東方戻界録 〜Return of progeny〜 作:四ツ兵衛
俺は剣をネックレスに変え、首にかけた。そして、周りを見回すとデューレスのハンマーが落ちているのを見つけたため、それを地面から引き抜きデューレスに投げた。
「お、おい範人……」
「なんだ?」
「その格好……どうしたんだ?」
「ああ〜。」
やっぱりそこを気にしてしまうのか。まぁ、こんなに寒いときに上半身ほぼ裸っていうのはどう考えてもおかしいだろう。俺自身は身体から炎を出せるから別に平気なんだけど……普通の温度感覚を持つ者たちからすれば異常なんだろうな。
「シャワー浴び終わってすぐに連行されたからな。白衣を着る暇がなかったんだ。」
「そりゃご苦労だぜ。」
「それよりも早く幽々子の所に行け。霊夢がもう戦い始めていると思う。」
「は⁉︎なんで霊夢が?」
魔理沙は非常に驚いた様子だ。そこで俺は気づいた。魔理沙も霊夢に協力を頼んだことに。だが、断られたため霊夢無しで異変解決に臨んだのだろう。まぁ、あの面倒なことが嫌いな巫女がすぐに言うことを聞くわけがないはずなのだが……
「クッ……、いいとこ取りは許さないぜ!」
「行かせません!」
「おっと!」
魔理沙は白玉楼に向けて走り始めたがそれを妖夢が止めようとする。俺は全身を第一に変異させ、炎の粒子となって妖夢を取り囲んだ。妖夢が身動きの取れない間に魔理沙たち一行が白玉楼に向かった。
「さて、問題はこっちだな。」
俺は全身を組み立ててから妖夢のほうを見ながら言う。さすがに妖夢も諦めたようで刀を鞘に収めておとなしくしている。
「範人、何故来たのですか?」
「春の陽気に誘われてね。」
俺は事実などとは全く異なることを言った。だが、それでいい。この場の空気は重すぎる。呼吸は十分できるが美味しくない。俺の冗談に空気が少し軽くなり、妖夢の表情も優しくなった。
「では、何故止めたのですか?」
「それは戦いが終わってから話すよ。まぁ、妖夢もわかっていると思うんだけど?」
「どういう意味ですかね?」
そう言って妖夢は刀を構えた。その様子はまるで、わかっていることを知らないと自分自身に思い込ませているようだった。俺もネックレスを剣に変異させるがまだ構えはしない。
「姉さん、いるんだろ?」
俺が呼びかけると背後の空間にスキマが開き、姉さんが現れた。その顔はどこか悲しげで俺を止めようとしているようだ。だが、今止まる気はない。止まってしまえば、失ってしまうものがあるからだ。
「死なない空間を作ってくれ。」
「範人……本気で戦うのね。」
「ああ、俺も悲しいが、そうしなきゃいけない。」
俺がそう答えた瞬間に周りの色が変わった。身体が特殊な空間に飲み込まれたのだ。目に見えるもの全てに紫がかって見えるのは少し違和感があるが、特に障害はない。むしろ、力が湧き上がってくる。
「この空間の中では死ぬことはない。致死量のダメージを受けたら無傷で外に放り出されるって感じだ。気を失ったらどうなるか知らないけどな。」
「なるほど、本気で戦えますね。」
「そういうことだ。」
妖夢の顔が少し笑顔になって、すぐに厳しい顔になった。きっと、俺と剣を交えたくてたまらないのだろう。俺は全力を出せるか厳しいところだが、妖夢に失礼のないようになるべく本気で行こう。
「では、始めましょうか。」
「そうだな……shall we dance !」
「魂魄 妖夢……参ります!」
俺たちは剣を構えて、同時に飛び出した。
霊夢は直感で勝てないと思った。
範人の言っていた巨大な桜の木。それを封印しようと近づいたら目の前に幽々子が立ちはだかった。しかも、様子がいつもと違う。
意識のないようなフラフラとして、それでも無駄のない動き、目は虚ろで光がない。そして、全身からどす黒いオーラを放ち、死の気配を撒き散らしていた。
「(あり得ない。これが幽々子なの?とてもそうは思えないわ。幽々子が放つオーラはこんなに鋭くて暗くなかったはず……もっとふんわりとしていて明るかった。いったい何が起きたの?)」
霊夢は幽々子を倒すことを頼まれていたがそれを実行するにはまだ早かった。異変の主犯が幽々子と言えど、春度を吸収しているのは目の前にある巨大な桜。戦うことが面倒な彼女は桜の封印を優先した。なにより、幽々子に勝てる気がしない。
「どきなさい!その桜を封印するわ!」
「……」
霊夢の言葉に幽々子の返事はなかった。それどころか、歪んだ笑みを浮かべた。霊夢の心に浮かんだものは恐怖だった。バカにされて笑われているとは思わなかった。だが、恐怖を感じてもなお、霊夢は前に進もうとする。
「どきなさい!それ以上邪魔をするなら、貴女を倒して進むわ!」
「……」
幽々子はさらに笑みを深くした。霊夢は弾幕としてお札を投げた。幽々子は蝶形の弾幕で迎撃し、お札を撃ち落とした。
地面に落ちたお札は朽ち果て崩れるように消えていく。それはまさしく死。幽々子の弾幕を受けたお札は強制的に死を迎えたのだ。
「うっ……」
「ふふふ……」
死んだお札を見て、幽々子は笑い声をもらした。その笑いは死を楽しんでいるようでとても不気味だ。いや、幽々子は死を楽しんでいる。今の幽々子には元の優しさなど微塵も感じられなかった。彼女が今求めているものは死と西行妖の復活だけだ。
「……死…ネ。」
「え⁉︎」
幽々子は低い声でそう言って、弾幕を放った。霊夢もお札で迎撃するが全てが死の弾幕。全てのお札が当たった瞬間に朽ち果て、霊夢がはった結界もお札が死んだことで解除されてしまった。さすがの霊夢もこれには苦い顔になる。
「なら!
霊符『夢想封印』」
霊夢の周りに光る球体が出現し、幽々子に向かって飛んでいく。狙いが多少外れてもそれらにはホーミング性能があるため幽々子が避けることはできない。
今まで、だいたいの相手にはこれで勝ってきた。その自信が霊夢に勝ちを確信させた。
「蝶符『バタフライフェザー』」
詠唱の後、幽々子の背中に光輝く蝶の羽が出現した。幽々子はその羽で自身の身体を覆った。夢想封印の弾幕が羽に突っ込み、巨大なエネルギーの衝突により爆発が起こる。
「クッ……」
霊夢は激しい爆風に吹き飛ばされそうになったがなんとか耐えてその場にとどまった。爆発で巻き起こった煙で幽々子の様子は見えないが、霊夢は勝ったと思い、油断していた。そのとき
「アハハハハ!」
煙の中から笑い声が聞こえ、同時に光る羽根のようなものが霊夢に向かって飛んできた。霊夢はそれらをなんとか避けたが、それらに当たった桜の木は枯れて倒れた。
煙が晴れたとき、そこにいたのは幽々子だった。光輝く蝶の羽はところどころ穴が開いているがほとんど無傷に近い状態だった。
「サスガネ。殺シテアゲルワ。」
幽々子が羽を振るわせると鱗粉のような光る弾幕が霊夢に襲いかかった。その密度の濃さに霊夢は驚きながらもなんとか避ける。だが、限界はすぐに訪れ、霊夢に弾幕が当たりそうになる。
「そんな……」
霊夢は迫り来る死に恐怖を感じ、目を瞑った。だが、光輝く死は瞼を閉じても視界を赤くした。
「チェンジ!」
そのとき、何者かの声が響き、霊夢の視界から光が消えた。痛みはなかった。
「まったく……結局、解決に来るんじゃないか。」
「え?」
霊夢は自分が死んだと思っていた。だが、違う。霊夢は生きていた。霊夢が目を開けるとそこには優たちがいた。優は半分呆れたような表情、魔理沙は拗ねたような表情、デューレスと咲夜は笑顔だった。
「あら、やっと来たのね。」
「やっと来たとはなんだ!私たちが解決するって言っただろ!」
「貴女たちだけでできたことかしら?」
「ゲッ⁉︎それは⁉︎」
「はいはい、そこまで。」
このままでは味方の中で戦いが起きそうだったため、優が2人を止める。デューレスと咲夜はそれを見て苦笑いする。
「では、私たちも参戦させていただきましょう。」
「そうね。よろしくね、霊夢。」
「言われなくてもわかっているわよ。」
真正面から頼まれたことに霊夢は思わず冷たい返事をしてしまう。こういうときに霊夢は素直になれない。だが、それを見た魔理沙は納得したように頷く。霊夢の親友(多分)の彼女は霊夢の心情がわかっているのだ。
「よし!みんな私に着いてこい!」
「なんであんたが仕切っているのよ!」
「2人とも、協力しようよ。」
「「優は黙って!」」
「ひどくない⁉︎」
優がorz体勢になり、それをデューレスと咲夜が必死になって慰める。そこへ痺れを切らした幽々子が弾幕を撃ってきた。だが、優の放つ負のオーラに阻まれ、消滅する。デューレスと咲夜は霊夢と魔理沙を無理矢理引き離した。
「内で言い争いしますしているときじゃないでしょう。今は協力して幽々子さんを倒すことにしてください。喧嘩なら後ですればいいですから。」
「……わかったわよ。」
「……仕方ないぜ。」
そこで優が復活して、全員の表情を見る。若干不満そうな者もいるが、それでもいいだろう。優は全員に指示を出す。
「絶対に死なないこと、それが絶対条件だ。みんな、異変を解決するぞ!」
「もちろんだぜ!」
「任せてください。」
「OKよ。」
「はいはい。」
優たちは一斉に弾幕を撃ち始めた。
今回は2連続、栗里さん。
「うーん……ついに開戦しちゃったね。」
そうですね。この戦いはヤバいことになりそうです。
「新スペルカードは?」
そうですね。書き忘れていたものがありましたし、今回も登場しましたね。幽々子の新スペルカードをフェザーと書いたのは故意です。誤字ではありません。
「そういえば、なんで最後のところで優が仕切っていたんだ?」
それは私にも謎です。気がつけばそうなっていました。でも、私はこれで満足しています。
「そうだ!珍しく次回予告してみようよ。」
マジですか。……まぁ、やってみましょう。
主を守るため、友を守るため、幻想を守るため、少女と少年は恋人にすら牙を剥く。
ぶつかり合う得物。
恋人同士。師匠と弟子。様々な関係を持つ2人が激突するとき、そこには閃光が煌めく。
激しい攻防の先に待つものは血に染まった己の得物か、倒れゆく我が身か。
次回、第五十三話
「剣士と狩人」
こんなところでどうですかね?
メッセージでリクエストがあれば、これから始めていこうと思います。
『ではまた、次回お会いしましょう。』