The Phantom pain ~ 十一人の無き者たち   作:1056隊風見鶏少尉

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四話

 

 

「――さて、残るはお前一人か」

 

一番最初に兵の喉を握り潰した男が残った獣人の一人に近づく。

 

『グルァアッ!』

 

獣人は大きく飛び退き、四人から大きく距離を取る、そして

後ろにいた騎士隊と魔法隊に援護を求めるべく、そちらを向く。

――眼前に写ったのは男の顔。焼けた皮膚、憎悪に濁った瞳を獣人は間近で見てしまう。

 

「――よお」

 

『グアッ!?』

 

何故、と獣人は思う。

仲間が後ろにおらず、敵が眼前にいたことに混乱し、そしてあの瞳を思い出し恐怖する。

まさか、あの状態で逃げたしたのか? と獣人は本気で考えるが先ほどの男が答えを教えてくれた。

 

「不思議だって面ァしてんな。そんなお前に教えてやるよ――残ってた奴は全員殺した」

 

なんのことはなかった、そんな風に平然と言ってのける男に今さら警戒レベルが最大まで働き、今すぐ逃げろと訴えかけてくる。

そんなことを構わずに

闇の中から出てくる敵の仲間たち。

 

『グルル……』

 

大地を踏みしめる音が獣人を取り囲む。

獣人をたやすく惨殺出来る化け物が十一人、自分を取り囲んでいる。そんな状況に折れてしまいそうになる心を無理矢理奮わせる。

そして全力で逃げることした獣人は大きく高く跳躍して十一人がいた中心から脱し、地面を蹴りすぐにその場から離脱しようとする。

 

「お゛ぜぇ゛よ゛」

 

『グア――ッ!?』

 

しかし逃げることも叶わずにガラガラ声の男がいつの間にか接近し、脇腹に拳をねじ込む。

骨が折れる音が聞こえ、それと共に吹っ飛ばされる。地面を転がり、気にぶつかることで回転は止まる。

『グはっ!?』

 

気道が詰まり、一瞬息ができなくなる。その拍子に『狂獣化』が解けてしまう。

さらに縫い付けるようにもたれかかっている上半身に向けてナイフや鉈、手斧が投げられ、肉に深々と刺さり、骨を砕いていく。

そのうちの一本のナイフが獣人の心臓に刺さる。すさまじい速度で投げられたそれは刃が体に食い込むだけではすまず、柄の半分までもが体内に入ってしまっていた。

 

「――ごほっ」

 

致命的な箇所を破壊され、口から血を溢れ出させる。

だんだんと体が冷たくなっていく、視界が暗くなっていく、音が遠のいていく。そんな中でもやつらの足音だけはしっかりと聞き取れた。

 

『てめぇらは……いったい、何なんだ……』

 

ゆっくりと顔を上げて、口から溢しながら問いかける。

十一人のその双眸は死にゆく獣人に向けられていた。激しい憤怒を宿して。

 

「…………分からないか?」

 

一人の男が近づき、強引にたてがみをつかんで目線をあわせる。鼻が触れあう距離まで近付けると静かだが怒気を含む声で告げる。

 

「貴様らが裏切り、半数の同胞が裏切った時の『生き残り』だ」

 

獣人は驚愕する。馬鹿な、あの時の惨状で生き残るはずがない、と。

 

「冥土の土産に教えてやる『NATO国家【元帥】――

古手 悠(ふるで ゆう)』

 

獣人を掴んでいる男が告げる。それに続くように後ろの十人が声を発する。

 

『NATO国家【中佐】――齋藤 駿(さいとう しゅん)』

 

『NATO国家【二等兵】――後藤 正俊(ごとう まさとし)』

 

『NATO国家【大佐】――内藤 正樹(ないとう まさき)』

 

『な゛どーごっが、【だい゛じょ゛う゛】――ど どろ゛ぎ だい゛が(NATO国家【大将】――轟 大河(とどろき たいが)』

 

『NATO国家【少尉】――駿河 千歳(するが ちとせ)』

 

『NATO国家【大尉】――斉藤 薫(さいとう かおる)』

 

『NATO国家【大佐】――我道 正志(がどう まさし)』

 

『NATO国家【一等兵】――名桐 守(なきり まもる)』

 

『NATO国家【少尉】――星野 澪(ほしの みお)』

 

 

『NATO国家【中佐】――匂宮 慎二(におうのみや しんじ)』

 

全員が名前を詠唱し終えてから古手 悠は獣人の心臓に刺さっているナイフに手をかける。

 

「――忘れるな。そして刻み付けて死んでいけ」

 

ナイフを捻り引き抜く。それだけで残っていた血液すべてを吐き出すかのように口から心臓から血が吹き出る。悠はそれを浴びるがまるで気にも止めずに次の行動に出る。

抜いたナイフを今度は喉元に突き刺す、それから右へ刃を滑らし切り裂いた。

口元に上がってきていた血と空気が最期のように漏れ出る。

 

「――! ――――!」

 

何かを言おうとした獣人だったが、喉を切り裂かれて喋ることも、息をすることも出来ずに窒息し息絶えた。

 

血を滴らせたナイフを持ち、自身が投げた手斧を引き抜き、振り返る。そこには十人の仲間が自分を見ていた。

 

「――各自武器を取れ。行くぞ」

 

それだけ言うと悠は歩き出す。

 

「だい゛じょ゛う゛、づぎばどごに゛い゛ぐ ぎ だ?」

 

ガラガラ声で大河が悠に問いかける。

 

「――決まっている、次は俺達の証明品(あかし)を返してもらう」

 

「な゛る゛ぼどな゛ァ――て゛こ゛と゛は゛」

 

「我らが故郷、NATO国家か」

 

理解したとばかりに大河と我道 正志(がどう まさし)が呟く。

 

「すでに我らは二歩目を踏み出した――三歩目は国を奪いかえす」

 

 

悠の発した言葉に全員が行動で示す。

誰一人として従わないものなどおらず、悠のあとをまっすぐと行軍していった。

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