魔動少女ラジカルかがり   作:Leni

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02

 

 時空管理局の保護施設。

 そこで私達姉妹を迎えてくれたのは、私と同じくらいの年頃の不思議な女の子達だった。

 

「ようこそ。わたしはアリシア・クローン十九番です」

「二十六番です」

「二十二番です」

「十七番です」

「二十三番です」

「二十番です」

「二十五番です」

「二十一番です」

「二十四番です」

「十八番です」

「そしてわたしがこの場所のアリシア・リーダーの十六番っす!」

 

 口々に珍妙な自己紹介を始める女の子達。

 

 総勢十一人。皆、同じ顔と同じ髪型、同じ背丈。

 うり二つ……、という言葉で良いのだろうか。

 

 双子というものが存在することは知っていたが、流石に十一人も同じ顔がそろうというのは想像したこともなかった。

 

 何とも言えないこの光景に、スバルと私は二人で固まってしまう。

 

「あ、気になるかもしれないっすけどこの話し方はキャラ作りなので気にしないで欲しいっす」

 

 横に一列に並んだ女の子達、その真ん中に立った一人が妙な語尾でまくしたてた。

 

「……変なの」

 

「こ、こらスバルそういうことは素直に言っちゃダメなの!」

 

 って、しまった。

 私も変だと思っていることが向こうにばれてしまう。

 

「い、一応リーダーっすから他のみんなと区別が付くようにしないとだめっす」

 

 それなりにショックを受けたようで、わずかにどもりながらそう返してくる。

 

「……髪型を変えるとか駄目なんですか」

 

「ああっ、そんな手が!」

 

 私の指摘に頭を抱えながらその場でのけぞるリーダーさん。

 

 この大げさな動きもキャラ作りとかいうものなのだろうか。

 

「髪型かー」

「私も変えたいなー」

「ポニテ? ポニテ?」

「ツーテールかわいいよねー」

「ツーテールだとフェイトおねーちゃんだよ?」

「ちょんまげー」

 

 凛としていた雰囲気は完全に吹き飛び、アリシア(?)さん達は口々に雑談を始めた。

 ああ、すっかり私達を無視して会話がはずませていく。

 

「え、と、それで、その番号が名前、なのかな?」

 

 流石に数字が名前と言うことはない……と思う。

 番号を名乗っている事情が何かあるのかもしれない。

 

 同じ遺伝資質を持ったクローン、だったかな。私とスバルは同じ遺伝情報のはずだけど髪の色が違ったりするから、この子達は私達姉妹とはまた別の存在なんだろう。

 

 まあ、私とスバルだって、ヒュペリオンのコードネームを元に付けられた愛称を名前として名乗っている。

 自分の名前を名乗らせてくれないような施設、ということは流石にないだろう。ないと思いたい。

 あれだけカガリがちゃんとした施設だと言ってくれていたんだし。

 

「名前は別につけてもらったんだけどねー」

「でも言ってもあれだよねー」

「誰も見分け付かないから教えるだけ無駄だよねー」

「でも友達は名前で呼び合うものだってカガリお姉ちゃんが言ってた」

「友達になろうねースバルー」

「というかわたし達だって見分けついてないじゃーん」

「はーい、十九番でーす」

「十九番はあたしー!」

「お母さんは見分けつくんだよーさすがお母さんだよねーすごいでしょー」

「お母さんはお母さんっすから」

「大きくなったらお母さんのお嫁さんになるんだー」

「カガリお姉ちゃんも名前で呼んでくれるよね」

「カガリお姉ちゃんはお母さん?」

「な、なんだってー」

「新事実新事実」

「犯人はお前だー」

 

 頭が痛くなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

魔動少女ラジカルかがり SECRET STAGE 02

『人形の遊戯』

 

原作:魔法少女リリカルなのはアニメシリーズ ……のはず

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなことがあってから一週間ほど経ってからのこと。

 

「こんにちは、ギンガさん。調子はどうですか?」

 

 リクライニングルームでお茶を飲んでいると、カガリがやってきてそんなことを訊ねてきた。

 

「うん、良くして貰ってる。今までと待遇が違いすぎてスバルなんて毎日違うことで喜んでるよ」

 

「それは良かった。あれ以来ころころ環境が変わっていますから、ストレスになってないか心配だったんですよ」

 

「どこも快適だから悪い事なんて無い」

 

 快適、なんて言葉で言い表せるものだろうか。

 

 

 このお茶という飲み物も管理局に保護されてから初めて飲んだ。

 

 必要な栄養以外の飲食物を摂取するという習慣。

 味の付いた飲み物で好きなときに喉を潤すという自由。

 

 外の世界は素敵なことだらけだ。

 

 

 そのことをカガリに話してみると、彼女は小さな笑みを返してくれた。

 

 カガリとは戦場以外での付き合いは長くないけれど、彼女は今まで会ったことのある人達より表情の動きが小さい。

 この微笑は「すごい嬉しい」ときの表情……だと思う。

 

「施設の子達との折り合いはどうでしょう? そちらのほうは心配してませんけど」

 

「ここの皆は元気いっぱいで振り回されている感じ……特に十一人が」

 

「あー、アリシアさん達ですか。同じ思考を持つ子達が十一人ですからね。同調し合って延々と話が続くんですよ」

 

「スバルとはもう気が合っているみたいだけど」

 

「あはは、あの子達は見た目と違って中身は脳の発達した一歳児ですからね。ギンガさんよりはスバルさんのほうが波長が合うでしょう」

 

 むむ……あの脳天気なあの子達も、この施設にいるだけあって色々あるみたいだ。

 

「あれでも最近はそれぞれに個性が出てきたんですよ。二十一さんは泣き虫ですし、十八さんは特におしゃべりです」

 

 個性があっても見た目が同じだと私には見分けが付かないんだけど。

 ああ、カガリは見分けが付くんだっけ。

 

「カガリとあの子達の……お母さん? その人はあの子達の誰が誰か見分けが付くようだけど、どうやってるのか。実は少しずつ顔が違う?」

 

「ああ、それですか。実はあの子達、アリシア・クローンさん達はですね、昔に死んだアリシアという人を再現するために生み出された複製人間なんです」

 

 さらりととんでもないことを言われた。

 

「え、え、そんなこと私に軽々と言っちゃって良いの?」

 

「良いんですよ。で、容姿はみんなオリジナルのアリシアと全く同じ。精神構造も元は皆同じです。ただですね、あの子達はオリジナルと唯一違うところがあるんです」

 

 カガリは左手の親指で胸を叩くジェスチャーをする。

 胸? なんだろう、心臓、血液?

 

「魔力があること、ですね。彼女たちは人工的に魔導師を作る技術で複製されたんです」

 

「私と似たようなもの?」

 

「魔法と機械という方向性が違いますけど、まあ基盤技術は共通ですね」

 

「でも複製なら魔力も同じじゃない?」

 

「容姿の統一以外は割と大雑把に量産された素体だったようなので、個々人の魔力の質はばらばらなんです。乱造ってやつですか」

 

 乱造。

 ヒュペリオンの研究施設でのことを思い出す。

 

 実験のためだけに多くの促成機人が創られては次々と使い捨てられていた。彼らのようなものなのだろうか。

 

「ですのであの子達のお母さん、プレシアさんはその微妙な魔力の違いを感じ取って、アリシア・クローン総勢二六七人の名前と姿を一致させているんですよ」

 

「二六七人って……」

 

「プレシアさんはSランクの魔導師、それも管理局にいるようなパワー馬鹿じゃなくて、知を探求する本物の魔導師ですからね。それくらい朝飯前なんでしょう」

 

「Sランク……じゃあ私には無理なのか」

 

「どうでしょうね。アインハンダーを解析していた技術班の見解では、ギンガさん自身の魔導師評価は最新でA+ランク相当でしたが」

 

「うえ、A+!?」

 

「最初はB評価だったんですけどねー。あ、ちなみに私は視界から魔力を感知する一族製の生体パーツが頭にあるので見分けられます。ギンガさんもつけます? ギンガさん、機械と親和性高いですから私のポケットマネーで簡単な手術で埋め込めますよ」

 

「い、いや、いい。いらない」

 

 確かに身体のパーツのつけかえとか出来るけど、気持ちの良い物じゃない。

 

 つけかえはヒュペリオンの兵器実験とかアインハンダー用パーツの搭載とかでしかイメージがなかったけど……生活に役立つ活用か。

 ヒュペリオンの兵士だったときにはありえないことだ。

 

 自分の出自を割り切るというのはこういうことなのかな。

 あの子達だって、自分達を平気でクローンと呼んでいたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カガリがたずねてきてからというもの、私は遠巻きにアリシアさん達を観察するようになった。

 

 施設の人達の名前は彼女たち以外全員覚えた。

 

 カガリが言うには、相手の名前を呼ぶのが親愛の証。

 今後の生活を考えると、施設で上手くやっていくには全員の名前を覚えるに越したことはない。

 

 アリシアさん達の表情と仕草、そして魔力を記憶する。

 

 デバイスの助けがない状態での魔力探知。

 識別の前に正確に魔力を感じ取ることから始めなければいけなかった。私は戦いのための魔法しか覚えていなかったから。

 

 魔力を感じ取れるようになってからは、まず先にスバルの魔力を覚えることから始めた。

 魔力探知は便利だ。

 施設の中ならば、いつでもスバルがどこにいるかすぐに解る。

 

 慣れてしまえば後は記憶力頼み。

 

 貴重な名乗りの機会を待ち続け、観察の途中で目が合いそうになったら急いで目を離すという日々を続けて、おおよそ名前と魔力が一致するようになった。

 

 

 新しい環境になったばかりだというのに精神を研ぎ澄ます日々。

 そんな中で、ゆっくり一人でお茶を飲むのが楽しみの一つになった。

 

 紅茶、緑茶、白茶、黄茶。同じ植物を元にしている飲み物だというのに、こんなにもバリエーションが豊富。

 さらに、砂糖を入れたり薬味を入れたり果汁を入れたりと、味付けも自由に変えられる。

 新しい味を発見するのが密かな趣味になっていた。

 

 そういうわけで今日も学習時間が終わってスバルをアリシアさん達の元へと送り出すと、一人でリクライニングルームへやってきているのだ。

 

 柔らかい椅子にゆったりと身を任せてコップ片手に優雅なひとときを過ごす。

 身体が温まったためか、少し眠たくなってきた。

 

 せっかくなので昼寝でもしようと、椅子の背もたれを寝かせようとしたそんなときだ。

 

「あだっ」

 

 急に頭に何かが軽く当たった。

 続けて床から何かが落ちた音。

 

 何事か。と、床を見下ろしてみると……。

 

「ゴミ?」

 

 小さな紙でできた二等辺三角形の奇妙なオブジェだ。

 

「ゴミじゃないっす! ダライアス式紙戦闘機っす!」

 

 リクライニングルームの出入り口の方向から叫び声が聞こえた。

 

 アリシアリーダー、十六番だ。隠れてはいるが魔力、いや、それ以前に口調で判別できる。

 十六番は初めて会ったときの指摘に感心したのか、あれ以来アリシアさん達の中で唯一髪を束ねてポニーテールにしている。

 

 

 で、私に衝突した紙は、ダライアス式戦闘機とかいうものらしい。

 ダライアス式と言うことはこのオブジェはカガリが与えた手製のおもちゃか何かだろうか。

 

 戦闘機とやらを床から拾って手に持ってみると、なるほど、紙を折って翼が出来ていて確かにわずかならば空を飛びそうな形状をしている。

 

 紙製の小さな戦闘機。攻撃方法は玉砕体当たりのみだ。

 

「こういうものを人に向けて投げるのは危険。目に当たったら大変」

 

 形状から察するに尖った先端を船首にして真っ直ぐ飛んでいくのだろう。

 当たったらとても痛そうだ。相手に投げ合ってスバルの目になんて当たったときには大変だ。

 

「それはどうでも良いから、それ開くっす!」

 

「それ……この紙?」

 

「そうっす。分解して中を見るっす」

 

 紙を開く。見た目通りに単純な折り方をされている。

 

 これで出入り口からここまで届くというのだから、奥の深いおもちゃだ。

 

 開いた紙には、太いペンで何か文字が書かれていた。読み解くのがやっとな歪んだ文字だ。

 

 書いたのはきっと文字を覚えたばかりの施設の子。

 保護されて一年という十六番以下十一名がとりあえずの心当たりだが。

 

「これを読めば良いの?」

 

 読みづらいが、そんなに長い文章でもない。

 

 

『おまえのいもう

 とはあずかった

 

 かえしてほしけれ

 ばひろばまでこい』

 

 

 ……おい。

 

「ちょっとこれ!」

 

 急いで出入り口へと顔を向けるが、十六番の魔力反応はすでにそこにはない。

 探知の網を広げると、広場の方へと向けて走っていっているのが解る。

 

 なんなんだ一体。

 

 悪ふざけ? いたずら? だとしても、スバルをだしにつかうのは駄目だ。

 言って聞かせないと。

 

 眠気がすっかり吹き飛んでしまった身体を椅子から起こし、私は広場へと足を向けた。

 

 

 

 

 

「たすけてーおねーちゃーん」

 

 棒読みの悲鳴をあげるスバル。

 

「ふはははは、おまえの妹はあずかった!」

「ひとじちー」

「手のひらの上ー」

「とらわれのおひめさまー」

「おうじさまとキス?」

「キャー! キャー!」

「わたしもとらえてー」

 

 ……なんだこれ。

 

「妹を解放してほしければ、あたし達にしたがえー」

「したがえー」

「したがえー」

「したがえー」

「はあ……」

「したがわないとひどいぞー」

「ひどいんだぞー」

「だいさんじだぞー」

「ぐたいてきにはー?」

「背中に入れちゃう?」

「背中にテンダリオンムシを……」

「ぎゃーっ!?」

 

 アリシア達の騒ぎ声に混じってスバルが本気で悲鳴を上げた。

 

「ちょっとあんたたちなにやってるのー!」

「うわー!」

「怒ったっすー!」

「本気だー!」

「ごめんなさーい!」

「うええええええええええええん」

「待ってよこっちはひとじちがー」

「そうだ遊ばないと」

「そうだそうだギンガちん、わたしたちの要求をのめー」

「のめー!」

「のめー!」

 

 いっせいに私に指を突きつけてくるアリシア達。

 

「ギ、ギンガちん?」

 

 よく見たらスバルも私に向けて指を向けている。

 本当になんなんだこれは。

 

「のめー」

 

「いや、その、要求って何?」

 

「あ、言い忘れてたっすね」

「十六番うっかりー」

「ええ、わたしのせいっすか!?」

「リーダーがんばれよー」

「あんたがやらなくてどうするのさー」

「だめだな解任だな」

「あんたとはやってられませんな」

「うっかりリーダーはいらないよねー」

「ちょっと最近調子にのりすぎだよね」

「一人だけ個性手に入れたつもりになってるよね」

「み、みんなひどいっす! 挽回のチャンスくらい欲しいっす!」

 

 今度は勝手にもめはじめた

 

「帰って良い? ほら、スバル行こう」

 

「え、え、良いのかな」

 

「待つっす! ちょっと待って欲しいっす!」

 

「早くして」

 

「お、お姉ちゃん怒らないであげて……」

 

 アリシア達から私の元にやってきたスバルが私のそでを引っ張ってくる。

 いやまあこの程度で喧嘩とかはするつもりはないけど。

 

 アリシア達はまた何かを

 

「スバルちんを返して欲しければわたし達と缶けりで勝負っす!」

 

「……何それ?」

 

 

 

 

 

 缶けりというのはある管理外世界での遊戯のことらしい。

 

 紙戦闘機と同じくカガリが彼女たちに伝えた遊び。

 なるほど、カガリお姉ちゃんと言われるわけだ。

 

 ルールを聞いてみると、これがまた奥が深い。

 捕まるか缶を蹴るか、捕まえに行くか缶を守るか。訓練も受けていないような幼児の遊びとは思えない駆け引きを要求される。

 

 そういえばヒュペリオンの訓練ではこういうのは得意だったな。

 

「お姉ちゃん頑張れー!」

 

 スバルもこういっていることだし、ちょっと本気でやらせてもらおうか。

 

 相手は子供。ちょっと缶からはなれてみせれば何も考えずに突撃してくる子も一人か二人はいるだろう。

 

 頭の中でいくつかの行動パターンを考えながら缶から離れてみると。

 

「ふはははははははは!」

 

 早速一人飛び出してきた。

 見つかったら駄目なのに叫びながら出てくるなんて……まあ他から足音は聞こえないから作戦じゃなくて何も考えていないのだろう。

 

 走ってきているのは十六番だろう。頭の後ろで金色のしっぽが揺れている。

 

 今の缶との距離は私と彼女、二人とも同じ程度だ。いける。

 

「十六番みっけポコペン!」

 

 私の缶への到着は一瞬だ。魔導師でしかない幼児と戦闘機人の私の身体能力は比べるまでもない。

 これで早速一人確保。

 

 と思ったら。

 

「ふはははは、あたしは十六番ではないぞー!」

 

「えっ!?」

 

 十六番ではない?

 あ、そうか、髪型を真似て成り代わったのか。見事にだまされた。

 

 ということはこれは誰?

 顔が同じで服も支給された制服を着ているのにどう見分けをつければいいのか。

 

 そこまで考えて、私はもう彼女たちを判別できることに気付いた。

 

「もらったあああああ!」

 

「十九番みっけポコペン!」

 

 缶への接触は同時。

 

「みぎゃああああああああ!」

 

 だが、私が全力で踏みつけた缶は十九番の脚力では、缶を広場の土に小さく描かれた円の中から押し出すことは出来なかった。

 

 蹴った衝撃が全て自分の右足に返ってきてしまった十九番は、足を押さえて転げ回っている。

 まあ骨折まではしていないだろう、多分。

 

 十九番は十秒ばかり転がったあと、起き上がり半べそをかきながらスバルの元へ歩いていった。

 

 スバルは十九番の足をさすってよしよしとなだめはじめた。ああ、やっぱりスバルは良い子だ。

 

「うう、おには鬼だった……」

 

「うるさい」

 

 とにかく、私には魔力探知という強力な武器があることを思い出した。

 

 これを使えば、名前の特定どころか位置の特定まで可能だ。

 

 探知の網を施設全体へと広げる。

 あ、早速一人が足音を忍ばせて近寄ってきている。

 

 私がスバル達に目を向けている隙にとでも思っているのだろう。

 

「十六番みっけポコペン」

 

「んなー! ポニーじゃないのになんでわたしとわかったっすかー!?」

 

 そこからはただの作業だった。

 

「二十一番、二十五番みっけポコペン」

 

「ええー、わたし達のコンビネーションがー!」

 

「十七番、十八番、二十四番、二十六番みっけポコペン」

 

「じんかいせんじゅつやぶれたー!」

 

「二十二番みっけポコペン」

 

「土に缶めりこんでるよー!?」

 

 

 捕獲作戦は十五分とかからず終わった。

 

 

「反省してる?」

 

「反省してまーす」

 

「もうスバルにこんなことしない?」

 

「しませーん」

 

 

 捕獲した十一人は広場の土の上に座らせ、私は彼女たちに説教をしていた。

 スバルと一緒に遊ぶのは良いが、こうやってスバルをだしにつかって何かをしようというのは許してはいけない行為だ。

 

「で、何でこんなことしたの?」

 

「んーとね、カガリお姉ちゃんがねー」

 

 カガリですと?

 

「ギンガちんと遊ぶにはこうすればいいってー」

 

「私と遊ばなくてもスバルと遊べば良い」

 

「でもギンガちん、一緒に遊びたそうにずっとわたし達のこと見てたじゃないっすか」

 

 遊びたそうに見てた……名前判別のための観察のことを言ってるのか。

 隠していたつもりなのにばればれだったとは。

 

「遊びたいのにお姉さんぶっちゃって可愛いよねー」

 

「いや、あれは……」

 

「だからどうすればすんなり一緒に遊べるか、お姉ちゃんに相談したっすよ」

 

「スバルちん使えば絶対のってくれるとかー缶けりなら楽しんでくれるとかー」

 

 つまりあれか。

 黒幕はカガリか。

 

「あれ、皆さんおそろいで、缶けりでもするところですか? 私も混ぜてくださいよ」

 

 後ろから聞こえてきた声。

 この声は。

 

「かーがーりーっ!」

 

 振り返る。黒幕のご登場だ。

 

「あら。もうばれちゃってました?」

 

「ばれちゃってました、じゃないー!」

 

 カガリにもしっかり説教をしなければ。

 私が観察していることを全部知ったうえでこんなことをたくらんだのだ。重罪だ。

 

「待てっ! 謝れ!」

 

「あはは、私ドゲザは趣味じゃないですから」

 

 私の怒気を察知したのかカガリが走って逃げ始めた。

 

「待てー!」

 

「捕まえたら止まりますよー」

 

 カガリを追いかけて走り出す。

 だが、カガリの足は速くて全然追いつけそうにない。

 全力で走ってもカガリはこちらを見ながら余裕で逃げていく。

 

「おにごっこだー!」

「誰がおに? 誰がおに?」

「カガリ姉ちゃん以外全員おにだー!」

「よしいくぞー!」

「つかまえろー!」

「スバルちんもいくよー」

「おー!」

 

 カガリとの追走劇は私が疲れて動けなくなるまで続いたのだった。

 

 




これにて完結となります。第三部のG.O.D.編を書こうとしたこともあったのですが、挫折したのでこれが最終話です。最後までお読みいただきありがとうございました。

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