東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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 更新ペースが落ちていますが、私の人生に関わる問題に立ち向かっているせいです。ご了承ください。
 今回、エロ&短め注意です。


第九十七話

 範人と妖夢がハワイに来て一週間が経とうがしていた頃。幻想郷に帰る前日の夕方のことだった。

 範人に一本の電話がかかってきた。

 

「はい、もしもし」

『おう、俺俺。俺だよ』

「オレオレ詐欺ですか? ウチに子供はまだいませんよ」

 

 範人は電話を切ろうとする。

 

「待て待て待て! 俺だよ! リックだよ!」

「……わかってる。冗談だ」

「お前の冗談は冗談に聞こえねぇんだよ……。ぶん殴るとか言う時なんて特に」

「アレは本気(マジ)だ」

「本気なのかよ⁉︎」

「で、用件はなんだ?」

「……ああ、実はだな」

 

 リックは(おもむ)ろに口を開いた。

 

『4年くらい前か? 俺がお前に良い女知っているか訊いたことあっただろ。その時、ウェスカーの名前が出てきたじゃねーか。俺にババア趣味は無えから、そん時は聞き流してたけどさ。まぁ、お前の話から、老いを感じさせない美しさってのがはっきり伝わってきたもんで、逃げ道として特徴とか一応覚えていたわけよ』

 

 ウェスカーとはカノン・ウェスカーのことである。範人が幼い頃は、ゴートレック生物研究所に勤めていた。

 

「ほう……で?」

『で? ってお前……。まぁ、いいや。最近、そのウェスカーの特徴に完全に当てはまる女が目撃されたんだよ』

「! ……どこでだ⁉︎」

『家族の手がかりが手に入るかもしれないって興奮するのはわかるが落ち着け。クールダウンだ。とりあえず、目撃されたのはロシア』

「もっと詳しい場所はわからないのか?」

『はっきりとわかってるわけじゃねぇが、モスクワの辺りだ。向こう(ロシア)の政府にいるダチから聞いた』

「……お前はなんだかんだ言って人脈広いよな。ありがとう」

『いいってことよ。俺も、今さっき偶然思い出しただけだからよ。じゃーな。俺はパターゴルフ行ってくる』

「ああ……」

 

 向こう側で電話が切られたことを確認し、範人は受話器を置いた。

 厳密に言えば、範人とカノンは家族ではない。カノンは研究所に勤めていただけであり、来客用の別館に寝泊まりしていたとしても、範人との間に血の繋がりなど全くないのだ。しかし、カノンは範人達兄弟を、まるで自分の子供のようにかわいがっていた。そのため、範人とカノンの間には、家族にも似た絆があったのだ。

 幼少時を思い出して懐かしむ範人だったが、やがて首を横に振った。

 

「会いに行くわけにはいかないな……」

 

 ——あいつが間違えるまでは、自由にしてやってくれ。アンブレラの最後の良心が消えるまでは。

 父親の言葉を思い出しながら、範人は溜息を吐く。

 と、そこへ妖夢がやってきた。

 

「範人範人! 砂浜に行きましょう!」

 

 そう言いながら、妖夢は範人のシャツの裾を引っ張る。

 

「引っ張るなよ。伸びるだろ」

「今は急いでください! 日が沈んじゃいます!」

「はいはい……」

 

 妖夢に手を引かれ、範人は夕方のビーチに向かう。

 この時、範人は既に選択を間違えていた。

 

 

 夕方のビーチは綺麗だった。

 沈もうとする太陽が空を(あか)く染め、オレンジと青を混ぜたような色になった海に、その姿を映し出していた。

 別荘に来るたびに見ていた景色のはずなのに、久しぶりに来たからだろう。今の範人には、その景色がとても神秘的なものに思えた。

 人間の欲望が渦巻く(けが)れた世界で、久しぶりに美しいものを見たような気がした。

 

「ねぇ、範人……」

 

 妖夢が範人の名を呼んで、シャツの袖を引っ張った。

 範人は振り返る。

 

 

チュ……

 

 

 頬に柔らかい感触。

 一瞬、範人には何が起きたのかわからなかった。

 理解不能の4文字に頭の中を埋め尽くされる。

 

「ふふ……」

 

 妖夢の笑い声が聞こえたことで、範人の頭の中の理解不能が剥がれ落ち、みるみるうちに顔が赤くなっていく。

 名前はわからないが、小中学生たちの間では肩を叩いて振り向かせ、頬を指でぷにっと突く遊びがよく流行る。

 範人が妖夢にされたのはそれに近いものである。しかし、衝撃のレベルがそれとは段違いだった。

 

「よ、よよよよ妖夢⁉︎ 何してくれちゃってんの⁉︎」

「え、キスですよ?」

「そ、それはそうだが……。不意打ちすぎるだろ……」

 

 範人は内心ドキドキしながら言った。

 

「やっぱり範人さんはウブですね〜。いじめたくなっちゃいます」

「どSか!」

「はい。範人限定で」

「ぬぅ……」

 

 あまりにも清々しい笑顔で言われ、範人は一瞬たじろぐ。

 しかし、すぐに覚悟を決め、

 

「お返しだ」

「えっ?」

 

 ズキュゥゥゥンと音がするようなキスだった。

 範人の唇と妖夢の唇が重なり、ディープではないものの熱いキスを交わす。

 どちらからだったのかはわからない。気がつけば、互いに舌を絡めあい、ディープなキスをしていた。

 どのくらい続いていたのかわからないディープキスが終わり、2人は唇を離す。

 日が沈みきっていないことから考えると、あまり長い時間ではなかったのだろう。

 しかし、その短い時間でも、2人の理性は溶けてしまっていた。

 

「範人……準備……できちゃいました……」

「はっ……⁉︎」

 

 範人の間抜けな声に答えるが如く、妖夢は片足を上げ、範人にスカートの中を見せつけた。

 

「え……⁉︎ ……えぇ⁉︎」

 

 履いてない。

 

「ごめんなさい。最初から……そのつもりでした……」

 

 妖夢は、範人に女の子特有のソレを見せつけながら言った。

 範人の視線は、最初こそ妖夢のソレに注がれていたが、範人はすぐに顔を赤くして目をそらした。

 

「恥ずかしがらないでくださいよぉ……。私まで恥ずかしくなるじゃないですかぁ……。そもそも、今まで何度もここに入れてきたじゃないですかぁ……」

 

 妖夢に泣きそうな顔で言われ、範人は難しい顔でビーチを見渡した。

 もちろん、このビーチはゴートレック家のプライベートビーチであり、他の人なんているはずがない。そもそも、沿岸から侵入するにはビーチの両側にある岩山の影響で非常に入り辛い。

 

「仕方ないなぁ……」

 

 範人は努めて仕方ない風を装いながら(・・・・・)、妖夢に近づいた。

 

「誰かに見られるかもしれないのに、こんなところでヤりたいなんて、妖夢は変態だな」

「そ、そんなことは——」

 

 言い終わらないうちに、範人の唇が妖夢の唇をふさいだ。さっきよりも熱く激しく、互いを求め合うキスをした。

 辺りに卑猥な水音が響くが、それを盗み聞きする者は誰一人としていない。ただ、波の音だけが、その卑猥な音を掻き消すように響いていた。

 唇を離せば、もうそこに自然以外の音はなく、人類の知恵に沈黙が訪れる。

 範人と妖夢は岩場まで移動し、妖夢はそこで改めて服をはだけさせ、岩壁に手をついて股を開いた。

 範人もまた、ジッパーを下ろし、股間についた(標準よりも小さな)兵器を露出させた。

 

「ふわぁ……範人の……もうこんなに……」

「うるせぇ。妖夢だってもうぐしょぐしょじゃないか」

「だって……範人のキスがエッチすぎるから……」

「それなら俺は妖夢がエロすぎるからだな」

 

 2人は控えめに笑う。

 と、範人は真剣な顔になり、

 

「妖夢」

「はい」

「愛してる。他の誰でもなく、この世で、妖夢だけを」

 

 この世で……この世界だけで。

 範人の言葉に嘘はないと、妖夢は思った。

 絶望を与えてくれた世界に愛せるものなどあるはずがないのだから。

 妖夢は範人に笑顔を向け、

 

「私もです。私も範人を愛しています。ですから、来て……ください。私のナカに、来て……」

 

 太陽が沈み、夜の闇が訪れる。

 何も見えない闇の中、聞こえていたのは波の音。夜目が利かない人間にとって恐ろしいはずの夜なのに、2人が恐れを抱かなかったのは、互いの温もりをすぐそばに感じていたからだろう。

 

 

 次の日の正午頃。

 範人と妖夢は幻想郷に帰った。

 たった1つだけ間違えた世界。その間違いが時の流れと共に大きな波になり、いずれ世界の脅威となることを、この時の範人はまだ知らない。




 これ大丈夫かなぁ……。
 とりあえず、次回から話が動きます。というか、次回からこの作品の後半戦みたいなものです。バトルシーン増えます。
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