東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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どうも皆さん、四ツ葉です。
半年近く続いたコラボもこれで終了です。参加者の皆様、ありがとうございました。
今回、明菜さん大暴走です。アメリカっぽいジョークと毒舌が止まりません。許してください、カオスです。
そして、長いです。今まで書いてきた中で最も長いです。
では、本編をどうぞ。


第八十九話

 範人がルークを殺したことで陣形が崩れ、そこを白狼天狗たちに叩かれたことで、侵略者たちはあっという間に殲滅されてしまった。妖怪の山侵攻事件は防衛成功という形で幕を閉じた。

 

 

 

 

 場所が変わってここは天狗の里、天魔の屋敷。

 範人たちは戦いに協力した礼として、宴会に招待されていた。紫がいるのが少し不自然だが、一応協力者なので仕方ない。

 部屋の一番奥に座る天魔が話す。

 

「皆の者、ご苦労だった。お主たちのおかげで妖怪の山は救われた。ありがとう、本当にありがとう。我々の勝利だ」

 

 そして、天魔は一息吐き、

 

「では、我々の勝利を祝して、乾杯!」

『乾杯!』

 

 乾杯を合図に、参加者たちはそれぞれ自分のグラス(とかコップとか杯とか色々)をぶつけ合い、口をつけた。

 

「かぁー、美味い! 仕事の後の酒は最高だ!」

「ああ、良いもんだな。こうやって、みんなで集まって酒飲むってのは……。より一層美味く感じる」

「私は未成年だから飲めないけどね……」

 

 鉄次郎とエレイが美味そう酒を飲んでいるのを明菜はジト目で見つめる。

 

「ハハハ! お子様の明菜ちゃんには酒の味もわかるまい! これは大人の特権だからなぁ」

「お、お子様って……てか、なんで範人が飲んでるのよ! 貴方、私と同い年でしょうが!」

「まぁまぁ、明菜さん落ち着いて」

「絆まで飲んでる⁉︎」

 

 ほのぼのとした様子で当然のように酒を飲んでいた絆に、明菜は驚愕する。よく見れば、範人と絆だけでなく、それ以上に若いであろうジェットと白、アンまで飲んでいた。

 顔を引きつらせる明菜。

 パッチはチビチビと飲みながら、

 

「それなら明菜さんも飲めばいいじゃないですか。こっちはお酒に年齢制限ありませんから」

「おう、飲め飲め!」

「僕がお酌しましょうか?」

「う、うぐぅ……」

 

 パッチに続き、鉄次郎と絆にまで勧められ、明菜は狼狽える。

 

「や、やっぱりダメよ! お酒は二十歳になってから!」

「なんじゃ、つまらんのう……」

「つまらないとかそういう問題じゃない! 酔ったら困るでしょう!」

「……(容姿端麗な娘の恥ずかしい姿が見れると思ったんだがのぅ……)」

 

 天魔ががっかりした様子を見せたが、明菜は酒に手を出さない。それどころか、言い返されてしょんぼりとする。

 そんな天魔に、アンは酒瓶を抱えながら、

 

「そう気を落とすな、なのだ。あたしがお酒を注いでやるから元気出すのだ」

「アン殿……かたじけない」

「その代わり、あたしのにもお酒を注いでくれなのだ」

 

 自分の杯に日本酒を注いでくれるアンに、天魔は目頭が熱くなるのを感じた。

 明菜はそれをつまらなそうに見つめる。一方、パッチは、

 

「微笑ましいですね。そうは思いませんか? 明菜さん」

「別に……。ただ、ちょっと羨ましい感じはするわ」

「だったら俺が注いでやろうか?」

「結構よ。酔いたくないもの。どうせ、私が酔って動けなくなったら同人みたいに乱暴するんでしょう? 童貞さん?」

 

 明菜の言葉に、範人含め、一部の男衆がピクリと反応する。零に至っては噴いた。それはさながらヨガ○ァイア(空中にある間に紫がスキマで回収してどこかの海に捨てた)。

 絆は頭に?マークを浮かべ、エレイの服をちょいちょいと引っ張る。

 

「ん? どうした?」

「童貞って何ですか?」

「俺に聞くのか⁉︎」

「エレイさんじゃ、ダメなんですか?」

「う、うむぅ……ダメとは言わんし、教えないこともないが……」

 

 目をウルウルさせる絆に、エレイは言葉を濁らせる。そんなことを聞くためにその目を使わないでもらいたい。

 明菜と白、ジェット、ジェイドはクスクス笑っているが、範人と天魔は死んだ目をしている。

 しばらくして、もしかしたら面白いことになるかもしれないと思ったエレイは、

 

「童貞っていうのは性交したことのない男のことなんだ。女の場合は処女と言う」

 

 話を聞いた絆の顔がどんどん赤くなっていく。

 エレイはニヤニヤとしながら、酒を飲んだ。

 範人と零、天魔に続き、紫も死んだ目になる。

 絆は顔を真っ赤にしながら、

 

「エレイさん、ごめんなさい! 言いたくなかったですよね? 恥ずかしかったですよね?」

「なかなか良いリアクションだな」

「僕で遊んでませんか⁉︎」

「まぁ、気にすんな。これでまた1つ賢くなったってことさ」

「こんなことで賢くなってどうするんですか⁉︎」

「あ? こんなことってどんなことだ? 俺はまた1つ賢くなったとしか言ってないぞ?」

 

 エレイはとぼけた。

 「こんなこと」と訊かれた絆はしばらく前に一緒に風呂に入った時の葉の姿を思い出してしまい、顔を真っ赤にして悶える。

 そんな絆を明菜と白、ジェイド、エレイはニヤニヤしながら見つめていた。「初々しいなぁ……」と。

 悶える絆に、パッチがフォローを入れる。

 

「絆さん、大丈夫ですよ。好きな者と愛し合って子孫を残したいという本能は生物として当然のものですから、恥ずかしくなんかありません!」

「……パッチ、それフォローになってない」

 

 範人がツッコんだ。

 ——これの問題点は「生物として」よりも「人間として」という点だぞ。

 結果、絆はさらに顔を赤くしてうずくまってしまった。

 

「そういえば、貴方さっき黙り込んでいたけど、どうしたの? 天魔もだけど」

「ああ、少し考えごとをしていてな……」

 

 明菜の問いに、天魔は目を逸らしながら答えた。

 

「ふぅん、考えごとね……」

「そうそう、考えごと。だから気にすんな」

「もしかして、2人はさっき言ってた童貞って奴じゃないのか? なのだ」

「「ブフゥ⁉︎」」

 

 アンの言葉に、範人と天魔は同時に噴いた。今度は波○拳(例により、紫が回収して捨てた)。

 明菜は「なるほど」と手を合わせた。範人と天魔の顔に冷や汗が浮かぶ。

 

「あれ? もしかして当たりだったのだ?」

「へぇ……天魔はともかく、範人が童貞……ねぇ」

「おいおい待て待て! まだ童貞と決まったわけじゃねぇだろ⁉︎」

「ともかくってなんじゃ、ともかくって……」

「そう言われてもねぇ……。なら、証見せてくれない?」

「へ? 証?」

 

 範人はキョトンとした表情を浮かべる。

 

「そうよ。童貞卒業してるなら身体にどこかに紋章が浮かぶはずよ」

「そ、そんなものが浮かぶのか⁉︎ ……童卒すげぇ。そんなの大学の資料にもなかったぞ」

「わ、我の家にもそんなものなかったぞ⁉︎」

「なんてウソよ」

「「は? ウソ?」」

「そんなのあるわけないじゃない。そんなに動揺するってことは貴方童貞ね。天魔はわかりきっていたようなものだけど」

「……騙しやがったな、コンチクショウ」

「我はそもそも童貞確定なのか。そうなのか……」

 

 天魔は膝をつき、範人の顔には影が落ちる。

 明菜は勝ち誇った顔になり、

 

「フッフッフ〜、私に手を出そうとするからそうなるのよ。白馬に乗って出直してきなさい」

「そもそも手出そうとしてねぇぞ……」

「そういえば、範人さんには妖夢さんがいますもんね。手なんて出せませんよね。……ん? もしかしたら、既に妖夢さんとヤっちゃったりしてますか?」

「あら、そうなの? なら、その妖夢とやらの身体はどうだったのかしら? 気持ち良かった?」

「よ、妖夢の……」

 

 範人は妖夢の裸を想像してしまい、ボンッと音が出そうなほど顔が真っ赤になった。

 裸くらいなら何度も見たことがある。と言うか、妖夢(向こう)から見せてくる。プルンとした柔らかそうな(と言うか実際柔らかい)おっぱいやモチッとした白い太腿、妙にエロく見える鎖骨etc……、何度もその裸を見せつけられた。

 範人も今では慣れてしまったが、改めて想像してみるとエロい。自己嫌悪に陥るくらいエロい想像をしてしまう。

 全裸の妖夢がベッドに横たわり、こちらを見つめてくる。白い肌は紅潮してハリが出て、その表面にはうっすらと汗が浮かんでいる。そして、艶かしい吐息を吐きながら、「範人、大好き」と言って腕を広げるのだ。そんな妖夢に自分は我慢できずに——

 

「うわー! 俺のバカ野郎!」

 

 範人は自分の頬を殴った。その場にいる全員がビクッとする。

 さすがに今の想像は脳にも心臓にも股間にも悪すぎた。童貞の範人にとっては恐ろしいほどの毒である。

 明菜はニヤニヤしながら、

 

「ふふふ、やっぱり童貞みたいね」

「ああ、そうだよ! 俺は童貞だよ! 何か文句あっか!」

「「も、文句なんてありません!」」

 

 範人のあまりの剣幕に、ジェットと白はビビりながら言った。

 

「でも、正直言って、範人が童貞なのは意外だったわ。てっきり、何人も落として経験済みなのかと」

「おいそりゃどういう意味だ?」

「だって、貴方モテそうな見た目してるもの。髪の毛金色だし、背高くて良い感じに筋肉ついてるし、顔もそれなりに整ってるし、その年齢(とし)で大学卒業してるようなエリートだし」

「そりゃどうも」

 

 色々と褒められた範人は少し上機嫌に返す。

 

「はぁ……なんでヤってないのかしらね。意外過ぎるわ」

「上げといて落としてくるんですね。わかります。安定して安定しませんね」

「今や高校生ですら経験してるご時世よ。貴方みたいなのが未経験なんて驚きでしかないわね。なんでヤってないのかしら?」

「そりゃ……は、裸見せるの恥ずかしいし、あまり素肌が触れ合うのもなんか……すごくヤバそうだし、俺まだ17から、そういうことするには早いかな、って……。何より、妖夢を傷つけたくない……」

 

 顔を赤らめて範人は言った。初々しすぎる。

 そんな範人に、鉄次郎は、

 

「その髪の毛、モテるために染めたのか?」

「これは地毛だよ! 俺一応アメリカ人だからな⁉︎ 名前漢字だけど」

「きっと女の子を落とすために染めたのよ」

「いや違ぇよ!」

「あら? そのルックスなら落ちる女の子はそれなりにいたはずよ」

「見た目だけで落ちてどうする? 人は心だ! それに、俺はあまりモテなかったぞ。なぁ、姉さん?」

「……」

 

 それなりにマトモなことを言った範人は紫に意見を求めるが、範人に落とされた者が妖夢含めて少なくとも3人はいることを知っている紫は黙り込んだ。

 明菜はつまらなそうに唇を尖らせると、すぐ隣に座っていたジェットに目をつけた。

 

「ジェット君も将来のことは気にした方が良いわよ」

「何のことですか?」

「何って、下手すれば一生天魔や範人みたいな童貞になるのよ」

「「みたいなって何だ! みたいなって!」」

「あ、結構です。僕もう卒業してるんで」

「はいぃ⁉︎」

 

 驚く明菜に、ジェットは「ククク……」と笑いながら、

 

「こう見えて僕は500年近く生きているんですよ。そこのジェイドさんとほとんど同い年です」

義兄様(おにいさま)と呼んでくれないかな?」

「……わかりました。まぁ、僕たちは吸血鬼ですから、見た目が若いんですよ。義兄様は既婚者ですし、僕はそのお相手の妹とお付き合いさせていただいているんです。近々、結婚も考えています」

「えっ⁉︎ 嘘……。こんな子供なのに?」

「子供扱いしないでください! 僕は貴女よりもずっと年上です!」

「ショタジジイ……」

「天魔さんにだけは言われたくないです! この童貞ショタジジイが!」

「それはさすがに言いすぎだ……」

 

 一瞬キレたジェットに、天魔は(´・ω・`)(しょぼんとした表情)になって手をついた。

 さっきから散々童貞を揶揄っていた明菜も今のはさすがにかわいそうだと思い、哀れみの視線を向ける。

 そんな中、紫は、

 

「大丈夫よ。私も処女だもの」

『えぇ⁉︎』

「なんでそんなに驚くのよ!」

『超意外!』

「私を何だと思ってんのよ! スキマ美少女ゆかりん☆よ♪」

『……』

「BBA」

 

 全員が黙り込む中、零が禁句を言ってしまった。

 紫はすごく良い笑顔になり、

 

「さぁ、私とデートしましょう」

「嫌だ! やめろ! やめろォォォォオ!」

「ダーメ♪ たっぷり遊んであげますわ」

「うわぁぁぁあ‼︎」

 

 零は紫に手を引かれ、元特殊攻撃部隊(コマンドー)員に崖から落とされた人のような叫び声と共にスキマの中へと連れて行かれた。範人たちはそれを黙って見ているしかなかった。

 数秒後、範人が口を開いた。

 

「せっかくだから話題変えようぜ。このままだともっと犠牲者が出そうだ」

「そうね。それが良いわ」

「でも、何か良い話題ありますか?」

「あるぜ! 俺の手元に飛んできた紙飛行機に良い感じのが書いてあった」

「じゃあ、頼む」

「ああ、お題は『自分の名前の由来』だ」

「ほほう、これはなかなか……」

 

 ショタジジイ(童貞)の天魔が感心する。 そうです天魔さん、もっと褒めてください。

 「ふむ……」と考えるように、範人は酒を一口飲んで手を上げた。

 

「じゃあ、俺からいっきまーす! 俺の名前は元々ハント・ゴートレックっていう名前だったんだけど、幻想郷(こっち)来る際に変えた。元々のハントって名前は狩人のハンターから取ったらしい。狩人のように強く逞しく育ってほしいって思いを込めたそうだ。で、新しい方の範人って名前だけど、これは人の模範になる人になれってことで『模範』から『範』を、その下に『人』をくっつけることで『範人』になったらしい」

「おおー、真面目だなぁ。良いじゃないか」

「ハンターってなかなかかっこいいのだ。羨ましいのだ」

「確かに模範にはなるけど人じゃないわね」

「緑のアレは関係なかったんですね」

 

 範人の名前に、それぞれが感心した様子を見せる。いいぞ、褒めて褒めて。

 範人の後に、アンも続く。

 

「あたしの名前は単数のan、1を意味するのだ。二進数で言う1は存在すること。つまり、あたしの名前は存在を表しているのだ」

「ほほう……なんか不思議な由来だな」

「どことなくセンスを感じます」

 

 範人と絆は名前の由来に好印象を受けていた。しかし、他の全員は名前の由来よりも、アンが思ったよりも圧倒的にわかりやすい説明をしてきたことに驚いていた。

 と、そんな時にスキマが開いて1枚の紙が落ちてきた。

 範人はそれを拾い、読み上げる。

 

「名前の由来も逆だったんだな。俺の名前は存在しない、つまり0から付けられた。そして、零になった。あ、ちょ、紫やめ——ギャァァァァア! …………なんだこれ?」

「さぁ? というか、最後のはわざわざ読まなくて良かったんじゃないかしら?」

「まぁ、そうかもしれないがな。一応、書かれていたことだし」

「でも、さすがに(エクスクラメーションマーク)はいらなかったわよ」

「……それもそうだな」

「零ってかっこいい名前ですよね。なんか羨ましいです」

「そうだな。厨二くさい感じもするが……」

 

 羨ましそうな顔を絆にそう言ったエレイだったが、忘れてはいけない。エレイ自身の名前にも『レイ』が入っている。

 ——もしかしたら、この人気づいてないんじゃなかろうか?

 少し心配になる範人たちだった。

 

「他になんか自分の名前の由来がわかる人いるかしら?」

 

 明菜の質問に、残っていた全員が首を横に振った(パッチは戦場から戻ってくる間に自己紹介していた)。

 

「まぁ、そうよね。ただ単にかっこいいからとかで名前決める親もいるものね。実際、私も由来は知らないし」

 

 明菜は溜め息を吐く。

 

「でも、かっこ悪い名前よりはマシですよ。太郎なんてなんか普通すぎてかっこ悪い感じがしますし」

「確かにそうよね。でも、貴方なんて名前の由来すぐにわかるかもしれないわよ」

 

 白の言葉に、絆は「何故ですか?」と質問する。

 

「だって、貴方の場合は名前と能力——正確には性格のことろうだけど、ほぼ一致しているもの。他人と絆を結ぶことで能力を手に入れるといったタイプの能力。貴方の人間性がそのまんまの名前被って歩いているようなものよ」

「なるほど、そうかもしれないですね。と言うことは、白さんの名前は見た目から付けられたってことなんでしょうか。白さんって、髪の毛とか白いですから」

「そうね。きっと、それだわ」

 

 仮説であったとしても名前の由来がなんとなくわかり、白は納得したような表情を浮かべる。

 と、

 

「なぁ、俺の名前の由来はわかるか? あと、義弟(おとうと)の名前も」

 

 遠慮がちに手を挙げたのはジェイドだった。その横ではジェットも手を挙げている。

 そんな彼らに、白は、

 

「知らないわ。500年前なんて、私まだ生まれてなかったもの。その頃のセンスなんてお姉様に聞くしかないんじゃないかしら?」

「いや、レミリアにもわからないらしい。おまけに、『それなら、改名しないかしら? ダークネスとかどう?』って言われた。即断った」

「相変わらずのセンスね……。さすが、お姉様」

「ああ、さすがにアレは引いた。かっこいい言葉並べるだけじゃ良い名前にはならないっての。むしろかっこ悪くなって名前だけで羞恥プレイできるレベルになるっての」

「ええ、和訳しなくても恥ずかしいレベルなのに、和訳したら『紅の闇』って、もう恥ずかしいのレベル通り越して精神崩壊するわね」

「ああ、子供できた時は絶対に俺が名前つけようって決めた……」

 

 そう言って、ジェイドは疲れた表情を見せた。ジェイドパパはレミリアママに名前決めさせないようにすべく、(レミリア)が妊娠する前から子供の名前決めに力を入れているのである。

 一方、範人の頭の中には日本のえっちぃ漫画で出てくる殺し屋の姿が浮かんだが、あまり考えすぎると頭の中でエロシーンが流れそうだったので黙って記憶の引き出しにしまっておいた。

 少し考えれば、話題は浮かぶ。宴会は夜遅くまで続いた。

 

 

 

 

 深夜、日付が変わった頃。

 参加者のほとんど(零もボロボロの姿で帰ってきた)が戦いの疲れから眠ってしまった宴会場を後にして、範人は屋敷の縁側に座っていた。

 秋の深まりを感じる冷たい夜風が酒で火照った身体に心地良い。

 と、そんな範人のすぐ隣にスキマが開き、紫が上半身を乗り出す形で現れた。

 

「デートは終わったのか?」

「ええ、なかなか楽しかったわよ。特に、零の泣きそうな顔なんて……」

「ああ、聞きたくないから()してくれ」

「つれないわね……」

 

 紫はつまらなそうに口を尖らせる。

 

「まぁいいわ。折角だから貴方と2人きりでお酒を飲むことにしましょう」

「いや、酒はもう……まぁ、いいか。付き合うよ」

 

 既に用意されていたグラスを見て、範人は溜め息混じりにそう答えた。

 紫は互いのグラスに範人の家からテキトーに持ってきたベルギービール——デュベル・モルトガットのデュベルを丁寧に注ぐ。

 デュベル専用のグラスに注がれた淡い金色の液体からレモンのような柑橘系の香りが広がった。

 範人と紫はそれぞれ自分のグラスを持ち、

 

「それじゃ……」

「「乾杯」」

 

 グラスを優しく打ちつけ合ってから、デュベルを口に含んだ。スパイスの香りが鼻を通り、口の中に苦味が広がるが、すっきりとした味わいでアルコールの甘味もあるのでかなり飲みやすい。

 最初の一口が喉を通り過ぎた後、範人は感嘆の溜息と共に「さすが悪魔……」と呟いた。

 

「良いものでしょう? この悪魔(デュベル)?」

「ああ、アルコール度数8.5%のわりには飲みやすい。それに、シチュエーションも良いな。こっちに来ても戦いが多いせいでこんなふうに姉さんと話す機会はあまりなかったから……てか、なんで俺が妖怪とかと戦ってんだよ? 妖怪退治は霊夢の仕事じゃないのか?」

「あの子も仕事ばかりじゃ疲れるのよ。巫女として修行もしなきゃいけないし」

「神社行っても、寝てたか、お茶飲んでいたか、掃除してた記憶しかないんだが?」

「気のせいよ」

「あ、そッスか……」

 

 遠い目をして答えた紫に、範人はどうしようもない不安を感じながら、デュベルを口に含んだ。

 しばらくして、

 

「ところで、話って何かしら?」

「ん? ああ、今日の戦いのことだ」

「今日の戦い?」

「ああ……」

 

 範人は真剣な表情になり、

 

「実は、今日侵攻してきた集団のリーダーが俺の元部下だった。あの事件で死んだはずの」

「ええ⁉︎」

「そんなに驚かないでくれ。問題はまだ後だ。どうやら、今回来たやつらはボスじゃなかったらしい。実際、その元部下は上の奴——あいつはファーストと呼んでいたが、そのファーストがいると言っていた。そのボスに引き込まれたんだろうな。死体を改造して、生き返らせたような感じだった。昔の記憶は普通にあったみたいだったし……。多分、俺たちの知らない新型の生物兵器——それも、アンブレラとは違う他の機関のヤツを使ったんだと思う。そして、ここからが一番の問題なんだが……」

 

 真剣だった範人の表情が更に険しくなり、紫も身構える。

 

「狙いはハンターキング——いや、俺だったらしい」

「まさか……嘘でしょ⁉︎」

「いや、本当だ。今回の侵攻の原因は間違いなく俺だ。そして、俺が幻想郷にいることを知っているのは——」

「貴方と関係が深い者……ということね?」

「その通りだ。残念ながらな……」

 

 範人は心底残念そうな表情をした。そして、すぐに泣きそうな表情になり、

 

「なぁ、俺は幻想郷(ここ)にいちゃいけないんじゃないのか?」

「……え?」

「俺がいたら、また侵攻されるかもしれない。今回は運が良かっただけだ。もしかしたら、次は人里が狙われるかもしれない。今回は偶々みんなが集まってくれたおかげでそれなりに余裕があったが、もしそうなっちまったら、戦力の弱い人里じゃあ、とても耐えきれない。あるいは、圧倒的な力を持つボス自体が来て、幻想郷自体が壊滅するかもしれない」

「ぐぅ……」

「俺がいなくなれば、幻想郷は安全になるんだ。侵攻されて、誰かが死ぬことは無くなる。なぁ、本当は俺って、幻想郷(ここ)に存在しちゃいけないんじゃないのか?」

 

 範人は縋るように、俯きながら、紫を見つめていた。

 確かに、範人の言うことは正しい。範人さえ、幻想郷から去れば、幻想郷は安全になる。幻想郷の母として、自分は範人を追い出すべきなのだろう。

 しかし、紫にはそれができなかった。

 やっと帰ってこれた先祖の土地。幻想郷に辿り着いた時の範人の、希望と喜びに満ちた顔。範人が生まれた時から、ずっとスキマで見守ってきた。そんな本当の弟のような彼を自分から突き放すなんて不可能だった。

 

「貴方が出ていく必要なんてないわよ」

 

 紫は範人の頭を優しく撫でながら言った。俯く範人の頬を涙が流れているのが、紫には見えた。

 

「貴方、妖夢と結婚したいでしょう?」

「ああ、したい……」

「子供だって欲しいでしょう?」

「ああ、欲しい……」

「本当は幻想郷にいたいでしょう?」

「ああ、いたい……」

「なら、それでいいのよ。貴方が出ていく必要はない。むしろ、幻想郷には貴方が必要。貴方は遥か昔に欠けてしまっていたピースの1つなのだから。欠けていることに慣れてしまっていた世界に、欠けていたピースが戻ってきたことで何かが起こるなんて当然のこと。何が起きたっておかしくはないのよ。だから大丈夫、それで何かが起こるのなら、幻想郷はその何かに立ち向かうわ。1人でできないなら、みんなで立ち向かう。いざとなれば、私も戦う。だから、貴方は幻想郷(ここ)にいて」

 

 紫の優しい言葉が範人を復活させたのは言うまでもなかった。

 範人は袖で涙を拭って顔を上げると、

 

「ありがとう。頼みごとがあるんだが、いいか?」

「ええ。協力するわ」

「じゃあ、俺がいた世界にある全ての生物兵器製造施設で作られた生物兵器で、各施設で一番最初に作られた個体と生物兵器各種の一番最初に作られた個体を調べてくれ。おそらく、その中にファーストがいる」

「……根拠らしい根拠は無いけれど、範人が言うなら可能性は充分あるわね。わかったわ、調べてみる」

「ご協力感謝する」

「貴方を生かすためよ。重要なことだから協力するに決まってるでしょう」

「ああ、本当にありが——」

 

 礼を言い終わらない内に、範人は意識を失って倒れた。

 縁側には範人の肩を必死に揺する紫が残された。

 

 

 

 

 翌日、来訪者たちを見送るために集まっていた者の中に範人の姿はなかった。紫によると、心労が溜まって倒れてしまったらしい。

 元の世界に帰る直前、意識を取り戻した範人が、冷凍保存されているヴェルデューゴとプラーガを明菜に渡し、彼女がそれを嬉々として受け取ったことにはその場の全員が驚いた。

 そんな危険物がどこから出てきたのかは、また別の話。




半年近くの間、ありがとうございました。これにてコラボ終了です。
長きにわたる戦いもこれで終わったんだ。(−_−;)

さて、ここまで長いのを最後まで読んでくれた方々にちょっとしたサービス(という名の醜態晒し)をしましょう。
女体化範人です。

【挿絵表示】

顔をちょっとミスしました。やっぱ、塗るのはほどほどにしないとですね。あと、目を大きく描くように心がけないと……。
ではでは!
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