駄文と駄文、駄文で構成された主の妄想小説ですが、付き合っていただけますと幸いです。
それではプロローグ、どうぞ!
その男は『嘘』が得意だった。
どんな事があろうとも男は表情を崩さずに、笑いながら嘘をついてきた。
それこそ、男はまるで息を吸うように、平然と。
そして不気味な事に、その嘘を他人が疑う事は一切なかった。
嘘の神に魅入られた人間。
彼に騙された人々は、誰もが彼をそう評した。いや、そうでなければ説明がつかなかった。
男は楽しくなっていた。そして、更なる嘘を求めて進化していった。
その進化を続ける嘘の技術を人々は恐れたが、そのあまりの不気味さに、何もできなかった。
出来ることはただ一つ、疑う事だけだったが、男の言葉を疑えばそれが現実となり、男の言葉を信じればそれが嘘となる。
何をしても、どうしても、決して彼の言葉からは逃げられなかった。
しかしある日、彼は遺言を残して首を釣った。
人々は最初こそ喜んだ。悪しき鬼は去った、と。
だがその遺言を見た時、人々の表情は一変して硬くなった。
【俺は死ぬよ。
でも、これは一体、『嘘』か『信』か、どっちかな?
本当にその死体は俺かな?
『嘘は信に』『信は嘘に』。
鳥は一度地に落ち、濁流を登りて龍となる】
その要領を掴めない遺言を見て、人々は色々な仮説を建てた。
『男は死んでいない』
『男は地獄から蘇る』
『男はーーーー』
どれもこれも、彼の死を悲しむものでは無かった。彼の死を、不気味がる言葉だった。
当然だろう。彼は本当に不気味で、狡猾な男だったのだから。
だが、その仮説の中に足りないものがもう一つあった。
『そもそも、この遺言を書いたのは男ではない』
『さあ、君の名前を聞かせてくれるかな?』
何もない、本当に何もない空間に声が響く。青い人型のシルエットが浮かび上がり、寝ている『彼』に優しく話しかける。
『騙す……それはとっても素晴らしいものだ。君の『ソレ』は、もはや能力と言っても過言ではないよ』
返事のない彼を見つめながら、シルエットは揺れる。
それは自分の教え子を見るような優しい目。
『でも、現世じゃこれ以上の進化ができない。だから君に片道切符をあげよう』
シルエットが空間に手をかざすと、そこに穴が開いた。禍々しい紫の穴が。
まるで異界と異界を結んでいるかのような不気味な穴の中は、毒々しい煙が息を巻いている。
『大丈夫、いきなり試練を与えるつもりはないよ。最初は簡単に生きて、時間をかけて鍛えるといい』
シルエットは彼に背を向けると、そのままゆっくりと歩き出した。
『【偽る程度の能力】……さて、蛇が出るか龍が出るか……それとも、それ以外の何かか』
そう言って、シルエットはその場から消え去った。
そして彼もまた、ゆっくりと消えていった。
暗いストーリーにする気はないので、その辺りは悪しからず。
やっぱり暗いストーリーは書きづらいんですよねぇ……