padom generation   作:スリリン@bk

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夏休みの宿題

Chapter12“夏休みの宿題”

 

「結華~。宿題見せてくれないんなら、一緒にやろう!」

「はぁ…わかった、わかった」

「やったー!」

「でも、絶対に写したりしちゃダメだよ」

「はいはい、わかりましたー」

結局、奏と夏休みの宿題をすることになった。

ワタシより勉強できるクセに、それも頼んで来たのは奏なのに奏の家でやるなんてありえない!

今日はこんなに暑いのに…はぁ…。

「こんにちはー!」

「あっ、結華ねえちゃんだ!」

「おう、凛太郎。久しぶりだね!」

お出迎えしてくれたのは奏の弟の凛太郎小学6年生だ。

「今日は何のよう?ねえちゃんならまだ寝てるよ」

くっ…一緒に宿題しようって、言っておいて。

それも日付も奏が指定したのに、まだ寝てるってかい!

「結華…ねえちゃん?」

「凛太郎!奏を起こすのちょっと手伝ってくれない?」

「うん、まかせて!ねえちゃん起こすのは毎日の日課なんだ!」

凛太郎と一緒に奏の部屋に行く。

「うーん、先輩どこに行きましょうか?」

なんの夢を見ているのかさっぱりだけど、冷房の利いた部屋で呑気に寝てることでワタシはさらに腹がたった。

「よし、凛太郎!顔に落書きしちゃえ!」

「え~!それってバレたらオレが怒られちゃうじゃん!」

「大丈夫。バレたら、ワタシのせいにすればいいのよ」

「うーん。じゃあ、わかった!でもホントにホントだよ」

「はいはい、大丈夫だから」

奏の顔に机にあった黒のマッキ―を手に持つ凛太郎。

日頃の鬱憤がたまっていたのか、顔を真っ黒に塗りつぶしはじめる。

それを見たワタシは、途中から笑いが耐えられなくなった。

今の段階で起こしてはマズイと思って、部屋を飛び出す。

「ふぅ~。よし!結華ねえちゃーん!もういいよー」

奏のその姿はイカスミを顔面に塗りたくった感じになっていた。

「ねえちゃん起きたらビックリするだろうね。ヒヒ!」

「顔を洗いにいくまでは大丈夫だよ!じゃあ、おねえちゃんが仕上げに…」

ワタシは白いペンを手にとって、まつ毛と口のまわりを丸く囲んでみた。

「くっ…はははっ!結華ねえちゃんやるね!これは傑作だ!キャハハハ!」

凛太郎が爆笑した声が部屋中に響き渡る。

ワタシも笑いをこらえるのが、限界だった。

ふたり共、たまらず爆笑。

「うーん…おはよー。あれ?なんで、結華がいるの?」

さすがの奏も起きちゃった。

「ね、ねえちゃん…ぷっくくくっ!おはよー!ぷっ」

「凛太郎ダメだって…そ、そんな笑っちゃあ…あははは」

「うーん…あれ?何で笑ってるの?」

「えっ!いや、なんでもー。ねぇ、凛太郎」

「うん!なんでもないよ」

「ヘンなの?ちょっと、顔洗ってくるね」

「うん!よーく、洗うのよ!」

スタスタと洗面所に向かった奏は鏡を見たのか絶叫が家中にこだました!

それを聞いて、ふたりはさらに爆笑!

水性ペンで書いたから、そこまで怒らないだろうと思ったけど。

数分後に帰ってきた奏はしばらくダンマリを決め込んでいる。

場の雰囲気がシーンとした中を凛太郎はスィーっと部屋から抜け出そうとした。

「凛!待った!」

いつもと口調の違う奏。

凛太郎もすくみあがって、ビクッ!と立ち止まる。

「な、なに?おねえちゃん」

「はい、ふたりとも座って。正座して」

言われるままに、ふたりは正座。

落書きされた顔に爆笑していれば、それはもう犯人はふたりだとバレてしまっているようなもの。

「はーい。では、顔を前に出して」

見慣れているハズの小悪魔みたいな奏の笑みは、むちゃくちゃ恐ろしい。

もう言われるがまま顔を前に出したら、おでこにデコピンされた。

バチコ――ン!

「い、痛った――い!」

「い、イテ――!」

ふたりともそのあまりの痛さに絶叫!

どれだけ指を引き伸ばしたら、そんな威力がでるのよ!

って、くらいの痛みがおでこに走った。

「なんで、こんなことしたの?」

「だって…結華ねえちゃんが顔に落書きしちゃえって、えぐっ…」

凛太郎は痛むおでこをさすって、涙目になりながら事情を伝える。

「質問に答えてないわ」

涙ぐむ凛太郎に対して、冷徹に対処する奏。

横目で見ていても、めちゃくちゃ怖い…。

「では、結華さん。あなたはなんで、こんなことしたの?」

『さん』付けてきたー!

一国のお姫様みたいな、その口調と蔑んだ瞳…。

もうカンカンのご様子。

思わず、ワタシも『さん』付けで。

「あ、あのですね…奏さん。今日何の日か、ご存じですか?」

敬語にもなっちゃうくらい先輩並みに怖いけど、返答次第では優位に立てる。

「ん?今日?何の日かしら?」

「はい、ダメ―!今日は奏さんと夏休みの宿題をする日でしたー!なんで、友達との約束忘れて寝ているのかしら?」

「ああ、そうだったね。忘れてた。じゃあ、宿題やろっか!」

あまりにもサラッと流されて、ワタシの反論はどこかへ飛んでいってしまった。

凛太郎は涙を拭きながら、部屋をあとにした。

早速、夏休みの宿題開始。

ふたりとも黙ったまま、時は過ぎていく。

エアコンの涼しいスーッという音だけが聴こえて、軽く1時間が過ぎた頃。

それに耐えられなかったワタシは。

「ねぇ、奏。ちょっと休憩しない?」

「うん。もう半分、終わったしね」

「はやっ!」

「そう?結華はどのくらいまでいったの?」

言えない。

合計200ページもある夏休みの宿題のたった20ページしか進んでないなんて、言えない。

「わ、ワタシも同じくらいかなぁ?」

「ホント!じゃあ、あとで答あわせしよっか!」

「ううん、遠慮しておく。だって、写したりしたらよくないじゃない!」

「そう…まいっか!ちょっと、飲み物とお菓子持ってくるね」

「うん、行ってらっしゃい」

前言撤回、今のうちに奏の宿題写させてもらうおう!

40ページ…60ページ…よし、あと少しだ!

最初は奏が帰ってこないか、確認していたけど。

写すのに夢中になって、途中からその確認を怠っていた。

「よし!半分までいったー!」

「何が『よし!』なのかなー?」

「えっとー。それはそのー」

言い逃れができる現状ではない。

完全に奏の宿題を見開いて、ワタシの宿題の横に置いている。

今まさに、書き写している最中だった。

「もう!あんなに結華が写しちゃダメって言っておいて、それはないんじゃないの」

「ごめんなさい」

「まぁ、いいわ。休憩しよ!」

許してくれて、ホッとした。

またあの蔑んだ瞳で見られたら、トラウマになって立ち直れない。

奏が持ってきたのは、クラッカーとその横にクリームチーズとジャムが入った容器。

「結構、手が込んでるんだね」

「お客さんだからねー。それなりにおもてなししないと悪いじゃない」

「あら、お客さん扱いとはうれしい!」

「凛がかき氷を削っているから、もう少ししたらくるよ」

「ホント!やったー」

♫♪♫♬♫♪っと奏のケータイが鳴る。

「はいはーい、マサぁー♪うん、これから?うーん今日は宿題しちゃいたいから。えっ!ダメ!まだワタシも最終回見てないんだから!うん。じゃあ、明後日ね。その時にうん!じゃあねーバイバーイ」

「今の『マサ』って、だれ?」

「あれ?言ってなかったっけ?彼氏だよ」

「えぇ――!聞いてなーい!」

「そっか、言ってなかったかも…ごめんね。でもそんなに、驚かなくてもいいじゃん!」

「か、奏はたしかに可愛いけどさ。マイペースだし、恋愛とかそういうのに疎いって、思っていたんだけど」

「まぁ、確かに一理あるわ。でもね、告白されたんじゃあ付き合うしかないよね?」

「こ、告白!い、いいなぁ」

「でも、好きじゃなきゃ!OKなんて、しないよ」

「そうだね。でっ!マサって、人はどういう人?」

「どういう人って、みんなが知ってる生徒会長だよ」

「ええー!あのみんなに優しくて、怒らない“仏”の生徒会長なの!」

「うん、そうだよ♪ふふーん!いいでしょ!」

ちょっと意外なチョイスだわ。

生徒会長さんあなたって…とは言えず、幸せそうな奏はクルクルと回っている。

「い、いいなぁ」

ちょっと言葉が、引きつったけど。

ふと…もし、汐凪君に告白したところで付き合えなかった場合。

ワタシのあの現象って、どうなるのかなぁ…。

そう考えると、ちょっと不安。

「おまたせー!はいかき氷だよ!」

「わーい!ワタシ、メロン味―!」

「じゃ、じゃあワタシはこっちのイチゴ味にする。

あれ?2つだけなの?凛太郎は?」

「ああ、オレは…」

「氷がふたり分しかなかったから、凛はないよ」

凛太郎の言葉を遮って口出しをしたと思ったら、パクっと一口食べて。

「ん――!やっぱ夏はかき氷だわ!」

かき氷を絶賛する奏。

凛太郎の様子を見ると、どうやら暑い中一所懸命にかき氷を作っていたのだろう。

汗ダクで、Tシャツがちょっと透けて見える。

「凛太郎、よかったら…ワタシのあげる」

「いいよ。オレは…アイス買ってくるから」

「こんな暑い中買いに行くのは、大変でしょ。遠慮しないで!はい」

「ゆ、結華ねえちゃん…うわぁぁぁー!ありがとう!」

凛太郎は感動して涙を流しながら、ワタシに抱きついてきた。

小学生って、大げさね。

「あっ!」

奏が叫んだ瞬間にグシャと、イヤな音がした。

「な、なに?」

奏の視線を辿ると、かき氷は部屋中に散乱してしまった。

「あっ…あああ――!」

それに気付いた凛太郎も感動から悲鳴へと、声を変えていた。

「かき氷…ダメになっちゃったね。仕方ない、おねえちゃんと一緒にアイス買いに行こ!」

「ホント!」

歓喜に湧く、満面の笑みの凛太郎は可愛い!

「うん!」

ふたりでアイスを買いに行った。

真夏日という感じで、すごく暑い。

いつもなら凛太郎と仲良く手をつないで歩くけど、今日ばかりは手を繋げない。

凛太郎は暑さのせいで、ヘバり気味だけど。

「結華ねえちゃんとこうして買い物するのって、久しぶりだね」

「うん。ちょっと暑いけど、ガンバって行こう!」

「おう!」

凛太郎お得意様の駄菓子屋さんに着いた。

「オレはやっぱり、ガリガリ君!」

「じゃあ、ワタシはモナカにしよ!」

「おばちゃん!これお願い」

「はいよ、あれ?結ちゃんかい?大きくなったね」

実はワタシと奏も小学生の頃はここの常連さん。

今は遠い昔の話のようで不思議な感覚。

「うん!おばちゃんも元気そうでなにより」

ありきたりの世間話をしながら、アイスをふたりで頬張った。

「おねえちゃんのも買おっか!」

「あら、凛太郎!やさしいね!」

でも、ワタシの財布カラなんだけどね。

奏のアイスを持って帰ってくると、奏はまた黙々と宿題をやっていた。

「ほい、奏のアイスも買ってきたよ!」

「ホント!やったー!」

「凛太郎に感謝しなさいよね!」

「うん。ありがとう。凛!」

「へへっ!」

自慢気な、凛太郎も可愛い。

「やっぱ、モナカはバニラよねー!」

その点この姉は可愛気もなくパクパクと、アイスを食べている。

―能天気だこと。

「結華ねえちゃん」

「なに?」

「オレ!大きくなったら、結華ねえちゃんと結婚する!」

「あら。じゃあ、早く大きくならなきゃね!」

軽くゴマかすワタシと真剣な凛太郎。

この温度差ってやっぱ、年齢によるものかもね。

 

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