BLACK!シーズン1   作:夢見町3丁目5103

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勇介(ブラック)
真理

同級生

スーツの女(扇動者)
狙撃手(ガーランド)
ガスマスク(トンプソン)


第6話

6話「扇動者part2」

あり得ない事にはもう何度も遭遇してきた。この一見平和に見える日本に住む人間なら考えた事もないような出来事を少なくとも両手で数えられるぐらいには切り抜けてきた。だが足元を短機関銃で撃たれる事など一体誰が想像出来ようか。着弾した所が乾いた砂地であった為にブラックの居場所は着弾の砂煙で覆われ視界が遮られていた。その隙に元いたプレハブ棟の窓に飛び込み室内に退避する。

「おーい!今の聞こえなかったのかぁー!」

「突然足元を撃たれたらまずは逃げるのが普通です。そもそも発砲する必要性があったのかがまず疑わしいのですが」

「挨拶代わりみたいなモンよ。ハハハ‼︎」

「まったく…」

スーツの女は一見すると常識人の様に見えるがまず常識人は38口径リボルバーなど持ち歩かない。ガスマスクの男同様これまで相手にしてきた様なチンピラ紛いの連中より何倍も危険な連中だと容易に想像出来る。

「勇介坊ちゃん、と言えば我々が誰なのか。概ね予想がつくのではないのですか?」

スーツの女が声量を若干上げて話しかけてくる。

勇介坊ちゃん。祖父が家に連れて来た人間によくそう呼ばれた者だ。だとするならば…

「お前達、爺ちゃんの組織か⁉︎」

とりあえず返事を返す。

「ええ。実は、今回は貴方に用があってやって参りました。貴方がお爺様の遺産を使って自警団染みた事をしているのは前々から知っていましたので。」

「ならこんな手の込んだ真似をする必要はないだろう‼︎」

「今すぐという訳ではありませんが我々も纏まった資金が必要でしてね。その用も兼ねて先日は輸送車を襲撃しました。」

「お前プレハブで倒した連中の仲間にこの場所を教えてもらっただろう‼︎あれはこのネーチャンが考えついたんだぜ‼︎」

つまり上手く踊らされたという事か。自分が追い込まれている事を痛感させられた。砂煙が晴れ物陰からガスマスクを狙える事に気付きライフルの銃口を屋外に覗かせた時だった。

鈍く短い銃声が鳴りライフルのハンドガードから先が無くなっていた。銃口が撃たれて破損したのに気づいたのはその数秒後だった。

「⁉︎」

一瞬声を出しかけたがすぐに銃声の鳴った方向を注視するとガスマスクとスーツの女が出てきた車の中から祖父の武器庫で見慣れていたM1ガーランドC(海兵隊狙撃仕様)をニーリングポジションで構えた男を捉えた。

「おいおいおい。そんな物騒なモン向けないでくれよ!挨拶代わりで撃った俺が言えた義理じゃないけどよ‼︎」

ガスマスクが大声を上げるが今の自分に返事を返す余裕など無かった。察するにあの車の狙撃手はいつでも自分を撃てたのだろう。万事休すか?半ばブラックは諦めかけていたその時だった。

「状況をご理解していただけましたか?今からそちらに入ります。貴方が妙な気を起こさなければ我々も手荒な事はいたしません。宜しいですね?」

スーツの女とガスマスクがこちらに向けて歩を進めたその時だった。

「あぁ!こんな物騒な方法じゃなくて普通に喫茶店とかでなら聞いてやるよ‼︎」

ブラックは2人に向けて9mm拳銃を狙いもつけずに片手で全弾を発砲する。発砲の音と同時にスーツの女は盛り上がった砂山に身を隠す。当然ロクな狙いもつけずに撃った9発の弾丸は2人に命中する訳もなく5発は音速で2人を通り過ぎたが偶然にも残りの3発はガスマスクの足元と胴体に命中した。

だがガスマスクは怯まずまるで何もなかったかの様にトンプソンを腰だめで構えフルオートで発砲する。亜音速の弾丸はブラックのいた方向に殺到し一階の室内の壁や窓、棚や椅子に気絶していた不良達に次々と着弾し不良達は意識が戻る事のないまま死んでいった。

そんな事には気づきもせずガスマスクは依然フルオートで発砲する事をやめない。その時だった。

プレハブ棟の一階が突如爆発、炎上し火の手は2階にもあがっていった。

「うおっ⁉︎」

爆発させた張本人であるガスマスクが1番驚き素っ頓狂な声を上げて発砲を止めた。

「はぁ…。出来れば殺したくなかったのですが…」

スーツの女が眉を顰めるながらそう言った。

「でもよ!あれは不可抗力ってやつじゃ…」

ガスマスクが反論しようとしていたが言い終える前にいつの間にかスーツの女の隣にいたガーランドの狙撃手がそれを中断する。

「いや、金も使い捨てのやつらも燃えたが資座勇介は死んじゃいない。見ろ。」

ガーランドの狙撃手が指差した方向には蓋の開いたマンホールがあり接触しようとしていた彼(ブラック)がそこを通って逃げたのは明白だった。

「銃声も爆発も聞きつけられたでしょう。引き揚げますよ」

そう言いスーツの女は車に戻っていきガスマスクと狙撃手もそれに続いていった。

 

 

 

 

 

 

「あいつらにそう言われるように脅されてたんだ!別に嘘なんて言ってないだろう⁉︎」

プレハブ棟での出来事の後にブラックは再び同級生を尋問していた。

「…では彼女の事は本当だったのか?」

「あ、あぁ‼︎本当だ‼︎」

同級生に距離を置きながら9mm拳銃を突き付け話を聞くブラック。

この同級生の言う事が本当なら同級生の彼女は勇介達の通う高校の1学年上の生真面目な生徒でSNSを通じて同級生と知り合いそのままズルズルと深い関係になっていったそうだ。しかしその女生徒は進学を目指していた為同級生は女生徒に迷惑をかけない様にと最近は周囲の人間に気付かれまいと内密に関係を続けていた。当然これはあのプレハブ棟で死んでいったグループの仲間達にも黙っていたのだがスーツの女はそれをまるで最初から知っていたかのように同級生を脅迫し半ばにはグループに指示を伝える為のメッセンジャーとして同級生をこき使っていたようだ。

「俺さ…あいつに迷惑かけないようにって思って今まで頑張ってきたんだよ…。でもさぁ」

「…頑張る?お前はただ周りの人間に振り回されていただけだろう!本当にその女の事を大事にしていたのならあのグループを抜ける事だって、スーツの女と縁を切る事だって出来たはずだ。言い忘れていたがな、あのグループの奴等は全員殺されたぞ‼︎スーツの女よりもっと危険な連中にな!」

「あ…あ…嘘だろ…」

「…嘘ではない。連中はおそらく口封じの為に痕跡の一切を消そうとするはずだ。警察に逃げ込んだって無駄だ。お前程度が考えつく様な浅知恵は一切通用しないだろう。さあどうする?」

「どうすりゃいい⁉︎町を出ればいいのか⁈」

「…俺に協力しろ。お前がしくじらなければ奴等を一掃し事態を解決する事が出来る」

9mm拳銃をホルスターにしまいブラックは右手を出す。そして同級生は震えながらもその右手を握りお互い握手の形になる。

「俺に指示をくれ。一体何をすればいい?いや、まずは何て呼べばいい?」

「…名前なんてない。そうだな…ブラックとでも呼んでくれ」

 

 

 

 

 

 

翌日。スーツの女はプレハブ棟で始末したグループとは違う人間達を連れて2度目の銀行強盗を企てていた。今回は前回と違い6人だった人数をその倍の12人に増やしその中でも信用の置ける4人には54式拳銃を持たせてある。これは強盗をスムーズに進める為もあるがそれ以上に残り8人の中から裏切り者が出た時の粛清の為という役割が大きい。2台のワゴン車に分かれて歩道に停まっていた現金輸送車を前後に挟んで逃げ道を無くしいよいよ行動を起こそうとしたその時だった。

「全員両手を頭に置いて跪け‼︎」

反対車線に停まっていた軽自動車、雑居ビルの物陰、そして現金輸送車の中から制服警官や背広の刑事達が一斉に現れワゴン車から降りていた12人を包囲した。

じりじりと距離を詰めて来る警官隊を相手に8人は持っていた警棒で突撃していくがそれもあっという間に無力化されていった。8人を路面に押し倒し逮捕していく警官達であったが残りの4人とスーツの女はワゴン車に再び乗り込み逃走を開始した。警官やパトカーを車体で弾き飛ばしバンパーを破損しながらもワゴン車は逃走に成功したのであった。

そのワゴン車の中でスーツの女は携帯電話を取り出す。

「もしもし。私です。計画に失敗しました。補充した使い捨ては全員逮捕。隊員4名と私は現在逃走中です。」

「「してやられたな。我々「中等部」が作戦を開始して以来初めての失敗だ。その運転手は契約通り入隊だ。合流は変更無しだ。」」

「了解しました。ところで前のグループにいた生き残りはどうしますか?」

「「…情けをかけてやりたいところだが…接触を求めてきた場合はその場で処分しろ。切るぞ。」」

「はい。隊長。失礼します。」

通話を切り携帯電話を窓から投げ捨てようとしたスーツの女は携帯電話の画面にその生き残りからのメールが来ていた事に気づきすぐに運転手に当初の予定とは違う目的地を告げた。

「前の合流予定地だった廃工場に向かえ」

運転中とは言え山場を乗り切った事で入隊が決まり気が早いが一仕事を終えた様な達成感に浸っていた運転手は一瞬戸惑ったがすぐにその指示に従った。

 

 

 

 

 

 

廃工場の前にワゴン車が停まりそこから統率の取れた動きで4人が展開していきそこにスーツの女が続く。ここはプレハブ棟で始末した使い捨て共の隠れ家だった場所だ。生き残りの学生ならまずここに私が回収した薬物を取り返しに来るはず。そう思いながらも廃工場の中をクリアリングしている途中だった。

「探している人間ならここにはいないぞ」

不意に聞きなれない声が場内を木霊し4人はそれぞれ別々の方向に拳銃を構え索敵に入る。

「勇介坊っちゃんですか。何か私共に御用でも?」

「お前達が好き勝手してくれたおかげで身内にその皺寄せが来てな。…その身内を助ける手前、まずはアンタには生きたまま警察に捕まってもらう。爺さんの組織だからな。どうせ捕まりそうになったら自害でもするんだろうがそうはいかない」

言い終えるや否や銃声が響き4人の内1人が倒れ伏した。胴を撃たれた様で生きてこそいるようだが戦闘は無理だろう。

スーツの女はハンドサインで残った3人に物陰に身を隠すよう命じた。だがそんな事など無駄とあざ笑うが如く銃声が鳴り響きもう1人がやられた。だが2発目の銃声で大まかな方向は掴み実際にそこには黒い人影が見えた。

「2時の方向だ!撃て!」

その人影に向けて部下が発砲する。54式拳銃は元々精度が低い粗野な拳銃でそれぞれ部下が発砲した8発の内人影に命中したのはその3分の2ぐらいの割合だったがそれでも複数弾が命中した事には変わらず撃たれた人影が倒れこむ。

「確認してこい」

2人がリロードしながら人影に近づいたその時だった。

2人の後ろにブラックが屋根の基礎から踊り場に飛び降り左手で持っていた軍用ナイフで1人を斬りつけると同時にもう1人の膝を蹴って体制を崩し跪いたその1人の首筋に回し蹴りを食らわせると同時に体の向きを変え右手でホルスターから9mm拳銃を抜きスーツの女に向けて2発発砲した。しかし2発とも命中せずスーツの女が反撃に転じ38口径拳銃を発砲する。発砲の直前でローリングして物陰に身を隠しながら距離をつめ38口径拳銃を奪おうとするとスーツの女が上着の袖からトンファーを取り出しブラックに襲いかかる。トンファーと軍用ナイフがぶつかり金属のぶつかる音が鳴り響くがその音が途切れるより早くお互い次の行動に転じブラックはそのまま軍用ナイフで斬りかかるがそれを避けられスーツの女のトンファーキックを喰らいそうになり辛うじてそれを避ける。それはブラックが今まで相手にしてきた連中とは違う明らかに訓練された動きだった。

 

 

 

 

 

 

ナイフの空振る音や蹴りや突きの際に擦れる服の音が連続しときたまそれを防御する時の鈍い音が連続する。銃での撃ち合いはものの数秒で終わりそこからは階段やギャラリー(2階)を舞台に一瞬も気が置けない格闘戦が続いていた。格闘戦が続く事数分。均衡を崩したのはスーツの女の突きのフェイントからの上段回し蹴りだった。回し蹴りはブラックの顔面すれすれを通り過ぎたがそれを回避しようとした時に2人の間に距離が生じてしまいスーツの女はそれを好機とみて拳銃を向けた時だった。ブラックは拳銃を向けられるより早くローリングで再びスーツの女に近づき前蹴りで拳銃を蹴り上げる。宙を舞った拳銃はそのままあらぬ方向に落ちていきスーツの女はトンファーで殴りかかるがそれもブラックの左腕でガードされそしてスーツの女の肩にブラックの9mm拳銃が突きつけられた。

「終わりだ、…何⁉︎」

トリガープルの重いダブルアクションの引き金を引き切ろうとしたその時に連続した銃声が響きブラックがいる場所に前回同様フルオートで発射された無数の45ACP弾が殺到した。銃声が鳴った瞬間その場から1階に飛び降り何とか弾幕は回避し第2撃を避けるため1階に散乱していた木箱の物陰に隠れるがスーツの女に体制を整える時間を与えてしまった。

「よう‼︎坊っちゃん‼︎全く、相変わらず身内に容赦がねぇなあ‼︎さすがあの爺さんを始末しただけはあるぜ‼︎」

銃声の鳴った方向の場内への入り口を振り向くとやはりそこには昨日のガスマスクがいた。

「またお前か‼︎」

ブラックが毒づくとガスマスクが

「そういや名前とかまだだったよな⁉︎俺はコールサイン<トンプソン>だ!気安くトミーって呼んでくれてもいいぜ‼︎」

「トンプソン!彼はまだ戦える状態です‼︎撤退しますよ‼︎」

スーツの女が声を荒げる。その口調には若干怒りが篭っていた。

「あいよ。んじゃあまたな!坊っちゃん‼︎ガッハッハ‼︎」

スーツの女が窓ガラスを割って場内から脱出しトンプソンは入り口から堂々と出て行った。

 

 

 

 

 

 

あの戦闘から2日。銃声を聞きつけた近隣住民が通報した事で場内にパトカーや警官隊が突入し安全を確保した後に鑑識が行われたが残った空薬莢程度ではまるで捜査は進まず結局2日後の今日には暴力団員同士の銃撃戦という事でカタがついた。真理にかかっていた嫌疑も連中の撃退に成功させた際の取引で同級生が自首し全てを自供した事で無事晴れた。結局プレハブ棟にいたグループは1人も助からなかったそうだ。

教室で真理が上機嫌で話しかけてくる。

「ねぇ勇介♪今度はどうやって私を助けてくれたの?」

「んー?あぁーまぁ色々とな。ウン」

「教えてくれてもいいのにな〜?」

「お前には刺激が強過ぎる内容だから聞いたら絶対卒倒するぞお前」

「え…?」

「冗談だよ。冗談」

まぁそれ以上聞く気はないようで真理は元の席に戻っていった。

あのトンプソンとかいうガスマスクとスーツの女。それにガーランドの狙撃手。奴等は一体…?

勇介は新たに出現したこれまで以上の脅威に危機感を募らせていた…。

 

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