魔法少女リリカルなのは!?「フェイクヒーロー」 作:ヘルカイザー
ではよろしくお願いします。
「答えなさい! 貴方は何者なの!! 」
「僕は……M・HERO 剛火」
怪人の反応を頼りに来てみればあのコウモリ怪人はいとも簡単に倒された直後だった。なのはちゃんにも協力を仰いで、用意は万全。今度こそあいつをと思っていたのに……私の目の前には赤い仮面の男がいる。
私が男と思ったのは呼称が僕だったのと声が男っぽかったからだ。しかし、原作に……勿論リリカルなのはの世界にこんな奴はいなかった。だからこの世界に怪人を生まれさせてしまった事によるイレギュラーなのか、それとも私と同じ転生者なのかそれは分からない。だけど要注意、私はそう思った。
怪人を倒してくれたのは感謝している。でも今の段階では敵か味方か判断できないからだ。
「あんたは何が目的なの? それにその姿は……っ!? それ……ジュエル……シード…………」
「え!? ほ、本当だ!? あ、あの? それ渡して貰いたいんですけど? 」
改めて男の姿を観察した時、こいつのベルトに埋め込まれてる中心のひし形の宝石がジュエルシードだと分かった。だとすればジュエルシードの暴走によって生まれたものだとも判断できる。
だから私はジュエルシードを返してと言いながら仮面の男に近づいて行くなのはちゃんを止めた。もし敵なら何をしてくるか分からない。下手に近づかないほうがいい。
そう警戒していた時、突然どこから降ってきたのか白いワンピースを着た黒髪の少女が私達と仮面の男の間に現れた。
「よっと! はい、そこまでじゃ。こやつのベルトに埋め込まれてる宝石は取り出さない方がいい」
「いきなり出てきて何言ってるの!? 誰よあんたは!? そいつの仲間? それにその宝石は元々あんた達の物じゃ」
「それを取り出したらこやつが死ぬとしてもか? 」
「え…………」
信じられない情報が耳に飛び込んできた気がした。でも聞き間違いじゃない。ジュエルシードを取り出したら目の前の男は死ぬ、ハッキリと聞こえた。
何故、原作にそんな関わり方した人間なんていなかった筈なのに……変わってきてしまっている。私の知ってるリリカルなのはの原作が確実に変わってきてしまっている。私はそう思った。
しかしだからと言ってどうこうできるわけではないのだが、私は急に不安になった。
「あ!待ちなさい!? どこに行く気!? 」
「……僕は君のように強くないから……だから強くなりたいんだ」
「と、突然何を言いだすのよ……。わ、私はあんたなんて知らないわよ? 」
「知ってるわけない…………」
仮面の男を一度は引き止めた、でもそう言うとまた歩き出す。それ以上は私も何を言おうとも、追いかけようとも思えなかった。どうしてか分からない。しかし見えたのだ……その仮面の男の背中が語っている。孤独と悲しみが…………
◇◆◇◆
「潤君どうしてあんな事したの!? 聞いたよ? 病院から脱走したんだって? まだ怪我治ってないのにどうして!? 」
「い、いや……その……ごめんなさい…………」
私が怒ると潤君は俯いてしまった。少し言い過ぎたと思ったけど、私は潤君が病院から出て行ったと聞いた時凄く心配した。だからこうやって声を荒げている。
看護婦さんの話では脱走した次の日に戻って来たらしい、けど怪我が一つ二つ増えていたようだ。その証拠に怪我がなかった箇所に包帯が巻かれている。
「もうこんな事しちゃ嫌だよ? 次やったら……」
「つ、次やったら? 」
「う〜んと……あ!そうだ、私の言う事何でも一つ聞いてもらいからね? 」
私はそう言って潤君に約束させた。じゃないと治るものも治らない。私は潤君には早く元気になって欲しかった。いつまでも病院じゃなくて一緒に遊びたいし学校にも行きたい。後私の友達とも仲良くなってほしいと言う理由もある。
「それで潤君? さっきから気になってるんだけど……その子誰? 」
「なんじゃ? さっきまで二人きりのイチャラブ空間じゃったのに突然我を混ぜるとは良いのか? 」
「な、何言ってるの!? じゅ、潤君はただの友達だよ!? 」
私が来るより前に元々部屋にいたワンピースの女の子は私が話しかけると突然からかい始めた。私は思う、学校でもここでも最近からかわれる事が多くなった。別に嫌になる程じゃない。だけど恥ずかしい事ばかりだ。
「ほほぉ〜? なら何故そんなに顔を赤くしているんじゃ? まさか……図星じゃったか? 悪い悪い、冗談じゃったのじゃが……まさかな?」
「え……その……っ!? 潤君私帰る!? 」
「え!? すずかちゃん!? ……行っちゃった……」
◇◆◇◆
「すまんな、お楽しみのところを邪魔して。あの手の女子をみているとついからかいたくなってしまう。許してくれ」
「はぁ……僕は別にいいけど……あまりすずかちゃん虐めないでくれよ。嫌われたら……嫌だし。せっかく友達になれたからさ」
「別に虐めてなどいない、ただの戯れじゃ! それにあの娘がお主を嫌う事などあるわけないと思うがの? 」
コウモリ怪人を倒して以来、四六時中僕の側をこの子は離れない。しかしいつまでもいるというわけでもない。いつの間にか消える時もあれば、突然現れる。だからよくわからない存在だ。僕の変身について詳しかったり、周りのいろんなことに興味があるようで何かと言えば詳しく僕に聞いてくる。
例えば病院の病室についている冷蔵庫。これに関してはどうして中から冷たい冷気が出るのか、場所によって何故凍っているのだと納得するまでしつこく聞いてくる。
「それってどういう事? 」
「ん? なんじゃ、分からんのか? 鈍感じゃのぉ〜? なら内緒じゃ。精々頑張るが良い」
「頑張るって何を? はぁ……まぁ〜いいや。ところでさぁ? 君は誰なの? そろそろ名前くらい教えて欲しいんだけどさ」
そう言うとこの子は僕のベットに上がり込み、また僕の上に馬乗りになった。怪我人なのだから少しは考えて貰いたいと思うが、この子が軽すぎる為か痛くないので気にしなかった。
「なんじゃ? 我に興味があるのか? そんなに知りたいのか? ん〜? どうなんじゃ〜? 言ってみ? 」
「い、いやだからそう言って」
「我はお主の一部じゃ! 」
「え……一部? 一体何を言ってるの? 」
「信じられんか? しかし事実じゃ、あの日。我は死にかけたお主の願いを聞き入れた。本来我には願いを叶える力はあってもそれを正しい方向に動かす力はない。だがあの日、お主の持っていたカード……その力によって我の力は通常とは異なる働きをした。お主の失った臓器……その代わりをし、その命を繋げ、さらには我の力をベルトという形でお主の中に固定したのじゃ。どういうわけか意思まで植えつけてな? 」
僕は開いた口が塞がらなかった。この子の話を聞いて大体の事は理解した、いや、できてしまった。今目の前にいるこの子が誰なのか。何故いつも僕の側を離れないのか。何故僕の変身についてここまで詳しいのか。その答えは簡単だ。何故ならこの子は…………
「そうじゃ……我はお主の中に侵入した宝石。呼称をジュエルシード。お主が変身し、コウモリ怪人を倒した夜にあの娘も言っておったじゃろ? ジュエルシードと」
この子は僕のベルトについているひし形の青い宝石だ。僕の近くでしたその姿を保てない、だからいつも一緒にいる。変身に詳しい理由もベルトの一部なのだから知っているのは当然。
しかしもう一つ僕は今の悩んだ事がある。それはこの子の名前だ。ジュエルシードと呼ぶのは長いしなんか名前っぽくない。
「う〜ん。まぁ〜簡単にジュエでいいか。君の呼び方それでいい? ジュエルシードだと呼びにくいし…………」
「……好きにするが良い。どう呼ばれようが興味はない。ふふ、今私の興味はこの納豆じゃ! なんじゃこのネバネバとした物質は!? 一体どんな原理なのじゃ? 」
「いや……ごめん、そんな事聞かれても分からない」
昼食で僕が残した物をこの子は物珍しそうに抱え箸でぐるぐるとかき混ぜていた。納豆の原理とか聞かれても僕に分かるわけない。本当にこの子はよく分からないものが好きだ。この間だって窓のガラスを触って「壁があるぞ!? 」なんて驚いていたし。
「まったく、使えん! 知識のない奴じゃ! 」
「そんな事まで詳しい奴の方がおかしいから!? 」
◇◆◇◆
「話って……何かな姫子ちゃん? 」
「ごめんねなのはちゃん。でもなのはちゃんには聞いて欲しくて……この間の怪人いるでしょ? 勿論怪人ってあれだけじゃなくて他にもいると思うんだけど…………」
私……高町なのはは今、姫子ちゃんに話があると言われ誰もいない放課後の教室に二人きり。誰かが見ていれば間違いなく勘違いされそうな夕暮れの雰囲気の中、姫子ちゃんは怪人の話を始める。
その顔は真剣、なら私が聞かない理由もない。
「まずね……その……私はこの世界の人間じゃないの!! 」
「え? ……その……アニメの見過ぎじゃないかな? 」
「え!? ち、違うの!? 思い込みとかじゃなくて、本当の事なの! 信じられないかもしれないけど……それで、あの怪人は私の所為で生まれた存在。最初は自分一人でどうにでもなる物だと思ってた。でも最近怪人達は私の想像を超えて強くなってきている。私の……手に負えないくらい!? だから……なのはちゃんにこれから協力して欲しくて……」
私は今の姫子ちゃんにイラっときた。私は以前言ったはずだ、姫子ちゃんが一人でキツイようなら私も手伝うと。なのに姫子ちゃんは私がそこまで頼まなければ手伝わないとでも思っているのか俯いて私の返事を待っている。
らしくない、それに例え怪人が現れたのが姫子ちゃんの所為だとしてもそれがなんだと私は思う。そんな事は私が姫子ちゃんを助ける為の理由には何の関係がない。姫子ちゃんがあの怪人を倒す、その為に頑張っているのだ。私が手伝わないわけない。
「姫子ちゃん……見損なわないでくれるかな? 例え姫子ちゃんが何をしていたって、怪人が現れたのが姫子ちゃんの所為だとしたって私は姫子ちゃんの味方だよ? だって姫子ちゃん……優しいもん! それに私達友達でしょ? 」
「なのはちゃん……ありがとう!!! 」
「ちょっ!? ひ、姫子ちゃん急に抱きついたら危なっきゃ!? 」
姫子ちゃんは涙目になり私に抱きついてきた。私は勢いに負け姫子ちゃんを抱いたまま後ろに倒れる。しかしその直後、姫子ちゃんが急に私から離れ立ち上がった。そして何やら驚きに満ちた顔をしている。
まるで何かに気づいたようなそんな顔だ。
「奴らだ……けど……そんな馬鹿な。こんな事って……まだ夜になってないのに…………」
「姫子ちゃん、怪人なの? なら早く行かないと! また誰かが襲われたら大変だよ!? 」
「う、うん! 」
私達はすぐに姫子ちゃんの案内で怪人の反応がある公園へと向かった。しかしそこには何もいない。でも反応は確かにあるようで姫子ちゃんは周りをキョロキョロ探している。だがその時だ、地面が揺れ私の下から何かが這い出てきたのは。
「きゃぁぁぁああああ!? 」
「っ!? なのはちゃん!? 」
「ツカマエタ! 」
出てきたのは怪人だ。まるでノミを大きくしたようなそれは地面から這い出るなり私を捕らえ、私の顔を右手で掴む。それで身動きの取れなくなった私は完全に人質のような感じになってしまった。姫子ちゃんはそれを見て悔しそうに固まっている。
「くっ……これじゃ……手が出せない…………」
「姫子ちゃん私はいいがっ!? うっ……いやぁぁあああああああ!? 痛い!? 首に何かが!? あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!? 」
「なのはちゃん!? この……何をした!? 」
「フフフ、イマドクヲチュウニュウシタ。コイツハモウタスカラナイ。オレノドクハ、タイナイニシンニュウシテカラニジュウヨジカンゴニノウサイボウをクイツクス。タスケタケレバ、オマエガココデオレニクワレロ。ソウスレバコノムスメダケハタスケテヤル」
「姫子……ちゃん、ダ……メ……だよ…………」
姫子ちゃんは怪人がそう言うと自分の腰にあるベルトを左右に引っ張り自分の装備を解いた。そしてその場に座り込み、いつでも殺してくださいと言わんばかりの無防備。私は意識はあるものの身体から力が抜け、もう怪人に支えられなければ立つこともできなくなっていた。
このままでは私は死ぬ、そう聞かされ怖くなかったわけじゃない。でもそれ以上に姫子ちゃんが目の前で食い殺される方が私はよっぽど怖かった。
そして怪人は私をその場に放り投げ姫子ちゃんに近づいていく。
「やめ……て……姫子ちゃん……戦って…………」
「イイドキョウダ! 」
「うぐっ!? ぐっ……くっ…………」
「フフフ、テイコウサレテモメンドウダ」
「うがっ!? い、い……ぁぁ……っ!? いやぁぁぁぁああああああああああああああああ!? 」
怪人は私にした時と同じように怪人の口についているストローのようなチューブを姫子ちゃんの首に突き立てた。その瞬間は想像以上に痛い為姫子ちゃんは私と同じように悲鳴をあげる。その後、姫子ちゃんはぐったりとし怪人に掴み上げられた。
「あ…ああ……」
「サテ、イタダクトシヨウ! 」
「ぎっ……ぎゃぁぁぁああああああああああ!? 痛い!? 吸われてる!? 何かが吸われてる!? 」
「フフフ、スッテイルノハ、オマエノチダヨ。アト、ゴフンモアレバゼンシンノチハスベテナクナル」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!? いや!? こんな死に方嫌!? 痛い!? 殺して!? 今すぐ殺してぇぇぇええええ!!! 」
姫子ちゃんは耐え難い激痛に今すぐ殺してくれとせがんでいる。私の目からは涙が流れ始めていた。自分が死ぬからではない。友達が何の抵抗もできずに殺されようとしている。しかも苦しみに悶え、死にたいとまで言っているのだ。悔しかった。弱い自分がとてつもなく悔しかった。
「だ……れか……助……けて? 姫子……ちゃんを……助けて? 」
「うっ……あ゛ひっ…………」
「っ!? 誰かぁぁぁああああああああああ!!! 」
「ハァァ!!! 」
「グガッ!? ナ……ニ…………」
私の今出せる精一杯の気力、声量で出した助けを呼ぶ声は……届いた。叫びと共にやってきた赤いアーマーを着たその人は、怪人を蹴り飛ばすと宙に浮いた姫子ちゃんをキャッチし、私が倒れてる側に着地した。そして私の側におろす。
「剛火……さん? 」
助けてくれたのはM・HEROと名乗った剛火さんだった。私が尋ねても剛火さんは一言も口を開かない。ただ黙って怪人の方へと歩き出す。
そして私は姫子ちゃんの方を見た。弱ってはいるが生きている。私はその事に安堵し、そこで気が抜けたのか気を失った。
◇◆◇◆
「クソッ!? オマエハナニモノダ!? ナゼオレノジャマヲシタ!? 」
「僕は……お前達怪人の邪魔者だ! 覚えておけ! 」
【ファイナルマスクドライブ……ゴゴゴ ゴウカ!! 】
「ジャマモノダト!? フザケルナァァアアアアア!!! 」
怪人は僕の発言に癇癪を起こし僕に向かって突撃してくる。こういう怪人なら苦労がなくていい、そう思い僕は怪人に背を向けた。
「セイァ!!! 」
「ナメルナ!? っ!? ガボッ!? ……ウッ……グガッ!? ……ナ、ナンダコレハ……ウガァァァアアアアアアアアアア!? 」
僕は怪人が真後ろに来ると同時に回し蹴りを放つ。それをまともに直撃した怪人は地面に転がったのち、コウモリ怪人のようにひび割れて爆発した。
そして僕は急いで坂城さん達の元へ走る。しかしその足は何者かに止められた。僕の前にクレーターができたのだ。でも目の前に誰かがいるわけでも無い。
「なんだ……っ!? しまっ、がはっ!? 」
「俺ノ怪人をコウモ簡単ニ倒ストハ、中々ヤルナ? 貴様何者ダ? 名前ヲ覚エテヤル! 」
突然横から僕を吹き飛ばしたのは黒いマントを着て仮面を被った怪人のような奴だった。けど怪人にしては言葉が少しはっきりしている。僕は立ち上がりそいつを真っ直ぐ見た。そいつも僕から視線を外さない。
「くっ……M・HERO……剛火! 」
「剛火……覚エテオコウ! アア、ソレト急イダ方ガイイ! サモナクバ、ソコノ小娘共ハ死ヌゾ? サラバダ」
「なに!? くっ!? 」
さっきまでそこにいたはずの黒マントは闇の中に消え、その瞬間僕は走った。坂城さん達の元へ。たどり着くと、二人は衰弱し、今にも死にそうな様子だった。特に高町さんの状態は酷い。息は切れ呼吸も浅い。さらには熱もあるようで身体は汗ばんで熱くなっている。
同時に危ないのは坂城さんもだ。さっきの怪人による吸血で貧血になり、顔は真っ青、血がかなり足りてない様子だ。
「くそ!? どうすればいい…………」
「その茶髪の小娘にはお主の炎を流し込んでやれ。それからそっちの赤髪の小娘は早く病院に連れて行ってやることじゃな? 」
「って!? ジュエ!? またいつの間に!? というか……それでいいの? 僕の炎なんかで…………」
「フフ、無論じゃ! お主の炎にはあらゆる邪気や悪の思念を燃やし尽くし浄化する力がある。大丈夫じゃ、それでこの小娘が火傷したりはせぬよ」
「そうか……なら」
僕は手に炎を灯し、怪人に刺されたであろう首筋に炎を灯した手を当てがった。すると苦しそうだった高町さんの顔はだんだん落ち着いてきて息も整った。多分もう大丈夫だろう。だから僕は二人を抱えて病院へと飛んだ。
結果的に二人共病院で診てもらい大事には至らなかった。しかしこの後病院に戻った僕は悪夢を見る事になった。何故ならお怒りモードのすずかちゃんが病室で睨みながら待っているとは思わなかったからだ。
◇◆◇◆
「潤君? 私に何か言う事……あるよね? 」
「え……その……ごめんなさい」
「どこに行ってたの!? 」
「えっと……トイレに」
「あんな長いトイレあるわけないよ!? 」
私はトイレに行っていたと言う潤君に迫りそれはあり得ないと否定する。何故なら潤君がいなくなってから軽く2時間は経っているのだ。いくらなんだって2時間もトイレにいるわけない。
だから私は今度という今度はどこで何をしていたか潤君を問い詰める。しかし潤君は頑なに答えようとせず、その度に色々な言い訳が飛び出してきて私はそれを片っ端から論破し否定していく。
けどそのうち潤君の方が謝りながら泣き始めてしまった。別にそんなつもりはなかったのだけど。
「ひぐっ……ごめんなさい……うっ、うっ……ごめん……なさい」
「はぁ……もういいよ潤君、私の負け。これ以上聞かないから泣き止んで? 」
そう言い私は潤君の頭を撫でる。泣かしたのは私だけど、でもそれは潤君を心配しての事だと理解してほしい。それでしばらく潤君を撫でていたのだけどいつの間にか寝てしまった。
潤君はいつも頼りなくて、こうして私が怒っただけで泣いてしまうような弱い男の子だけど、本当に大事な時は勇敢でかっこいい。
「でも……もうちょっと男らしくして欲しいかな」
「ごめん……父さん、母さん……僕が…………」
「どうしたのかな? 怖い夢でも見てる? それにお父さんとお母さんの事呼んでる……そう言えば、最近潤君のお父さんとお母さんを見ていない気がする…………」
潤君のお父さんとお母さんはお見舞いに来れば結構な頻度で遭遇していた。でもここ最近はめっきり見なくなってしまった。ただタイミングが悪いだけだと思うのだけど。
そんな事を思いながら潤君の寝顔を眺めていた時だ、私は急に眠くなってきた。しかし眠気とかそんなレベルじゃない。気がつけばもう意識を失っていた。
「潤……君…………」
◇◆◇◆
「……ん?……っ!? え、すずかちゃん!? お前は……あ! 待て!? 」
僕が目を覚ますとすずかちゃんはどういうわけか怪人に抱えられていた。こんな病院にまで奴らは入り込んでくる。でも僕の見ている前で良かった。これならまだ助けられる。そう思い僕は怪人を追いかけた。病室を出てひたすら走る。階段を登り、登り、また登り。結局屋上まで追いかけた。
「はぁ……はぁ……すずかちゃんを……はぁ……返せ!! 」
「バク〜。イヤダ、コノムスメノセイメイエネルギー、オイシソウ! ダカラ、バク、タベルバク! 」
怪人は幻獣である獏を大きくしたような姿で体はクマ、鼻はゾウ、目はサイ、尾はウシ、脚はトラのようにそれぞれ似ている。すずかちゃんが眠っているのはおそらく怪人が獏を媒体として作られているからだ。夢を食べると言われてる獏なら眠りに関する能力を持っていても不思議じゃない。
僕は両手を腰にかざし、ベルトを具現化する。そして左腰についているカードホルダーから剛火のカードを取り出した。
「どうしても返さないと言うのなら僕も容赦しない。力尽くで行かせて貰う! ……変身! 」
【マスクチェンジ……ゴウカ! 】
「!? ナ、ナンダソノスガタハ!? オマエ、イッタイナニモノバクカ!? 」
「僕は……お前達怪人の邪魔者だ! 覚えておけ! ハァァ!!! 」
僕はそう言い放った瞬間、怪人に突っ込んでいった。
◇◆◇◆
「はぁ……カッコ悪……なのはちゃん巻き込んだ上にボロボロで、しかも殺されかけるなんて…………」
私は怪人に敗れ、病院に入院する事になった。とは言っても検査入院程度だから3日ぐらいで退院出来るって言われた。
なのはちゃんは怪人に毒を注入された以外特に外傷もなく、あのM・HEROと名乗った男によって毒を取り除いて貰ったようで入院する必要もなかった。
情けない、それが私の頭の中を駆け巡る。私はただ力をもらい、それを楽しみたいだけだった自分勝手な人間だ。
憧れ、それを間違った方向に目指してしまった。しかもそれを犠牲を出してから気づくなんて……本当に愚かでどうしようもない。
「私は……なのはちゃんに……これからどんな顔して会えばいいの? わ゛だぢは……だい゛じな゛お友達を゛……っ!? え……」
「うっ……ぐっ……さ、坂城……さん…………」
こんな夜中に私の病室に誰かがぎこちない足取りで飛び込んできた。そしてそのまま近くの壁にもたれかかるように座り込む。
私は急いで涙を拭いその人影に近づく。すると私の病室に飛び込んで来たのは同じクラスの飛影君だった。しかし、彼は何をして来たのか頭から血を流し、服もボロボロだった。
「あ、あんたどうしたの!? と言うか何で私が入院してるの知ってるのよ……今日入院したばっかなのに…………」
「はやく!? ぐっ……お願い……だ! す、すずかちゃん……が……怪人に……うっ……さらわれた。だから助けて……ください…………」
それを聞いて私は固まってしまった。今度は……すずかちゃんまで被害にあってしまったからだ。私の所為でどんどんみじかな人達が傷ついていく。私がしてしまったことは本当に取り開始のつかない事なのだと改めて思い知らされた。しかし私は動けなかった。身体が万全じゃないからとかそういう理由じゃない。
「ご、ごめん……無理だよ。私……怖いの…………」
「怖……い? 」
「私さ……怪人に負けて……殺され……がげで……ごわ゛ぐで……な゛ざげな゛ぐで……わ゛たぢ、わ゛だぢ……もうだだがえな゛い゛…………え゛? ちょっ!? ど、どこに行くの? 」
「ぐっ……すずか……ちゃんを……助けに……いく」
飛影君はボロボロの身体を無理やり起こし、私の病室を出ようとする。しかしそんな身体で生身の……それも子供なんかが怪人に挑めば殺されるのは目に見えている。だから私は飛影君を止めた。彼の腰にしがみつき、彼を止める。だけど彼は病室のドアを開け部屋から出て行こうと無理やり歩き始めた。
「無茶よ!? 貴方が行ったって、殺されるだけだわ!? 」
「……坂城さんは……僕にとってヒーローだ。本当は僕なんかより全然強いヒーロー……だから僕は信じている。坂城さんがまたみんなの為に戦ってくれるって! だからそれまでは……うっ……僕が戦う! ぐっうっ……」
「ちょっ!? 大丈夫!? 」
飛影君は足の力が抜けたのかその場に崩れた。彼が言う事を私は受け止めきれなかった。私がヒーロー……そんな資格はないと思ったからだ。確かに力がある分彼より強いかもしれない。でも心は彼の方が強いと思う。誰かの為にここまでボロボロになって……それでもなお、立ち向かえるのだから…………
それに引き換え……私は弱い。たった一度の敗北が、その恐怖がこんなにも恐ろしいものだなんて思わなかった。けど……だからこそ…………
「いいわ。あんたはここで待ってなさい。すずかちゃんは私が助ける」
「……坂城さん? 」
「なるわ……ヒーローに。あんたに憧れて貰うに相応しいヒーローに! 私はなるわ! だから……安心して待ってなさい! 」
「ありが……とう…………」
飛影君は私の言葉に安心したのか気を失った。そして私は着替え、すずかちゃんを助けに向かう。幸い、怪人の反応は感じられる。だから場所を特定するのはそんなに難しい事じゃない。
「見つけた! 」
私は怪人に追いつき、刀姫をだした。そしてそれを振り下ろすと怪人はこちらに気づいたのか私の攻撃を避けた。しかしその瞬間、怪人は避けるのに夢中ですずかちゃんを手放した。だから私はすずかちゃんをキャッチし、少し離れた所に下ろすとすぐに怪人の方を向き構えた。
「バク〜。ボクノエサカエセバク〜! ゴチソウバクヨ〜? 」
「黙りなさい! 私の友達をよくも攫ったわね? それに貴方は何の力もない彼を傷つけた。だから私は貴方を許さない! 」
「姫子ちゃん! 」
「え、なのはちゃん!? 」
突然バリアジャケットを着たなのはちゃんが私の横に降り立った。その様子を見てるともう身体は大丈夫そうだがなのはちゃんは少しムスッとした顔で私を見る。でも私の所為で酷い目にあったのだ怒るのは無理ない。
「どうして一人で出て行ったの!? どうして私に連絡を入れてくれなかったの? 」
「なのは……ちゃん…………」
「私は言ったよ!? どんな事があったって、私は姫子ちゃんの味方だって! だから一人で行かないで、戦わないで! 私も一緒に戦う! さっきは失敗しちゃったけど……今度は大丈夫だから! だから姫子ちゃん、一緒に!! 」
「なのはちゃん……うん! 約束する! ……っ!? え……このカードって…………」
なのはちゃんと誓いを交わした瞬間、私のライドブッカーからカードが3枚飛び出した。そのカードとはなのはちゃんの絵柄の描いてあるカード、それからなのはちゃんとレイジングハート、それがカードの絵柄の描いてある所を対角線に斜めに分けてそれぞれ描かれてるカード、そして最後は中心に丸のシンボルマークの描かれてるファイナリティマジカルのカード。
「バク〜! オマエハ、ナニモノダ? 」
「私は……通りすがりの魔法少女よ! 覚えておきなさい! 」
【リリカルライド……ナノハ! 】
「え!? 私と同じ格好になった!? 」
なのはちゃんの絵柄の描いてあるカードをバックルに挿入し、私はなのはちゃんと同じバリアジャケット、そして髪型に姿を変えた。
それを見てなのはちゃんは驚いているが今は怪人を倒す事に集中する。
「なのはちゃん、行くよ? 」
「うん! 姫子ちゃん! 」
【ファイナリティコンビネーションライド……ナナナ ナノハ!! 】
次回もよろしくお願いします。