「さて・・・いったいどれぐらい走ろうk・・・」
時刻は4時過ぎ、キャスターのせいですっかり目が覚めた一夏は
時間つぶしにランニングをするために自室のドアを開け、完璧にフリーズした
こんな朝早くに起きているのは普段ならほとんどいないはずである
だがしかし、一夏の部屋の前には半泣きになっている自分の姉や幼馴染、それにクラスの皆
(・・・なんだこの状況は)
目の前の光景に困惑する一夏だが、部屋の前にいる全員が自分の姿を見たとたんに
泣きだすものだから、落ち着く暇もなかった
「えええええ!!ど、どうしたんだ千冬姉!?それに皆も!!」
「一夏・・・無事でよかった。お前に何かあったら私は・・・」
千冬の言葉につられるように周りの皆が目尻の涙を拭きながら優しく微笑む
そして廊下にとても優しい空気が流れる中・・・
「ご主人様?いったいドアを開けたまま何をなさっt・・・・」
部屋の中から一夏に話しかけるその声が完膚なきまでに空気を破壊した
「「あ・・・・・・」」
一夏とキャスターの声が重なる、他の皆は時が止まったように固まっている
・・・まぁ、待て。ひとまず皆から見た今の俺の状況を整理しよう
1、IS学園の関係者でも無い女の子を自分の部屋に連れ込んだ
2、ちなみに起きた時の事件で、キャスターの服は少しはだけている
3、見た事もない獣耳、尻尾がついた女の子にご主人様と呼ばせている
・・・よし、何かとんでもない状況なのだけは理解できた
一夏はとりあえず、そのままゆっくりとドアを閉めるとすぐに反転する
そして窓に向かいながらキャスターに話しかけた
「キャスター、窓から飛び降りるの補助できる?」
「は、はいっ。その程度ならばお安い御用です」
その言葉に一夏はそうか・・・と呟くと手にした靴を履き
キャスターの補助のもと、窓から飛び降りて近くの地面へと着地する
・・・そして一夏が着地したその瞬間
『ドガァァァァァァァァァ!!!!バキバキッ!!!グシャアッ!!!!』
元の原型がドアだった物だろうか?
粉々になったその残骸が窓を突き破り頭上から降ってくる中、一夏は酷く冷静だった
いつだって人は自分にできる事に必死になればいい
そして、今の俺にできる唯一の選択肢・・・それは!!
「力の限り、逃げ続けろぉぉぉぉぉっ!!!!」
「待ってください、ご主人様~!!」
SIDE 千冬
自らの怒りにまかせたまま、ドアを破壊し部屋に乗り込んだ千冬だが
一夏の姿が部屋に無いと知ると大声で周りの生徒に向かって指示を出す
「全員であの愚弟を探しだせぇぇぇぇ!!!!
捕まえたら半殺しにして構わん!!その後、私の所へ引きずって来い!!!!」
『サーッ!!イエッサー!!!!』
千冬の言葉にその場にいた全員が行動を開始する
・・・ククッ、一夏よ面白い事をするなぁ。私に散々心配させておいて
その挙句の果てが見知らぬコスプレ女を無断で寮に連れ込んでいただぁ?
「一夏ァ・・・・覚悟しろよ・・・?」
- ゾワッ
「・・・・・ッ!?」
(ど、どうしました!?ご主人様!!)
(な、何だ!?寒気が・・・)
今現在一夏はキャスターに霊体化してもらい、更衣室のロッカーの中に隠れている
なんで俺はこんなところに隠れてるんだろう・・・
頭の中で疑問に思うも返事は無い。だが、その質問の答えは自分でも理解している
「一夏ぁ~、どこぉ~、今なら半殺しの拷問付きで許してあげるからぁ~」
何故なら目の前にハイライトの無い瞳で幽鬼のように徘徊するセカンド幼馴染がいるからだ
ところで鈴、多分それは許している部類に入らないだろ?と思った俺は正常なはずだ。
(それよりご主人様、これからいったいどうなさるおつもりで?
ここにずっと隠れていてもいずれは誰かに見つかっちゃいますよ)
(わかってる・・・なんとか鈴の目を盗んでその隙に!!)
「「「「「い~ち~か~(さ~ん~)」」」」」
なんか増えてるぅぅぅぅぅぅぅ!?
くそうっ!!いつのまにか箒にセシリア、シャルとラウラまで・・・
・・・くっ、こうなったら
(何かいい魔術は無いの!?助けてたまえもん!!)
(ご主人様・・・何気に少し馬鹿にしていませんか?)
(いや、だってもう逃げ場ないよ、地獄への片道切符だよ!?)
(すごく混乱されていることはわかりましたから少し落ち着いてください
・・・そうだ!もういっその事、堂々と出て行って
朝の事については知らぬ存ぜぬで通したらどうでしょう?アリバイは私が作ります)
なるほど!!そんな手段が・・・って
(確かにいい手だけど・・・大丈夫なのか?アリバイって)
(先程逃げているときに学園の外の海で釣りをしていた人たちの記憶を改ざんします
そしてご主人様はその人たちと先程の時間は一緒にいたという事にすれば・・・)
(そうか!逃げ出した奴が堂々と出てくるのは普通じゃない!!
その上アリバイもあるとなれば疑いも晴れるはず・・・すごいぞキャスター!!)
(えへへ・・・ご主人様に褒められました)
「よし・・・そうと決まれば即実行!!」
一夏は箒たちがロッカーの死角に入った瞬間、隣のシャワー室に駆け込んだ
幸い、その動きは見つかってはいない
これならば最初からシャワー室にいたように見えるだろう
そしてあたかも最初からそこにいて、偶然皆と出会ったかのように振舞うんだ!!
「おっ、箒たちじゃん♪何してんだ?こんな朝早くに」
一夏が手を振りながら声をかけると、5人の顔が一斉にこちらを向く
そして、その表情を見た瞬間に一夏はこの作戦の欠点に気が付いたのだった
血に餓えた獣が捜し求めていた獲物を見つけた時、どういう行動をとるか
答えはそう・・・単純明快にしてたった一つの真実
見敵必殺(サーチ・アンド・デストロイ)
次の瞬間、目の前に広がった赤い光景を最後に一夏の意識は闇へと沈んだ