翼の軌跡   作:南野智

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気が乗ったので書いてしまいました。
今回の話はさほどネタバレはありませんが、万が一を思う方は落ち着いてからお願いします。続きは本編を進めつつ載っけていこうと思います。
その前にクリアせねば(笑)



外伝 ???
亀裂と少女


「弐ノ型……《疾風》」

 

「跪け《プレシャスソード》」

 

 二人の風のような斬撃と氷柱が三体のゴーレムに止めをさす。続いて二体の首の無い石像のような不気味な魔獣へ黒い竜巻と銃弾が襲い掛かる。

 

「やったか!?」

 

「……ん、撃破完了」

 

 次々に殲滅させられる仲間達を見たためか、残った小型の小鬼と妖精のような数匹の魔獣が素早い動きで詠唱中の少女へと標的を変更する……が。

 

「グギャァ!?」

 

「残念…《プロテクション・バレット》。アリサ!」

 

「えぇ!!……《ヴォルカレイン》」

 

 天井の魔方陣から降り注ぐ火球が、光の障壁に阻まれた群れを焼き尽くした。

 

 

 

 

 

「ふぅ、これで全部か」

 

「ええ、この場所(旧校舎)のことだからトンでもない魔獣が出ると思ってたけど大したことが無くて良かったわ」

 

「毎度毎度あんなモノに出られて堪るか―……どうした二人とも?」

 

 ホッと一息つく四人とは違い先程まで戦っていた場所を険しい表情で見詰めるソウとフィーにユーシスが尋ねる。

 

「さっきの魔獣だけどさ、どうにも簡単な話じゃ無さそうかもしれない。…ガイウスは戦っていたとき何時もと違う気配か何かを感じなかったか?」

 

「いや、特に目立っては感じなかった。風に僅かな違和感はあったが旧校舎の魔獣に感じたものと殆ど同じだった」

 

 ガイウスの言葉に二人は顔を見合わせると再び考え込む。二人の深刻な様子に四人が戸惑うなかリィンが代表して口を開く。

 

「なぁ、二人とも一体どうしたんだ?何時ものような目立った変化は無かったのに」

 

 リィンと他の面子からの同意するような視線にソウは困ったように頭を掻く。

 

「まぁ、知っての通り俺もフィーもゼムリア大陸の様々なな場所に行ったことがあるし、それらの場所で多くの魔獣に出会ってきた。けど…―」

 

「さっき見かけた魔獣のなかには一度も見たことがないのがいた。……奥にいる親玉は兎も角これだけ新種の魔獣が出るなんてあり得ない」

 

「それって―っ!!」

 

 その刹那、異質なナニカが空間を支配する。入る度に感じる旧校舎独特の違和感とはまた違う、重く禍々しいナニカが肌に突き刺さる。

 

「ちょ、ちょっと何よ!?」

 

「これは…空間に亀裂が入っているのか?」

 

 ユーシスの視線の先―割れるべきモノの存在しない筈である虚空にひとつ、またひとつと亀裂が生じていく。

 

「くっ!、何て禍々しい風だ」

 

「っ来る!」

 

 空間が割れて暗闇の奥から不気味に光る二つの眼が、鋸のように鋭く巨大な牙のシェルエットが徐々にクリアに浮かび上がってくる。

 

「させるかっ!」

 

 冷気を纏って放たれた蒼色の斬撃がナニカの影に直撃する。

 

「ソウ!!」

 

「いったん下がるぞ!!何かは解らんがアレはヤバイ!! 」

 

 本来の得物である蒼剣《ラジュール》を構えながら油断なく割れた虚空の奥を見据える。

 さほど大きなダメージにはならなかったのか赤黒い虚空の奥の影が僅かに身動ぎしたように揺れると再び両眼が光る。

 

「効いて…ないのか?」

 

「んなことはないが、思った以上にタフそうだ。取りあえずは俺が押さえとくからサラ教官を…―」

 

 そこまで言って言葉を切る。

 

「…やっぱり、止まってやがる」

 

先程まで動いていた黒髪の少年は彫像のように微動だにしない。いや、彼だけではない。他のクラスメイトも虚空の向こう側の影も各々が時間から取り残されたように動きを止めている。

ほんの一瞬のうちに空間はまた別のナニカに包まれていた。

 

 

 

 

 

『やあ、《蒼き翼》さん』

 

 上から聴こえてきた幼い声の方へと顔を向ける。青みがかかった銀色に輝く長髪がフワリと宙に漂う。

自分達よりは三つか四つは年下と思われる少女が浮かびながら微笑んでいた。

 

「何者…―いや、何モノだお前?」

 

『ふふ、そんなに構えないでよ。ボクは君の敵じゃあない』

 

「けど、コレが何であるのかは、知っている……だろう」

 

『まぁね。あっ、随分と面白いチカラを持ってるみたいだけど、残念ながらボクには効かないよ』

 

 どこか神秘的な雰囲気を纏った青白い少女はクスリと微笑む。見た目と同じようなあどけなさと悠久の時を生きる老賢者のような老練な雰囲気、相反するこれらが完璧なまでに混じりあった少女の表情にゾクリと背筋に冷たいものが走る。

 少女へと向けていたチカラを解きながらも油断することなく剣を握る手に意識を向ける。

 周囲をジワリジワリと包み込んでいたチカラが消えたのを確認したのか、美しくも何処か儚いような笑みを浮かべるとヒラリと舞うように上空から落ちてくる。

 目のような模様が描かれた古い大きめの服がフワリと空気を捉えて膨らむ。

 赤黒い亀裂も虚空も仲間たちも、旧校舎に存在する他の魔獣も、全てが停止した青白い世界のなかで唯一存在するただ二人が向き合う。

 

『はじめまして、ボクはレム。君達とは違う軌跡を見届ける者さ』

 

「……俺達とは違う軌跡?」

 

『そう、本来であれば永遠に存在を知ることすら無かった存在。君とは異なる螺旋に生きる者』

 

 何処か吸い込まれるような少女の声を聴きながら頭を回転させる。しかし、無駄に疲労しただけに終わる。

 

「悪いが、つまりはどういうことだ?」

 

 レムは、問いかけに答えることなくゆっくりと青白い光に包まれた虚空の方へと足を向ける。

 

『まさか、歪みの影響がここまでくるなんて…誤算だったかな』

 

 虚空に向けて手を差し出すと眩い白い光が空間を支配する。白い光に包まれた光は一瞬、門のような形を浮かべると空間に溶けるように姿を消していった。

 

「今のは……門か?」

 

 ソウがポツリと呟いた言葉にレムは驚いたように振り向く。

 

『驚いた、もう(・・・・)見えているんだ』

 

「一瞬だけだったけどな。それよりも、アレを消したのか?」

 

 ソウの言葉にレムはゆっくりと頭を振る。

 

『残念だけど一時の応急処置に過ぎない。大元を叩かない限り何度でも…、いや、いづれは外にも発生することになる』

 

 レムの言葉にその光景を想像して息を呑む。アレがもし外で発生したならば、そして、万が一にも虚空の向こう側にでも落ちることがあれば只では済まないことは想像に難くない。

 

「じゃあ、その大元ってのは何処に…―っ!!」

 

『あぁ、時間切れか』

 

 思わず目を見開くソウを他所に自分の細い手を見ながら小さく呟く。まるで天へと召されるように少女の体が少しずつ薄れゆく。

 消えゆく自分の姿にレムは、特に動揺する様子もなく小さく微笑を浮かべると少年の瞳を見据える。

 

『さてと、思っていたよりも時間が無いみたいだから単刀直入に問おう。この世界を今蝕んでいる歪みの根源はボク達の所に居る。けれども大きくなりすぎたソレを止めるには今の彼ら(・・・・)だけでは不可能になってしまった。全ての理をもとに戻すために力を貸してくれないかい?』

 

 突然の少女の言葉にソウは何かを考えるように目を閉じたが、やがて、くっくっ、と笑みを溢した。

 

「正直、まだ理解が追い付いていないが、お前に着いて行かなきゃいけないことは何となく解った」

 

『ふふ、随分と即決だね』

 

「直感には自信があるのでね」

 

 少年の言葉に満足したように頷くとゆっくりと宙へと舞い上がる。

 

『さあ、行こうか《杜宮(もりのみや)の地》へ』

 

 激しい光と共に少女の背後に白く荘厳な門が作られてゆく。空間を破るようにして生まれた門がゆっくりと開くのを四海で視界で捉えるのを最後に。

 

 少年の意識は白い闇へと落ちた。

 

 

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