艦隊これくしょん - そこで生きる少女たち - 作:みどいろCPU
感じるのは轟音、爆風、熱気、そして凄まじい程の衝撃。
実際には見えないが、確かに衝撃波が体を襲ってきた。
気がした。
しかし、体に異常は特にない、ピンピンしている。
閉じていた目を開けると、そこには灰色の巨大な建物と巨大な回転式砲塔。
よく戦争系の映画などでよく見るようなそれは、確か戦艦といった。
多種多様な艦種があると聞くがそこまでは流石に分からない。だが、所々にある旭日旗を見る限りだと旧日本海軍のものらしい。
一体何故。私はどうしてここに。
疑問しか浮かばない。
落ち着こう。
私は頭を働かす。
その時
『敵機直上!!!』
誰かが叫んだ。
直上?私は真上を見上げる。
すると、そこには一つの黒っぽい物体。
そこにいた作業員は皆逃げ出す。
そう、あれは爆弾。アメリカの飛行機が落とすような物が目の前ににある。
世界がスローモーションのように進んでいく。
「あ…」
喉元から出たそんな声を最後にして、私の意識はなくなった。
【#】
「…夢…か」
目を覚ますと、汗で額が湿っていた。
それはそうだろう、突然爆弾なんか降ってくるんだから。
「あぁ…夢で良かった…」
ホッと胸を撫で下ろす。
あの夢のせいか少し気分が悪い。けれど時間も無いし早く顔洗ってご飯食べないと。
手っ取り早く着替え、洗顔と母から出された朝食、歯磨きを済ませて玄関へと向かう。
見慣れた学校指定の紺色の靴。正直あまりこのデザインは好きじゃないのだけれど…指定なものは仕方がない。
玄関のドアを開けて外へ出る。
「
後ろから声がした。
振り返ると台所から顔を出して母がこちらを見ていた。
「いってらっしゃい」
「…うん、いってきます」
私、
【#】
「おはよ、大和さん」
教室に入り、窓側の
席へと着くと隣の席の瀬川さんが挨拶をしてきた。
瀬川さんはクラスのまとめ役的な存在で誰にでも分け隔てなく接する子だ。勿論、私にも声を掛けてくれる。
けど、一方の私はというと
「お…おはよう…」
…この有様だ。
瀬島さんとは逆に私はクラスでもそこまで目立った人でもないし(流石に苛められたり省かれたりはしないけど)これといった親友もいない。
何かアピールポイントがあるとすれば異様に高い身長と成績位だろうか。
いつからこうなってしまったのかは分からないけれど、もはや直せるような時期でもない。
ここまできたら残りの高校生活半年間はこのまま過ごすしかないのかも知れない。
思わず、溜息が漏れた。
授業が始まるまで大人しく空でも見ていよう。
机に突っ伏して空を眺めようとした。
その時。
突然教室のドアが勢いよく開いた。
唐突な出来事にクラスの面々が唖然とする中、何事もなかったかのように歩いてくる生徒が1人。
色黒で眼鏡を掛けている背の高い女子生徒のようだ。
何をしに来たんだろう。
何気なく目で追っているとその女生徒は私の前で立ち止まった。
…え?
私?
「お前が大和か」
とうとう名指しで呼ばれてしまった。
「は…はい…」
有無を言わせぬ雰囲気につい敬語を使ってしまう。
私…何かしたっけ…?
実は無意識にとんでもない事をしでかしたのだろうか。
「そうか…やはりお前が…」
思わず心臓が高鳴る。あぁ、何が起こるのか。さようなら、私の残りの半年間。
しかし呼び出しでもされるのかという私の予想に反して、何かに納得した様子のその女生徒は手元のカバンから何かを取り出して私に見せてきた。
「大変申し訳ないのだが、ノートを見せて頂きたい!」
クラス中の視線が集まる中その女生徒が持っていたものは、あまり上手くはない字で『政治経済』と書かれたノートであった。
【#】
「いやはや!先は助かった!ありがとう!まさかノートの提出があるとは思わなんだ!」
約4時間後の昼休み。
ノートを返しに来た彼女は席で1人昼飯を取っている私の席の前へと再び現れ、歯を見せて笑った。
「え、ええ。助かったのなら何よりね…」
前期にはノート提出があったのに何故提出が無いと思ったのか疑問だったけれど、そこは触れないでおいた。
それよりももっと気になるのがクラスの反応だ。
彼女が教室に来た瞬間にまずクラスがザワつく。
そして私の席へと向かい私に話しかけた事でさらにザワつく。
一体彼女は何者なのだろうか…?
(いい意味でも悪い意味でも)あまり刺激を与えないように適当に相槌を打つのが無難だろう。
関わりたくない…という訳ではないが、昼休みの始めからずっと居るせいで私の弁当箱の中身はほとんど減っていない。
どうしようか、なんて考えていると彼女はおおっ!っと表情を変えた。
「折角だからお礼をさせてくれ!今度一緒に飯とかどうだ?そうだな…明後日の昼にしよう!せめてものお礼だ、どうだ?」
…え?
いやいや、そんな唐突な。
しかも昼飯?
私と?
「ん?なんだ?都合でも悪いか?」
私の微妙な表情の変化を読み取ってか彼女は首を傾げる。
「あ、あぁ…いや、そんな事はないけれど…」
慌てて訂正する私。
「よし、なら決まりだ!13時に駅で待ち合わせとしよう。それじゃ、明後日に!」
「え、あの、ちょっ…」
有無を言わせぬ返答に頭の回転が追いつかず、ゴモゴモと言葉が発せなかった私を気にもせずに彼女は足早に去っていってしまった。
取り敢えず分かった事は、明後日に彼女と昼飯を食べなければならなくなってしまったということだ。
…なんでこうなったんだっけ?
考えようとふと視線を前に移すと、クラス中の女の子達が私の席の周りに集まっていた。
…なんでこうなったんだっけ!?
「ねえねえ!大和さんって実は知り合いだったの!?」
「どこで出会ったの?」
「昔からの友達とか?」
「いいなー!いいなー!」
「メアドとか知ってるんでしょ!?」
1人の女生徒の発言をきっかけに次々と私に質問の雨が降り注ぐ。
「ちょ…ちょっと待って!別に知り合いとかって訳じゃ…」
「え?違うの?あんなに武蔵川さんと話してたのに?」
「武蔵川?」
「そう、
そういえば…。この前の全校集会で何かの賞を貰っていた人だっけか。
黄色い声も飛んでいた気がする。
それならばより一層…。
「そんな人が、なんで私に?」
「うーん…。アレじゃない?大和さん頭良いし、それを聞きつけてきたんじゃない?でもそっかー…知り合いじゃなかったのかー…。残念…」
「ええっ…」
そんな理由なの…?
とはいえ、それ以外に考えられる理由も無くそういう形で私の中でも落ち着いた。
それよりも問題は…。
『キーンコーンカーン…』
「やばっ、数Aじゃん、大和さん、お友達になったら紹介してね!」
「え、あの…!」
「きりーつ」
「…」
本当に…どうしようかなぁ…。
【#】
「おお、随分早いな」
あの日から2日後の土曜12:30。
待ち合わせ場所に早めに来すぎた私とほぼ同じタイミングで現れた彼女はそう発した。
「貴女も十分早いわよ…」
「ん?そうか?まぁそうか、うん、そうだな。よし、早速行くか!どこに行きたい?遠慮なく言ってくれ!」
何かに納得したらしい彼女は腕をブンブンと回しながら私を見る。
何処でも来いとの意思表示なのだろうか。
「うーん、そうね。正直何処でもいいのだけれど…」
「なんだ、つれないな。折角なんだからもっと欲張ったらどうだ?なんならあそこでも良いんだぞ?」
そう言って彼女が指さしたのはこの辺りで一番高いビルの最上階レストラン。
一体財布の中には何が入っているの…。
とはいっても何故か冗談に聞こえない。
流石に高級レストランは阻止したいので私は必死にあたりを見渡した。
「ね、ねぇあそことかどう!?クラスの皆が安くて美味しいって言ってた店!あそこにしよう!」
「ん?そうか?あそこにしなくていいのか?」
「大丈夫!全ッ然大丈夫だから!」
丁度良いところに丁度いい店があって良かった。
あんな所で学生二人が食事だなんて洒落にならない。
彼女は軽く首を傾げたがその後すぐ移動し始めた。
徒歩2分も掛からない場所に立地しているレストランへと歩く私達。
もはや何を話そうかと悩んでいるうちに目的地へ到着してしまっていた。
「それじゃあ入るか」
「え、ええ」
自動ドアが開きすぐに店員に席まで案内される。
席に座り早くもメニューを開いて彼女は注文を考え始めていた。
「ふむ…どれも美味そうだな…何?これで540円だと?2つも食えるのか」
ブツブツと独り言を言いながらメニューを睨むその姿に、何となく納得感を抱きながら私は恐る恐ると話を振ってみた。
「ねぇ、武蔵川さんはこういうお店には来たことがないの?」
「ん?あぁ、そうだな。そもそも外食をあまりしない主義なのでな。実を言うと同級生と来るのは初めてだ…よし、これにした。見るか?」
「いえ、同じのにするわ。ボタン押すわね。ふーん、そうなの。家族とは?」
「家族か…中学の頃以来一緒にということはなかったな。あ、私はコレを2つで。大和は?」
「えっ、あ、私もそれを1つ。はい、以上です。まぁ、貴女忙しそうだものね。無理もなさそう」
「まぁ…そんなところだな。時に大和、お前---」
そんな感じで料理が届くまでの間から食べ終わった後までの約一時間程、私たちは途切れることなく話をした。
男勝りな性格だけれど話してみると思っていたよりも気さくに話せる相手で、いつの間にか初めに抱いていた警戒心や緊張感は無くなっていた。
そして、ここまでの間同じ相手と話をした経験も私には初めてだった。
「いや、今回はすまなかったな。昼飯を奢ったくらいで恩が無くなるわけではないが…」
会計を済ませて店を出た私たちは駅へと歩き出す。
「何言ってるの、恩返しにしては十分どころかやり過ぎなくらいよ。貴女と話せて楽しかったしね、ありがとう」
「そう言ってもらえるとこちらも救われる。あと、言おうと思ってすっかり忘れていた。私の事は麗でいい。その方がこちらとしても気が楽だしな」
「…」
……え?……
「ん?どうした?…顔赤いぞ?」
「え…あぁいやいや、何でもないわ。その…麗」
「…?そうか?」
なにこれ、何故か凄い恥ずかしい。今まで下の名前で呼んだことが無いからかもしれないけれど…。
でも、これはこれで…。
「…今度はなんだ、嬉しそうにして」
「ううん、何でもない」
「はぁ…。っと、そんなこと言ってる間に駅か」
本当だ。いつの間にか駅の正面まで来ていた。
なんだかんだで楽しい一時間だった。
「それじゃあ、今日はありがとう。私はあちら側だから、またな」
「ええ、こちらこそ。それじゃあね」
手を振り、私とは反対の方向に歩き出した麗。私も切符を買うために歩き出す。
その時、私は思い出した。
そいえば一つ、気になっていた事があったのだ。
「麗!」
急いで歩いていく彼女を呼び止める。
「ん、なんだ?」
歩みを止めて彼女は振り返る。
「あの時…!」
「-------------」
通りすがった電車の音に書き消された私の声。
きっと聞こえていなかっただろう。私はもう一度言おうと口を開く。
すると、彼女は私の言葉を聞かないうちに身を翻して歩き出した。
「…聞こえて…いた…?」
彼女は何も言わなかった。
だけどその時、私は見て見ぬふりをしてしまった。
彼女が歩き出す前、身を翻した瞬間に残した。
少し、悲しそうなその顔を。
どうも、ご無沙汰しております。みどいろCPUです。
久しぶりの投稿です。
(2/2)は少しでも早く投稿できるように努めます…!
さて、episode04の前半いかがでしたか?
今回のメインキャラはどうやら二人らしいですね。ええ。今回は露骨です。
出来るだけキャラは崩さずに、尚且つ自分が思うような内面と組み合わせて二人のお話を書けたらなー、なんて思います。
まだ前半なので取りあえずはこの辺で…。
次回もどうぞよろしくお願い致します!