The Phantom pain ~ 十一人の無き者たち   作:1056隊風見鶏少尉

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大分前に書いたものを再投稿しました。
良かったらみてやってください。




一話

 

 

「――どうなっているんだ!!」

 

一人の男が喚き散らし、机の上にあった書類を力づくでぶっ飛ばす。

紙が舞い、肩で息をする男。

 

「どうもこうもないですな、ルド村、ガゴ村、ホポ村……国の周辺にあった村々の住人が老若男女問わず惨殺されているのは疑いようもない事実」

 

椅子に座っていたもう一人の男はたんたんと告げる。

 

「そんなことは知っている! 問題はそんなサイコ野郎が何でいるかってことだ! 警備、巡回はどうした!」

 

「見ていないそうだ。『一人以外は』」

 

壁にもたれ掛かっていた狼男のような風貌をした人物はそう告げる。

 

「じゃあそいつ聞けばいいではないか」

 

「聞いたことがあったが話にならん。本当に何を見たのか知らんが発狂していたよ。今じゃ手足を縛られて監獄の中だ」

 

そう言って鼻をならす狼男のような男。

 

「この件は一応陛下のお耳に入れておいた方がいいな」

 

男たちはそれにうなずいた。

 

 

後日、一人の男が陛下に謁見していた。

 

「――そうか」

 

玉座の間で国王は厳かに呟く。

 

「ご苦労、下がってよいぞアレシス」

 

「御意に」

 

アレシスと呼ばれた男は深々と頭をもう一度下げてから玉座の間から退室する。

 

いなくなってからアルト大国国王、アルト・ヴァン・テレウスは一息つく、そして命令を出す。

 

「ガリウス、その発狂した者を連れてまいれ」

 

「了解した」

 

国王の後ろからぬるりと現れたフルプレートアーマーで全身を包み、身の丈ほどの大剣を背負った男がぐぐもった声で返事をする。 ガシャリ、と歩く音がしたかと思うとフルプレートの騎士はいなくなっていた。

 

 

 

 

「アッハハハハハハハハハッ!!」

 

しばらくしてから玉座の間にけたたましい笑い声が響いた。

 

「っ!?」

 

控えていた兵たちもその事態にわらわらと出てきてその対象に向かって『銃』を構える。

 

「よい、下がれい」

 

国王が言うと兵たちは渋々ながらといったようすで銃をおろす。

その発狂している男はフルプレートの騎士に完全に抑え込まれており、身動きができない状態にあってもそのたがが外れてしまったような笑い声をやめない。

 

「……お前は、何を見た?」

 

耳元に近づけてぐぐもった声で発狂している男に向けて質問をする。

 

「アッハハハハハハハハハッ! 死ね、死ぬんだよ皆ァ!」

 

だが聞こえていないのか、笑い声が絶えず、発する言葉も質問の答えではなかった。

 

「どうせみんな死ぬんだ! 死ぬんだよォ! アレに、やつらにみんな殺されるんだぁ! アッハハハハッ!!」

 

「……もうよい、下がらせろ」

 

聞くに耐えない笑い声に国王は顔をしかめながら騎士に命令する。

 

「御意」

 

返事をしてから強引に男を立ち上がらせ、玉座の間から出ていく。

 

国王は椅子に座り直し、一息吐く。そんな時、兵の一人が声をかけてくる。

 

「…………王よ、恐れながらに申し上げたいことが……」

 

方膝をついた兵は王に発言の許可を求める。

 

「『シゲル・ソウチョウ(曹長)か。良い、発言を許可する』

 

許されたシゲルと呼ばれた男は顔を上げる――その顔面は蒼白だった。

 

 

「――――もしかすると、あの時の生き残りでは……」

 

場が凍り付く。誰も喋らず、物音一つしない、しかしそんな空間を破壊したのは国王だった。

 

「バカな、ありえん」

 

「…………でしたね、早合点をお許しください」

 

詫びをいれてから下がるシゲル。

 

しかし、その場にいた誰もが、王までも『あの日の出来事』を思い出していた。

 

 

――――不神大戦。

 

 

 

『――――殺してやる、てめぇらは必ずころしてやるうぅぅぅぅぅぅッ!!』

 

 

全員が、あの怨磋の声を思い出し、身震いを起こしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

「ヒィ、や、やめ――」

 

「たすけ――」

 

「ゴッ、こほっ……かっ……!」

 

 

 

その日の夜、一つ村が地図から消えた。

 

その村にはすでに生命は存在しておらず、ただ屍がよこったわっているだけだった。

 

「………………」

 

ザリッ、と砂を踏みしめる音が響く。

 

「…………あ゛っぢがぁ゛」

 

ガラガラな声で呟く者が一人。

 

「…………そうだな」

 

それに答える者が一人。

 

ザリッ、ザリッ、と次第にその二人のもとになにかが集まってきた。

 

――『それ』は全部で十一、いた。

 

丁度、陰っていた雲が取り払われ、月が姿を表し、その者達を照らし出す。

その光景を見るものがいれば果たしてどうなっていただろうか。

 

全員が人と同じ形をしているが一人として人間とは思えなかった。

 

見るからにボロボロの服、血や泥、焦げた後まで見られる軍隊服を十一人は着ていた。そして全員が同じフル・ハーフタイプのスカルフェイスマスクを着けていた。

全員が酷い火傷を負っており、それは全身の至るところにあった。そして欠損も見られる。

あるものは頭部のほとんどを火傷に侵され、あるものは片腕かなくなっており、あるものは方目がなく、あるものは女性で、方頬がそこげおちそこから歯が剥き出しになっており、あるものは皮膚が完全に焼かれ筋肉が、骨が所々見えていたりしていた。

 

「…………行くぞ」

 

先頭に立つフルタイプのスカルフェイスマスクをかぶった男は感情が籠ってない低い声で告げ、歩き出す。

全員が歩き出し、行進のようにまっすぐ進む。

 

 

大地を踏みしめ、ただただ進む。

 

 

――――復讐のために。

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