The Phantom pain ~ 十一人の無き者たち   作:1056隊風見鶏少尉

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五話

 

 

「………………」

 

場を包む静寂の空気。それを打ち破ったのは一人の男だった。

 

「嘘……ではないんだな?」

 

「…………はい」

 

さきほどの証言の確認をし、報告した者が頷く。

 

「……よもや迎撃にいった兵たちが全滅するとは」

 

王が重々しく呟く。

 

「はい、ナナ村にいった王国軍騎士隊、魔法隊、NATO国家、第十五分隊、獣人が全滅し、ナナ村の住人は生存していましだが、数時間後に死亡しました」

 

「死亡? 何故だ」

 

「その……村人全員が発狂してしまっていて、半数が殺し合い、半数が自殺をしてしまい……」

 

濁すように告げる。王は深く息を吐き、椅子の背もたれに身を預ける。

 

ふたたび静寂が訪れる、その時三人の声が上がる。

 

「陛下、今一度機会を、今度こそ奴らを仕留めてみせましょうぞ」

 

「ここまで俺の軍がコケにされるとはな……」

 

「――同胞が惨殺されておるのじゃ、見過ごすわけにはいくまいて」

 

王国軍剣客がひとり――サラザール・ベルツェ。新成NATO国家が【元帥】――長谷川 竜二(はせがわ りゅうじ)。魔族から【現魔王】――イシュタル・ブランシェル。

 

「……ならばどうするつもりだ」

 

「決まっている――全勢力をもって駆逐するのだ、王よ」

 

「我もそれに賛同しよう、今のうちに叩かなければどこぞの馬の骨とも分からぬものがつけあがるやもしれぬからの」

 

竜二の提案にイシュタルが肯定を示す。それに言葉にこそ出さないがサラザールも肯定を示していた。

 

「ふむ……」

 

おおよそ、意見は一致した。

その時、この場を乱すものが現れた。

 

「し、失礼します! 元帥! 少々お耳に入れたいことが!!」

 

会議の場に割って入ったのは風間大将だった。

 

「何だ! 今は大事な会議中だぞ!」

 

竜二が風間を叱りつける。

 

「廃棄した旧NATO国家があった場所が襲撃を受けています!」

 

「何!?」

 

予想外のことに竜二は驚愕する。

 

今でこそ新成NATO国家は国を移動し、アルト大国そのものと化しているようなもの、移動する前の基地は大半が壊れており使い物にならないが地下倉庫やそこにあった資料や使わなくなった旧世代の武器などがあるため、定期的に警備をしているのだ。

しかし、お世辞にも兵量は多くない、数で攻められればあっという間に陥される。

 

「ぐっ……致し方ない、爆撃しろ! 生き残りがいたとしても構わん!」

 

苦肉の策として竜二は旧基地を爆破することにした。

ひとつは情報が襲撃者に渡される前に抹消すること、ひとつは襲撃者の排除。どちらも成功するとは限らないがやらないよりましだ。

 

「すぐに行え!」

 

「は、はっ! 了解!」

 

すぐさま命令を出し、慌ててそれを受ける風間。

風間は急いで出ていき、妙な空気の流れる会議室の中。

 

「…………やってくれる」

 

静かに悪態をつき、拳を握りしめまだ見ぬ敵に怒りを覚えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

「――懐かしい」

 

すでに四分の三ほどが瓦礫の山と化している元NATO国家だった場所に来ていた。警備の者を皆殺しにした十一人は感慨深そうに呟く。

 

「――ここね」

 

女性隊員の一人である駿河 千歳(するが ちとせ)は瓦礫をどかし地下に続く扉を開ける。

 

中に入り、警備をしていたものから奪ったランタンで辺りを照らして目的の物を探す。

 

「――コ゛イ゛ツ゛は゛」

 

大河があるものを手にとる、それは第一次世界大戦でも使われた旧銃――カルカノM1891と呼ばれる狙撃銃だった。

 

「……随分、骨董品並の銃が積まれてるわね」

 

千歳と同じ女性隊員の一人である星野 澪(ほしの みお)がランタンで照らしてみるとそこには先程のカルカノの他にも古銃が積まれてあった。

 

その中から悠は銃をかき分け、まるでそこにあるのが分かっていたかのように長めの木箱を取り出す。

 

「それは……」

 

仲間の誰かが呟く。悠は木箱をこじ開けると中にしまわれていた複数本のうちの一本を掲げて見せる。

 

「てっきり全て失ったと思ってたが、あったのか」

 

齋藤 駿(さいとう しゅん)が驚きを声に含ませて告げる。

 

悠がNATO国家元帥だったときに他国や魔族などと少なからず戦争することもあった。その時に自分や仲間を鼓舞するために隊長達が自ら掲げ、戦争に身を投じた旗――中世の槍騎兵の持っていた旗付きの槍のような外見をしていた。

 

そしてそれは奇しくも、十一本存在していた。

 

「我らが『国』は取り戻した。次は四歩目だ――」

 

 

全員が旗槍を持ち、武器を取るものは取り、次の目的に向けて歩き出す。

 

 

――――四歩目は、奴等への襲撃だ。

 

 

 

その後、旧NATO国家基地が爆撃されたのは十一人が歩き出してしばらくしてからだった。

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