東方戻界録 〜Return of progeny〜 作:四ツ兵衛
〈この…バカ野郎!〉
〔テスト勉強は大丈夫か?〕
わかりきったことを言うんじゃない。
大丈夫だ問題ない(漂うフラグ臭)
さて、またまたコラボ参加者様に謝らなければならないことが……
〈どうした?参加者様のオリキャラが活かせないのはいつものことだろ?〉
……←図星
〔本体の人格が意識不明になったから、俺が代わりに謝ります。
誠に申し訳ございません!〕
〈ほらほら〜、早く本編行こうぜ〉
〔お前も少しは空気読めや……
では、本編をどうぞ!〕
(紫殿はいったい何をしておられるのだ!)
天魔の部屋で天魔は1人焦っていた。
人間?の軍団は思った以上に進行が速く、天狗の里に踏み入るのに最早1分はかからないだろう。里の境界線上で見張りをしている天狗の視界から判断して、目測で100mもない。
一応の措置で白狼天狗たちを配置しておいたが、やはり兵の数では圧倒的に劣る。向こうは5000、こちらは100。いくら質で勝る妖怪と言えども、圧倒的な数の差だった。
天狗たちの額には汗が浮かんでいる。全員が全員、不安でしょうがないのだ。そして、その全員の不安を和らげるために心に直接エールを送る天魔だったが、その彼の心には100名分の不安がのしかかっていた。結局、天魔自身も不安で仕方ない。
そんなとき、天狗たちの目の前にスキマが開き、戦士たちが現れた。余所者が自分たち天狗に協力することに不安を覚える天狗もいたが、今は状況が状況。天狗たちは戦士たちの登場に歓喜し、天魔も安堵の息を漏らした。
「まったく……焦らせてくれる人だ。いつもスリル満点だよ……」
そう呟き、天魔は戦線に立つ天狗たちとの感覚共有を切った。
▼
戦士の登場は戦闘開始の合図だったのか?
天狗たちは武器を構えて駆け出し、侵略者たちに攻撃を開始する。それは侵略者たちも同じだったようでそれぞれが思い思いの武器を手に天狗たちと衝突する。
長い歴史を持つ妖怪の山でも数回程しかない戦の幕開けである。
「調子に乗るなよ、人間!」
1人の白狼天狗が大刀を振り下ろす。刀自体の重さに加えて天狗の筋力を乗せた重い一撃が1人の侵略者の命を奪う……はずだった。
「ぬう……ぐぅ!」
人間の力では到底耐えきれないはずのその一撃を侵略者は片手に持った鎌一本で受け止めた。ほぼ同時に、白狼天狗の腹部に入る鈍い痛み。彼の腹には侵略者の拳がめり込んでいた。
人間とは到底思えない強すぎる力。気がつけば、彼は宙に居た。侵略者は全くの無表情だったその顔にある一つの表情を浮かべる。その表情は愉悦。
侵略者は白狼天狗の足を掴み、回転しながら投げ飛ばした。彼が飛んでいく先には小さな崖。小さいと言っても崖は崖。それなりの高さがあるし、棘のような岩が凶悪な顔つきで獲物を待ち構えている。
侵略者の持つ予想外の怪力に驚いた彼は妖力のコントロールに集中できず、飛ぶことなど到底できない状態になってしまう。このままでは確実に崖に落ちて真っ逆さま。死んでしまう。
しかし、徐々に近づいていた死は壁として立ち塞がった範人によって受け止められた。彼の表情は怒りに満ちている。この数の人間が改造されたことが許せないのだ。身を斬るような殺気が辺りを包み込んで離れない。
ガナードの意識はその強すぎる殺気を放つ青年たちの方に向いた。
「応援部隊、戦闘開始!天狗の里を防衛する!」
範人の一声と同時に戦士たちは戦闘を開始した。
▼
ここは幻想郷。そのはずなのだが、飛び交うものは弾幕ではなく実弾。威力もスピードも弾幕に比べて遥かに上。殺傷能力など比べ物にならない。
銃の扱いがわかる者は狙いを定めて、わからない者たちは闇雲に銃を使用した。中には弾幕や剣で特攻する者もいる。銃の扱いは、照準を合わせ、引き金を引く、照準を合わせ、引き金を引く……たったそれだけの繰り返し。
外れる弾は少なくないが、紫がつけたであろうシステム…スキマシステムとでも言おうか。スキマシステムによって、外れた弾はスキマの中へと外れた瞬間に回収されていく。
(ガナードと言えばいいのか、それともマジニと言えばいいのか?)
侵略者たちを撃ち倒していく中で範人はどうでもいいようなことを考えていた。
ガナードとマジニに大した違いはない。それは範人にもわかっていた。しかし、流石にしっかりとした名称で呼ばないことにはかわいそうである。
見たところ、侵略者たちはガナードともマジニとも少しばかり異なる。より筋肉質で、タフさも半端ではない。事実、敵は1人も倒れていない。撃たれても斬られても、全身から血を流しながら立ち向かってくる。その様子は正にアンデッド。おまけに知的で、ゾンビなどと言うチャチなものでは断じてない。
「クソ!きりがないわ!」
「うう……手が痛くなってきました。反動が強すぎます。」
「……コレもう殴った方が速くないか?」
「アハハハハ!撃ち放題よ!」
(どれだけ改良されたんだよ⁉︎)
数を減らすことのない敵に狂ったように笑う白が居れば、発砲の反動に弱音を吐く絆も居る。範人も驚きのあまり、心の中で驚きの声を出すことしかできなかった。
結果的に範人は敵の名前を決めることは出来ず、寄生虫の名前を「プラーガ タイプD」とだけ名付けた。1、2、3と来て、そのまま4は彼にとって面白くなかった。
しばらくして、ついに最強のチート男が動き始める。見てられないと言うことだろう。
零の手に片手剣が1本ずつ握られる。直後、侵略者たちに突撃。手頃な1人を弾き飛ばすと、その心臓に剣を突き刺し、その状態から更に首を斬り飛ばした。
心臓に続く傷口から触手が伸び始めるが、即座に停止。しかし、首から伸び始めた触手は全く動きを止める気配がない。
そこで全員が気づいた。侵略者たちは1人につき、脊椎と心臓に寄生虫を1匹ずつ保有しているのだ。更に、寄生虫たちは互いを回復できるらしく、数十秒の後に心臓の寄生虫も活動を再開した。
「弱点は示してやったぞ。後はお前たちで戦え!
あ、1000人貰ってくからな。100人斬りじゃ生温いから、10倍の1000人斬りをやらせてもらうぜ。」
「何て言うか…すごい理由で育児放棄されている感じだな……」
「誰がパパだ!」
(んなこた誰も言ってねーよ!)
範人の一言に対する零の返しにその場の全員が心の中で全力のツッコミを入れる。零本人の言葉で折角のかっこいいシーンが台無しである。実際、零の年齢は幻想郷を超えるのだが、誰もパパなどとは思っていない。思っているとすれば、若くてもお祖父さん以上だろう。
零は多少拗ねながら、侵略者たちの中に1人突っ込んで行く。そんな彼を見て「あいつだけでコレ解決できるのでは?」と思うその場の全員であったが、活躍を全て奪われるのはどうも面白くない。おまけに弱点まで教えてもらったのだから、戦わないわけにはいかない。
「まぁ、いいか。愛するパパに「誰がパパだ!」弱点も教えてもらったし、別行動だ!俺はおそらく敵方のリーダーがいると思われる正面奥に向かう。他の全員はペアを組むなり、単独行動するなりして他の化け物たちをどうにかしてくれ!」
範人は零のツッコミを完全に無視して指示を出し、返事も聞かずに真正面に向けて走り出した。どこかの吸血鬼が受けるような無視っぷりに零はしばらく動けなくなる。そんな異世界の幻想郷創立者を他所に、メンバーはそれぞれペアを組み、元の場所を離れていく。動けなくなっていた零は物の見事に投げ飛ばされ、メンバーが居た位置に逆戻り。
気がつけば、そこに残っていたのはアンと零だけになっていた。取り残されたことに気づいたアンの表情が強張る。
実を言うと、この2人は少し前に殺し合いをしたばかりなのだ。互いが互いに見せつけた強烈なイメージは2人の間に壁を造り出していた。
「ここは…最後の手段に決定。逃げるのだ!コソコソ……」
「おいコラ。バッチリ聞こえているぞ」
「ヒイッ!ピタッ」
「自分で効果音つけてどうする……」
立ち止まったアンの首がブリキのおもちゃのようにゆっくりと後ろを振り向く。その首からはギリギリと音が聞こえてきそうな感じがする。 恐る恐る振り向いた彼女だったが、後ろに居た零は決して嫌そうな表情はしていない。
「立ち止まってどうするつもりだ?
行くぞ!」
「ちょ、ちょっと待つのだ〜」
零は速度を全く落とすことなく斬り込んでいく。アンはその後ろをハンドガンを乱射しながらついていくのであった。
▼
何故だろうか?敵が押してきている。たったあれだけの数の集団に私たちのプラーガ軍が負けている。
——ちくしょう、あのザコどもが……。
私は奥歯をギリギリと嚙みしめる。ついさっきまでは良き同士だと言っていたのに今となってはザコ呼ばわりである。しかも、私はそのことに気づいていない。
遠くに見える同士たちは寄生虫を潰され、命の灯火が消えていく。どうやら、敵が
「隊長…貴方ならば、こんな時どうしますか?」
私は呟いた。しかし、その問いに答える者は誰も居らず、疑問は空へと霧散し、儚く消えていく。たまらなく悲しくなってきた。
——やはり、私では貴方のように動くことは無理なのでしょうか。
そんな私の心情を察したのか、黒い
——そうだ、私にはまだ彼らが居る。そして、私自身にもファースト様から頂いた力があるじゃないか。まだいける。ハンターキングは捕獲できる。
何かが吹っ切れた気がした。
私は周りに立つ
「敵を皆殺しにしなさい。戦闘を許可する。」
『グルル♪』
人を失った者は軽く吠え、まだ人を捨てていない者はニヤリと微笑んで戦いの中に飛び込んでいく。
——さて、私も戦いましょうかね。
貴方は男性ですが、私たちを導く勝利の女神となってくれることを望みますよ。私たちに微笑んでください……ハント隊長。