魔法少女リリカルなのは!?「フェイクヒーロー」 作:ヘルカイザー
大変遅くなりました。
ではよろしくお願いします。
「潤君…………」
今日も私は日が落ちても潤君を探して町を歩き回る。潤君が行方不明になってどれだけ過ぎただろうか。私はお姉ちゃんに怒られても潤君を探す事を止める事が出来ない。絶対死んでない、潤君はまだ生きていると私は探し続ける。認めたくなかった。潤君が死んでしまったなんて私は信じたくなかったのだ。潤君がいなくなって私は初めて明確に気づいた。私は潤君の事が好きなのだ。友達としてではなく、1人の男の子として潤君が好きなのだ。だから諦めたくなった。自分の気持ちを伝えないまま、私は潤君を諦めたくない。もっと潤君といたい。もっと潤君を感じていたかったのだ。
「え…………」
もう外は夜。私のような子供がこんな暗い中外に出ているのは危ない事だ。しかしそれ故に同じ子供が外にいると目立つ。私はとある公園で1人の男の子を見つけた。見覚えがある。所々服が破れ、少し汚れているが私が見間違える事はない。私は見つけた。今一番大事な人を。今度こそ離さない。そんな気持ちでその子に駆け寄る。最初は速歩きだった、でもそれは私の意思とは関係なしに速くなっていく。そして全速力に近い所までスピードが出た時、私はその子にぶつかる感じで後ろから抱きしめた。
「うわっあ!? ……な、何? え……す、すずかちゃん!? 」
「見つけた……見つけたよぉ……良かった……良かったぁ…………」
「その……ごめん僕さ」
「嫌!? 」
「すずか……ちゃん? 」
「嫌だ……いや、イヤ、嫌!? もう離さない……絶対に離さないもん…………」
潤君の話なんか聞きたくなかった。ただ今はこうして後ろから潤君を力一杯抱きしめる。離したくない、離れたくない。そればかりが私を突き動かす。潤君がいなくなってから私を動かしている物はまさにそれだ。だから本人を目の前にしてそれを抑えられるわけがない。私は我儘だ。潤君を大切に思うあまり、潤君の意思など尊重した事はない。でもそれのどこが悪い。放っておけば潤君はすぐ怪我をする。どこかへと行ってしまう。私は大切な人を失いたくないだけ。そこに我儘になって何が悪いのか。私はそこは譲らない。そう思っている。
「ごめんね、すずかちゃん? いっぱい心配かけて。でも……僕は行かなきゃいけないんだ」
「どうして!? 潤君が行く必要なんてない! 潤君が……潤君がこれ以上傷つかなきゃいけない理由なんかないよ!!! 」
「助けてって……言われちゃったんだ」
「え? 」
「ある子がね? 僕に妹とお母さんを助けてって……そう言うんだ。だから僕は……その子に精一杯の事をしてあげたい。その子の大切な家族を守ってあげたい。あはは……僕のお母さんとお父さんは守れなかったけど……今度は絶対」
「なんでよぉ……潤君のお母さん達は火事で亡くなったんでしょ? ……それは……潤君の所為じゃない。潤君が負い目を感じる必要なんか……ないよぉ…………」
「違うんだよすずかちゃん」
「潤……君? 」
潤君は抱きしめている私の手をそっと外すと、私の方を振り向きジッと私の目を見つめる。私は潤君から目線を外せなかった。こんな真剣な顔で、私の事を見てくる潤君は初めてだったからだ。
「僕のお母さん達は僕達が初めて出会った怪人に食い殺されたんだ」
「……何……言ってるの? あの怪人はM・HEROさんが倒してくれた筈だよ!? 」
「死んでなかった」
「潤君…………」
「死んでなかったんだよすずかちゃん。あの時、あの怪人は生き延びて僕の匂いを頼りに僕の家にやって来たんだ。そして……僕の家族を………はは……僕が家に駆けつけた頃にはお母さん達は殺されて、食べられてる途中だった。家が燃えてて、お母さん達は人の形を保っているのがやっとの状態で、それで「もういい!? 」あ…………」
潤君はその時の事を思い出すように一つ一つ説明していく。でも私はそれを止めさせた。潤君は気づいていない。今……自分が泣いているという事を……そして私は、自分の愚かさをこの時初めて自覚した。なんの為に、誰の為に、そんな事を潤君に解いてもまるで意味のない事だったのだ。むしろ何故私は潤君を支えてあげるという選択肢を取らなかったのか。潤君は自分の所為で親が死んだと思っている。しかしそんな事はそもそもあるわけがないのだ。怪人に襲われ、その上親を殺された。一体どこに潤君の落ち度があるのか。理不尽だ、不合理だ。こんな事間違っている。潤君は何も悪くないのだ。にも関わらず、何故潤君ばかりが不幸な目に遭わなければならないのか。
「……もういいよ潤君……ごめんね。私……気づいてあげられなかった。本当は泣きたくて……我慢してる潤君を……こうして抱きしめてあげるだけでよかったのに…………」
「すずか……ちゃん…………」
「もう止めない。潤君がその子を助けてあげたいって言うなら……助けてあげて? でもその代わり……絶対生きて帰って来て? もう……潤君がいないと私は生きていけないよ……潤君大好き……ん」
「んっ!? 」
その瞬間、私達の時間は静止したように止まった。私は大胆にも気持ちを伝え、潤君の唇を奪う。目を瞑っている為、潤君がどんな顔をしているか分からないが、接している唇から潤君が嫌がってないと感じる。そしてゆっくりと顔を潤君から離し、潤君をジッと見つめた。潤君は顔を赤くし、私から顔を背けた。私も恥ずかしいがここは攻める所だと思い、潤君の顔を両手で無理矢理自分へと向けた。
「潤君……潤君は……私の事どう思ってる? 返事を聞かせて欲しいな? 」
「え!? い、いや……その……凄く嬉しい……よ? でも……僕なんか…………」
「潤君は十分素敵だよ? 人として何一つ劣ってない。自信をもって? 」
「……あはは。すずかちゃんはずるいなぁ……ありがとう。僕も……すずかちゃんの事好きだ。今の僕にとって、絶対に守りたい存在。だから……僕は帰ってくる。すずかちゃんを守る為に、すずかちゃんともっと一緒に過ごしたいから」
気持ちが、想いが届いた。潤君が今私に見せてくれた笑顔は私に信じる勇気を与えてくれる。だから私はそっと潤君から離れた。心配なのは変わらない。怪我なんてして欲しくない。でも潤君が助けてあげたい子が困ってる。なら、私は潤君の背中を押す。潤君が帰ってくる場所を私が守る。
「ねぇ〜まだぁ? いい加減ラブラブチュッチュッするの見せつけられても私いい気分じゃないんだけど? 」
「え!? だ、誰!? 」
「ああ〜ごめんごめん。すずかちゃん、この子がその助けてあげたい子。幽霊なんだけどね? アリシアちゃんって言うんだ」
「よろしく〜! 」
「アリシア……ちゃん? それに……幽霊? 」
「ねぇ〜ねぇ〜? 今幸せ? 幸せ? いいなぁ〜小学生でもう彼氏持ちになるとか……私はもう人生終わってるのになんかずるい!? 私は友達もいないし」
アリシアちゃんは私の耳元に現れると自問自答をし始めた。そして悔しがる姿は可愛い。まだ私達と同じ子供なのに死んでしまうなんて私は他人の事ながら悲しかった。でも私はその時ある事を思いついたのだ。とても簡単でアリシアちゃんも私も嬉しい事。
「アリシアちゃん……あ! そうだ……私は月村すずかって言います! 」
「へ? う、うん…………」
「すずかって呼んで? それから私とお友達にならないかな? 」
「友……達? 私と友達になってくれるの? 」
「うん! 」
「……嬉しい……ありがとうすずか! 」
友達になろうと言った私に対してアリシアちゃんは抱きつくように飛びついてきた。しかしアリシアちゃんが幽霊な為か私をすり抜けてしまう。少し残念そうな顔を見せるアリシアちゃんだが2人とも急いでいるようで、その後すぐに走って公園を出て行ってしまった。けど私はその場をしばらく動けなかった。本当に自分の選択が正しいのか不安だったからだ。これでもし、潤君が帰って来なかったらどうすればいいのか。潤君と二度と会えない……想像したくない事だった。
「潤君……気をつけて…………」
◇◆◇◆
「どうして公園から離れるの? あそこから転移すればいいのに」
「それはダメ。すずかちゃんには僕の正体をバラすわけにはいかない」
「どうして? すずかなら受け入れてくれると思うけど」
「そうだね……すずかちゃんは僕がどんな力を持っていようと嫌わないで受け入れてくれると思うよ。でもそうじゃないんだ。僕の正体をすずかちゃんが知れば……いや、すずかちゃんだけじゃない。僕の正体を知った全ての人が怪人に狙われる可能性がある。僕のお母さんやお父さんがそうだったように…………」
「……で、でもそれじゃ……潤は独りだよ? 」
「構わない。それで誰も傷つかないなら! 」
この時私は彼に対して単純に強いと思った。彼は自分の事を弱いと言うがそんな事は絶対にない。あんな化け物達と戦っているだけでもすごい事だ。にも関わらず自分の周りの人間を守る為に自分の秘密は一切人には言わない。ただ独りで戦っている。それがどんなに辛くて、過酷な事なのかは私には分からない。でもそれが潤が何よりも誰よりも強い事だと私は感じた。命をかけた戦いでひたすら独り、自分が傷つこうと、死に掛けようと、彼はこれからも戦い続けるだろう。けどそんな事を続けていれば、潤は絶対にどこかで壊れる。誰かが側で支えてあげなければ。
「アリシアちゃん、ここでも平気かな? 」
「え? う、うん」
「よし、それじゃ……フッ! ……変身」
【マスクチェンジ……ゴウカ! 】
「へぇ〜そうやって変わるんだぁ〜。かっこいいね! 」
「い、いや、その……ありがとう」
「あはは、照れてる。潤は可愛いね? それじゃ〜行こっか? 潤? どうか、フェイトやお母さんをお願いします! 」
「……うん! 勿論だよ」
私達は移動した町の裏路地でお母さん達のいる時の園庭へと転移した。急がなければ時間はない。お母さんを苦しめている病……お母さんはもう限界の筈だ。しかしお母さんを苦しめているのはそれだけじゃない。まだあるのだ。それは潤がよく知る怪人。そいつらが関わっている。だからこそ私は潤に助けを求めた。お母さん達を救う為には、魔導師だけじゃダメ。潤の協力がいる。怪人達を操っている仮面の男に対抗する為に…………
◇◆◇◆
「はぁ……はぁ……はぁ……嘘……でしょう? どうして怪人がいるの? っ!? ユーノ君逃げて!? 」
「ぐあっ!? 」
「ユーノ君!? 」
「ツギハオマエダ。ウガァァァアアアア! 」
「(ダメ、間に合わない)くっ…………」
私はユーノ君とクロノ君。そして後から来たアルフさんと傀儡兵を相手に戦闘をしながら進んでいた。しかしその途中で怪人が現れ、傀儡兵に加勢するように私達を襲い始めたのだ。ユーノ君は殴り飛ばされ、クロノ君もダメージで動けないようだ。
怪人は今私の目の前に口を開けている。怪人が速すぎて私は対応できないのだ。おそらくこの怪人は狼を媒体に作られた物だ。なら単純なスピードで私達が敵う筈はなかった。せめて……姫子ちゃんがいてくれたら、そう思わずにはいられない。するとその時だった。怪人に落雷が直撃した。突然の事に怪人もよろめきながら私から離れる。そして私は落雷の落ちてきた上を見た。
「フェイト……ちゃん? 姫子ちゃん」
「うん! 私も戦う。今度は一緒に」
「うん。うん、うん! 」
「ちょっと〜私も忘れないでよね? 」
「ガァァァアアアアアアアアアアアアアア!! 」
「なるほど? 狼型ってわけね? それも昔戦った奴より強そうだわ。フフ。丁度いいわ! こいつの力、試すいい機会よ」
助けに来てくれたのはフェイトちゃん達だった。なんて心強くて頼りになる応援なのか。そう思っていると姫子ちゃんがカードを1枚チラつかせてそれをベルトに差し込むとベルトの両端を中央に押し出しベルトを元の状態に戻す。すると電子音のような声が響いた。
【リリカルライド……フェイト! 】
「う〜ん……なんかスースーする。フェイトちゃんって変態? これ……一歩間違えたら水着なんじゃ…………」
「ち、違うよ!? それは動きの効率性とかそう言うのを求めた結果であって私の趣味じゃ」
「フェイトちゃん、姫子ちゃんに何言っても無駄だって。姫子ちゃん今聞いてない」
「え? 」
「さぁ〜どうしようかしら? 」
「ほ、本当だ…………」
姫子ちゃんは私の時みたいにフェイトちゃんと全く同じバリアジャケットと髪型になった。そしてフェイトちゃんを変態と言う姫子ちゃんにフェイトちゃんは今まで見せた事のないおかしな顔を見せる。しかし姫子ちゃんはこういう時大抵聞いてない。今はおそらくあの怪人を倒す手段を考えているのだろう。
「う〜ん……ま! やっぱこれでしょ! フェイトちゃん、ちょ〜とごめんね? 」
「え……何……が? 」
【フェイナティコンビネーションライド……フェフェフェ フェイト!! 】
「ちょっ!? 何コレ!? 」
「うむ……デッカイバルディッシュだなぁ〜? どんな気分フェイトちゃん? ちなみにこれ元に戻れないんだけど…………」
【どんなと言われても……びっくりした。と言うか元に戻れないの!? 】
「騙されちゃダメだよフェイトちゃん? 嘘だからそれ。姫子ちゃん……うそは良くないよ? 」
「や、やだなぁ〜なのはちゃん。冗談よ冗談。だからそんな顔で見ないで……ごめんなさい!? 」
「うん、それでいいんだよ」
毎度の事だが姫子ちゃんは冗談が過ぎると私は思う。今少し本気で殺意が湧いた程だ。私も含めてあれをやられた人の気持ちを知るべきだと私は思う。
「行くわよ! 」
【マジカルライド……ソニックムーブ! 】
「ワオォォォォォオオオオン! 」
「でぇぇぇぇぇええええええりゃぁぁああああああああ!! 」
【バルディッシュ、行くよ? 】
【イエッサー! 】
姫子ちゃんは新たなカードをベルトに差し込んだ瞬間、姫子ちゃんは消えた。気がつくと怪人の目の前まで移動している。そしてフェイトが変化した大きなバルディッシュは形状を鎌のように変化させ、怪人に振り下ろされた。だが相手も素早い、当たりはした物のその攻撃は浅かった。カウンターで繰り出された怪人の爪が姫子ちゃんに向かう。しかしその時、大きなバルディッシュはフェイトちゃんへと戻り、その攻撃を防いだ。そしてさらに後ろでは姫子ちゃんが刀姫を手に持ち、カードをベルトへと差し込む。
【ファイナリティマジカルライド……フェフェフェ フェイト!!! 】
「あ! なんだろう……分かる。バルディッシュ! 」
【イエッサー! 】
「行くわよぉぉぉおおお! ディメンジョン……」
「サンダー……」
姫子ちゃん達が構えを取ったその時、姫子ちゃんとフェイトちゃんから怪人をホログラムのようなカードが怪人を貫通するかのようにクロスし、怪人を捕らえる。怪人はいくらもがいてもそこから抜け出る事が出来なかった。そして二人は互いにデバイスを振りかぶりカードをすり抜けながら怪人を切り裂く。
「「エンド」」
「ガッ!? ウッ……ウオォォォオオオオオオオオン…………」
直後、怪人は爆発した。さらに姫子ちゃんのお陰でユーノ君とクロノ君の治療にも成功し、やる事を分担した私達はそれぞれの目的地に向かいさらに先を目指す。フェイトちゃん達とクロノ君はプレシアさんのところへ。動力炉の方へは私とユーノ君、そして姫子ちゃん。でも先は怪人も含めて沢山の障害が私達を阻むのだった。
◇◆◇◆
【ファイナルマスクドライブ……ゴゴゴ ゴウカ!!! 】
「シネェェェエエエエエエエエエエエエ! 」
「せいやっ!!! 」
「グアッ!? ……ウッ!? ウッ!? ……ウガァァァアアアアアアアアア!? 」
「やったぁ、潤強い! 」
これで30体近くは倒しただろう。潤は怪人を引きつけ、燃える足を使い回し蹴りを放つ。怪人はそれを受けると身体に火の紋章が刻まれ、そこから体全体に広がるようにして爆発した。潤も流石にここまで続けて怪人を相手にすると体力的にもキツイようだった。その証拠に息を切らせ始めている。
「はぁ……はぁ……はぁ……っ!? アリシアちゃんここ? 」
「うん、ここだよ。あ……お母さん…………」
「貴方……誰かしら? 」
「プレシアさん、あいつは僕が相手をしますよ。だから今のうちに目的を」
お母さんが私達を認識した時……とは言っても潤だけだが、お母さんの後ろから潤と同い年くらいの男の子が出てきた。髪は赤く、少しボサボサの髪型。そして瞳は青っぽい。
「やぁ〜また会えたね? M・HERO? 僕の好敵手」
「君は……誰? 」
「ああ、そうかすまない。この姿じゃ分からないよね? だけどこれならどうだい? 変身……」
【Vチェンジ……アドレイション! 】
「っ!? 君は…………」
赤い髪の男の子はフードに仮面を被った男へと変化した。潤もその姿を見た瞬間顔色を変えたようだ。その男こそ怪人を作り出し、今お母さんと手を組んでいる仮面の男。この男に乗せられてお母さんは選択を誤った。そして、男はフードを脱ぎ去ると黒い装束に身を包む潤のようなでもダークな感じのHEROの姿を現した。
「俺ノ名ハ……V・HEROとでも言っておこうか? 決着ヲツケヨウ。俺ハ君ヲ倒シ、コノ世ヲ破壊スル。今日マデ楽シカッタヨ、M・HERO!!! 」
「っ!? くっ!? そんなの事……絶対にさせない、ハァッ!! 」
潤と仮面の男との戦いが始まった。潤は相手の攻撃を受け止め、すぐに拳を叩き込む。激しいパンチとキックの応酬。しかし相手の方が心なしか動きが鋭い。少しずつ、確実に押され始めていた。
「フンッ! 」
「ぐあっ!? ……くっ……それなら」
【マスクドライブ……ゴウケンレッカ! 】
「フッ……せいあっ!! 」
「フフ、無駄ダ。アンビション・サンクションズ!! 」
潤が放った火炎弾は潤の前に突然現れた光の柱に呑み込まれ、そこから発せられた光が潤を照らすようにして潤の身体を焼く。潤は悶え、後ろへと転がり、そこで変身が解けてしまった。私も潤の側に行きたいが幽霊の私には何もできない。潤が今やられている姿を見守るだけ。
「うっ……くそぉ…………」
「ドウシタ? アノ時ノ君ハソンナ物ジャ、ナカッタゾ? モット強カッタ筈ダ。ン? アチラモ、モウスグ終ワルナ? 」
「何? っ!? 」
「フェイト!? お母さん!? 」
一度止まっていた次元震ももう限界のようだ。そして結局お母さんはフェイトを受け入れない。地面が破れ始め、このままではフェイト達は虚数空間へと身を投げる事になる。お母さんはあそこへ行くつもりだからだ。私を生き返らせる、そんな事の為に。私はもう死んでいるというのにだ。
「大丈夫だよ……アリシアちゃん? そんな顔しなくても、大丈夫」
「え? 」
「約束したでしょ? 僕が……ぐっ……必ず君の家族を助けるって」
「フフ……アッハハハハ! 笑ワセルナ。君ニハ何モ出来ヤシナイ。約束ダト? フン、馬鹿馬鹿シイ。ソンナ物結局は裏切ラレル。一体誰トソンナ約束ヲシテイルカ知ラナイガ、君ハ守レナイ。ソウダ……君モアイツト同ジダ……約束シテオイテ……裏切ルンダ」
「悲しいね」
「ッ!? ナンダト? 」
「君は信じる事を止めてしまったんだ。誰かに裏切られ、絶望し、信じる事を止めてしまった。きっと君を裏切ったのだって……何か理由がある。君はちゃんとそいつと話をしたの? 」
「ソ、ソレハ……ウ、煩イ!? 君二何ガ分カル!? 」
「分からないよ……だから僕達は……人は互いに話をしなければならないんだ!! 」
「コノッ……利イタ風ナ事ヲ……グッ、オ前ハ一体何ダ!? 」
「僕は……お前達怪人の邪魔者だ、覚えておけ!! 変身!」
【マスクチェンジ……ゴウカ! 】
潤はカードをベルトに挿入し元に戻す、すると潤は剛火へと姿を変えた。そして身体を纏う赤いアーマーはさっきとは比べ物にならない程燃え滾っているように見える。最初は青かった複眼も今は真っ赤に染まっている。
「君ナドニ……君ナドニィィィィイイイイイイイ!!! ……っ!? ナ、ナンダト!? ガハッ!? 」
さっきまで防ぐのがやっとだった筈の相手の拳。それを潤は無駄のない動きでかわし、相手のお腹に蹴りを放つ。たかが一発の筈のその攻撃は相手にかなりのダメージを与えていると見ていて分かった。何故ならその蹴りで相手は後ろへと転がり、そのお腹には剛火の残り火が灯っている。そう、今潤の右足は燃えているのだ。そしてカードを1枚、ベルトへと差し込んだ。
【ファイナルマスクドライブ……ゴゴゴ ゴウカ!!! 】
「ッ!? シマッ!? 」
「せいっ、ぁぁぁぁああああああああああああ!!! 」
「グッ!? ドワァァアアアアアアアアアアアア!?……グッ……くそ……馬鹿な……俺が…………」
潤の飛び蹴りは見事、フラフラと立ち上がった仮面の男へと直撃。仮面の男の変身は解けて元の子供の姿へと戻った。そしてその場から動けず悔しそうな顔で潤を睨みつけている。するとその時だった、フェイトの悲鳴が聞こえたのは。
「母さん!? そんな……っ!? え、貴方……ちょっ、何を!? 」
フェイトが驚いている理由は明白だ。虚数空間へと落ちていったお母さんを追うようにして潤が飛び込んだ事にある。勿論、私自身もそれには驚き悲鳴をあげた。虚数空間へと落ちれば二度と出る事などできない。潤に待っているのは死だ。すずかと帰る約束までした潤が戻って来ないとなればすずかがどんなに悲しむ事か。だがここにいる誰一人として潤の正体を知る者はいない。つまりは行方不明で肩が付いてしまう。すずかにとって、そんな残酷な事はない。だから私はショックだった。そしてすぐさま潤の後を追いかけて虚数空間へと突っ込む。私が地上で最後に見たのは白い服の子に手を差し出されたフェイトの姿。
「貴方……子供だったの? あの赤毛の子と同じね? どうするつもり? 貴方もう助からないわよ? 私も病で死ぬだろうけど」
「もう目的とやらはいいんですか? 」
「そうね……これが現実でしょう? アルハザードなんて無かった。今虚数空間を彷徨っているのがいい証拠じゃない。アリシアも……結局…………」
「もういいよママ」
「っ!? アリシア!? 今、アリシアの声が!? 」
「いるじゃないですか? 貴方のすぐ側に僕には見えますよ? 」
お母さん……もうママでいい。ママは私を見つけようと自分の周りに目を凝らす。すると私の存在を認識できるようになったらしく、私の方を見て涙を流し始めた。しかし残念なのはママが私を抱きしめられないという事。自分の身体は近くのカプセルにあるが私の魂はここ。動かす事もできはしない。
「ごめんね、ごめんねアリシア? 」
「私より、本当はフェイトを大事にして欲しかったかな。でも……私の為にありがとう、ママ」
「うっ……ごめん……ごめんなさい…………」
「良かったね、アリシアちゃん」
「潤……ごめんね、すずかとの約束…………」
「貴方も巻き込んでしまって本当にごめんなさい」
潤は「気にしないで」といい、笑顔を向けてくれた。自分がもう助からないというのに潤は怒る事もなければ悲しむ事もしない。本当はすずかに会いたい筈なのにだ。でも潤は何かを考えているようだった。
「ダメだ。ここから出る方法……思いつかない」
「無理よ……ここは一切の魔力を行使できない。つまりは魔法はおろか、魔力を巡らせる事も出来ないの」
「そう……ですか…………」
それから何日何週間過ぎたかは分からない。この空間の中では時間の流れを感じるのは無理だからだ。もう口数も減り、潤もママも言葉を発さなくなった。ただ無言でこの空間を漂うだけ。でもここで私は冗句まじりで潤を元気付けようとした。
「潤? 私、夢があったんだぁ? 」
「夢? 」
「そう、お嫁さんになりたかったの。もう叶わないけど……潤がよければ、私とキスなんてしてみない? 私もしてみたいなぁ〜って」
「い、いや……してみたいでするもんじゃないと思うけど……ダメでしょ? 」
「何それ!? 冗句じゃん!? 真面目に返さないでよ!? 私がバカみたいじゃん!? ムキー! あったまキタ! 」
「ちょっ!? 何っん!? 」
勝手に冗談を言って逆ギレした私は潤の唇を奪う。しかしここで私は疑問を持った。何故潤に触れるのだろうと。そしてその瞬間、私の身体が光り出し、自分の身体へと吸い込まれる。私は声を上げる間も無かった。さらに周りの浮かんでいたジュエルシードが私の腰の所へと集まり出し、そこに潤と同じベルトが現れる。だがここで問題なのは私……アリシア・テスタロッサはカプセルの中で目を覚ましたという事だ。私は生き返った。何故、どうしてという感情でパニックになる。ママも潤も開いた口が塞がらないようで、生き返った私を見て固まったままだ。
「と、取り敢えず……生き返っちゃった……っ!? ちょっ!? 今考えれば私裸じゃん!? やだっ!? 潤見ないでよ!? エッチ!? 」
「え!? ああ、ごめん!? ……はっ!? 」
「よくも娘の裸と唇を奪ったわね……っ!? 貴方……そのカードは何? 」
「え? ……これって…………」
「私も持ってるよ!? 」
私と潤、手元にはそれぞれ同じ絵柄のカード。ただし、潤が変身に使っていたカードとは少し違うようだった。まるでヒーローが何かを解放するかのようなそんな絵柄だ。すると潤がこう言ったのだ「試す価値はある」。だから私は潤と同じようにカプセルの中だがベルトを回転させる。
「僕はまだ終われない……だからお願い。行くよ? アリシアちゃん! 」
「うん! 」
「「変身! 」」
私達は同時にカードをベルトに挿入しベルトを元の位置へと戻した。すると私の身体は光となり潤へと吸い込まれる。さらにその後、潤の身体も変化を始め、ベルトから電子音が鳴り響いた。
【【マスクチェンジセカンド……カミカゼ! 】】
その瞬間……緑色をした神風を巻き起こす風の戦士がそこに誕生したのだった。
次回もよろしくお願いします。