最初に言っておきますが普通にユーシスは好きなキャラです。マキアスも好きな
次回にようやく無敵キャラの兄上様登場(予定)です。
晴天のグラウンドに幾筋もの雷が爆ぜる。
もうもうと舞う砂埃のなかで、ドサリ、ドサリと何かが崩れ落ちるような音がおこる。
銀髪の少女と黒髪の少年を除く周囲の者達が不安そうな表情で見つめるなか、少しずつ四つの人影が浮かび上がってくる。
「くっ……はぁはぁ……」
「ぐうううっ」
「……馬鹿な……」
満身創痍―そのような言葉が相応しいというべきだろうか。ギャラリーである少年少女達と同じ制服を見に纏った少年達は驚愕、悔しさを各々の顔に浮かべながら地面に膝をついている。
「フフン、あたしの勝ちね」
そんな彼らの視線の先で女性は余裕たっぷりに勝利の笑みを浮かべた。
窓の向こうに写るオレンジ色の町から家に帰る子供達の声が聞こえる。
夕方のキルシェは、俺達のように夕食に来た学生の姿もちらほら見かけるが、基本的には寮で済ましているらしく、さほど多くは見られない。
奥の丸テーブルを四人で囲みながら、雑談に興じる。といっても今日に関しては、次の特別実習と実技テストの後に起こった一悶着についてであるが。
「…おーい、大丈夫かー?」
「…えっと、…御愁傷さま」
「……もう、ヤダ、何で火に油を注ぐかな?」
げんなりとしたした顔で机に突っ伏すソウに俺達三人は揃って同情の視線を向ける。
「すまないな。俺と入れ替わる形で申し訳ない」
「いやいや、ガイウスにはなんの非もないだろ?」
「……別に俺らがあっちになったのは、さほど問題じゃあないんだ。……最後のアレがダメなんだよ」
大きな体を心なしか小さくさせるガイウスに俺とソウがフォローを入れる。そう、別に俺達とガイウスが入れ替わったのは、さほど問題はない。
『それじゃあ、A班、B班共に週末は頑張って来なさい。おみやげ期待してるから』
『すみません、サラ教官。俺の名前がありません』
手をあげて告げる俺の言葉に、あら、いっけなーい、と舌を出して頭を叩く。年齢を考えたらどうですか、という助言が喉元まで出てくるが導力銃で返事が返ってくる可能性を考えて飲み込む。
残念ながら俺には隣の少女のように、サラきもい、とか口に出す度胸など露程もない。
『うーん、そうね……あんたにはセントアークに行ってもらおうと思ったけど、リィンと一緒に行きなさい』
──なるほど、そういうことか
『あのー、サラ教官、ソウさんまでこっちに来ると六対四とかなり偏りが出ると思うんですが』
恐る恐ると言った様子で委員長ことエマがサラに至極真っ当な疑問を述べる。……ただ、委員長さんよ残念ながらこの場でそれは悪手だ。
『確かに普通に考えればそうね。でも残念ながら今の現状で人数だけ公平に分けたところで大して結果が出ないのは誰の目から見ても明らかじゃないかしら?…まぁ、最終的には六人であることをちゃんと加味した評価をつけるけども、最初はこれだけのハンデをつけないと……特にあなたとフィーにとっては逆に不平等じゃないかしら?』
案の定、淡々と事実を述べるサラに対して射殺さんばかりの二つの視線が突き刺さる。
まぁ、先程からのやり取りも含めて、率直に《お荷物》という宣言を食らったことを考えると、いかにも優等生という二人のプライドを大いに傷つけたのは疑いようがないだろう。
自らの失策に気づいたのか、二人とサラ教官の顔を交互に見ながら引きつった笑みを浮かべる委員長を横目に内心で大きな溜め息をついた。
ちなみに教室に戻ってからの空気が普段の数倍重くなったのは、言うまでもない。
「うーん、でもサラ教官も何であの二人を一緒の班にするのかなぁ、ほら、どうしても人の相性の良し悪しってあるでしょ?」
はふはふと熱々のピザを冷ましながらエリオットが疑問を口にする。一般的に考えればもっともと言える意見だが、オムライスを食べていたスプーンを置いてサラの意図を説明する。
「まぁ、確かにエリオットの意見も一理あると思うが、仮にも士官学院なんだ。……ほら、実際に軍隊で誰と誰が一緒だから戦えませんなんて通じるか?」
「あー、なるほど」
「でも、じゃあ上手くやれるかって考えたら今のところは到底そうは思えないんだよなぁ」
はぁ、とつい溜め息をこぼれるが、そんな俺を見てシチューを食べ終えたリィンが、そうか?、と首を傾げる。
「でも二人とも前回の責任が自分達にあったことは自覚しているんだろ?…だったら、急に仲良くすることは無理でもチームメイトとしてなら何とか合わせる取っ掛かりが作れるをじゃないか?」
さらに、リィンに同意するようにリゾットを食べていたガイウスも静かに頷く。
「ああ、二人ともけして根は悪い人間じゃない。…それに―俺には出来なかったが、リィンとソウなら二人の何かを変えてくれる。何となくだがそんな気がする」
ガイウスの泰然とした雰囲気からか、妙に真実味を帯びたその言葉に少しくすぐったく感じる。
「やれやれ、まぁ俺はともかくリィンには是非とも期待してくれ」
「おい、そっちもだろ」
ジトリとした視線を送るリィンにニヤリと微笑みかける。
「いやいや、入学早々に
「っな!、違う!あれは断じてわざとじゃ……って何でソウが知っているんだ!!」
ガタンと音をたてて慌てるリィンに他の二人からも温かい……うん、温かい視線が浴びせられる。
「というわけで朗報を待っていてくれ二人とも」
「ああ、楽しみにしておこう」
「うんうん、期待してるよ」
横で必死に無実を主張するリィンは、さておき、こうして俺たちは特別実習への思いを新たにした。
しかし、そのときの俺達はまだ知る由もなかった。
本来、廻るべき歯車が少しずつ狂い始めていることを。
釣り合っていた天秤が歪み始めていることを。
他ならぬ俺達のせいで。