流星のロックマン Arrange The Original   作:悲傷

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エピローグ.いつもの朝へ
最終話.行ってきます


 いつも通りの太陽がコダマタウンを照らす。会社に行くサラリーマン、道路の舗装を始める作業員達。お店の準備を始める商店街。あくび混じりで歩いている大学生に、その隣を駆けていく小学生。底まで透き通っている公園側の小川。ぴちゃりと跳ねた魚は、水面に照らされて銀色に輝く。それを見て、尾上の隣にいる女性は目を輝かせた。

 

「まあ、綺麗ですね。十郎様?」

「ええ、本当に……だから、さっさと片しちゃいましょう」

「はい」

 

 尾上はコダマタウンの公園に来ていた。今日はボランティアとして、ヒメカお嬢様と朝から掃除に来ているのだ。隣ではクローヌとクラウンがからかっていたが、ウルフが噛み付いて空へと連行していった。

 相棒の気遣いに内心感謝していると、道路の向こう側に目を留めた。千代吉が何人かの子供とおしゃべりしながら学校に行っているのだ。声を掛けようかと思ったが、やめて掃除に戻った。

 BIGWAVEの店内からもそれを見ている人がいた。南国は大きく息を吐くと、口元を緩めた。

 

「BIGWAVEも寂しくなりそう的な?」

 

 FM星人達との戦いが終わって、二週間。まだ爪痕は残っているものの、地球は確かに復興への道を進んでいた。被害がほとんどなかったコダマタウンでは、もう普段の生活が始まっている。その中に、今日から戻る者がいる。

 モジュールが無事にニホン海に着地した直後、スバルはサテラポリスやNAXAが来る前に電波変換でニホンへと戻った。そして入院した。体力の激しい消耗などが理由らしい。電波変換時のダメージが蓄積していたのもあったのだろう。だが、それも昨日で終わった。今日からスバルは復学するのだ。

 

「スバル~、皆来てるわよ~」

「は~い、今行くーー!!」

 

 トランサーを左手につけ、流星型のペンダントを首から提げ、ビジライザーを額にかける。忘れ物が無いことを確かめると、階段を駆け下りる。玄関で赤いブーツを履くと、軽くドアノブを捻った。眩しすぎる光が差し込み、世界が真っ白になる。それを通り抜けると、赤紫色の髪をした女の子が手を振ってくれた。

 

「スバルくん! おはよう!!」

「おはよう、ミソラちゃん」

 

 出迎えに来てくれたミソラにスバルは満面の笑みを見せる。だが、これはちょっと失敗だったかもしれない。

 

「あら、私たちを無視するなんて、スバルくんも良い度胸がついたわね」

「え? ち、違うよ委員長! そういうわけじゃ……」

「ま、今日ぐらいは大目に見てあげるわ」

「そうそう、昨日の委員長は育田先生よりも喜んでいたもんな」

「ご、ゴン太君!!」

 

 余計なことを言ったゴン太と、まき沿いを食らったキザマロがルナの鋭い眼光に縮み上がった。そんな彼らを笑って見ているツカサがいた。目が合うと、お互いに自然と笑みを向け合った。

 そんな彼らを、あかねは柔らかい笑顔で見守っていた。隣にいる天地、シゲゾウ、五陽田も同じだ。

 

「っていうか、ミソラちゃん。なんであなたがここにいるのかしら? あなたはコダマ小学校じゃないでしょ?」

「スバルくんの復学日だもん。これぐらい良いじゃん?」

「ええ、別に良いけれど……間に合うの?」

「うん!」

 

 どうやら電波変換を使うつもりらしい。

 

「皆……」

 

 スバルは皆を見て我慢できなくなった。胸から溢れてくる思いを言葉にしたくて、体が震えてくる。

 

「僕……皆に言いたいことが……」

 

 目元にたまった涙を拭こうとすると、ピンク色のハンカチがスバルの目に優しく当てられた。ハンカチが離れると、次は白い指がフワリとスバルの鼻先と口に当てられる。

 

「スバルくん、それは言っちゃダメだよ」

「そうよ、私たちは当然のことをしただけなんだから」

「そうそう、ブラザーとしてな」

「気にすること無いです」

「だって、スバルくん」

 

 ミソラが、ルナが、ゴン太が、キザマロが、ツカサがスバルの言葉を止めた。ブラザーバンドなんてなくても分かる。そこにあるものを感じて、また瞳が潤みそうになってしまう。だが、この場で涙は似合わない。目を閉じる。

 そんなときに鳴り響く大きな音はお邪魔虫以外の何物でも無い。だが、無視はできなかった。なぜなら、それはコダマ小学校のチャイムだったのだから。

 

「あ、これって予鈴……ですよね?」

「……だよな?」

「いけないわ! 学級委員長が遅刻なんて……!! あなたたち、走るわよ!! おば様、失礼します!!」

 

 ミソラたちもあかねに頭を下げると、全速力でルナと共に走り出した。もちろんスバルも走り出すが、すぐに振り返った。

 

「母さん! 行って来ます!! それに、天地さん、シゲゾウさん、五陽田さんもありがとう!!」

 

 見送りに来てくれていた三人の大人にも手を振ると、スバルはまた走り出した。

 

「スバルくん遅れちゃうよ~」

「待ってよー!!」

 

 橋の上でミソラが手を振り、その向こうでルナが拳を揚げて怒鳴っている。その風景に溶け込んでいくスバルの後姿を、あかね達は見送った。

 

「まるで大吾君を見ているようじゃ……」

「まったくあんな笑顔を見せられたら、事情聴取なんてできんわい」

 

 シゲゾウはつぶらな瞳を輝かせ、五陽田はやれやれと肩をすくめて笑ってみせる。天地は静かに佇んでいるあかねにそっと声を掛けた。

 

「スバルくん、明るくなりましたね」

「ええ……」

 

 あかねは短い返事を返すと、空を見上げた。

 

「大吾さん……見て……スバルったら、あんなにたくさんのお友達に囲まれて……私……私たち、やっと歩き出せるわ」

 

 そんな彼らを眺めている者が二人。異星人である彼らがいる場所は、スバルの家の屋根。ちょっと暑くなってきた日差しを受けながら、ハープは尋ねた。

 

「これからどうするの?」

「あ? どうするって?」

「私達は孤独に住み着く異星人。でも、ミソラもスバル君も、孤独なんて言葉とは無縁そうよ」

「そうだな……もうちょっとこのままでいるのも良いかもしれねえな」

「あら、奇遇ね。私もそう思っていたところよ」

「そうか」

 

 そっけない返事を返すと、ウォーロックは空を見上げた。目を細めて、ただじっと見つめている。

 視界の隅に、ハープが出てくる。

 

「さ、行きましょ? 置いてかれちゃうわ」

「ああ……よし、行くか!」

 

 二つの光が空を駆け抜けた。ただ、それは一瞬のこと。

 白い雲に、温かい太陽、そして青い空。いつもの朝が始まった。

 

 

 

 

 

流星のロックマン

 

 お し ま い




連載開始から約2年と10ヶ月。
ここに『流星のロックマン Arrange The Original』を完結させることができました。

感想を下さった皆様、応援してくださった皆様、閲覧してくださった皆様……
皆様の存在が私の励みでした。
ここまで続けて来れたのは、皆様のおかげです。

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。


これにて『流星のロックマン Arrange The Original』はお終いです。

では、また別の作品でお会いしましょう。

*2014年7月7日
追記
皆様の応援のおかげで、
日間ランキングと週間ランキングに掲載されました。
たくさんの応援、本当にありがとうございました。

*2014年10月20日
追記
続編にあたる『流星のロックマン Arrange The Original 2』の公開をはじめました。
スバルとウォーロックの新しい物語をどうぞご覧ください。
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