The Phantom pain ~ 十一人の無き者たち   作:1056隊風見鶏少尉

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十五話

 

 

 「――あぁあ! あの時の奴らか、そりゃあもぐぁっ――?」

 

 一瞬で首を飛ばす斉藤薫。無様に首が落ちるかと思ったが首の無い身体が頭をキャッチする。

 

 「おいおい、いきなりは止めろよ。ビックリするじゃねぇか」

 

 頭部を首にくっつけながら喋るゲパート・ブルックスはニヤニヤと笑みを貼りつかせていた。

 

 「ふむ、この程度では死なんのか」

 

 「おい、俺にもやらせろ」

 

 名桐守が斉藤のことを止める。素直にそれに従った斉藤は一歩下がって譲る動作を見せる。

 

 「お、何を見せてくれるんだ?」

 

 同じくニヤニヤと下卑た笑みを浮かべるブレンダン・アークス。

 

 「――ひとつだけ聞くぞブレンダン・アークス。お前は鷺原美香軍曹を覚えているか? お前が喰った者の名だ」

 

 それを聞いてつまらなそうに告げる。

 

 「ああ? そんなもん覚えてるわけねぇだろ。お前は今まで食ってきたものを覚えてんのかよ」

 

 「…………そうか。なら」

 

 「あ? なんだ、早くなんかみせ――」

 

 次にはブレンダン・アークスの右腕が飛んでいた。 続いて左腕が宙をまっていた。

 声を出す間もなく次には左脚が斬られていた。返す刀で右脚も斬られる。

 

 そしてトドメと言わんばかりに首を刈る。

 

 「お前に言うことは無い。死ね」

 

 落ちた頭部をボールのように蹴る。潰れた音とともに血や中身を撒き散らしながら飛んでいき、見えなくなった。

 

 「………………」

 

 今更だが仲間だったブレンダンが簡単に殺されたことにより、流石に警戒するゲパート。

 

 「テメェら、何だその力は」

 

 「聞いてどうする? どうせ死ぬんだ」

 

 問うてきたゲパートにぞんざいにかえす斉藤。

 

 「ちっ、まぁいい――なら俺も出し惜しみなしだ」

 

 途端、ゲパートの身体が変化する。黒い煙に全身が包まれ、数秒で霧散する。そこには青色の肌と捻れたツノ、白目が黒に染まり、体から瘴気を噴き出す異形がいた。

 

 「……思ったより弱そうだ」

 

 斉藤がポツリと呟いた後、ゲパートの爪と手斧がぶつかり合う。

 

 

 

 

 

 

 「………………」

 

 ブレンダン・アークスの死体を見据えながら手にしていたカルカノM1891に弾を込める。

 

 その時、グゥンッと四肢が引かれるように動き出した。

 

 ――ダァン、ダァン、ダァン、ダァンッ!

 

 その四肢を撃ち落とすように四回撃つ。正確に射抜かれた脚と腕は再び地に落ちる。

 胴体すらも飛んでいくようにバウンドしたため、槍で串刺しにして止める。

 そのまま四肢を置き去りにしてある場所へと歩いていく。

 

 「――死んでなかったか」

 

 地面に転がる頭を見ながら言う名桐。顔の半分が潰れているため喋りにくそうに返す。

 

 「クソが、何でテメェみてぇなのにこの俺がやられんだ」

 

 「慢心するから死ぬんだよ――――下半身を吹っ飛ばしてやったあの時のように」

 

 「てめ――」

 

 名桐が言った一言に何かを思い出したように少しだけ目を見開くブレンダン。だが、喋ろうとした所で名桐が言葉を重ねる。

 

 「――名桐守が以下隊員に、鷺原美香軍曹に捧ぐ」

 

 腰にぶら下がるようにあったボロボロのポーチからあるものを手に取る。

 

M67破砕手榴弾の安全ピンを抜き去り、ブレンダンの口内にねじ込む。

 そして頭部を空中に投げ、続けざまに胴体も放る。

 

 「――汚い花火だ」

 

 爆散したそれを見ながら吐き捨てるように一言だけ呟いた。

 

 

 

 

 

 ゲパート・ブルックスと斉藤薫が戦い始めて数十分が経っていた。

 

 「……ぐっ」

 

 人外らしく青い血を流し、片ツノは折られ、先ほどまで溢れ出ていた瘴気はカケラしか出ていなかった。

 明らかに疲弊した様子のゲパートがそこにいた。

 

 「終わりだな」

 

 決定したかのように黙々と近づいていく斉藤。

 斉藤も無傷ではなく、体から赤い血を流し、片腕は瘴気でダメになっていた。

 

 「いいのか? 俺を殺せばお前も死ぬぞ」

 

 ゲパートは自分に自爆魔法をかけていた。自分が死んだ時他者を一人でも多く巻き込むために。

 

 「そうか。なら――」

 

 旗槍から国旗だけを取り、身体に結びつける。

 それだけやってから準備完了とばかりにゲパートの体を蹴り上げる。

 

 強烈な痛みと内臓を襲う浮遊感。だが次の瞬間には後ろから凄い速度で引っ張られていたかのように壁に叩きつけられた。

 

 息が詰まる。見ると心臓の部位に槍が突き刺さっていた。

 思い出したかのように吹き出る血。次に見たのは頭に頭に当たった手斧だった。

 頭蓋を砕き、脳を破壊した手斧はそれだけにとどまらず、頭部の半分を吹き飛ばす。

 

 生物において重要な器官が全壊したゲパートはただの肉塊となった。そして組み込まれていた自爆魔法が発動する。

 

 「安らかに眠れ、隊員達よ。斉藤薫が捧ぐ――」

 

 爆発が辺りを包み込み、灼熱の赤に染まる。斉藤薫はその中で国旗をはためかせながらも佇み、黙していた。

 

 目の前に広がる業火を部下達の鎮魂にあてているかのようであった。

 

 

 

 

 

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