魔法少女リリカルなのは!?「フェイクヒーロー」 作:ヘルカイザー
ではよろしくお願いします!
「潤君……どうして…………」
「いいから早く逃げて!!! 」
事の始まりはアリサちゃんとの塾の帰り、本当に何気なく上を見た時だった。電線の上に何かがいた。それは間違いなく人間じゃない、あの化け物……怪人だ。それはまるで鳥のようだがとてもそうは見えない。何故なら二足歩行をし、その顔は凶悪そのもの。
「アリサちゃん、走って!? 」
「え!? ちょっ、ちょっとすずか!? 」
私はアリサちゃんの手を無理矢理引き、来た道を戻るようにして走る。アリサちゃんは怪人を見ていないのか何故私が焦っているのかわかってない様子だ。本当は説明したい、だがそんな暇はない。今は一刻も早く逃げなければ私達二人はあの怪人に食べられてしまう。
しかし逃げても逃げても後ろを振り向けば電線の上に怪人がいる。私達を追って来ているのだ。怖い……そんな感情が込み上げてくる。
「ちょっと!? い、いい加減にしなさいよすずか!! はぁ……はぁ……一体……どうしたって言うのよ? 」
アリサちゃんはとうとうしびれを切らして私の腕を無理矢理振りほどき足を止める。私もそれに驚いて足を止めるがそんな悠長なことをしている暇はない。私は焦りながら叫んだ。
「アリサちゃん、お願い今は走って!? じゃないと私達……っ!? アリサちゃん逃げて!? 」
「え……っ!? きゃぁぁぁ!? うっ…………」
「あ……アリサちゃん!? 大丈夫!? しっかり……ひっ!? いや……来ないで…………」
足を止めてしまったのが運の尽き……アリサちゃんは怪人に殴り飛ばされ気を失ってしまう。私は急いでアリサちゃんに駆け寄ったが怪人はそれを待たずにアリサちゃんと私の方へと向かってきた。
そして……潤君が現れた…………
「ダメ、危ないよ!? それに潤君どうして病院から出てるの!? 一体こんなところで何して「そんな事今はどうでもいい!!! 早く逃げろって言ってるんだ!!! 」っ!? 潤……君? 」
いつもの潤君からは信じられない程乱暴な言葉……今の潤君からは真剣さが伝わって来る。しかし緊急時だから仕方ないにしてもこんなに感情を剥き出しにして放たれた言葉に私はショックを受けた。潤君が初めて私を怒ったのだ。
私は痛む胸を我慢しアリサちゃんを抱えて潤君に背を向けた。辛かった、潤君を置き去りのして自分だ達だけ逃げるだなんて……私には耐えられなかったのだ。結局私は潤君に守られている。例え喧嘩をしても、私がふて腐れてお見舞いに行かなくなっても潤君は私を助ける為に必死になってくれた。いつでも危ない時は駆けつけてくれる。それなのに私は潤君が何も話してくれないと言うだけで怒って、お見舞いにも行ってあげない最低な子だ。
「潤君……ごめんね…………」
◇◆◇◆
「ナンダオマエハ? ドウシテジャマヲスル? 」
「僕からも聞きたい事がある。何故お前達怪人はすずかちゃんを狙う? 何故高頻度で彼女をターゲットにしているんだ! 」
「スズカトハ、サッキノムスメノコトカ? フフフ……ガハハハハ!!! ……カンタンナハナシダ、ホンノウダヨ 」
「何? 」
すずかちゃんの狙われる確率は異常だ。これだけの人がいる町で彼女だけがここまで被害にあうのは明らかにおかしい。だとすれば怪人がすずかちゃんをターゲットにしている可能性がある。だから僕はそれが聞きたかった。もしそうなら僕は覚悟を決めなければならない。
「オレタチカイジンガ、ナゼヒトヲタベルトオモッテイル? ソレハヨリオオクノセイメイエネルギーヲエルタメダ。ナラバアノムスメハ、サイコウノエモノダ! アレホドノセイメイエネルギーヲソノミニヤドシテイルノダゾ? ナラバ……タトエオレガオソワナクテモ、コレカラモネラワレルサ。ナゼナラ、オレタチカイジンハ、ツヨイセイメイエネルギー二ヒカレルノダカラナ? 」
「話は分かった……なら、僕はこれからもお前達と戦う必要があるようだね」
「オレモキキタイノダガ? オマエハナニモノダ? マダコタエテモラッテナイゾ? 」
「……僕は……お前達怪人の邪魔者だ……覚えておけ! フッ! ……変身! 」
【マスクチェンジ……ゴウカ!】
僕は両手を腰にかざしベルトを出した後、カードをバックルへと差し込んだ。そして剛火へと姿を変え、怪人に向かい構える。
怪人もまた僕が姿を変えると何やらファイティングポーズを取り始めた。ここまで話に付き合って貰ったのだ。それ相応のお礼をしなければと僕は先に走り出し、鳥怪人に拳を放つ。しかし、怪人は空へと上がりそれを躱した。
だが僕はすかさずカードをバックルへと入れる。
【マスクドライブ……ゴウケンレッカ! 】
「はぁぁぁ……ハァッ! セイァッ!! 」
「グバッ!? ゴガァァァァアアアア!? 」
僕の拳に灯した炎……それを僕は炎弾として2発、空中にいる怪人に放った。怪人は宙に上がった直後だった為にそれを避けられず下へと落下した。
そしてゆっくりと立ち上がる。しかし何かが今までの怪人と違う。下手に感情的にもならない、それでいいてどこまでも冷静というわけでもない。心は熱く燃やし、戦いは冷静沈着……まるで戦士だ。
「オマエハナゼ、ワレラトタタカウノダ? ソノスズカトカイウ、コムスメノタメナノカ? モシソウナラ、アワレナコトダナ? コレカラモアノムスメハ、ワレワレカイジンニオソワレル。オマエハソノスベテヲタオスツモリナノカ? ソノミヲスリヘラセ、キズツイテイクノハオマエダトイウノニ? 」
「……僕がどうなるかなんて関係ない。僕は……すずかちゃんが無事でいるならどんなに苦しくても構わない。それが……一人でいた僕を救ってくれた……せめてもの恩返しだから……だから、お前を倒す! 」
【ファイナルマスクドライブ……ゴゴゴ ゴウカ!!】
僕はバックルへカードを挿入した。電子音が鳴り響き、僕の右足は爆発するように燃え盛る。
対する怪人も雄叫びと共に自分のクチバシを光らせ、僕の方を見て前かがみになった。
そして先に走り出したのは僕、それに合わせて怪人も走り出す。僕達の攻撃は交差した。
「セイァぁぁぁあああああああああああ!!! 」
「クパァァァァアアアアアアアアアアア!!! 」
空中で交差した僕達、互いに着地し少し間を置いた後、先に膝をついたのは僕だ。でもその後怪人の身体からヒビが入り始めた。怪人はそれに悶えている。しかし僕も怪人のクチバシで肩に穴を開けられてしまった。痛みで悶えるのはこちらも同じ。
「クパッ!? ク……パッ……ミ……ゴト……ダ。ギャコッ、クパぁぁぁぁぁぁあああああああ…………」
「ぐっ……倒し……た…………」
怪人は爆発し、僕は変身が解けてその瞬間意識を失った。
◇◆◇◆
「……ん? ……ここ……は? 」
「おはよう……潤……君? うっ…うわぁぁぁん!? よかったぁぁ……よかったよぉぉぉ!? 」
「す、すずかちゃん!? ていうかここ……僕の病室…………」
「うっ……ひぐっ、ごめんね……ごめんなさい……えぐっ、うっ……ううっ…………」
私がアリサちゃんを連れてあの場を逃げた後、私は怪人と戦える姫子ちゃんに連絡を取り、姫子ちゃんと元いた場所に戻った。しかしそこに怪人いない。でも代わりに倒れてる潤君を見つけた。
私は急いで駆け寄る、けどうつ伏せで倒れてる潤君を仰向けにすると潤君の肩は何かで抉られたような怪我があり血も結構出ていた。また、しなくてもいい怪我が増えた……しかもまた私の為だ。
もう私はそれを見た瞬間から涙が溢れている。潤君を病院に連れ戻し、少しは落ち着いたつもりだったが、潤君が起きた途端、また泣いてしまった。
「違うよ……謝らないといけないのは僕。ごめんね、いっぱい心配かけて…………」
「いい、いいの! 今は潤君が生きていてくれただけで……いいよ…………」
もう謝って欲しくない。私の為に傷ついて欲しくない。それが今私が願う事……潤君にお願いしたい事。でも潤君は聞いてくれそうにない。
潤君が病院を抜け出して一体何をしているのかは知らない。だけど私は今一つ知りたい事があった。それは何故潤君があの場に駆けつけられたのかという事だ。
「ね、ねぇ〜? そろそろ……二人のイチャラブ空間を解いてくれないかしら? その……見てるだけで恥ずかしいというか……甘ったるいというか…………」
「ひ、姫子ちゃん!? ……いたの? 」
「最初からいたわよ!? 何によ、あんたの目にはすずかちゃん以外映らないの!? まったく……心配して行ってみればまた無茶やってるわ、怪我してるわで、どうなってのよ…………」
姫子ちゃんに指摘された私は急いで潤君から離れた。ついやっていたが私は潤君に抱きついたまま話をしていたのだ。改めて考えると顔が熱くなる。
姫子ちゃんは姫子ちゃんで潤君を睨みガミガミと文句を言っている。潤君はそれをただ素直に聞いて「はい……はい……」と気を落としながら返事を返すばかり。正直、今の潤君を見てもさっき私達を守ってくれた潤君とは想像つかない程違う。今は弱々しいくてちょっと頼りない感じだ、でもあの時の潤君は凄く男らしかった。頼りになる男の子……そんなイメージ。
「ごめんなさい…………」
「はぁ……もういいわ。というかあんたに聞きたい事あるんだけど? 潤、あんた……怪人の反応感知できるでしょ? 」
「…………」
「はぁ……はい、当たり。本当誤魔化すの下手よね? 」
「ほ、本当なの潤君!? 」
私は驚いた、けどそうなれば全ての説明がつく。一体いつからそうなったのか……少なくても初めて潤君と出会った時にはそんな力持っていなかったと思う。何故ならあの時、潤君は怪人を見た瞬間恐怖で震え上がっていた。もし怪人がいたのが分かっているならもう少し前に怖がっている筈だからだ。
「そうなのかなぁ〜? 」
「そんな目を泳がせて言っても駄目よ! 潤、私の推測だけど……貴方は私より感覚が鋭い筈。私の感知能力はここ最近分かった事だけど、怪人全てに対して反応できるわけじゃない。幾つかは穴がある。けど潤は全て……分かるんでしょ? 」
「……うん……正確には怪人の正確な位置と数もだけど…………」
「はぁ!? あんたそんな事まで分かるの!? もしかしてって思っただけだったのに何よそれ!? ちょ、ちょっと待って……それじゃここ数日で出た怪人の数は? 」
「えっと……4体…………」
潤君がそう言った瞬間、姫子ちゃんは驚いていた。私は怪人が4体も出たから驚いているのかと思ったがそうじゃなさそうだ。そして姫子ちゃんはため息をつく。
「潤……私がここ数日で倒した怪人は2体だけ、にも関わらず何故被害がまったく出てないのか。もしかしてあんた……病院抜け出して今日すずかちゃん助けたみたいに自分を囮にして被害が出ないようにしてたんじゃないでしょうね? 」
「え!? い、いや……そんな事してない……かな? 」
「潤君それ嘘だよ!? 潤君よく病院抜け出してる筈だよ? どうしてそんな危ない事してるの!? 下手をしたら潤君死んじゃうよ!? 」
「まったくね。潤、これを機にこんな事やめて! 今潤が生きてるのは運が良かっただけよ、もしこんな事続けたら死ぬわよ? 」
結局、潤君は首を縦には振らなかった。だからいつも通り私が怒る、しかしその時私はまた潤君が泣くものだと思っていた。けど……その時は違った。目つきは怖いほどキリッとしあの時見た潤君のような表情……それを見た。そして言ったのだ……私達二人の前で。まるで……私達を否定するかのように…………
「僕がやめて……誰も死なないなら……僕はやめる…………」
◇◆◇◆
「潤君、君は私を馬鹿にしているのかね? 一体どうやったら本来の入院期間をここまで延ばせる? 確かに最初の君の怪我は重症と呼べるものだったが君の経過は順調で、二週間もあれば退院してもいいくらいだったんだぞ? それなのにここ最近でやれ火傷だ、やれ肩に穴が空いたなどと……担当医としてとても悲しいよ。少しはおとなしくしてられんのかね? 君はとてもそんな子には見えないのだが…………」
「すいません先生……僕もできれば早く退院したいのですが…………」
「なら少し安静にベットの上にいたまえ。いつどこでそんな怪我をして来てるのか私は知らないがこれ以上続くようだと君は鍵付きの部屋に移動させなくてはいけなくなるよ? いいね? 」
今日の朝の事だ僕の病室に先生が来た。僕の担当医だ。今まで怒られなかったのが不思議なくらいで僕は今お説教されている。ただ、悪いのは一方的に僕な為ただ謝るしかない。鍵付きの部屋に行かされると面会も禁止だと先生は言った。正直そうなるのは嫌だった、すずかちゃんに会えなくなるからだ。僕の入院生活の中で友達と会うのが僕の一番の楽しみになっていた。だからそれを奪われるのは僕としても悲しい。
本当は僕だって早く治して学校にも行きたいのだ。しかし怪人は絶えず現れ誰かを襲う。僕は嫌なんだ。父さんや母さんみたいに誰かが……例え知らない人でも怪人に食べられてしまうのなんて…………
「それじゃ潤君、私は戻らないといけないから。くれぐれも安静にだよ? 」
「はい…………」
そう言って先生は行ってしまった。僕はため息をついたがそれを聞くものはいない。ジュエは僕の中でもしかしたら聞いているのかもしれないが、最近変身してる頻度が多い所為、外に出てこない。本人曰く、疲れるとの事だ。
そして昼間、僕の病室にお客さんが来た。最初はすずかちゃんかと思ったが違った。来たのは僕と同じクラスのアリサ・バニングスさん。一人で来たようですずかちゃんや高町さんはいない。
けどクラスで話した事もない筈の彼女がどうして僕のお見舞いに来たのか僕は不思議だった。恐らくはすずかちゃんに聞いたのだと思う。だがそれでも一人で来るものなのか……僕は疑問に疑問を重ねるように考える。
「久しぶりね飛影君、しばらく学校に来てないと思ったら入院してたなんてね? びっくりだわ」
「えっと……話すの初めてですよね? 僕の名前……よく覚えて頂けて、あはは…………」
思わずぎこちない笑みがこぼれる。バニングスさんの鋭い雰囲気というか……棘のある空気が僕にはちょっと合わないみたいでどうも落ち着かない。
「同じクラスなのよ? 覚えてて当たり前じゃない! それから敬語やめたら? 」
「あはは……それじゃ、やめる」
空気が重い。耐え難い。どうしてこんなに空気が悪いのか僕は分からない。分かるものなら教えて欲しいくらいだ。もし僕が悪いなら改善する為に全力を尽くす。それくらいなんかピリピリしているのだ。
「その……えっと……さ。ありがとう! 」
「へ? 」
「ほ、ほら、この間怪人から私達を助けてくれたみたいじゃない? 私としてはお礼を言わなきゃと思って……つまりそういう事よ! わ、私がお礼言ってるのよ、感謝しなさい? 」
照れ隠しにそう言っているのかバニングスさんの顔は赤い。確かにお礼をホイホイ言うようなタイプには見えない。けど感謝の気持ちはしっかり伝わってくる。だから僕は嬉しかった。こんな感謝の気持ちを受け取れるのだ。怪人と戦って、辛い事ばかりじゃないと思える。怪我は……痛いけど…………
◇◆◇◆
私の名はアリサ・バニングス。夕方、飛影君のお見舞いの帰りの事だ。私はまた……怪人に襲われた。
そいつはまるで猪、口元には巨大な牙をつけ……身体は所々鋼のアーマーをつけている。私はその姿を見た瞬間逃げた。でも無理だった。私はあっという間に捕らえられ、近くのカーブミラーの中へと押し込まれた。
不思議な事に私の身体は鏡をすり抜け、今いた場所と全く同じ所に出たのだ。しかし何かがおかしい。人の気配がまるでないし明かりも暗くなってきてるというのについていない。
そして周りをキョロキョロとしている時だ。怪人が私が通って来た鏡を通り私の前へと現れる。
怖い……それしか浮かばない。私はこのまま食べられる。もう涙まで溢れてきた。必死に考えても恐怖で頭は真っ白、ただただ……近づく怪人に恐れて腰を抜かすだけ…………
「いや……来ないでよ…………」
「ウマソウ……コノムスメ、タベル! 」
「やだ、やだ、やだ……私……私…………」
怪人は来る。私を待ってなどくれない。口を開け、よだれを垂らし、私を食べようと目の前まで迫って来る。怪人の息がかかる、もうダメだ……そう思った。
「イタダキマス! 」
「ひっ!? いや!? 誰か助けて!!! 」
「ハァっ!!! 」
「グワクッ!? 」
「うっ……ん? え…………」
私は……助かった…………。誰だか分からない銀色の戦士によって。怪人はその戦士に殴り飛ばされたのか遠くの方で転がっている。
私を助けてくれたその人は身体中に銀のアーマーを装着している。顔はフルマスクの仮面を被り、その形は龍のようだ。両肩にはそれぞれ別のドラゴンの顔のようなアーマーが装着されている。そして腰にはベルト、さらにはそこに……カードが入っていた。
「大丈夫か? 」
「え!? は、はい…………」
「ギィィィ……ダレダ、オレノショクジノジャマヲスルノハ!? 」
「フン、所詮怪人だ。言ったところで分かるまい」
【ストライクベント! 】
その仮面の人はベルトからカードを1枚抜き取るとベルトの右側についているホルダーのような物にカードを差し込むとそこを軽く叩いた。すると電子音と共にその人の右手に銀色のドラゴンの顔が装着された。さらにその装着された手を後ろに引き左手を前に出すと、怪人が立ち上がった瞬間に右手を前に突き出した。
「ハァァ!!! 」
「ッ!? グオワァァァアアアアアアア!? 」
そして怪人はその手から出てきた青い熱線に焼かれるようにダメージを受け、またその場に転がる。すると勝てないと分かったのか、怪人はすぐに立ち上がり何処かへと逃げてしまった。
「あ、あの!? 」
「ちょっと待て、話は後だ。取り敢えず元の世界に戻ろう! 」
そう言い私はこの人に抱えられた。そして、近くの鏡を通り抜け私達は元の場所へと戻る。一体何が起こっていたのか夢みたいな感覚が私の中で残っているが今はこの人へのお礼が先だ。だから私は頭を下げる。
「あの! ありがとうございました! 」
「やめてくれ。俺はそんな事を言われる柄じゃない。それに敬語もいらないぞ? ほら? 」
「へ? ……ええぇぇぇええええええ!? 」
それは突然の事だった。目の前の銀の仮面の人がいきなりそのアーマーを解き、そこに現れたのは私と同い年くらいの男の子。
私はびっくりして夜なのに大声をあげてしまった。そして我に帰り
った私は取り乱した事に恥ずかしさを覚え顔を沸騰させた。
「ご、ごめん……取り乱したわ」
「ん? フフ、別に気にすることじゃない。もう遅いし、送ってくよ? 君の家どっち? 」
「え、えっと……ありがと…………あっち……です」
私はこの後家まで送って貰った。けどこの子も私と同じ子供なのに大丈夫なのだろうか。そう思ったが次の日の事だ。私のクラスに転校生がやって来た。その転校生とは昨日の男の子だ。どうやら本当に同い年だったようで、私は少しキョトンとしてしまった。
「初めまして、佐藤健と言います! なんと言うか……これからよろしく! 」
「はい、みんな仲良くね? それじゃ佐藤君はあそこに座ってくれるかしら? 」
「はい! 」
佐藤君ゆっくりと私が座っている席の方へ歩き出す。そう、佐藤君が座るよう言われたのは私の席の隣。佐藤君は私に気づくと「よっ! 」と小さめの声で右手を上げながら言った。私はそれに少しドキっとしてしまい上手く言葉が出なかった。
助けて貰ったからかもしれない、けど私は少なからず佐藤君を意識している。でなければ彼の顔を見て顔が熱くなる事なんてない筈だ。
ちなみになのはと姫子は家の事情とかでここ何日か学校を休んでいる。
「まさか君と同じクラスだとは思わなかった、席も隣だしよろしくな? 」
「え、ええ……よろしくお願い……します」
「どうした? 」
顔がまともに見れない。昨日の今日でこれだと無理だった。そして放課後、帰ろうと思った時だ。佐藤君が何かに驚いたような顔をして固まったのだ。私が手を顔の前で振っても何か考えてるようで微動だにしない。
「ちょっと? ちょっとてば!! 」
「おお!? 何だバニングスか。何? 」
「何じゃないでしょう!? 急にそんな顔で固まったら驚くわ!! 」
「ん? フフ、それもそうだな。じゃあ俺はこれで帰るよ。……奴らも出た事だしな? 」
最後の方、佐藤君が振り向き際に何か言った。よく聞こえなかったが「奴らも」の所は聞こえてしまい、まさかまた怪人でも出たのかと思った。
私は彼についてもう少し知りたかった。だから彼の後をつける。すると突然曲がり角で彼は消えた。驚いた私は急いで辺りを探す。
「何処行ったのかしら……っ!? 姫子!? 」
「え? ア、アリサちゃん!? どうしてこんなところに!? いや、そんな事どうでもいいわ! アリサちゃん早く逃げて! 」
佐藤君の代わりに見つけた姫子はピンクと黒のシマシマ模様の着物を着て昨日の怪人と戦っていた。どうして姫子がとは思ったが私は昨日の恐怖が蘇りその場に座り込んでしまった。
怪人は私に気づいて姫子を退けると私に向かい突進してきた。
「しまった!? アリサちゃん!? 」
「シシィィ!!! 」
「いやぁぁぁああああああああああ!? 」
もうダメだと思ったその瞬間、私の横を風が吹いた気がした。
「どっせいぁぁぁあああああ!!! 」
「ガボッ!? 」
「……あんた…………」
「佐藤……君? 」
怪人を蹴り飛ばし、助けてくれたのはまたも佐藤君だった。でも彼は昨日みたいにアーマーを着ていない。生身で今は私と同じぐらいの背の大きさなのに怪人を蹴り飛ばした。私はそれに驚いた。
そして蹴り飛ばされた怪人は近くに止められている車の窓ガラスへと逃げ込んでしまった。
「くそっ!? 何よそれ!? この世界にミラーワールドがあるなんて聞いてないわよ!? それにミラーワールドに入れる怪人がいるなんて……これじゃ……手が出せない…………」
「そうでもないぜ? 」
「……誰よ……あんた? 」
姫子は学校を休んでいる為に佐藤君が転校して来た事を知らない。だから私は転校生だと説明し、二人を落ち着かせた。このままじゃ喧嘩になりそうな雰囲気だったからだ。
「で? 何とかなるの? と言うかこの時期に原作で転校生なんて来たかしら? 」
「原作? ……フフ、なるほどな。坂城、お前……転生者だろ? 」
「え!? ど、どうして……まさか!? 」
「そ。フッ! ……変身! 」
「「!? 」」
佐藤君は窓ガラスに向かい昨日ベルトについていたカードのは言っているホルダーをかざした。すると佐藤君の腰にベルトが現れ、「変身」と言う掛け声と共にそのベルトにカードホルダーを差し込む。その瞬間、佐藤君は昨日の銀色の戦士ヘと姿を変えたのだった。
「その姿……その変身方法……龍騎? 」
「ああ! けど、俺の契約したモンスターは原作にはいないけどな? さてと、ちょっくら行ってくら! 」
そう言って、佐藤君は窓ガラスに飛び込んだ。
◇◆◇◆
怪人を追いかけ、ミラーワールドへと赴いた俺は怪人を見つけ出し戦闘を続行する。
突進して来る怪人の身体をいなし、俺の後ろへと転ばせ拳や蹴りで怪人にダメージを与えた。
しかし、身体に付けられている銀のアーマーの所為かあまり聞いていない。
「頑丈だな? それにしてもバニングスを見た瞬間真っ先に襲いにかかるとは……よっぽど気に入ったんだな? 確かにあいつは可愛いが、食べるのは頂けないぜ? 」
「シシィィ! オマエジャマ、オレ、アノムスメタベタイ! 」
「フフ、理性もあってないような物だな? それと残念だが俺がいる限りあいつには手は出させねぇぜ? もう、知り合っちまったからな!!! 」
【アドベント! 】
俺はモンスターの描かれているカードを腰についてるバイザーにセットし軽く叩く。俺はそうする事で電子音が鳴り響きカードの効果を使う事が出来る。
そして俺の後ろに三本の首を持つ銀色の機龍が姿を現した。
「フフフ、行くぜ? サイバー・エンド・ドラゴン!! エターナルエヴォリューションバースト!!! 」
「グワァァァアアアアアアアア!!! 」
「ッ!? シシィィ!? ガゴワァァァアアアアアアアア!? ……ギィ……ギワワ…………」
怪人が俺のサイバー・エンドの熱線に焼かれ、かなり弱った。動きが鈍っている今なら簡単にトドメをさせる。そう判断した俺はデッキからカードを1枚取り出した。そしてそれをバイザーへと入れ叩く。
【ファイナルベント! 】
「グワァァァアアアアアアアア!!! 」
「終わりだ……フッ! 」
「シシィ!? 」
俺は上空高くジャンプし空中で何度か回転すると怪人目がけてキックを放った。さらにそれに合わせるようにしてサイバー・エンド・ドラゴンが三本それぞれの口から熱線を吐き、それを纏う形で熱線と共に怪人へと突っ込む。
「ドッセイヤァァァアアアアアアアアアア!!! 」
「ガボッ!? シシィィィィィイイイイイイイ!? 」
キックは怪人へと直撃した。そしてその直後怪人は大爆発を起こしその場にはチリも残らない。
その後空気を読んだようにサイバー・エンドが俺の後ろにやって来ると雄叫びを上げ、勝利を喜ぶように決めポーズをとる。
だから俺もそれにノリを合わせ、もういない怪人に向けて決め台詞のように言った。
「グワァァァアアアアアアアア!! 」
「フフ、仮面ライダーエンドだ! 以後よろしく! 」
次回もよろしくお願いします!