最近、忙しくてちょびちょびと進めていましたが、あまり進みませんでした。
そして、ブルブランの口調が難しい。…まあ、折角、空evoも出るんで見直していきます。
ちなみに予算の都合上evoは買いません。…ザナドゥに向けてコツコツ節制してます(笑)
「っし、これくらいで良いだろ」
採集した仄かにピンクがかかった結晶をビンにしまう。
実際に試したことはないが、帝国に限らず塩を入浴の際に用いるという話は何度か耳にしたことがある。
話によれば、塩を入れることにより保温効果が高まることに加えて、血流改善、発汗作用、疲労回復に湯冷め防止……とまさによいことずくめらしい。
正直、傷口に沁みる痛みを経験したことがある身としては、進んで入る気にはなれないが、気にならないと言えばそういうわけでもない。
「まぁ、興味関心と勇気が湧けば…ということで」
そうひとりごちて、最初に採取した先程しまったのよりも一回り大きなビンを腰のポーチにしまうと一見何もない筈の方向を見つめる。
この場に姿が見えるのは少年の他には誰もいない。無機質な岩盤が広がるのみであるが、ソウは構わずにそこに居る人物に向かって口を開く。
「……それにしても琥珀を飲み込んだり、岩塩を風呂に入れたり、ココの貴族様はやたらと他とは違うことをしてるアピールが多いと思わないか?」
「フフ、『平民には真似しょうがない贅を尽くした至福の時間』…この甘美な優越感こそが彼らを駆り立てる原動力なのだろう」
芝居じみた雰囲気を感じさせる男の声と共に誰も存在しなかった筈の空間が揺らぐ。
「久しいな我らが宿敵よ。灰色の街から姿を消したと思えばこれまた随分と愉快な雛鳥を引き連れているではないか」
怪しげな仮面に白を基調とした貴族のような装い。自称帝国貴族ブルブラン男爵にして世間を騒がす大泥棒こと怪盗B……そして、《身喰らう蛇》の
「それで、何の用だ?……残念ながらここで採れるのは塩と土だけでそっちが好みそうな宝石の類いはないぜ」
「私を有象無象の下品な盗人と同列に扱うとは実に遺憾の極みだ……いいかね?私の求める『美』とは、さながら…―」
「ああ、興味がないので結構」
語り始める前にピシャリと打ち捨てる。見た目通りに面倒くさいこの男が『美』について語るときにさらに面倒くさくなることは知り合いの話で十二分に知っている。
「相変わらず興がないことだ」
「生憎こちらは今は学生なんで、学ばないといけないことが多くてね」
「フフ、まさか天高く舞う気高き一翼が一人歩きすら覚束無い雛鳥の群れに混じる姿をこの眼に映す機会に遭遇できるとは。人生とは美しき街にも荒れ果てた岩山にも如何なる場所にも喜劇が転がっているものということか」
天下に名高い大怪盗殿に返事代わりの溜め息である答える。……仮にもこの男と話が合うのならば馬鹿か変態のどちらかだろう。
「……それで、訳のわからん話は良いから本題に入れ。…どうせ何か用があって一人の時に来たんだろうが」
「まぁ、君自身に興味があったのも真実だが、……あの黒き雛鳥……いや、雛鳥の皮を被った異質なモノというべきか」
愉快そうな笑みを漏らす仮面を思わず見つめる。
「へぇ、驚いた。まさか、少し見ただけで気づくとはな」
「フフ、『深淵』殿には及ばないが一応は心得があるのでね。……先月にケルディックで初めて見かけたときは朧気な違和感程度だったが、似たような人物を知っているだけに案外容易に見当が付いたさ」
「……似たような人物?」
「かの『鋼の聖女』に並ぶ結社最強の男……恐らくは『君達』にも勝るとも劣らぬ実力の持ち主とだけ断言しておこう」
「そりゃ、恐ろしいことで。……ちなみにソイツは何か帝国に所縁があるか?」
「フム、その様な話は耳にしたことはないが?」
怪訝そうなブルブランの視線を余所に先程から頭を駆け巡る違和感を整理する。
ナニかは見当がつかないが、リィンの『チカラ』は、唯一無二のものではなく似たようなものがある。
急に変化した旧校舎と関連したもの……帝国の歴史に由来した何らか力という可能性も考えたが、似たような『チカラ』を持つ人物は帝国とは所縁がないらしい。
じゃあ、リィンの『チカラ』と旧校舎は無関係……いや、確かにあの時、両者の間に何かしらの繋がりを感じ取れた。
──まぁ、まだ決めるのは早計か……
答えを出すには、まだ全然証拠が足りない。心残りが無いわけではないが思考を中断する。
「……フム、何か腑に落ちないように見えるが」
「さぁ、まだ何とも言えないが……、如何せんまだ証拠が足りない。…他に何か…―」
その時、ひとつの考えが稲妻のように頭を駆け抜けた。
危険じゃないか?……いや、直接いかなければ問題ない。……他にも協力してもらう必要があるが大義名分があれば何とかなるだろう。……でも最初は手始めに。
突然話を切り上げた俺を訝しげに見つめる怪盗を再び見つめる。
「……なぁ、ブルブラン。俺とちょっと取引しないか?」
オーロックス峡谷を照らす夕日は少しずつ沈み始めていた。