~町へ向かう街道~
「ふぅ、やっと町まで半分のところまで来た」
(にしても、やっぱり気は便利だな。身体強化に投影、更には無機物に気を流せば、解析みたいなことができた。身体強化は分かるが、解析は何で出来たんだ?原作で士郎が使えたから?つまり、俺に与えられた特典は士郎の技術?けど、最高神の説明には投影としか…わからん)
本当は、最高神が投影を弄ったせいで、投影に関係する解析が特典に紛れ込んだだけである。
「情報が少なすぎて分からんな。この話しは保留…だな。さて、町を目指しながら、投影速度を上げよう。これは数をこなすしかないからな」
人に見られないよう、徹は注意して剣を投影しながら歩き出す。野菜が入った袋を背負いながら。端から見たら、大きな袋を背負いキョロキョロしながら、手に剣を作ったり消したりする青年。…現代なら通報待ったなしの絵面である。
~町の正門~
「ふぅ、やっと着いた。昼までについてよかった、よかった。さて、市場に行って売る準備をしないとな」
現代なら、物を売るには色々な許可や、売る場所を使うためにはお金を払わなければならないが、現時点でそのような考えはまだ世の中に広まっていない。
そのため、場所を取るには早く現地に行って、場所取りをしなければならない。
なので、徹は歩く速度を上げ、町の中心に向かった。
~町の大通り~
「いらっしゃーい!新鮮な野菜があるよ~!おひとつどうだ~い!」
と、大きな声を発して客を呼ぶ徹。
「おっ、いつもの坊やじゃないか。今日は一人かい?」
「あっ!おばさん!はい、今年は豊作でみんな忙しいから、今日は俺一人です」
「おぉ、それはいいねぇ。大根は幾らだい?」
「はい!大根は1本、7銭ですね」
「なら、2本ちょうだいな」
「お買い上げありがとうございます!」
<貨幣は五銖銭という一種類しか無く、一枚10円相当。大金の時は真ん中の穴に紐を通して一纏めにしていた。>
と、以前から野菜売りを手伝っていて、顔も知られている徹は手際よく野菜を売っていき、
「よし。全部売り切れた!それじゃあ、村に帰るか。今から帰るとなると、村に着く頃には真っ暗だな」
落ちかけてる太陽を見ながら、徹はそう呟く。
「さぁ、行くか」
格段に軽くなった荷物を持ち、町を出た。
絶望はすでに…始まっていたことを、この時の徹は知るよしもなかった…
~街道(徹の住む村近く)~
「なんで…」ドサッ
目の前に広がる、あまりの衝撃の光景に荷物を落とす。
その光景とは…
「なんで…
村に炎が燃え盛る凄惨な光景だった…。
「っ…!」ダッ!
縮地を使い、高速で村に移動する徹。
そして、村に入り
「おい!誰か返事をしてくれ!おーい!」
しかし、いくら呼んでも何も返ってこない。
そのことから、頭をよぎる最悪の結末。
村人はもう…
「っ!考えるな!生きてる人はいるは…ず…」
そして、徹の視界に入ってきた見覚えのある、お世話になった人、だった姿…
「おっちゃ…ん…?」
その体は刃物で斬られており、傷跡から血が流れた跡が…。
もうほとんど流れたのであろう、傷跡からはもう血が流れていなかった。
「…っ!?オェっ…!?」
(吐くな!?吐く暇があったら、生存者を探せ!)
徹は吐きそうになったが、精神力でなんとか耐え、また歩き出す。
そんな徹の耳に…
ウォォォォォ…、モウスコシダ…コロ…
「っ!?今なにか!?広場の方か!間に合え!?」
広場へと全速力で向かう。
~村の広場~
十数人ほどの武装した集団が、一人の老人を囲んでいる。老人の服は所々破れ、血も流れている。普通なら、怯えるのは老人だが、なぜか集団の方が怯えている。
「クソッ…!?なんだよ、この爺ぃ!まだ死にやがらねぇ!?」
(ハァハァ…、やっとここまで減ったか。現役なら一万は倒せたんじゃがのう、歳じゃな。盗賊の千人程度でこの様とは。)
老人を中心とした円の周りには、数えきれない程の多くの死体が倒れている。そのすべてが、この老人に倒されていた。これでは盗賊も怯えるだろう。
しかし、流石の老人も限界だったのか…
ガクッ!「っ…!?」
膝を地面に付いてしまった。
その隙を盗賊が見逃すはずもなく…
「っ今だ!殺れ!」
盗賊たちは老人に近づき、剣で刺した。
ザクッ!ザクザクザクッ!
「ッガハ!?」
血を吐き、倒れる老人
「っ!よ、よし!殺ったぞ!」
それを見て、喜ぶ盗賊たち。
そこに現れる人影。
「じい…ちゃん?」
徹だった…。
俺の目の前で倒れてるのは誰だ?
じいちゃんだ。
じいちゃんの周りで笑っているのは誰だ?
知らない。
だが、皆を、じいちゃんを殺した奴等なのは明白。
なら、俺は何をするべきだ?
コロセ!コロセ!
あぁ、そうだ。コイツらは皆をコロシタ。
ナラ…ミナゴロシダ。
「ウォォォォォォォォォォォォォ!!!!」
顔を上に向け、叫ぶ徹。その表情に正気はない。
「
手に剣を作り、体に気を纏わせ、盗賊に向かっていく徹。
「ヒッ!な、何なんだよ!次から次へと!?」
そして、叫びを聞いて体が震えてしまう盗賊たち。
その目は、こちらへ向かってくる青年/徹に向けられている。
「な、何だ!?あいつの手にいきなり剣が!?」
そんな、普通ならあり得ないものを見てしまった盗賊たち。
本来なら、多対一のため盗賊の方が有利なのだが、ついさっきその現実は老人によって覆され、さらに先程見た妖術ともとれる光景。
そのため…
「に、逃げるぞ!退散だー!」
ここで、盗賊の頭領が選択した行動は逃走。
しかし、今の徹がそれを見逃すはずもなく…
「ニガスカァァァァ!!!」
縮地によって、近づき一人目の盗賊を首を斬って殺す。
残り、16。
それを見て腰が抜けたのだろう、座り込んでいる盗賊4人を斬り捨てる。
「ガッ!」「グフっ!」「ギッ!」「ゴハッ!」
残り、12。
「この、くそがきぃぃぃーーー!」
「おい!?やめろ!!」
指示に逆らい、7人の盗賊が徹に向かっていく。それを見た盗賊の頭領は慌てて止めるが…
「クソハテメェラダロウガァ!!」
徹は先頭の斧を持ってる盗賊に向かって走り出す。
「死ねぇ!」
徹が射程距離に入った瞬間、斧を降り下ろす。
斧は上からの降り下ろしが一番強烈である。武器の重さも合わさり、降り下ろす速度が速く、威力も高いからである。
しかし
「アタルカァ!ンナコウゲキィ!」
徹は進行路を体1個分、右に動かし回避。相手の頭が下がっているところを狙い、斬る!
ザシュッ!ゴロッ…
「ひぃぃ!!」
槍を持った2人の盗賊は、徹が近づけないように、槍を必死で突く。
だが、怯えているせいか武器の攻撃速度は遅く、当たらない。
徹は槍の下に潜り、接近。二人の男の間を通り抜け様に、首をはねる!
「まとめてかかれぇ!」
剣を持った盗賊3人が一斉に飛びかかる。その後ろには、弓を持った盗賊が1人。
「ジャマダァァ!!!」
徹は飛びかかる盗賊を縮地で避け、弓を持った盗賊に肉薄。
「えっ?」
驚きからか、弓を持った盗賊はそんな間抜けな声を出し、
ザシュ!
体を斜めに真っ二つにされた。
「「「なっ!?」」」
先程の動きが見えなかったのだろう。盗賊3人はそんな声を出しながら振り返り、
「ァァァァァァァァ!!!」
目の前で、体の横に剣を構える徹を見たのが最後の光景だった。
残り、5人。
「ヒッ!?も、もう嫌だ!?やってられっかよぉ!?」
と、叫びながら武器を捨て、逃げる盗賊たち。
徹に背中を向け、全力で走る。
だが、その無防備な背中に向け、投影で作った剣が投げられ、盗賊たち4人の頭に突き刺さり
ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!
頭領のふとももにも刺さる。
ザシュ!ザシュ!
「ギャァァァァァァ!!」
あまりの痛みに叫び、その場で転げ回る。
スタッ……スタッ……
その頭領に近づく足音…。
「ヒィ!た、頼む!殺さないでくれ!」
何も答えず、近づく足音。
スタッ…スタッ…
「お、俺らだって!殺したくなんかなかったさ!生きるのに必死だっただけだ!上の奴等は俺らの事情なんか知ったことかと、税金は高くなる!そして、俺らは食うのに困るのに、あいつらは悠々と生きている!俺らだって自由に生きてもいいだろうが!?」
スタッスタッ、ピタッ!
頭領の前で屈み、顔を近づける徹。
その表情から感情は読み取れず、まさに無表情。
「オマエラノジジョウナドシッタコトカ」
「ハッ?」
その返しが予想外だったのか、そんな声を出してしまう頭領。
「オマエラハムラノミンナヲコロシタ。
ダカラ、オレハオマエラヲゼンインコロス。
ダカラ、シネ」
言葉が終わると同時に、徹は剣を振り上げ、
「や、やめt」
降り下ろされた。
「…ハッ!えっ?何で俺はこんなとこにいるんだ?」
唐突に正気に戻る徹。なぜ、自分がこんなとこにいるのか解らず、周りを見渡すと、
「…っ!?」
盗賊の死体を見つける。と、同時に甦る記憶。自分がやったことが一気に頭に流れ込む。
「ッウプ!?」
理解すると同時に吐き気を催す。それに耐えるため、反射的に下を向く。自分の下を見る。見てしまう…
「!?オェェェェェェ!!!」
そこには、体を真っ二つにされた死体がある。両断されているため、人体の中身を直視してしまい、遂に吐いてしまう。
それを見まいと後ろを向き、吐き続ける徹。
5分ほど吐き続け、あらかた出尽くしたのだろう。もう何も、口から出てこない。
それでも、徹は立ち上がり、青ざめた顔で
「…そうだ…、じいちゃんを…助けなきゃ…」
フラフラとした足取りで、老人がいる広場へ向かう。
~広場~
本来なら、半刻もあれば着く距離を倍の時間をかけて、
たどり着く。
徹は、剣が刺さった老人の側に行き、必死に呼び掛ける。
「じいちゃん!起きてくれ!じいちゃん!!」
呼び掛けが届いたのか、老人の目がうっすらと開く。
「…っじいちゃん!よかった…、すぐ治療するからな!」
村に医療道具を取りに行こうと立ち上がる徹を、
「…待て、徹…」
老人が呼び止める。
「なんだよじいちゃん!?すぐに手当てしないと…!?死んじゃうよ!?」
「…いや、この傷では…。どうやっても…助からん」
必死に助けようとする徹に、残酷な真実を告げる。
しかし、事実だ。腹には剣が刺さり、出血の量も多い。どうやっても助からないのは明白。
「…すまんな、徹。…村を守れんで。千人もの盗賊が村を襲い、撃退しようと…したんじゃが、無理じゃった。
数百なら、まだしも…千人は予想しておらんかったわ」
「千人!?そんな…大規模な盗賊集団なんて聞いたことが…」
「わしにも…分からん。普通ならあり得ん数じゃ。じゃが、今は…そんなことはどうでもよい…。聞け、徹。今の世の中は、…こんなことが各地で起きている。近い将来、中央への…不満が爆発し…大規模な民の反乱が起こるじゃろう」
「(黄巾の乱のことか!?)それがどうしたんだよ!?今はそんなこと…!?」
「…黙って…聞かんか。お主は…、優しいからのぅ。ワシらの様な…ことが起きんように、世の中を…変えようとするじゃろう」
「もういい!じいちゃん!喋るな!」
徹は悟る、悟ってしまう。これが老人の最後の言葉だと。最後まで喋らせてしまえば、老人は…
「だが…徹。お前は…世の…中を変える…など考えるな…。幸せに生きよ。嫁を…もらい、幸せな…生活を送れ。それが…ワシの最…期の願い…じゃ。」
「じいちゃん…!待ってくれ!死なないでくれ!」
「それは…無理じゃのう。そろそろ…意識が…薄れてきおった。まだまだ…お主には…教え…たい…こ…と…が…」
「あぁ!死ぬなぁ!死なないでくれ!俺を一人にしないでくれぇ!」
「すまん…のう。だが…死んでも…ワシは…おぬ…しを…見守ろう…」
老人は徹の頬に手を伸ばし、撫でる。
「お主は…ワシの…息子じゃからのう…」
「っ!?なんで、なんでこんなときに、そんなこと」
「さらばじゃ…、最愛の息子…徹よ…」
その言葉と同時に…伸ばした手が…落ちた。
パタッ…。
「あぁ…。アァ…。アァァァァァァァァァ!?!?!?」
泣く。
徹は泣く。
涙を流し、声を上げ、盛大に泣く。
天に届けと言わんばかりに…
泣き疲れ、その場で寝てしまった徹は翌日、村人全員の死体を老人の家のある山の頂上まで運んだ。百人にも及ぶ人を一人で運ぶのは時間がかかり、すっかり夜になっていた。それでも、徹は大きな穴を掘り、村人や老人の死体を綺麗に並べ、穴を埋めた。
さすがに疲れたのか、老人の家で休む徹は考え事をしていた。
(何故、いきなり千人もの大規模な集団が襲った?そこまで、大規模なら村に情報が届いてもいいはず…。何でだ?)
そう考える徹。確かに、本格的な反乱は黄巾の乱なので、それ以前のこの時代に千人もの集団は中々に出来ない。
(何かが足りない…。決定的な、あとひとつの一欠片…、思い出せ…。思い出せ…!)
そこに唐突に思い浮かぶ出来事。
『精々、面白おかしく生きて、私を楽しませろ?じゃないと、どうなっても知らんぞ?』
『千人は予想しておらんかったわ』
『普通ならあり得ん数じゃ』
(普通なら?なら、今回は普通じゃない!?普通じゃない力…。神が仕組んだのか!?なら…盗賊が来たのは…俺の…せい…?)
そして、たどり着く真実。
しかし、それはあまりにも残酷で惨い真実。
「クソッ!?」ダンッ!
あまりの真実に、壁を殴る。
(なんで、忘れてた!?そうだ、よく考えれば暇潰しで人をトリップさせるような神だ!人の命を大事にするような奴じゃない!)
「っ!?落ち着け…。今はそれを考えても何もならない。これからどうするかを考えろ…」
(にしても、何故俺を殺さない?あのクソ神なら俺を殺すはず…。…今回ので殺したと思い込んでいる?そうか、あいつは人を下に見ている。自分が決めたことには逆らえないと思っているんだ。なら、今後はあいつの介入はない…。)
そう結論付けた徹。そして、寝るまで今後の進む道を考え続けた…。
~村人の墓場前~
徹は村人を埋めたところに木の枝を使った、十字架を指した。
そしてその墓場の前で、
「ごめんな、じいちゃん。昨日の夜に考えたけど、俺はじいちゃんの最期の願いを叶えられそうにない。俺は、世の中を変える。永遠に続く、皆が笑える世の中…なんてことは無理だ。けど、長く続く、皆が泣くことが少ない世の中にしてみせる。こんな親不孝者な息子でごめんな?俺は自分の進む道、進むべき道を貫き徹すよ」
そう、話しかける。
「それじゃあ、いってきます。じいちゃ…いや、父さん。おっちゃん、村長、村のみんな。そして…現代に戻ろうとした俺。」
そして、徹はその場を後にする…。
(そうだ、世の中を変える…。どんな手を使っても…)
そう考える徹の顔には、以前まで感じられた優しさは無かった…。
設定に主人公の戦闘スタイルと使用武器、お金の価値について、書き足しました。