padom generation   作:スリリン@bk

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バイトの終わりに

Chapter9“バイトの終わりに”

 

「ふう~。今日の仕事も終わったぁ~♪」

「マサの代理お疲れ~ユウ。」

「おう、あとはゴミを持って行くだけだ」

営業時間が終わると、掃除をする。

そこで出たゴミを地下のゴミ捨て場に持ってくのが、最後の仕事。

「じゃあ、ワタシ先に行ってるね」

「おう!」

ゴミを台車で持って行きながら、バイト中に言っていたリサの言葉が気になる。

“桑島君はすぐ帰っちゃうから、マサと2人きりになる時間が多くなるかもね“

あれはどういう意味だろうか、ちょっと期待してしまう。

まさか、オレのこと…なんてね。

そんなワケないさ。

話し方や言動からして、野村先輩を好きに決まっている。

オレは何を浮かれているんだか…。

ゴミを地下に捨てに行ったあと、スタッフルームのある貸しビルに足を運んだ。

スタッフルームは誰も居なくて、電気だけがついていた。

着替えようとして、更衣室に入ろうとすると…。

カギがかかっている。

ガチャ!あれ?誰も居ないんじゃないのか?

「ちょっと待って!まだ着替えているから」

更衣室の中から女の子の声が聞こえる。

「あっ!ごめんなさい!」

危ない!カギがかかってなかったら、オレは変態扱いされているところだった…。

待っている間は自販機で買ってきた缶コーヒーを片手にイスに座って、待っていた。

数分後、更衣室のドアが開く。

「ユウだったの?もう、更衣室が閉まっている時はノックしなさいよ」

「あぁ、ごめんリサ」

「はい、空いたよ。ひとりじゃ心細いでしょうから…待っててあげる」

「へぇ、珍しいこと言うんだな」

「珍しい?そっか、ふたりっきりになるのは初めてだもんね」

リサはそう言って、着替えた学校の制服を整えていた。

そんな期待することを言って、からかっているのか?

とは言えずに、更衣室で着替えていた。

しかし、物音ひとつしない…。

やっぱ、帰ったのか…。

リサって、薄情だな。

着替えて、更衣室を出る。

思わず、その気持ちをつぶやいた。

「なんだよ!やっぱ、帰ってんじゃ…」

言い切ろうとしたその瞬間!

「いるよ、なに言ってんの?」

「えっ!だって、声ひとつ音ひとつとして聞こえなかったし…」

「それは…ケータイいじっていたら、聞こえないでしょ」

少しあっけにとられた。

自分の発言が恥ずかしい。

オレに睨みを利かせて見ているリサ。

「ご、ごめん」

「まぁ、いいわ。帰ろ」

「お、おう…」

エレベーターに乗りながら、沈黙するふたり。

それを耐えられなかったのか、リサが話かけてきた。

「さっき、マサにメールしたんだ。やっぱ、彼女とデート中だって!まったく隅に置けないよねぇ~」

「ま、マジで!うわぁ~ハメられた!」

「どうする?」

「謝っても、許せないな!今日のドラマのネタバレしてやる!」

「いい考えね♪あれ?でも待って…。ワタシ、録画してないかも…」

「そっか。じゃあ、今度貸してあげるよ。DVDだけど、大丈夫?」

「うん、大丈夫!あっ!間違っても、エッチなの持って来ないでよね!」

「そんなベタな間違いはしないよ」

暁やツノキーじゃあるまいし、そんな持っていない。

―レンタルすることすら苦手なのに。

エレベーターを降りる。

リサとは方向が逆なので、リサと反対方向を向いて帰ろうとしたら…。

「ユウ、待って!」

「えっ?」

「女の子をひとりで帰らせるつもり?」

「あっ!そっか、今日は野村先輩居ないんだった。いつもの習慣でそのまま帰りそうだった」

「ユウって、気が抜けてるよね。気配りってものを知らないんだから」

「そこまで言わなくても…。でも…オレでいいの?」

「なに言ってんの?ユウがいいの!」

「ちょ!ど、どういう意味だよ!」

「だって、今はユウしか居ないじゃん!」

「ああ、そういうことね」

「それに、ワタシ…ユウのこと…好きだよ!」

「えっ?今、なんて…言ったんだ?」

「女の子にもう一度言わせるつもり?」

「か、勘違いじゃないよね?」

「…うん。あ、あと答えは今すぐじゃなくてもいいからね」

答えなんて、もう決まってるじゃないか。

こんなに明るく、人の心を見透かすような瞳で見てくれる。

そんな彼女を好き以外の答えはない。

「オレも好きだよ。リサのこと」

これまで好きな人に好きとも言えない臆病な自分。

そんなオレに“好き”と言ってくれる。

リサに今までにない愛おしさを感じ、優越感に浸っている自分。

その反対に不安と戸惑いが心を鷲掴みにして…離さない。

―オレがリサにとって、一番好きな人ではないだろうと…。

それでも…今見ている世界が変わるなら、それでも構わない。

「へ?ホント?」

「うん、でも…そんな素振り見せなかった気がするけど…」

「えっ?積極的にアピールしたつもりだったけどなぁ…。ユウが鈍感なだけじゃない?」

照れくさいふたりの間隔は歩数を重ねるたびに縮まる。

そして互いに手を握り合う。

オレはリサを送り届けることだけに集中しながら。

「野村先輩とリサがいつもシフト一緒っていうのは、暗い夜道を送ってもらうためだったんだよね?」

「そうだよ!スタッフ公認の特別な計らいでね♪」

「そうだよな、夜道は危険だもんな。こっち方面は初めてだけど。結構、暗いな」

リサの家はバイト先からは歩いて10分ほどだけど。

その道は神社やお墓が近くというのもあって、人ひとり居ない寂しい道が続く。

これじゃ、ひとりでは帰らせるのは不安だな。

スタッフ公認っていうのは納得。

―でも…帰り道のパートナーとして、野村先輩を選んだのは好きだったからでもあるような気がするけど。

「そろそろマサの家が見えてくるよ!」

野村先輩の家は一軒家。

レンガでキレイに整ったオランダ風な家。

「すごいね。一軒だけ、外国みたいな家だからすごく目立つよ」

「ユウって、ああいうのが好きなの?」

「そうだね、結構好きだよ。家は一軒家っていうだけで憧れる。実家はマンションだから」

「実家暮らしかぁ、いいなぁ~。ワタシ独り暮らしだから、夜なんて淋しいよ」

「ううん。独り暮らしだよ」

「そうなの?なんだ、一緒じゃん!」

「っていうか、よく女の子の独り暮らし許してくれたな」

「うん、家に居たくなかったから。ウチの親…いつも夫婦ゲンカが絶えなくて…」

さっきまでのリサの表情が暗く沈んでいく。

やばっ…マズイ話を聞いてしまったなぁ。

この話は広げてはいけない…そう思い。

「そ、そっか。ごはんとか、どうしているの?」

「ん?自分で作っているよ。焼きそばとか月見そばとか」

「麺類ばっかりじゃん!それは偏りすぎだよ」

「だって、カンタンなんだもん!そういうユウはどうなのよ?」

「オレはちゃんとご飯炊いてるよ。おかずは2種類以上作ってる」

「はは、主婦みたいね」

「健康第一って、言ってくれよな」

「じゃあ。今度、ユウの手料理ごちそうしてよ!」

「おう、腕によりをかけて手料理をもてなしてあげる」

「やったー!」

話題を変えてリサは笑顔に戻った。

それにつられるように自分も笑う。

気付けば、リサの家に着いた。

「今日はありがとうね」

「おう」

「家は散らかっているから。今度キレイにした時に、入れてあげる」

「ああ、楽しみにしているよ。じゃあ」

「あっ!ユウ」

「どうした?」

「ケータイ番号交換しないと」

「そっか、してなかったね」

「じゃあ、今赤外線通信しよう。…これで、よし!じゃあね!ユウ♪」

「おやすみ」

ほくそ笑みながら、大事なリサの番号とメルアドは消えても大丈夫なようにSDカードに保存した。

 

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