BLACK!シーズン1   作:夢見町3丁目5103

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祖父を喪った過去を乗り越え周囲の人々を守る為に立ち上がった勇介に祖父が遺した「モノ」達が忍び寄る。勇介は彼等を相手に自分の守りたい物を守る事が出来るのか⁉︎

資座勇介(ブラック)
吏玖(ニンジャ)
泉真理


スーツの女(煽動者)
大柄のガスマスクの男(トミー)


第5話

5話「煽動者part1」

東京某区の銀行支店。営業時間が過ぎてから数時間。店内には支店員も残っておらず完全に無人と化しておりその時間中に民間の警備会社が集金を行っている。

「集金完了しました」

「了解」

防刃ベストに身を包んだ警備員が現金の入った革バッグを警備会社のロゴが入った車両に投げ入れる。

「お前何やってたんだ!もう新人じゃないだろうが!」

投げ入れた物音に気づいた運転手がバッグを投げ入れた警備員を怒鳴りつける。しかし怒鳴られた警備員はまるで聞こえてなかったかのように無反応で運転席に近付く。

「聞こえてんのかよオイ‼︎」

返事がない事に機嫌を悪くし運転手がドアを開けた時だった。

運転席に近づいた警備員がベルトから外した催涙スプレーを運転手にかけると同時に物陰から覆面の集団が鉄パイプや角材を手に集団に殺到する。

「何だ⁉︎」

車内で待機していた3人目の警備員は抵抗する間も無く車外に引き摺り出され覆面の集団達の鈍器に蹂躙されていった。運転手は催涙スプレーで目を潰されていたが肉を叩く鈍い音や見知った同僚の呻き声でその場に何が起きているかは容易に察する事が出来た。

鈍い音が止み不特定多数の足音が遠ざかっていき自分達に降りかかる暴力の嵐が終わった事に安堵した瞬間、バチバチと聞きなれない火花の様な音が鳴ったと同時に身体中に激痛が走りそこで運転手の意識は闇に沈む。

時間にして数分、何千万という大金はそのたった数分に当事者達以外の誰にも知られる事なく盗み出されたのだった。

 

 

 

 

 

 

翌日。勇介はテレビを点けチャンネルを変え際に聞こえた自分の住む地域の名前に気づきチャンネルを地域の名前を発したニュースにする。

「昨日未明に¥区の銀行支店の集金移送を行っていた警備会社の車両が襲撃され車内にあった6800万円が盗まれました。警察は強盗致傷の方針で捜査を進めています。」

 

午後の授業が始まった直後に教師の口から朝のニュースで放送されていた銀行強盗の話が出た。

「皆もう知ってると思うけど昨日も強盗あったよな?最近この近く物騒な事だらけだから本当に夜遊びとかするなよな?」

「りーかいりーかいwwwま、この町には黄色と黒のマスク被ったご当地ヒーローがいるんだから何とかなんじゃね笑」

生徒の内の1人が茶々を入れるとクラスの中から同意の声が聞こえた。まあその「ご当地ヒーロー」は集団強盗なんて危ない奴等の相手なんかしないんだけどな。そう思ったがそれ以上に危険な散弾銃で武装した異常者を相手にした事があったのを思い出し頭を授業に切り替えた。

 

 

 

 

 

 

「ね⁉︎ね⁉︎勇介やっぱりあの銀行強盗の事もやっつけるんだよね⁉︎」

「えぇぇぇぇ…、嫌ですよ。そんな。体育館で戦った時の事でまだ警察がそこらへんをウロチョロしてるんだから下手に行動したら俺が捕まっちゃうよ」

授業が終わり帰宅中に自分の正体を知っている真理が質問してきた。実際体育館で散弾銃男を倒した自分も日本国内じゃ違法も違法の9mm弾のフルロードを撃ち尽くしており警察はこの9mm弾を撃った自分の事も未だに調べている。そんな状況ではおいそれと行動する訳にはいかないだろう。そう考えていた時だった。

「ねぇ?あいつ今日学校来てないよね?」

真理が自分達の家の方向を指差す。その方向には体育館での事件以後無断欠席を繰り返し生徒の中では半ば行方不明扱いだった男子だった。常に悪い噂が付きまとっていた所謂非行少年というタイプの人物で自分も面識というものが全くない。

その同級生と目が合った。

「あ…」

話しかけるより先に同級生が商店街の方に走っていった。

「なんだってばよ…」

「え?なんでナルt」

 

 

 

 

 

 

吏玖から彼がベタ惚れしているらしい女子の話を散々された後に勇介は風呂に入っていた。勇介は寝る前にインスタントコーヒーを飲む事を日課としていた。ひと昔前はコーヒーやお茶にはカフェインが入っており不眠作用があるとかどうとか言われていたがそもそも日常的に缶コーヒーやお茶を飲み慣れている日本人はカフェインへの耐性が強く不眠作用などは到底眉唾じみたものである。(吏玖談)そんな訳で家に発酵してしまう程長期間放置されていたコーヒー豆を消費する為に飲んでいたのがいつの間にか普段の日課となってしまっていた。ちなみにそのコーヒーはミルクや砂糖の量を変え朝と夜で最低2回は飲んでいる。

その日課のコーヒーを作ろうとコーヒー豆をスプーンで掬っていた時にスマートフォンに真理の家電話がかかってきた。

「もしもし勇介だけど…」

「あ⁉︎勇介君⁉︎真理が今警察の人に任意の取り調べ受けてるのよ‼︎昼に家の窓が割られて現金の入ったバッグが投げ入れられてたんだけどそのバッグが銀行の事件の…とにかく家まで来て‼︎」

 

 

 

 

 

 

徒歩1分もかからない真理の家に急いで入るとリビングで2人の背広の刑事が真理に取り調べをしていた。

「じゃあ彼とは交際関係はもとより面識すらも持っていないんだね?」

「は…はい…」

「じゃあ今日はここまででいいかな。また時間を改めて色々な事を聞くかもしれないからその時はよろしくね」

「…わかりました…」

見るからに青ざめた表情の真理が返事をすると同時に刑事達がソファーから立ち上がり此方に振り返る。

「君がこの娘の本当の彼氏さんかな?君も後で少し話を聞かせてもらいたいんだがいいかな?」

「はい。いいですよ。部活もバイトもやってないんで」

苦笑する様な表情で一瞥すると刑事達はリビングを後にしていった。

「…あのね、勇介。私帰る時に見たあいつと組んで銀行で盗まれたお金を隠そうとしてるんじゃないかって言われたの…」

目に涙を浮かべて真理が話した。

「真理…。」

こういう時に友人がこの場にいたら気の利いた一言でも言えるのだろうが自分にはどうも無理なようだった。

真理の無実の為とは言えまさか銀行強盗を相手にする事になるとは。そう思うと無意識に拳に力が入り握っていた鍵のケースの軋む音を立てた。

 

 

 

 

 

 

「な、なんでアンタがいるんだ!倒さなきゃいけないのは俺じゃないだろう⁉︎」

真理の一件から数時間。いつもの装備を纏って路地裏で捕らえた件の同級生の背後から羽交い締めて喉元にナイフを突き付け尋問していた。

「同学年の女生徒の家に現金を投げ入れた事はもう知ってる。必要なのは貴様の自供だ。自供する気がないならその気になるまでいくらでも痛めつけてやる」

もちろんハッタリではない。こちらはヒーローをやっているつもりなど毛頭無いのだから。

「分かった!じきょ、自供ならするさ!だが条件がある!俺の彼女の安全を、アンタが保証してくれ‼︎」

「…何?」

「あいつら狂ってやがるんだ‼︎次は新中を襲うって言ってた‼︎」

「…話は聞いてやる…」

喉元にナイフを押し当てられた同級生はところどころ辿々しい口調で事件の経緯を話し始めた。

「俺は高校の奴等なら誰でも知ってる強いヤンキーのグループに入ってた。体育館でのアンタの戦いの後に、体育館にグルの中の1人がタダで貰ったヤクを隠してたのがバレないように、隠す場所を変えようとしてたんだ。それで空き地に埋めようとしてたらスーツの女が話しかけてきて、バレたと思った俺達が口封じにかかったらあっという間に俺達をシメちまったんだ。そしたら女がヤクを隠す場所を教えてやるって言って俺等をわけわかんねぇ場所に連れてって「薬をバラされたくなければ仕事を手伝え」って…」

「…その女はやくざだった訳か」

「いや!それが違かったんだ。仕事ってのを始まる前に殴り合いとか金の盗み方とかを色々教えられて…それで銀行を…」

「…金を何故投げ入れた?」

「途中で抜けたくなったんだよ!俺、襲撃係で警備員を半殺しにしちまったので怖くなって、盗んだ金を家で保管しろって言われたから我慢出来なくなって知ってる奴の家に…」

「…」

不意にナイフを握る手に力が入ってしまった。同級生の呼吸が粗くなっているのに気付き勇介は喉元からナイフを退く。

「…いいだろう。お前の要求を通してやる。だが、もし。妙な真似をする様だったらその時は覚悟してもらおう」

「わ、分かった!………なぁ、そろそろ解放してくれないか?……あれ?」

同級生が振り返るとそこにブラック(勇介)の姿は無く喉元に押し当てられていたナイフの違和感も完全に消えていた。

 

 

 

 

 

 

ブラック(勇介)は尋問した同級生が吐いた銀行強盗実行犯の拠点になっているプレハブ棟の敷地内に侵入した。通常、この手のプレハブ建築は建築工事の現場に短期間中、作業の効率化をはかる為に作業員が休憩時間を過ごす為などに使用する言わば仮置きの事務所の様な物なのだが侵入する前に行った偵察では工事に使う為の重機はおろか掘削や盛り返した様な工事の痕跡が全く見受けられなかった。恐らく最初から拠点として使う為にここを選んだのだろう。大掛かりな下準備ではあるが何千万という大金の為なら案外許容範囲内の出費なのかもしれない。今回の装備は9mm拳銃に予備弾薬が24発に軍用ナイフ、それにM7バヨネットを装着したボルトアクション方式のM1903A3ライフルと予備弾薬が15発。9mm拳銃は弾倉が用意出来ない為リロードにはかなり時間がかかってしまう。発砲は最後の手段の為必然的に出番が多いのは軍用ナイフとライフルに装着したM7バヨネットであろう。

最重要目的は同級生が言っていた学校への襲撃の阻止だ。つまり元不良グループの構成員5名の無力化がメインになる。ブラック(勇介)は空気ダクトを伝って屋根に上がりそこから窓が開いていた2階の部屋にターザンの様にロープで侵入した。

 

 

 

 

 

 

「!」

「誰だ⁉︎」

突然の窓からの侵入者に部屋にいたグループ構成員2人は呆気に取られたまま1人は顔面をライフルの銃床で殴打、もう1人は膝を蹴られて態勢を崩された所をライフルのハンドガード部分で殴られ苦痛に呻いていた所を口封じと手足の拘束で抵抗はおろか仲間を呼ぶことさえ出来ず完全に無力化されてしまった。

これでまずは2人を無力化。今の流れでそれぞれ部屋を侵入しそこにいる構成員を無力化していけば目的は達成されるだろう。例のスーツの女の正体が分からない以上迅速に鎮圧していかなければならない。

部屋のドアを半分開け外の通路の様子を伺う。通路にはおそらくこの部屋を目指しているだろう1人が歩いていた。ライフルを肩から提げ様子を伺いポケットから携帯を出した男がその電源を入れた瞬間にブラック(勇介)は動き出した。

「…え」

携帯に集中していたばかりに異変に気づく事すら叶わず鳩尾にアッパーカット、続けざまに顔面をエルボーで殴り膝にローキックを食らわし態勢がぶれた直後に素早く羽交い締め器官を圧迫。男が酸欠で気絶するまで拘束を緩めず気絶したのを確認した後にさっきの部屋に気絶した男を引き摺り手足と口を封じてからドアノブを蹴り壊しドアの開閉を不可能にした事で無力化を完了させた。3人を無力化し次の部屋に侵入するがそこは無人で一階に降りる途中で残る2人に発見されてしまった。

「テメェ‼︎女の仲間じゃねぇな⁉︎」

「その格好じゃあ警察ではないよなァ…!金の横取りなんかさせねぇ」

叫びながら突進してくる2人の内1人を足掛け1人を大外刈りで投げ倒す。足掛けで顔面から倒れた1人を追い討ちで蹴り大外刈りから復帰したもう1人を倒れた1人の上に背負い投げをかける。

「うッ⁉︎」

短い呻き声を上げた直後押し潰されていた1人は意識を失い投げられた上の1人はそのまま手足と口を封じられた。これで当初の目的である5名の無力化に成功、学校への襲撃も阻止し万事解決、する所であった。

特徴的なタイプライターを打つ音とでも言う様な連続した銃声が響くと同時にブラック(勇介)の足元に着弾の火花が連続して散った。

「…何⁉︎」

この1連の現象には思い当たりがある。これはまるで祖父の武器庫から消えたはずの…

「よぅ坊主!正義のヒーローにも精が出るなぁ‼︎ハハハハ!」

「お久しぶりです。勇介様。」

ブラック(勇介)がいるプレハブ棟から50m先の黒いバンから未だ硝煙たなびくM1928A1を持ったガスマスクの大柄の男とおそらく同級生が言っていたであろうスーツの女が出てきた。

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