て勇介は一先ず安堵した。
勇介が話しかけても白色の仮面(吏玖)は反応せずそのまま蹴り飛ばした敵の追撃が始まる。
「お前!女がどうなっても…」
「いいわけないだろ!」
勇介がもう1人の男に襲いかかる。一方で吏玖は立ち上がろうとした男を再び蹴り倒しその隙に勇介に助太刀しようとする。
「刃物を持った相手に挑むのは論外だな」
「武器が無いんだからしょうがないだろ!」
さっき吏玖が倒した男が短刀で突貫するがそれよりも先に吏玖がホルスターから抜いた小型リボルバーを男に向ける。
「よせ吏玖!」
「オモチャだよ」
甲高い男が室内に響き不意を突かれた男に今度は警棒が炸裂する。顎を掠め首筋、足首を警棒で殴られた男はそこで行動不能になった。残るはもう1人。勇介が再び突進しようとすると首根っこを掴まれ真理達の方に投げられた。形勢逆転し窮地に陥った事を悟った男は捨て身の突撃を繰り出したが紙一重の差で吏玖に脚払いを受け顔から転び止めの警棒を鳩尾に突き立てられ呼吸困難に陥った男はダメ押しで顔面を吏玖に正面から殴られ気絶した。
「知っているか?子供は何者にもなれる可能性の塊、らしい。その可能性の塊に、無闇に手だしされる訳にはいかないな」
あれから半日。2人の男は白色の仮面が消えた後にその場で逮捕され勇介・真理・舞は軽い事情聴取の後に家に帰された。家に帰った勇介達を出迎えたのは真理の家族と事件を聞いて駆け付けた舞の家族達だった。真理や舞には出迎えてくれる家族がいる。その事に羨望の眼差しを向け家に入ろうとするとドアの隣に装備と仮面を外した吏玖が待っていた。
「寂しそうだったから待っててやったぞ」
「男に待たれるのは趣味じゃない。…今日は助けてくれてありがとな。後昨日の真理の事も」
「気にするな。俺の用事に比べれば大した事無い」
そこまで言う用事とは一体どれほど重要な用事なのだろうか。
「なぁ…その用事て何なんだ?」
「あぁ、ガバメントの弾丸を補充したくてな」
吏玖は本物のM1911A1(ガバメント)をいつの間にか手に持っていた。
「そういう事か…というかいつその銃の弾使ったんだよ…」
「海で2発撃っちゃってな。あ、事件性は無いから安心しろ」
「…」
「…」
そう。これが俺の頼れる友人なのだ。