padom generation   作:スリリン@bk

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変わるべき季節(トキ)

Chapter1“変わるべき季節(トキ)

 

中学生の頃。

小学生の時にいじめられた経験から、人と接するのが苦手で部活にも入れなかった。

友人の話題に入りたくても、話を振ることもなく。

―遠くで話を聞いていただけ。

好きな女の子がいても、告白すらできなかった。

下校途中に同じ電車に乗り、一緒の車両に乗るだけで精一杯だった中学生の自分。

―それだけで、気持ちは満たされていた。

そんな感じだからか、友達もできない。

幸いといえば勉強ができたため、いじめの対象にはならなかった。

―干渉されなかったとも言える。

そんな暗い自分の性格がイヤで、近くの高校には行かない。

―そう決めた!

自分の生き方をパッと変えたい!

誰も自分の過去を知らなければ、フラットな視線で接してくれる。

最初の一歩さえ明るく踏み出せば、大きく変われるハズ!

両親に頼んで、遠く離れた地で1人暮らしの許可をもらった。

そんな裕福でもなく、至極普通の家庭なのに一生で一番のわがままを許してくれた。

 

入学式。

風が木々を揺らす。

花ビラはそっと、頬をなでる。

ふわっと桜の散りゆく姿を横目に見ながら、そう思った。

通勤に急ぐ人々を横目に、薄紅色の桜は花ビラを振りまいている。

ここは浄心高校『浄心』とは法名であるが、決して崇高な高校ではない。

スポーツが盛んで、男子ラグビー部は県屈指の強豪で女子バレー部は全国大会の常連。

クラス分けして名前順で並ぶと必ずと言っていいほど、お互いの自己紹介をする。

―正直苦手だが、変わらないといけない。

「おう、オレ小峰暁(こみね さとる)よろしくな!」

軽々しく、それでいて親しげな声をかけられた。

それに同調するように、自然を振る舞って。

「お、オレ!汐凪裕司(しおなぎ ゆうじ)よろしくな!」

少し噛んでしまった…。

人の目を気にする自分は少し気が動転すると、じっくり相手を見つめるクセがある。

「そんなキツイ目で見るなよぉ。気楽に行こうぜ!」

彼はそう言って、夕焼けまで遊んだ昔からの友達みたいにたわいのない話で楽しませてくれる。

 

入学して間もない頃。

小峰と屋上で昼食している時、中学生までの自分のことを思い切って言ってみた。

「こ、小峰、あのさ…」

「暁でいいよ。もうそんな他人行儀の間柄じゃないだろ?」

「そうなのか?入学してそんな日も経ってないぞ?」

「いいんだよ。こうやって、昼飯を一緒に食べてる時点でもう関係ないだろ」

「そっか。じゃあ、今から話すことで、また他人行儀に戻るかもな」

「ふ~ん。オレは変わらないと思うけど、話してみなよ」

「オレがこんな遠くまで来たのには理由があるんだ。それは、部活が盛んで名門だからという理由じゃない。オレは…中学まで人と話すのが…人と接するのが下手だったんだ」

「それは人と接するのが、キライだったからじゃないのか?」

「ううん、そうじゃない。むしろその逆。コミュニケーションが下手だったんだ。クラスメイトと話そうにも話の輪に入るだけで、精一杯。話そうにも、今こうして小峰としゃべるより遥かに劣るくらいしか…話せなかった」

「そっか。今、お前と話てる感じでは想像もできないな」

「それは小峰の話が上手いんだよ」

「て、テれるな…ハハハ」

「そんな自分がイヤで、ここに引っ越してきたんだ」

「そっか、そういうことか。言っちゃ悪いが、お前はそこまで部活とかやりたそうに見えなかったから何か別の理由があると思ったけど。そういうことだったんだ」

「それは言いすぎだろ!それなりに体力はあるよ!」

「それはすまない。ん?それにしてもそのツッコミのスキル。前の学校では活かせなかったのか?結構いいセンスだとは思うけど」

「これをツッコミと勘違いする小峰が不思議だよ」

「逆転の発想とまではいかないが、今のはツッコミに値するよ」

「なにそれ?ヘンじゃない?あはっ」

そう言って、お互い笑ってしまった。

「ハハハ…。ほら、こう話しているうちにお前とはもう友達になっているんだぜ!」

「そうなのか?実感が湧かないけど」

「いや、もう友達だろ」

思わず、言葉がでてこなかった…ちょっと恥ずかしい。

小峰は話を続ける。

「オレだったら見知らぬ土地に行って、自分を変えようなんて…オレは怖くて出来ないよ。それを実行しようと決心して、今こうやっている汐凪裕司という男を尊敬するよ」

「あ、ありがとう」

「もう小峰なんて呼ばずに、暁でいいよ。オレは裕司って呼ぶからさ」

オレは少しためらって、しばらくした後にすこし大声で言った。

「さ、暁!」

「おう、裕司!話してくれて、ありがとな」

「うん、これからもよろしく」

そんな春のほんわかした空の下、人生で初めてまともな友達ができた瞬間だった。

クラスは48人で、8クラスもある。

暁とオレは教室でも名前順で机もタテに並んだ。

暁は地元なのでクラスにも友人がいっぱいいて、男友達を何人か紹介してくれた。

最初に不安だった『友人を作る』ことは暁のフレンドリーな性格で救われた。

まだ自分から声をかけるのは抵抗があって、ついモゴモゴと口にモノが詰まる。

「あっあの…」とか。

「そ、その…」とかで始まる。

それでも。

「どうした?」

「なになにぃ~!かしこまっちゃって!」

と明るく接してくれる友人たちにはそのたびに心の中で感謝してしまう。

鼻がムズっとする5月。

友達と呼べる男子とも普通にしゃべれるようになり、自分の素が出せるようになっていた。

人は『習慣』という不思議な力によって、不安要素を補える仕組みになっているようだ。

チャイムギリギリに走り込んで来て、自分めがけて必死に駆けてくるひとりの男。

「裕司、今日の数学の宿題見せてくれ!」

またか、と思いつつ暁にノートを見せる。

「暁さぁ。部活に精を出すのはいいが、それなりに勉強もやれよ」

「まぁまぁいいじゃん!って、ここ間違えてるぞ!」

人の宿題を見せてもらいながらのダメ出し…。

「文句あるなら、見せてやんないからな」

「そ、そんなぁ~」

暁はラグビー部に入って、ウイングという足の速さが決め手のポジションをやっている。

もうすでにレギュラーを獲得しているのだからすごい!

オレはまだ部活に入るのをためらっていて、気付けば5月になっていた。

少し焦らなければいけないのだけど。

1カ月も経つと入りづらいし、やる気も出ない。

これが世間で言う、5月病なのだろうか。

 

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