東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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妖夢が積極的になったなぁ、と思う。
今回はタイトルが思いつきませんでした。何か案があったら、アイディアをください。


第六十一話

地底を目指して進み続ける俺と妖夢。この穴は本当に深くて、未だに底が見えない。向こうの世界でも洞窟に潜ったことはあったが、ここは向こうとは段違いの深さだ。これはもう地底の岩盤に届いていてもおかしくないのか?というほどである。

 

「大分深いな。」

 

「そうですね。」

 

暗いせいか、落ちていっているせいか、自然と気分も暗くなり、落ち込んでいく。会話もうまくつながらず、互いに一言で終わってしまうことがほとんどだ。

ところで、さっきから妖怪が落ちてくるんだが、あれは何故だろうか?最近は紐無しバンジーとかタマヒュンダイブとかが流行っているのだろうか?

 

ヒュー

「ん?」

 

何かものが落ちてくる音が聞こえる。それもさっきから落ちてくる妖怪たちのような歪な形とは違い、円形のものが落ちてくる音だ。しかも、それが頭上から聞こえてくる。すかさず、片手を上に向ける。

 

バシッ!

「危な⁉︎」

 

「どうしたんですか?」

 

「いや、上から釣瓶が……」

 

とんでもないスピードで釣瓶が落ちてきた。しかも、中に何か入っているようでかなり重い。頭に当たっていれば大怪我は確実だろうし、キャッチしたとしても下手をすれば腕が折れていたはずだ。咄嗟に腕を変異させて助かった。

それはしてもこんなに重いとは、中には何が入っているのだろうか?恐る恐る覗いてみる。

 

「石と…子供……だと⁉︎」

 

「え⁉︎……本当ですね。」

 

「キスメ子供じゃないもん……」ボソッ

 

中に入っていたのは大量の石と緑髪ツインテールの女の子だった。そして、その女の子はボソッとつぶやく。こんなところに入っているとは……まさに箱入り幼女だ。

このままでは重たいので石を取り出して落とす。幼女は現在、俺の肩の上だ。石を全て落とし、幼女を釣瓶の中に戻そうとするが、肩から下りてくれない。仕方がないのでそのまま名前を問う。

 

「ところで君は誰だい?」

 

「キスメ……」

 

「そうか、キスメっていうのか。俺は旅行 範人だ。よろしくな。」

 

「私は魂魄 妖夢です。よろしく。」

 

俺が片手を上げるとキスメはその手を掴んで握手した。よろしくということなのだろう。妖夢の方に近づくと妖夢とも握手した。

 

「あのー、そろそろ釣瓶の中に戻ってくれないかな?」

 

俺の頼みごとに対して、首を勢いよく横に振るキスメ。完全に気に入られてしまったようだ。困った顔で妖夢の方を向くと、彼女は笑顔で頷いた。いいですよ、ということらしい。そこは反対の意を示してもらいたかったのだが、仕方がないため、俺は片手に釣瓶を持ち、キスメを肩車した状態で地底に下りることになった。

 

「こうして見ると私たち3人で親子みたいですね。」

 

「ん〜?まぁ、髪の色が違うけどそう見えないこともないな。」

 

「範人がお父さんで妖夢がお母さん…良い……」

 

朝にあんなことがあったため、親子という言葉に敏感になってしまうが、もう面倒なので割り切った。

妖夢の見た目年齢が噛み合わないが、見た目が若い親だと考えれば確かにそう見えなくもないかもしれない。

 

今朝、久しぶりに自分の姿を鏡でじっくりと見たが、去年に比べて背が高くなっていることに気づいた。今の身長はおそらく、182cmくらいだろう。背は伸びたというのに、顔付きはあまり変わっていなかった。まぁ、そろそろ成長は止まるだろう。生物兵器だから老いることはないだろうし。

 

気がつけば、かなり下りてきていたらしい。暗闇の中にうっすらと地面が見える。そして、そこには地面にぶつかって、あまりの衝撃に破裂したと思われる大量の妖怪の死体がバラバラになって転がっていた。頭を石か何かで潰されたような死体もあったが、原因はわからない。

 

「お二人さん、子供を誘拐かい?」

 

唐突にかけられる声。声のした方を振り向くと、壁につかまっている金髪の少女がいた。まぁ、ここは地底なのだからまず人間ではないだろう。壁につかまっているところを見ると蜘蛛の妖怪だろうか?赤い全身タイツのヒーローを思い出させてくれる。

 

「これは誘拐じゃなくてな、キスメが肩から下りてくれないんだ。」

 

「範人の肩の上…良い……」

 

「……らしいです。」

 

「なるほど、そういうことかい。それなら誘拐じゃないね。」

 

勝手に誘拐と言われたこちらの身になってもらいたい。俺はただ単に地底を目指していただけで、危ないからとキャッチした釣瓶の中にいたキスメが勝手に肩の上に乗っているだけである。そう、俺は悪くないのだ……多分。

 

「ところで人間がここに来るなんて珍しいねぇ。何が目的だい?」

 

「蜘蛛島というヒトに治療してもらったみたいだから、お礼を言いに来たんだ。どこにいるか知らないか?」

 

「ほぉ、なるほどねぇ。平の言っていた生物兵器ってのはあんたのことだったのかい。」

 

この少女、その蜘蛛島という者と面識があるらしい。俺の話が出たということは、俺が気絶している間、もしくはそれ以後に会ったということだ。これは蜘蛛島という者に早く会えるかもしれない。

 

「知っているのか?」

 

「まぁ、場所は知っていないね。でも、あたしはそいつと昼食を食べる予定だから、待ち合わせしてんだよ。だからさ、多少時間はかかるけど会いたいなら、あたしについておいで。」

 

「わかった。」

 

少女は地面に下りて、歩き始める。俺と妖夢も少女の後を追って歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

横に続く長い洞窟。さっきは垂直の縦穴だったというのに今度は横か、と呆れてくる。しかし、道としては悪くないと思う。縦穴はともかく、横穴は通る側としてはかなり気が楽だ。決して最短距離ではないが、縦穴の紐無しバンジーに比べたら、重量に対して垂直な横穴の方がよっぽど良い。

 

「申し遅れたね。あたしは黒谷 ヤマメ。壁にくっついていた通り、土蜘蛛の妖怪さ。」

 

「俺は旅行 範人だ。よろしく。」

 

「私は魂魄 妖夢です。よろしくお願いします。」

 

「じゃあ、自己紹介も終わったみたいだし、平について話そうかね。

あたしと平は簡単に言っちまうと夫婦みたいなもんなんだ。まだ、結婚はしていないけどね。そんなわけであいつとはこの地底で同棲しているんだ。だから、範人について少し話してくれたってわけさ。

あいつはこの地底で医者をやっているんだけど、これが評判でねぇ。今日は休みのはずだったんだが、地霊殿のペットたちの定期健診が入っちまってね。今は残念ながら、地霊殿に行っちまっているんだ。だから、この後待ち合わせをしているのさ。」

 

「なるほどな。」

 

俺はヤマメの話に頷く。大体のことはわかった。要するにヤマメと平は同棲している恋人同士で、医者の平は現在仕事で出かけているということだ。医者である平の貴重な休みを俺のせいで無駄にしてしまうと考えるとかなり申し訳ない気持ちになる。

 

「平さんとの間に子供はいないんですか?」

 

「ふおお⁉︎」

 

妖夢が子供の話題を訊ねた。事情を知らない者が子供について言うことにはまだ大丈夫なのだが、妖夢が言うと反応してしまう。朝にあったことは既に割り切ったのだが、昨日、妖忌に言われたことがまだ残っている。

 

「あたしも欲しいんだけど、残念ながらいないんだよねぇ。妖怪ってのはちょっと悲しい身体でさ、なかなか妊娠しないんだよ。今までに数え切れないくらいヤったんだけどねぇ……200年以上の付き合いなのにさ。」

 

「それはなかなか辛いですね。

……範人?」

 

「は、はい?」

 

妖夢に声をかけられてしまった。これは終わったか?などと考えつつ、恐る恐る返事をして妖夢の方を見る。

 

「ヤマメさんも頑張っているんですよ。私たちも子作りを頑張ってみましょうよ。」

 

「(やっぱりかー!)いや、だから年齢が……ね?」

 

「中に出さなければ、いいじゃないですかー。家に帰ったらヤりましょうよー。」

 

「ダメだって。」

 

「ヤりましょうよー。」

 

妖忌の言葉も朝の出来事も、もう割り切ることは無理そうだ。

地底の都に向かいながらの俺と妖夢の言葉のキャッチボールはしばらく続くことになった。

 

「盛んだね〜。」

 

「範人×妖夢……すごく良い…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

洞窟を抜けた先には川が流れており、橋が架かっていた。おそらく、川は地下水脈の一部だろう。その川の対岸には都が見える。都自体も大きく、かなり発展しているようである。

俺たちが橋の上まで進むと、貴公子のような格好をした少女に止められた。

 

「恋人がいるなんて妬ましいわね。」

 

「それなら、あんたも彼氏作ればいいじゃないか、パルスィ?」

 

「貴女には平がいるからそんなこと言えるのよ。妬ましい。今日もここで待ち合わせているんでしょう?妬ましいわ。」

 

「そうだけどねぇ……

ここにはあんたがいるから待っている間も話ができて楽しいのさ。」

 

さっきから妬ましいとばかり言っている少女。しかし、ヤマメの言葉に黙った。不機嫌そうにしながらも口元がにやけている。ヤマメの言葉が嬉しいようだ。

 

「もう……その明るさが妬ましいわ。」

 

「おっと、範人たちのことを忘れるところだったよ。

こいつは水橋 パルスィ。妬ましい妬ましい言っているけど、本当は良いやつだから気にしないでやってくれ。」

 

「俺は旅行 範人だ。よろしく。」

 

「魂魄 妖夢です。」

 

「恋人同士でお出かけかしら?妬ましいけど、よろしく。

……ああ、妬ましい。」

 

未だに妬ましいと言っているパルスィ。まぁ、気にしないでくれと言われたのだから気にする必要はないだろう。おそらく、妖怪の種類としての特性が原因のはずだ。何かにつけて、妬ましいと言うのはそのくらいの理由しか思い浮かばない。

 

「そろそろ平が来る頃だね。」

 

そう言って、ヤマメは家々の屋根を眺める。それにつられて俺も屋根の上を見ると、人型の何かが走っているのが見えた。それは軽快な動きで屋根から屋根へ飛び移り、こちらへと近づいてくる。

 

「来たみたいだね。」

 

ヤマメがそう呟いた瞬間、それは屋根から大きく跳躍した。そのまま、こちらが立っている橋の上に着地して、片膝をついて衝撃を吸収する。ゆっくりと立ち上がる青年の格好はまさしく忍者だった。

 

「遅かったか?」

 

「大丈夫だよ。ついさっき来たところさ。」

 

「それなら良かった。」

 

忍者みたいな青年はホッと息を吐き、こちらを見回す。

髪の色が青く、瞳の色は紫というなんとも人間離れした色だ。額にはゴーグルを着けている。

おそらく、彼が俺を治療してくれた蜘蛛島だろう。

 

「ほう、生物兵器も来たのか。

君を治療した蜘蛛島 平だ。よろしく。」

 

「旅行 範人だ。こちらこそよろしく。そして、ありがとう。」

 

「魂魄 妖夢です。範人を助けてくださり、ありがとうございました。」

 

「いいんだ。僕は医者だから、患者がいれば、助けて当然だ。

ところで、これからヤマメと昼食を食べるつもりだったんだが、よかったら一緒にどうかな?」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて。」

 

「よし。それなら、行こうか。」

 

平はヤマメと並んで歩き出した。俺たちは2人についていく。キスメとパルスィも何故か一緒だが、それもいいだろう。食事はみんなで食べたほうが美味い。




中途半端なところで終わってしまった気がする……大丈夫かな?

やっと、平と範人を会わせることができました。長かった……でも、冷仁の方がもっと長い。冷仁は次章かな?

現在、範人と冷仁が並んでいる絵を描いています。ラフができて、あとは下書きと色塗りです。質問なんですが、冷仁が幻想郷に来る前に挿絵を出してしまっていいでしょうか?

さて、次回辺りで平に会う話は終わりだと思います。そして、その次からはクロスを行おうと思っています。活動報告で募集しているので気になる方は見ていってください。募集締め切りは早いですが、9日にさせていただきます。

ではまた、次回お会いしましょう。
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