翼の軌跡   作:南野智

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漸く戦闘シーンです……が、ムズいです。


実技試験と秘密兵器

 

 

「18時33分………予定より大分遅れたけど、ただいまより二次試験を始める。……もう準備はいいかしら?」

 

「何時でも大丈夫ですよ。」

 

 さわり、と冷たい夜風が頬を撫でる。向こうとは違って湖や海に面していないせいか、適度に乾いた風が心地よい。特に緊張しているわけではないが、改まって戦いに臨むことなど初めての経験でありなんとも形容し難い『くすぐったさ』がある。

 

 気持ちを整えるように軽く息をつくと、対峙する三体の機械人形が、今か今かと戦いのときを待つ―檻から解き放たれる直前の獣の唸り声のように駆動音をあげ始めた。

 

「それじゃあ、死なないように頑張りなさい。5、4、3、2、1、開始!!」

 

 サラの声と共に三体の機械人形が一斉に動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 正面から来る、黒光りする巨腕を右へ飛び避ける。極力、空中での体勢を崩さないように最小限の動きで着地地点を狙うべく2体の前衛の背後でアーツを展開している人形に狙いを定める。

 

「いけっ!」

 

 軽い破裂音と共に銃口から放たれた緑色の弾丸は、無理な体勢から放たれた為に命中コースから大きく外れる。

 

 機械人形は、嘲笑うかのように奇妙な機械音を鳴らすと駆動準備が完了したアーツを放つべく標的に狙いを定める。俺を中心に緑色の光を帯びた円が広範囲に形成される。

 中級風属性アーツ《エアリアル》―範囲の広さと高い威力により、主に集団戦において用いられるが、単数相手でも確実なダメージソースとしても用いられる。この状況でまともに直撃すれば怯んだ隙に前衛2体によって袋叩きにされるのは確実であろう。……直撃すれば(・・・・・・・・)だが。

 

 今にも竜巻を作らんと、大気が蠢いている緑色の光円に構うことなく、その中心で戦術オーブメント《enigma》を取りだしてアーツを展開をする。1対多数の戦闘では、通常は前衛に阻まれてろくにアーツは展開することはできないが、敵のアーツの効果範囲内……つまり、巻き添えを避けるべく前衛が距離を取っているこの瞬間は話は別である。

 

 

「―エニグマ駆動」

 

 

 術者を取り囲むように展開する青白い文字のような光に精神を集中させ、瞬時に駆動を完了させる。敵の周囲を黄金色の光円が包み込むイメージを浮かべて狙いを定め、周囲に展開する光の文字を解き放つ。

 

「《ダークマター》」

 

 刹那、青白い光の波動が周囲に弾け飛び、緑色の光円を吹き飛ばす。

 

 三体の機械人形全てを緑色のものに勝るとも劣らない大規模な光円が取り囲み、中央に現れた黒色の球体に吸い込まれるように引き寄せられる。

 広範囲の敵を強制的に球体に引き寄せ、敵の機動力を削ぐる空属性中級アーツ《ダークマター》―その性質ゆえに本来ならばアタッカーの強烈な一撃や高威力アーツへの連携攻撃に真価を発揮する。このように一対多数で使用することは、あまりないが……

 

「さてと」

 

 重力に捕らわれるように引き付けられ、圧迫されていく三体の機械人形に引導を渡すべく戻した銃に代わり銀色の筒を握る。

 

「《光剣》(フォトンブレード)起動」

 

 空気を震わすような振動音と共に長さ1アージュ半程の光の刃が筒の先端部より生み出される。

 

 驚愕した表情のサラを遠目に、音声認識により起動した銀色の筒―改め、試作型魔導剣《光剣》(フォトンブレード)を感覚を確かめるように軽く一振りする。

 

 俺が長年集めてきた七耀石や各種素材を惜しみ無く使用し、最高クラスの変人達―もとい、職人と研究者の協力によって作成された風変わりな名刀は、斬撃そのものが魔法攻撃となる優れものである。威力、取り回しの利便性などは従来の剣では、到底及ばない高性能であり、数種の欠点さえ存在しなければ、これ一本で十分に実戦を戦える。

 

「それじゃあ、纏まってくれたところで、弱ったヤツから狩りますか。」

 

 

 

 

 

 

 不敵な表情で、光輝く謎の武器を構える変わらない姿に小さく溜め息をつく。

 確かにあの人形では、勝ち目が薄いとは思っていたが、目の前で繰り広げられているような一方的な展開にはならないように調整は行ったはずだった。はずだったのだが―

 

「相変わらず滅茶苦茶ね」

 

 少年は、地面を蹴りあげると一瞬にして機械人形との間合いを詰め、その内の一体を斬り上げる。物理防御主体に設定した前衛攻撃型のその人形は、黄色い火花を散らしながら一撃で機能を停止させた。

 さらに、休む間もなく人形の周囲を駆け回りながらあらゆる方向から銃弾を撃ち込む。一発の威力はけして高くはないが、確実に二体の機械人形の弱点を削っていく。

 金属を擦り合わせたような独特の音と共に機械人形が大きく宙へと舞い上がる。時折、火花を散らせながら、一体はボロボロになった腕部から少年の剣によく似た緑色の光の刃を展開し、もう一体はアーツの駆動準備に入った。

 

「ちょっと、これってアリですか?」

 

 不平を呟くような声が聞こえてきたが軽く流す。本来であればアーツによる遠距離攻撃で対応する状況であるが、機械人形の緑色の剣には、駆動解除能力があるので、それもままならない。

 

 ──さて、どう料理するのかお手並み拝見しようかしら。

 

 少年は軽くげんなりした表情を浮かべると光の剣を構えて機械人形の剣を受け止める。金属音とは異なる音を響かせながら二本の剣は激突した。

 

 

 

 

 

 

 鍔迫り合いする剣から響く電流のような音を耳にしながらこの状況を打ち破る打開策を模索する。

 最初の一体をとは違って、この機械人形には光剣によるダメージは期待できない。

 

「っなろ!!」

 

 まず、鍔迫り合いの状況を打開するべく空いている手で銃弾を撃ち込む。僅かに怯みを見せた瞬間にバックステップで距離を取る。

 

 ―後ろで詠唱を行っている人形の前にまずはコイツから何とかするか!

 

 素早くベルトのケースから白色のクオーツを取り出して、銃にセットする。

 少々もったいない気もするが早めに片付けてアーツを防ぐ準備をする必要があるので出し惜しみをしている場合ではない。

 

「《制裁弾》(ジャッジメントバレット)

 

 

 クォーツから発せられた光が銃口に収束していく。白き輝く光の奔流が大気照らした刹那―…

 雷の光のように弾け、銃口から放たれた神々しさすら感じさせる光の柱が機械人形を貫いた。

 

「さてと、そろそろ終わりにしようか」

 

 光剣の切っ先をまっすぐに最後の人形に向けて、ニヤリと獣のように好戦的な笑みを浮かべた。

 

 

 

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