東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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 どうも、またまたお久しぶりです。四ツ葉です。
 今回遅れた理由を正直に申し上げますと、やる気がなかったからです。実際、この話も今日昨日で書き上げたようなものですし、やる気さえあれば週2回の投稿もできると思います。
 しかし、そこは四ツ葉さん。高校3年生となると、満足に時間も取れず、時間があっても他のオリジナルの書き溜めに時間を割いていました。結果、一番最初の一番悩む話を書き上げることができました。最初の話がまさかの九千字という長さになりやがったですよ。
 これが今回の遅れの主な原因です。

 次回も遅れてしまうかもしれないですが、ご了承ください。


第九十六話 鯨を見に行こう

 洋上に浮かぶクルーザー。範人と妖夢はその甲板にいた。

 2人——いや、乗客全員の目的はホエールウォッチング。2人の周りにはスーツやアロハシャツなど様々な格好の人がいる。こういったクルーズは案外自由なのだ。

 

「さてさて、鯨さんはどこかな〜?」

 

 範人は双眼鏡で水平線を見渡す。しかし、360度見渡しても鯨らしい影も潮も見当たらない。

 範人は妖夢の方に振り向き、首を横に振った。

 妖夢は残念そうな表情をするが、不満そうな様子は見せず、

 

「なら、中に行きましょう。中も退屈はしなさそうですよ」

 

 見つからない時、鯨はとことん見つからない。時間を置いてからまた見に来ようということで、範人は船内に入るのだった。

 

 

 こういったクルーズでは、食べ放題(バイキング)などのサービスがセットで付いてくることがよくある。

 今回のクルーズも例外ではなく、食べ放題が付いていた。

 船内の大部屋には数々の料理が並べられている。あくまでホエールウォッチングの付録のようなもののため、そこまで高級な食材はないが、それでもロブスター(日本に比べて、ハワイのロブスターは安価なのだ)やローストチキンなど、それなりの料理が用意されている。

 しかし、範人が取りに向かったのは、ロブスターでもチキンでもなく、マッシュポテトだった。これには、妖夢も不思議そうな顔をする。

 

「なんでそんなの取るんですか? こっちの海老の方が美味しそうですよ」

「ん……まぁ、確かにそう見えるかもしれないが、一般的な人の舌で考えると、こっちの方が美味いんだよ。ほとんどの奴は豪勢な見た目に釣られて、そっち取るけどさ」

「そうなんですか。見かけによらないのは人だけじゃないんですね」

「そうだな」

 

 そう言って、範人は爽やかな笑みを浮かべた。

 少しして、範人と妖夢はテーブルに着いた。範人の皿の上にはマッシュポテトとローストチキン、シイラのフライが、妖夢の皿の上にはボイルドロブスターとウニクリームパスタ、少しのマッシュポテトが乗っている。

 日本以外の国では「いただきます」の文化があることが少ないため、範人と妖夢は声に出さず、手を合わせて、料理を口に運んだ。

 

「あ、美味しい……」

 

 と、妖夢が意外そうな表情をする。

 

「だろ? 俺も最初食った時は驚いた。なんでこんなに美味いのかなぁ、って」

「お肉の旨味でしょうか? 馬鈴薯(ジャガイモのこと)を茹でて潰して、調味料と混ぜただけみたいなのに、お肉の味がします。あと、なにかフワッとしています」

「正解。ここのマッシュポテトは、ハンバーグやステーキを焼いた時に出た肉汁を混ぜているんだ。ここで扱っている肉はどれもそこそこ良い肉だし、同じ料理から出る肉汁を基本的に使っているから、変に味が混ざることもない。フワッとしてるのは、しっかりと混ぜてあるからだな」

 

 範人はどこか自慢げに話す。

 滅多に見せない鼻高な様子に、妖夢は「珍しいものを見た」と、カメラのシャッターを切った。

 と、

 

「ほ〜、それなら俺も食ってみるかね」

 

 不意に背後から声をかけられる。

 範人が驚いて振り向くと、そこには、

 

「よう。久しぶりじゃねーか、ハント」

「げっ⁉︎ リック……」

「なんでぇ、そんな嫌そうな顔しやがんだ? 俺とお前の仲じゃねぇか。……あ、ヨウムさんだっけ? 久しぶり」

「お久しぶりですリックさん」

 

 リック。

 アメリカ政府の元で働くエージェントの専属ドライバーの1人。専属ドライバーとしては珍しく、荒い運転を好むが、実際は普通の運転もできる(らしい)。本人は「最高にクールなドライブ」などと抜かしているが、乗せられている方は堪ったもんじゃない。範人が政府の下に入った時から、車に乗せることが多く、範人とはプライベートでも多少の付き合いがあった。

 本来なら、アメリカ本土にいるはずなのだが……、

 

「なんでハワイに?」

 

 範人が訊ねる。

 リックは顎を撫でながら、

 

「休暇利用して遊びに来てんだ。本土(むこう)の方は寒いからよ。ワイハーでアツアツ季節無視ってわけ」

「ほー、お相手はいるのか?」

「ああ、いるぜ。嫁無し、彼女無し、女との関わりも泣ける状態(グレイト)な俺は、ダチと一緒に野郎2人旅よ」

「兄貴の口癖をパクんな」

 

 範人はリックを睨みつける。

 しかし、リックは全く意に介さない様子だ。

 

「で、お前の方はどうなんだ? リゾート地で夫婦水入らずの時間か?」

「まだ夫婦じゃねーけど、そんなとこだな。別荘あるから格安でお泊まり」

「かー、羨ましいねぇ。世界的リゾート地で、毎晩毎晩ギシギシパンパンアンアンドピュドピュしてるんだろ。俺も相手が欲しいぜ」

「その擬音語がナニを指しているかは言わんが、毎晩じゃねーよボケ」

「んだとぉ? お前、細胞分裂が速えからぜt——」

「その辺しておけ馬鹿野郎」

 

 声と同時にリックが前につんのめる。

 頭をさすりながら振り返ったリックの後ろにいたのは、

 

「よう、久しぶりだな範人」

「え? ビリーさん?」

「おう。……にしても、こいつと言葉が被るのは嫌だな。俺まで変態になった気がする」

 

 アロハシャツを着た筋肉隆々の男——ビリー・コーエンは、丸めたパンフレットでリックを突きながら言った。

 

「それにしても驚いた。まさか、お前がハワイに来てるなんてな」

「いや、それはこっちの台詞なんだけど……」

「そうか? 俺だって旅行くらいするぞ」

「そうじゃなくて、なんでリックと一緒にいるかだよ」

「ん? ああ。南米に行った時に知り合った。カーニバルを観に行った時だ」

「すごい偶然だな」

「サンバ衣装の女見て鼻血垂らしながら叫んでる奴がいれば、そりゃあ捕まえるだろう」

「確かに……」

 

 サンバ用の際どい衣装を着た美女を見て、興奮のあまりに鼻血垂らしながら歓喜の叫びをあげるリックという光景が、容易に想像できてしまう範人だった。

 

「まぁ、俺も踊りたかったけどな。久しぶりにハッスルした」

 

 サンバ衣装を着て踊るビリーなどというおぞましい想像をしてしまい、範人はそれを慌てて振り払った。

 

 ビリー・コーエン。

 海兵時代に民間人23人の虐殺事件を起こしたことで、処刑のために基地へ移送される途中、装甲車が何者かに襲撃されたことで脱走。その後、S.T.A.R.Sのメンバー——レベッカ・チェンバースと行動を共にし、最後はアンブレラの施設から脱出した。レベッカの報告書では、ゾンビ犬に襲われて死亡してことになっていたが、実際は生きていた。

 範人と出会ったのは、範人が政府を離れる半年前。素性を隠して生活していた彼だったが、同じバイオハザード経験者ということから意気投合した。

 本来なら、範人はビリーを捕まえるべきだったが、ビリーの話から冤罪の臭いを感じ取った範人は何もしなかった。

 

「あのー、私を蚊帳の外に追いやるのはやめてもらえないでしょうか?」

 

 昔話で盛り上がっている範人たちに、妖夢のジト目が向けられた。

 

「あー、悪いな。懐かしくてつい」

「まだそんな歳じゃないでしょうが……」

「あはは……ごめん」

「まぁ、いいでしょう。話があるのはそちらの方だけですし」

 

 そう言って、妖夢はビリーの方を見る。

 

「なんで俺に?」

「範人の昔話を聞きたいんです。友達になら、範人もいくらか話しているかと」

「なるほどな。本人に聞いたら、話してくれないこともあると」

「そういうことです」

 

 頷く妖夢に、リックは不思議そうな表情を浮かべる。

 

「なぁ、ヨウムさん。何で俺には聞かないんだ?」

 

 すると、妖夢は超がつくほど嫌そうな顔で、

 

「だって、貴方に聞いても、まともな話出来なさそうですから。すぐに下ネタに飛びますし。それに、私、貴方嫌いですし」

 

 妖夢の言葉はリックの心に釘のごとく突き刺さり、打ち砕いた。

 リックが凍りついたように動かなくなる。

 その間にも、妖夢とビリーは別のテーブルで話し合いを始めていた。

 範人がリックの肩を叩くと、リックはハッと我に返り、

 

「お、女の子にストレートに嫌いって言われると、傷つくんだな……」

「俺言われたことねーからわかんねーわ」

「ちくしょー!」

 

 リックは絶叫した。

 

 

「うぅっ……俺が何をしたって言うんだ……」

「初対面でも下ネタぶちかましてたよな」

「アボゥ⁉︎」

 

 範人はリックを落ち着かせるため、甲板に出てきていた。ちなみに、料理は急いで食べたため、あまり味わえなかった。

 リックはひとしきり言葉をぶちまけると、落ち着いた様子で、

 

「これからは、発言に気をつけることにするぜ……」

「お、おう……そうしろ……」

 

 範人は若干ビビりながら言葉を返した。

 ふと、リックは思い出したように、

 

「そういや、ヨウムさんとエレナさんって似てるよな。お前さ、もしかして、代わりとか思ってねぇか?」

「なっ⁉︎ 代わりなんているわけねーだろ! 妖夢とエレナは違う! そもそも、俺とエレナはそんなんじゃ……ない……」

 

 範人は一瞬キレたが、その言葉の最後は弱々しかった。

 

「だいたい、俺とエレナは——」

「同居人、だろう?」

「……ああ、そうだ。2人は違う、人間だ……」

 

 範人は顔を下に向け、寂しげに言った。

 範人の声をすぐ隣で聞いていたリックにも、その言葉が誰に向けられたものか分からなかった。

 リックはどこか妥協したように、

 

「そうか……それなら、いいんだ……」

 

 と、言った。

 

「でも、あいつはお前とそういう関係になりた——」

「範人ぉー!」

「へっ? ——あだっ!」

 

 妖夢に体当たりされ、範人は船は手すりと彼女のサンドイッチになった。

 

「なんで昔のことを教えてくれなかったんですかー! ビリーさんから聞きましたよ! 昔の範人は髪が長くて女の子みたいだったって! なんでそんなに素晴らしいこと教えてくれなかったんですかー!」

「いや……だって、恥ずかしい……」

「写真あったら後でください!」

「えぇー……」

 

 妖夢の頼みに、範人は嫌そうな顔をする。

 そんな2人のやり取りを見ていたリックは、

 

「ったく、こんなところでいちゃつくんじゃねーよ……」

 

 と、リックが海面に目を遣ると、

 

「おい! 鯨だぞ! しかも白鯨だ!」

 

 リックが叫ぶ。

 しかし、その声が聞こえている様子はなく、2人はなおも「見せてください! わたしのこと好きにしていいですから!」「だが断る!」といちゃついていた。

 

「こいつら……」

 

 2人の様子を見て、リックは満足気に呟いた。

 

 

 この日の夜、妖夢が別荘を漁った結果、範人の幼い頃の写真が大量に見つかってしまった。

 それらを見て目を輝かせる妖夢に、範人は深々と嘆息したのだった。




おまけ
『写真漁りの妖夢』

「写真ならきっと本棚に…………あ! ありましたー!」

【挿絵表示】

「うふふー、可愛いですね〜♪」
「ったく、こいつは……」
「でも、背景が変ですね」
「合成だからな。背景は」
「へぇ〜、どこで撮ったんですか?」
「そこの砂浜。海面に幽霊っぽいのが写ったから背景は合成した」
「…………」
「まぁ、後でよく見たらイルカだったけどな」
「驚かさないでくださいよぉ〜!(半泣き)」
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