東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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タイトル…タイトルが思いつかない。
クロスはまだ終わらないです。今回入れてあと3話かな?


第六十七話

エレイと絆が弾幕で粘菌の気を引いている間に、範人が先陣を切って飛び出す。その彼女にはケモミミと尻尾が生えていた。その後ろにC-ナパドゥ・アーマーを発動させたパッチが続く。そのアーマーには彼の血がついており、化学反応により炎が発生していた。

範人は電気を纏った拳を、パッチは炎を纏った拳を粘菌に叩きつける。

 

「ア"ァァァーッ⁉︎」

 

唐突に響く悲鳴。もちろん、粘菌に発声器官などあるはずがないため、この悲鳴は粘菌のものではない。しかし、粘菌も身体の一部を苦しげに拗らせている。

悲鳴の主は殴った側の範人だった。彼女の殴った方の片腕が無くなっていた。消えた腕の傷口はヤスリで削り取られたようになっており、血が滲み出していた。

パッチはギョッとした表情で範人を見る。不思議なことにパッチも粘菌を殴ったはずだったが、まだ腕が存在していた。

 

「範人さん⁉︎」

 

「腕が……ッ⁉︎」

 

生物兵器である彼女の失った腕はすぐに再生する。いつもどおりに腕はすぐ再生した。

範人は粘菌の体内に失われた腕を探す。殴ったときに腕を失ったとすれば、それは全身が口である粘菌に食われたとしか考えられないためだ。案の上、腕は粘菌を殴ったすぐ近くの位置で吸収されていた。

 

「ウオォォー!先輩の仇ー!『真刀 氷夜』、『真刀 白乱』!」

 

「範人に何てことしてくれたんですかー!このエロ同人万能スライムがー!」

 

新と妖夢が刀を構えて、粘菌に突撃する。妖夢の言葉からはどこか狂気さえ感じられ、範人は身震いした。

粘菌は2人が突進してきても何もしない。ただ、食を求めて地面を這う。

2人の刀が粘菌を切った。2人の手に伝わった感触はまるで水を切ったような抵抗のないものだった。さらに、あまりの大きさに切断とまではいかず、パックリと裂けただけですぐに傷がふさがる。

しかし、範人はその中で素晴らしいものを見つけた。腕一本くれてやった分の価値は充分にあるものだ。

 

「パッチ…確か、ウィルスはGだったわよね?」

 

「え……はい、そうですけど……」

 

範人の問いにパッチは驚きながら答える。その答えを聞いた彼女はニヤリと不敵に笑い「BINGO……」とつぶやいた。

粘菌は新と妖夢に向けて身体を伸ばす。遠くまで移動して獲物を食らうより、近くにいるものを食らったほうが楽だと考えた。そして、何より自分を攻撃した者が許せなかった。

妖夢と新は上空へ逃げた。

粘菌は本来、地面や壁を這って移動する生き物。木よりも高い位置まで逃げれば捕まることはない、2人はそう考えた。しかし、ウィルスに感染し、強化された生き物にそんな常識は通用しなかった。

粘菌の身体の形が変化し、まるで銃砲のようなものが背中(?)に形成される。そのコンマ数秒後、そこからショットガンのように大量の何かが発射された。発射された何かは粒状になり、新と妖夢へ真っ直ぐ飛んでいく。不意を突かれた2人に避ける余裕はなく、直撃はなかったもののほとんどがかすり、皮膚の表面を抉った。上空へ飛ばされた何かは粘菌の身体に落ち、粘菌に吸収される。

範人は目を見開いて驚いた。彼女は発射された何かが粒状になった瞬間から能力を使用し、操ろうとしていた。しかし、それらは操られることなく、2人を襲ったのだ。そのとき、彼女は思い出した。今、自分たちが戦っている生物は分裂することができることを。つまり、発射されて粒状になった何かはそれぞれが一つ一つの生命体だったのだ。

彼女は一つの生物がバラバラになった粒や粒子までなら操ることができる。しかし、それぞれの粒が一つ一つの生命体だった場合は別だ。宇宙から見れば、ほとんどの生命体はちっぽけな粒子である。範人は宇宙としての視点で生命体を見ているが、それぞれの生命体を粒子として操れないように、粒子状になっていたとしてもそれぞれが一つ一つの生命体である場合は操れないのである。

新と妖夢はダメージにより落下する。範人は妖夢を、パッチは新を空中でキャッチして、粘菌から距離を取る。粘菌は逃さんと言うように身体を伸ばして、範人とパッチを追いかける。

 

「やめろぉー!

水難『水に濡れ雨に打たれよ』!」

 

「やらせはしない!

暴君『タイラントラッシュ』!」

 

「危ないです⁉︎

絆『マスタースパーク』!」

 

エレイからは巨大な水の弾幕、デューレスからは弾幕を纏うことでより強力になった拳の弾幕のラッシュ、絆からは熱と光の魔法レーザーが放たれた。水の弾幕は粘菌の上で弾けて雨のように弾幕を降らせる。

範人は距離を取りながら、弾幕に対する粘菌の反応、当たった場所の傷を確認していた。先ほど、粘菌を殴ったときに彼女の片腕は吸収されてしまった。相手にダメージを与えたとしても、これでは自分の負うダメージが大きいため意味がない。さらに、彼女は自分の打撃からのダメージが粘菌にほとんど入っていないと見た。つまり、普通の攻撃や電撃ではダメージなどほとんど無に等しいのだ。だから、彼女は相手の弱点を探すことにしたのである。

最も効果があったものは絆のマスタースパークだった。それ以外は当たったときに動きを止めたが、特に気にしている素振りは見せなかった。それどころか、その状況を楽しんでいるようにすら見えた。しかし、マスタースパークだけは圧倒的に反応が異なった。当たった瞬間に身を捩って苦しみ、傷の治りが遅かった。

これから範人は結論を導き出した。

 

「……やつの弱点がわかったわ。これは絶対に効く!」

 

「まさか……わかったんですか?」

 

「ええ、わかったわ。ついでに倒す方法も思いついた。

ひとまず、後退するわよ。弱点は離れてから話すわ。」

 

「わかりました。」

 

範人とパッチはそれぞれ妖夢と新を抱き抱えて粘菌から充分に距離を取った。粘菌は追いかけるのを諦めて、湖岸に沿って紅魔館に向かい始める。もしかしたら、粘菌には妖精たちが見えているのかもしれない。その場の全員はそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

範人たちは紅魔館の門前まで移動した。粘菌の移動ルートを考えると紅魔館が最終防衛ラインだった。吸血鬼の感染者などが出来上がったら、幻想郷壊滅待った無しである。

範人は妖夢と新を救急スプレーで治療する。幸いなことにウィルスには感染していなかった。

救急スプレーは研究所に備蓄されており、範人も数本常備しているが、あまり使うことはない。それは範人の身体が生物兵器であるために化け物じみた耐久力と再生力を持っているからである。しかし、今回攻撃を受けた者は半人半吸血鬼と半人半霊だ。普通の人間より身体が丈夫であることは間違いないのだが、ダメージの回復には時間がそれなりに必要だ。今は1秒の時間も惜しい。だから範人は惜しむことなく救急スプレーを使用した。

救急スプレーの効力により、2人の傷はみるみるうちにふさがり、もとの無傷の状態に戻った。2人が復活したところでパッチが口を開く。

 

「範人さん、倒す方法を教えてください。」

 

「わかったわ。でも、先に弱点を話すわね。

知っての通り、あれは粘菌っていう生物よ。粘菌には好きな環境があって、それが多湿な環境なの。つまり、その逆の乾燥が苦手で、身体自体も乾燥に弱いの。だから、高温で乾燥させちゃう火や強い光が弱点よ。」

 

「なら、炎で燃やし尽くしてしまえば「ダメよ。」…え⁉︎」

 

「さっき、絆のマスタースパークが当たったときに効いてはいたんだけど…傷の治りが遅くなるだけだったのよね。多分、完全に破壊しないと身体を再構築してしまうわ。

だから、あの生物の核を見つけた。G生物は身体に核となる眼球ができるのだけど、あいつはそれが身体の中に生成されていた。狙うのは難しいけど、それを攻撃するしかないわね。核さえ潰せば再生はできないわ。」

 

「でも、さっき範人さんが殴ったときに腕を奪われましたよ。身体の中にある弱点を狙うなんて身体を吸収されてしまうんじゃないですか?」

 

「大丈夫。それはさっきパッチが解決してくれたわ。

粘菌の弱点の火なんだけど、吸収できなくする効果もあるみたいなの。さっき、パッチが粘菌を殴ったとき、腕は奪われなかった。そのとき、パッチの腕は炎を纏っていた。

おそらくだけど、火傷したり、乾燥したりしている場所では吸収できない。原因は表面の細胞が死んで膜を作るからだと思うわ。」

 

範人の説明に全員が納得して頷く。しかし、範人の表情は優れなかった。

現在、彼女の頭脳は冴え渡っている。これは女体化により、考え方が少し大人になったからだろう。しかし、女体化によって考え方が変わったと言っても、範人は同時に火力を失ってしまった。範人は粘菌を倒すための火力が足りないと思ったのだ。この全員が集まってでも、だ。範人の心からは火が消えかけていた。

範人の表情に気づいたエレイが話しかける。

 

「そんな顔してどうしたんだ?まだ不安か?」

 

「私がパワーダウンしているから……これじゃ、勝てるかどうか……」

 

「おいおい、俺たちの力があの程度だと思ってんのか?

あんなの軽すぎるな。まだまだいけるぜ。」

 

「俺もまだまだいけますよ。」

 

「僕にも奥の手がありますから!」

 

「諦めないでください。」

 

訪問者たちの言葉に範人は勇気づけられ、勝てるような気さえしてきた。

範人の心に再び強い火が灯る。

 

「ありがとう。やってみようと思えてきたわ。

じゃあ、火力…それも熱に自信がある人は手を挙げて。」

 

謙遜しているのか、範人の言葉に手を挙げたのはパッチだけだった。範人はそれを見て頷く。

範人は他に強い者がいるかもしれないとは考えず、パッチを選ぶことにした。こういうときに手を挙げるのはバカか、実力者だけである。彼女は先ほどの戦いから、パッチが実力者であることを自身の中で確定させていた。たとえ、パッチが手を挙げたことが自意識過剰から来るものであっても、彼にはそれに見合った力があると思った。

 

「じゃあ、よろしくね…パッチ。」

 

「はい、任せてください。

でも、準備に少し時間がかかるので、その間は皆さんで食い止めてください。こういう大技にはリスクが付き物で……」

 

『もちろん(です)!』

 

全員共、闘争心は燃え尽きておらず、返事は力強いものだった。

それぞれがそれぞれを強者として認め合っている。だから、全員は全員を信じることができた。信じているからこそ、返事をはっきりとすることができたのだ。

唐突に、デューレスが妖夢に指示を出す。

 

「妖夢さんは美鈴と一緒に妖精さんたちの避難をお願いします。」

 

「……わかりました。」

 

妖夢の一瞬、ムッとした表情になるが、しぶしぶといった様子で指示を受け入れて、紅魔館の敷地内へ誘導を始めた。

彼女自身、獄炎剣というなんとも炎らしい剣技を持っているのだが、それではさすがに力が足りないと判断したのか。あるいは、男(元男)たちの女性にこんなに危険な戦いに参加してもらいたくないという思いを感じとったのかもしれない。

妖夢が妖精たちと共に門の内側へ姿を消した後、範人が口を開いた。

 

「さて、妖夢が行ったわね。もう始めちゃっていいかしら?」

 

「いいんじゃないか?早く片付けたほうが幻想郷のためにもなるだろうしな。」

 

「もうすぐそこですからね。」

 

男たちは立ち上がり、左を向く。30m先には既に粘菌が迫ってきていた。




小話 コ〜ン

「範人、あの変異形態…狐みたいで可愛かったですね。」

「あら、そう?ありがとうね、妖夢。」

「だから、変異してから狐っぽく『コ〜ン』って、やってください。」

「え⁉︎嫌よ、恥ずかしい。」

「そうですか?じゃあ、今日の夜はこの指で女としての初めてを奪ってあげますね。」

「それ絶対に痛いやつじゃない⁉︎」

「さぁ、どうしますか?」

「むぅ、わかったわよ。仕方ない……
コ〜ン……」

【挿絵表示】


「無表情ですね。」

「仕方ないじゃない!恥ずかしいんだもん!」

「じゃあ、もう一回。」

「うぅ……
コ〜ン……」

「ふふふ、ありがとうございます。(脳内メモリーにしっかりと保存させていただきました。)」













束の間の休息的な感じで小話を入れさせていただきました。休息になりましたか?

?「可愛い♪」

さて、今回はバイオハザードあるあるの
『主人公が逃走する』が発動しました。まぁ、だいたいの場合は逃走しているうちに反撃して倒してしまうんですがね。追跡者が良い例です。
今回のやつはさすがにそのまま倒すのは無理がありました。2戦目は次回に持ち越しです。

ではまた、次回お会いしましょう。
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