魔法少女リリカルなのは!?「フェイクヒーロー」 作:ヘルカイザー
今年はこれを含め3本書いていきます。
前の作品もサボらず書きますのでよろしくお願いします。
「わぁぁぁああああああ!? た、助けて!? 」
僕の名前は飛影潤(とびかげ じゅん)。突然だが僕は今物凄くピンチだ。その日もいつもと変わらない平和でいい意味での退屈な日常だと思っていた。けどこうも簡単に非日常になるとは思っていなかった。僕は今怪物に襲われている。怪物といっても大きいものじゃない。大人の人間と変わらない背丈、でも明らかに人じゃないそれは見ただけで誰もが悲鳴を上げてしまうような化け物。顔は魚のような形をし、その身体は鱗で覆われている赤い怪物。
抵抗しようにも僕はまだ小学生三年生だ、だから捕まったらひとたまりもない。
僕は必死に暗くなった住宅街を逃げた。だが不思議な事に逃げても逃げても一向に人の姿が見えなかった。そうこうしているうちにも怪物は迫ってくる。しかしいつまでも逃げられる訳もなく、僕が入り込んだそこは袋小路だった。恐る恐る背後を振り向けばあの赤い怪物がすぐ近くまで迫って来ている。
僕は恐怖で足がすくみ、腰が抜けた。その場に倒れるように座り込む僕。するとその怪物は僕の前で足を止める。さらにその怪物は人の言葉を話し始めた。
「オマエハ、ウマソウダ。マダワカクイキイキシタ、ジョウシツノセイメイエネルギーヲカンジルゾ」
「ひっ……い、嫌だ……来ないで…………」
怪物はヨダレを垂らし、少しずつ腰が抜け身動きが取れない僕に近づいてきた。どうやら僕を食べるつもりのようでどんどん怪物の口からはヨダレが滴り落ち、怪物のお腹の空き具合がうかがえる。
そして怪物の手はとうとう僕の目の前まで迫り、僕は目を閉じる。僕はそこで諦めた。ここで都合よく助けてくれるヒーローなんているわけがない。
このまま僕は怪物に食べられてしまう。しかし怪物の手は僕まで届かなかった。何故なら来るはずもないヒーローが僕の前に姿を現したからだ。
「どりゃぁぁぁああああああああああ!!! 」
「ガワァ!? 」
「ん? ……え!? 坂城……さん? 」
まるで突っ込んで来るような気合のこもった声に怪物の間の抜けた悲鳴。僕は目を開けた。すると怪物は蹴り飛ばされたのか後ろに倒れ伏せ、僕の目の前には赤い髪の女の子が……この間僕の学校、僕のクラスに転校してきた坂城姫子(さかしろ ひめこ)さんが怪物と僕の間に入って僕を守ってくれていて、その背中はまるでヒーローだった。
これが彼女が僕にとって、憧れのヒーローになった瞬間。
「そこまでよ! 」
◇◆◇◆
私は襲われている男の子を助けた。しかしこれは好都合、まさに私が遭遇したかった展開、状況だった。
私は転生者、神によって魔法少女リリカルなのはの世界に送って貰った人間。当然ただそれだけという訳じゃない。私は神に力を貰った。
前世、私は特撮ヒーローが大好きだった。中でも仮面ライダーは私の好きなジャンル。だから私は神に仮面ライダーの力、ディケイドの力が欲しいとお願いした。その証拠に私の手の中には変身する為のバックルがある。ただ私が女の子というのに合わせたのか本来の白ではなくピンクだ。そしてこれが初戦闘。
本当ならばこの世界に怪人など現れるわけないのだがこれも神様にお願いしてしまった。やっぱり悪役がいないとつまらなういからだ。
「オマエハ、ナニモノダ? 」
「通りすがりの仮面ライダーよ! 覚えておきなさい! (決まったわぁぁぁ! 感激、このセリフを生で言える日が来るなんて夢みたいだわ!! )……変身」
腰につけたバックルを回し、同じく腰についているライドブッカーから一枚のカードを取り出した。それは仮面ライダーディケイドの絵が描いてあるカード。ディケイドに変身する時に使う物だ。それをバックルに挿入し回したバックルを元に戻す。
【カメンライド……エラー】
「ちょっ!? え!? なんで!? 」
本来ならこれで変身出来る筈だ、でも何も起こらない。ただエラーとディケイドライバーが発するだけで私は変身できなかった。
私は焦る。この状態であれと戦うのは無理があるからだ。しかもあのセリフを吐いた後に仮面ライダーになれないとか恥ずかし過ぎる。
私は急いでライドブッカーに使えそうなカードがないか探した、すると原作でも見たことのないカードが一枚あった。それは私の絵が描いてあるカード。見た事ないのは当然だ。けど私は一瞬考え込みそれをディケイドライバーに差し込んだ。
【リリカルライド……ヒメコ! 】
「……なれたにはなれたけど……これバリアジャケットなの? というか……着物? まぁ〜可愛いは可愛いんだけど……なんかガッカリよね……」
仮面ライダーにはなれなかった、でも今の私は物凄く立派な花柄の入った、ピンクと黒のシマシマの着物姿になっている。腰を見るとディケイドライバーはまだ付いておりライドブッカーもそのままだ、この姿には場違いな気もするがしょうがない。しかし変わってないと思っていたのは最初だけでバックルに変化があったのだ。それはディケイドライバーの表面に刻まれたマーク。本当なら九人の仮面ライダーのシンボルマークが刻まれている筈。けど刻まれているのは九つの丸とか三角、それからハンマーや剣のマーク。果てはうさぎのマークまである。どこかで見た事ある気はするが考えても分からなかった。
ライドブッカーを見てみるとそこに入っているカードも変わっている。私は試しにそのうちの一枚をディケイドライバーに差し込んだ。
【マジカルライド……バインド! 】
「オゴッ!? ナ、ナンダコレハ!? 」
「ああ〜なるほど、この輪っかの絵はそういう物なんだ。というかこれリリカルなのはに出てくる魔法よね? 」
バインドで怪人をその場に固定した……というよりたまたまそうなった。この状況ならここはアレしかないだろうと思い私はあるカードを探す。
「やっぱりあった、でも……ファイナリティ? まぁ〜いいや」
思ったカードがあったのを確認し、私はそれをバックルに挿入する。今からやるのはトドメの一撃。果たしてどんな物なのか。
【ファイナリティマジカルライド……ヒヒヒ ヒメコ!! 】
「おお!? これはディケイドを模してるんだ、これだけ感激! 」
ディケイドライバーから声が発せられた瞬間私の前に一直線にカードが並んだ。原作ではこのまま跳び上がってキックする。だけど……多分私の格好からそれはないと分かる。ではどうすればいいのか、そう思ってた時ディケイドライバーからさらに声が発せられた。
【ディメンジョンバスター! 】
「バスター? バスターって何か出るの? う〜ん……まぁ〜取り敢えず手でもかざせ……ばぁ!? 」
ふと思いついて手を怪人に向ける。すると私の手から極太のビームが発射された。そしてそのビームはカードを通り抜ける度に太くなり怪人の方へと向かう。
余談だが突然手からビームが出た為に私はこの時びっくりしてしまった。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ!!! 」
この世のものとは思えない叫び声、しかし怪人は耐えきれずに爆発した。その後の場所には何も残らない。取り敢えず怪人とは戦える、それが分かっただけでも私は安心だった。私の身勝手で怪人がこの世界に現れるようにしたのだ、これで私が処理できなければこの世界の人に申し訳が立たない。色々感激してはいるがこれはゲームじゃない。現実に今あるリアル。だから怪人関連の事では私は誰も殺させない。それが私の責任。
私はさっきのカードを取り出した。ディケイドのカードだ。結局これでは私は変身できない。そう思ったら少し寂しいがこの先これを持っていると未練が残りそうで私は嫌だった。だからそれを捨てる。
けど私は忘れていた、さっき助けた男の子がまだいた事に。さらにはそれを忘れて私はその場を去ったのだった。
◇◆◇◆
「凄かった……かっこよかった……!? これ……さっき坂城さんが捨てて行ったカード? なんだろうこれ……でもかっこいいな……」
僕は完全に坂城さんに魅せられていた。僕を助けてくれた坂城に憧れてしまったのだ。
だからかもしれない。彼女が捨てて行ったこのカードを拾い、持ち帰ろうと思ったのは。彼女の意思で捨てて行った物だし、貰っても迷惑じゃないと思ったのだ。
翌日、僕は学校に着くなり同じクラスにいるだろう坂城さんを探した。昨晩助けて貰った御礼を言いたかった。しかし坂城さんは同じく同じクラスの高町なのはさんと話をしている。
彼女達はいつも一緒にいる所をみる。だからきっと二人は友達だ。
話の邪魔をしても悪い、僕は話しかけずに自分の席へと座った。別に後ででも話は出来る、そう思ったからだ。けど世の中上手くいかないものだ。後で話ができると思っていても中々タイミングが合わない。
気が付けば僕はストーカーのように坂城さんの後をつける感じになってしまっていた。
そんなこんなで放課後になる。帰り道、やっと話ができそうな状況になり話しかけようと思った時だった。
「はぁ〜。ねぇ〜? コソコソ後付けられるの嫌なんだけど? 学校でも私の後付けて回ってたわよね? 私に何か用? それとも私の家が知りたいストーカー? というか貴方誰? 早く出てきなさいよ!! 」
「え!? い、いや……そんなつもりじゃなくて……ごめんなさい」
「まったく……で? 誰? 」
僕はヤバイと思いすぐに坂城さんの前に姿を晒す。最初からバレていたのか坂城さんは少し怒っていた。けど当たり前のことだ。自分の後を普段話してない誰かがつけていれば気持ち悪いと思うし鬱陶しい。だから僕は素直に謝った。しかし彼女は僕を睨んでいる、許してくれる気はないようだった。最初から最悪の印象、僕は後悔し気を落としてしまう。
そもそも、学校でも友達なんていない僕の事を坂城さんが知ってるわけがない。恐らく眼中にもなかった筈だ。本当は同じクラスな手前名前ぐらい覚えていて欲しいものだったが、それは友達のできない僕にも原因のある事だし強くは言えない。多分同じクラスで他の人も何人僕の名前を覚えていることか…………
「飛影 潤って言うんだけど……一応同じクラスで……」
「は!? 同じクラス? 嘘!? おかしいわね…… 同じクラスの人の名前は全員覚えてる筈だったんだけどなぁ? 」
結果、予想通りではあるが落ち込まずにはいられない回答が返ってきた。坂城さんはムスッとした顔から苦笑いになり僕を憐れみの目で見始める。そんな目は向けられたくないのだけど、僕は諦めた。
「その……昨日の御礼が言いたくてその……昨日の夜助けてくれてありがとうございました! それだけ……それだけ言いたくて……だから後をつけてたのもそれで……ごめんなさい」
「ああ!!! そうだ!? 思い出したわ!? そうよね、貴方昨日の男の子! なんだ〜そういう事だったんだ。はぁ〜良かった、変に告白でもされたらどうしようかと思ったわ。後を永遠とつけてくる人とか気持ち悪いし」
「え!? ごめんなさい、気持ち悪くて…………」
「あ! いいのいいの、別に他意はなかったわけだし気にしない気にしない。じゃ、私帰るから。あ! 後それから昨日の事誰かに話したらダメだからね? 約束よ? それが守れるなら今日後をつけていた事は忘れてあげる。いい? 」
僕は笑いながらそう言った彼女に頷いた。それを見た彼女も「よし! 」と頷くと僕に背を向け帰って行く。
よく考えれば坂城さんは可愛い子だった。僕はなんて大胆な事をしていたのだろうか。本当は僕なんかが話しかけていい人じゃない。それだけ僕は反省し家へと帰った。
◇◆◇◆
「貴方は誰? どうしてこんなこと」
「…………」
私となのはちゃん、それからアリサちゃんは今日すずかちゃんの家にお茶会に来ていた。でもしばらくしたのち、なのはちゃんはこの間拾ったっていうフェレットを追いかけてどこかに行ってしまう。
私はすっかり忘れていたのだ、もう原作は始まっている。すずかちゃんの家でのこの行動は確かフェイトちゃんとなのはちゃんの初対面だった筈だから邪魔はできない。それに原作通り動くなら私は介入する必要もそれを邪魔して壊す必要もないわけだ。ただ友達になったなのはちゃんが怪我をする所は心苦しい。
その時、私の第六感と言えばいいのだろうか? その感覚で奴らの気配を感じた。ちょうどなのはちゃんの向かった方向からそれを感じる。だから私はすずかちゃん達に少し嘘をつきトイレに行くと言ってその方向に赴いた。
すると既に二人の戦闘は始まっておりなのはちゃんがフェイトちゃんの攻撃を防いだ所だった。互いにデバイスを鍔迫り合いのように押し付けたまま互いを見つめている。
「生で見るとあまりいい気はしないなぁ〜。ん? はぁ……やっぱりいた。ダメよぉ〜? 二人の記念すべき初対面にチャチャを入れたら、ねぇ〜犬のお兄さん? 」
「ガルルル! オマエ、ワレラノテキ。ダカラ、タベル」
私は挑発するように相手を自分に気付かせる。今私の目の前には狼のような顔をした灰色の怪人がいる。どうやらこの間の一匹目を倒した事で私はこいつらに完全にマークされたらしい。有無を言わさず私を食べると言っているのだから。
そして私はバックルを腰に装着しライドブッカーからカードを一枚取り出す。
「オマエ、ナゼワレラヲコロス? ナゼワレラヲコロセル? オマエハ、ナンダ? 」
「あら? お決まりのセリフありがとう。 そうねぇ〜? 仮面ライダーにはなれなかったからこう名乗らせて貰うわ? 通りすがりの魔法少女よ! 覚えておきなさい! ……変身!」
【リリカルライド……ヒメコ! 】
私の姿はピンクと黒のシマシマの着物に変わり、それによって私に魔力が生じたのか上空にいた二人も私の存在に気づく。しかしそれが隙になったのか原作より早くなのはちゃんはフェイトちゃんに堕とされてしまった。
心配だけどけどあっちはフェレット君がいるから大丈夫だろう。だから私は気にせず狼怪人の方へと集中する。向こうは今にも飛びかかって来そうだからだ。
「悪いけどさっさと終わらせて貰うわ! 」
【マジカルライド……ソードデバイス、トウキ!! 】
そう音声が鳴り響いた瞬間私の前に鍔が無く、柄と鞘の色が白い一本の刀が出現する。私がその刀を手に取り鞘から抜くと刀身は黒、そして刃紋の部分はピンクの綺麗な刃。
それを怪人に向け私は少しドヤ顔をするように笑みを浮かべた。
「さぁ〜舞いましょう? せいっ!! 」
「ウオォォォォオオオオオオオン!!! 」
狼怪人の鋭い爪と私の刃がぶつかり合い火花を散らす。怪人の動きは流石、狼を媒体としているだけあって速い。しかし速いだけでは今の私の敵ではない。狼怪人の爪を私の刀、刀姫でいなしそのまま左から右へ振り抜く。けどそれで当たれば苦労はしないわけで狼怪人は華麗に躱してくる。このやり取りを高速で互いに何度も打ち合っていた。
こちらの様子を伺っているフェイトちゃんとフェレット君は私達の攻撃が見えないのか唖然として見ている。
「ツヨキモノ……タノシイ!! 」
「ぐっ!? 楽しい? ふふ、それが貴方の闘いの本能って事かしら? でも悪いわね? 終わりよ? 」
【マジカルライド……エントウ、トウキ!! 】
炎刀 刀姫……刀姫の刀身に魔力の炎を纏わせ、触れる物全てを焼き切る技。私はバックルにカードを入れ、これを発動させた。
狼怪人の爪を腕ごと上に弾きそのまま頭めがけて振り下ろした。当然の事ながら怪人の両腕は頭の上に上がっている為防ぐ手段などありはしない。怪人はそのまま刀姫に両断された。
「ガギッ!? オ、オ、オ……ウオォォォォオオオオォォォォン!? 」
「ま! こんなところかしら? ん? 」
「貴方は……何者? 」
「そうね? 通りすがりの魔法少女ってところかしら? 金髪の魔導師さん」
狼怪人は私の攻撃で爆発した。しかしそこで私達の戦いを見ていたフェイトちゃんがデバイスを向けながらそう言ってきた。けど私はとぼけて答えようとはしない。
しばらくそうしているとフェイトちゃんは私の背を向け何処かへと行ってしまった。おそらく無駄だと分かったのだろう。
「あ、あの? 君はなのはの友達だよね? 君は何者? その力は」
「何者と言われても……フェレット君、私はなのはちゃんの友達でただの正義の味方だよ? 」
「正義の……味方? 」
「そ。正義の味方。まぁ〜それは置いておいて、取り敢えずなのはちゃん運ばないと。すずかちゃん達も心配する事だし」
そう言ってフェレット君を言いくるめた私はなのはちゃんをすずかちゃん達のところへと運ぶ。当たり前だが二人ともなのはちゃんが目覚めるまで心配しっぱなしだった。
原作は始まっている、だからこれからは平和ではいられそうにない。私はそう覚悟した。
◇◆◇◆
「きゃっ!? 何!? やめてくださっんぐ!? んー!? 」
「え!? 何!? 嫌だ!?助けっんぐ!? 」
なのはちゃん達とのお茶会から数日後、私……月村すずかは帰り道、たまたま一人だった為に何者かに誘拐された。でも私一人じゃない、たまたま私の側を歩いていた男の子も一緒に。
それから私達は目隠しをされ何処をどう運ばれたのか分からない。けどまるで絵に描いたような廃墟に監禁された。私達の周りには黒い全身タイツの様なものを着た怪しい人達が何人かで見張っている。
しかし幸い私達は今縛られたりや目隠しはされていない。おそらく私達が子供だからだ。
「あの……大丈夫? ごめんね? 多分私の所為でこんな事に…………」
「あはは……別に気にしないでください。別に月村さんの所為じゃないと思うし。運が悪かっただけですよきっと」
「あれ? どうして名前知ってるの? 」
「……いや……なんというか、同じクラスなんですけど…………」
「え!? ご、ごめんね!? えっと……えっと…………」
必死に頭を回しこの男の子の名前を思い出そうとする。しかし思い出せない。今考えればこの子と喋ったこともなければまともに顔を見たこともない。私達のクラスは割とみんな仲のいいクラスだ。だからクラスメイトの名前ぐらいは私はみんな覚えているつもりだった。だけどこの子だけポッカリと抜けている。
「ああ〜いいですよ別に……あまりみんなと関わろうとしなかった僕が悪いですから」
「ん〜と……取り敢えず敬語やめない? 私達同じクラスなんだし。今更だけど私は月村すずかです。貴方の名前、もう一度教えてくれないかな? 」
「敬語……うん。僕の名前は飛影 潤っていうんだ」
こんな状況で自己紹介はおかしい事、だけど今はそんな普通の会話が私達を落ち着かせてくれる。不安な今をなかった事のように忘れさせてくれる。しかしそんな時間も長くは続かなかった。
「潤君っておとなしいね? 」
「いやその……ん? 今……名前……どうして」
「え?だってもう私達友達でしょ? 私は潤君と友達になりたい。だから私の事はすずかって呼んでね、潤君? 」
「……う、うん! すずか……ちゃん? 」
「うん! 」
こうして私達は世間話のように話をし、今怖い気持ちを必死に誤魔化した。けどいつまでもそんな事が続く訳もない。私達は無理やり周りの黒タイツに立たされる。そしてそのまま何処かへと連れて行かれた。
階段を上がり、少し歩いたさきの大きな部屋に連れて行かれた私達はそこにいた人影を見て震え上がった。何故ならその人影は人間じゃなかったからだ。まるでコウモリのように両腕には羽根があり、顔は鋭い牙。
潤君は潤君で目の前の怪物に見覚えがあるのかさっきより一層震えている。異常な光景と雰囲気、まだ幼い私達の心はあの怪物を見ているだけで折れそうだった。
「また……あの時と同じような怪物……ど、どうすれば……このままじゃ僕達た、食べられて」
「!? 」
食べられる。潤君の言った一言は私の恐怖を増大させる。私はここではあの怪物の餌でしかないのか。だとすれば私達が助かる道などない。あの怪物からしてみれば私達など単なるディナーだ。抵抗など勿論できない。
「オマエ、オマエノセイメイエネルギーハ、ホカノニンゲンヨリツヨイ。モノスゴクウマソウダ。オマエタチ、ニガスンジャナイゾ? 」
「「「ウィー!」」」
怪物は私を指差してそう言った。もう私は我慢できなかった。怪物は私の方へとゆっくり歩いてくる。
逃げようにも周りにいた黒タイツに押さえつけられ私は身動きが取れない。私は泣き叫んだ。まだ死にたくない、食べられて死ぬなんて嫌だ。そんな事を何度も何度も叫ぶ。しかしそんな事で怪物の歩みは止まらない。
怪物に慈悲などないのだ。ヨダレを垂らし、私を食べる為に足を進める。
「い゛や゛だ!? い゛や゛!? 誰かだずげで!? あ、ああ……!? ……潤……君? 」
「キィィィ? ナンノマネダ? オマエハツギニタベテヤル。ダカラオトナシクマッテイロ」
「や、やめてよ……お願いです。僕達を食べないで。……もしどうしても……ひぐっ……ぼぐだぢをだべる゛な゛ら゛……うっ、この子は、すずかちゃんは許じてあげてくだざい゛!!! 食べる゛な゛ら゛、ぼぐをだべで!!! 」
泣きながら潤君がこれ以上出ないだろうと思えるくらい大きな声でそう言った。私をかばっている。潤君だって怖いはずだ。なのに潤君は両手を広げ怪物の前に立ちはだかる。その足はガクガクと震えて今にも崩れ落ちそうだった。
その時だ怪物が手を下に下げ、その歩みを完全に止めた。だから許してくれたのかもしれないそう思った。しかしその勘違いは命取りだった。
「ハナカラオマエ二ハ、キョウミハナイ。タダノオマケダ。ダカラモウイイ、シネ! 」
「うっ!? 」
「っ!? ……潤……君」
怪物は突然潤君のお腹に手から生えている長い爪を突き刺す。そしてそのまま潤君の足はゆっくりと地面を離れ、上に上げられた。
潤君は突然の事で何をされているのか理解してない。
「え……これ……何? お腹に何か……っ!? う゛わ゛ぁぁぁぁあああああああああああああ!? い゛だい゛!? だずげて!? ごふっ!? あ……」
「メザワリダ、キエロ」
「あ……そんな……潤君!!! 」
潤君はそのまま窓の外に放り投げられた。私達が階段で上がったのは3階。そうなると少なくてもここは3階だ。元々最初にいた階が何階なのか分からない、だから本当はもっと高いかもしれない。そうじゃなくても3階以上の高さから放り投げられたのだ、生きていられる可能性は極めて低い。ましてや潤君はお腹を貫かれている。
時間の問題、どっちにしても潤君は助からない。
「サァ〜ショクジノジカンダ」
「い……や……。いやぁぁぁぁあああああああ!? やだ、やだ、やだ!? 助けて、誰か助けてぇぇぇぇぇええええええ!!! 」
◇◆◇◆
窓の外に放り投げられた僕は不思議な事にまだ意識を保っていた。こんなに痛いのにも関わらず地獄のような痛みが僕を襲っていた。
走馬灯、僕は自分が落ちているのをゆっくりとした感覚で捉えている。自分の家族、今までの思い出。そして僕の初めての友達、すずかちゃん。
その姿が自分の中で繰り返し浮かんでくる。僕は守りたかった。僕に……僕と友達になりたいと言ってくれたのは彼女が初めてだったからだ。
だから僕は坂城さんのように、すずかちゃんを守りたかった。でも結局のところ、僕には何の力もない。弱い、誰も守る事なんてできない。このままではすずかちゃんはあの怪物に食べられてしまう。
けどそんなのは嫌だった。しかしそうは思っても僕には何もできない。
「がふっ!? あ……う…………」
とうとう僕は地面に叩きつけられた。激しい痛み、死んでもおかしくない筈だ。しかし僕はまだ生きている。
僕を中心に血が広がり息も上がり始めている。死ぬのは時間の問題だ。
上を見ると割れた窓ガラスが見える。4階、僕が落ちたのはどうやら4階のようだ。
「いやぁぁぁぁあああああああ!? やだ、やだ、やだ!? 助けて、誰か助けてぇぇぇぇぇええええええ!!! 」
すずかちゃんの悲鳴が僕のところまで聞こえる。でも僕の身体は指一本動かすことは出来ない。所詮、僕では誰かを守るなんてできるわけない……そんな悔しい気持ちがすずかちゃんの悲鳴を聞く度に大きくなっていく。
するとその時、仰向けで倒れている僕の上に一枚のカードがひらひらと落ちてきた。僕が震える手でやっとカードを掴みそれを見るとそのカードは僕が拾った坂城さんのカードだった。おそらく落ちている時僕のポケットから飛び出してしまったのだろう。
「僕は……うっ……ま゛も゛り゛だい゛……ひぐっ……あ゛の゛ごを……ごふっ!? ごほっ、ごほっ……すず……かちゃんを……守りたい!!! ……っ!? な……に? 」
いつも間にか僕の真上に青く光るひし形の小さな宝石が浮かんでいた。そしてその宝石は突然物凄いスピードで僕のお腹へと侵入し僕は激しい痛みに襲われた。
激痛で叫び、辺りに僕の声がこだまする。
「う……あ……い、たい……!? これ……何? そう……いえば……坂城……さんも、こんな……ベルト……して……た……ような……え!? カードが……変わって…………」
気がつくと僕のお腹には坂城さんがしていたみたいなベルトが巻きついており、色は緑で中心の宝石はひし形で青かった。さらにその宝石を中心として色々なマークが円状に刻まれている。
そしてカードだ、最初の絵柄はなくなり真っ赤な戦士へと変わっていた。
「これで……何かが……変わるのなら……変……身! 」
【マスクチェンジ……レッカ!】
僕は坂城さんがやっていたようにベルトを回転させカードを差し込む、そしてベルトを元に戻した。するとベルトから電子音のような声が発せられその瞬間僕の身体は光に包まれたのだった。
次回もよろしくお願いします。