艦隊これくしょん - そこで生きる少女たち -    作:みどいろCPU

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episode00(2/2) - 願い -



 

翌日。

 

幡山は自らが勤めている海上自衛舞鶴駐屯地の廊下を早足で歩いていた。

 

「っと、危ねーな…って、幡山じゃんか。お前謹慎のはずじゃ…。あ、おい!待てよ!幡山!そっち上官の部屋だぞ!」

 

同僚に話しかけられるが無視を決める。今は謹慎だのなんだのはどうでもいい。深海棲艦を倒せるかもしれない。その事を早く伝えなければならなかった。

 

「失礼します!」

 

部屋をノックして返事を待たずに中に入る。

中には軍服を着た中年の男性と同じ軍服を着た老人がいた。

恐らくかなりの階級だろう。だが、今はそんな事言ってられない。

 

「おい、俺はまだ入室を許可してな…、幡山。お前、何でここにいるんだ。お前は今謹慎中のはずだ。今更話す事なんか無い、さっさと帰れ」

 

若い方の男性が幡山を睨みつけて静かに言う

 

「山本三尉、お言葉ですがそれどころではありません。深海棲艦に勝てるかもしれないんです」

 

「あぁ?上官に無礼を働いたお前の戯言など聞く耳を持つか!帰れ、それに今はそれどころではない!」

 

「聞いてください!人類の勝利とたかが人の礼儀のどちらが大事なのですか!」

 

「黙れ!いい加減にしないとお前を」

 

「まぁ待て山本。彼は何やらよほど大変な情報を持っているようだ」

 

幡山と山本三尉と呼ばれた男が言い争っている間に、同じ部屋にいた軍服の老人が割って入ってきた。

 

「佐々木海将…。しかし…」

 

山本が口篭る。

 

「佐々木海将…。海上自衛隊のトップ…何故ここにおられるのですか…?」

 

幡山も彼の事は知っていた。

あの戦い、第二次海域奪還作戦の総指揮官であった人物。

 

「まぁ、くだらない用事だよ幡山三曹。君の言うその人類の勝利というものに比べればな」

 

「佐々木海将、こいつの言う事を間に受けるのですか?あれだけの被害を出しても倒せなかった相手を倒す方法を、こいつが知っているとでもお思いですか?」

 

「いいや。少なくとも私達には思いつかぬであろうし、あるとも思えぬ。

しかし、彼の目は君を真っ直ぐ見ていた。本当に彼は何かを知っている、いや、知ってしまったのかも知れないな。聞いてみる価値はあるのではないか?」

 

海上自衛隊のトップにここまで言われては流石の山本も口出しは出来ない。

そのまま山本は黙ってソファーに座った。

 

「では話してもらおうか。幡山君」

 

「ありがとうございます、佐々木海将」

 

それから幡山は今までの出来事を話し始めた。

海で出会った少女の事、その少女が海に立ったこと、深海棲艦のこと、そして彼女の中にいる記憶と意思の事を。

 

 

 

 

 

「これらが、自分が知っている全ての事であります」

 

幡山は30分程で二人の上司に全てを話した。

 

「お前…気でも狂ってるんじゃないよな…?まさかそんな事が…」

 

山本が信じられないといった表情で言う。

 

「確かに。にわかには信じ難いな。しかし、幡山君がこれ程の事を偽装してもなんの得にもならん」

 

佐々木は考え込むように呟く。

 

「彼女は我々の希望です。過去に戦った艦艇と搭乗員の思いです。どうか、彼女と共に戦う為の計画を」

 

しばらく佐々木は考え込む。

 

「うむ、しかし、話だけではなぁ…」

 

幡山は言葉に詰まる。そう。人類の希望やらなんやらと言っても他から聞けば所詮は写真も映像も無い自分の妄言に過ぎないのだから。

すると、佐々木が重そうな腰を上げ立ち上がる。

 

「仕方がない。幡山君、彼女の家は分かるかね?」

 

佐々木は幡山に問いかけた。

 

「いいえ、残念ながら。しかし、海沿いと言っていたので家のある範囲は大体絞れますし、名前は知っているのでそこで判明するかと」

 

「そうか、よし」

 

佐々木はドアに向かって歩き始める。

 

「ならば会いに行こう。私も興味があるし、実際に会った方が作戦も立てやすいだろう?」

 

 

 

【#】

 

 

 

「…ということで、海自の佐々木だ。宜しく頼むよ海原君」

 

「は…はい…。宜しくお願いします…」

 

結局、雪の家ではなく海での待ち合わせとなった。

理由としては家族にその事をまだ知らせたくないという雪の希望からであった。

流石に雪も今話している人物こそが海上自衛隊のトップと知って驚いている。

 

「彼から話は大体聞いている。なんせ武装して戦えるとか。本当かね?」

 

「はい。吹雪が戦い方や武器の使い方を教えてくれるので。あ、今お見せしましょうか?」

 

「あー…いや、結構だよ。見せましょうかなんて言えるのならもはや疑う余地もないからな。で、使い方とは、例えばどんな?」

 

佐々木は問いかける。

 

「そうですね…。例えば今、ここが海の上だとして、ここで私が武器を手に取ってそこにいる幡山さんを撃とうとしても撃てません。

元々は敵の軍艦を破壊するためのものですから、人や無害な物は撃てないようです。勿論、人工的な専用の的、障害物や深海棲艦は撃てますが…」

 

「ほう、そいつは凄いな。本能的なセーフティか。良く出来てるもんだ…。他には?」

 

佐々木はさらに言及する。

 

「他にはー…。私自身は傷つかないって事ですかね」

 

「…?どういう事だ?」

 

「私がダメージを受けても私自身に怪我は無いということです。全部吹雪にダメージが蓄積されます。

腕が取れたり血が出たりはしません。痛みもほとんど無いそうです。あ、着ている服とかは燃えたり破れたりするみたいですけど」

 

「思念体がダメージを負う…。なんだかややこしい話だな。エネルギー変換の仕組みを知ってみたいなこれは…」

 

幡山は頭を掻く。

 

「ただ…」

 

「ただ?」

 

雪が少し表情を険しくした。

 

「ただ、敵の攻撃に当たりすぎて吹雪の耐久力が無くなると、私に対する加護が消えて海に浮かぶことも武装する事も出来なくなります。

私も一応人間なので疲労はします。なので、その後は泳げなくなって後は海に沈んで溺れ死ぬ。つまり轟沈…って言うんですか?そういうのもあるそうです。」

 

「し…!」

 

死ぬ…、ただの少女が戦いで死ぬ…?

幡山は憤りを覚えた。

 

「仕方が無いですよ。どんな戦いも犠牲無しではやって行けないというのはあなた方が一番知っている事でしょう?誰かがやらなければならないんです。

偶然、私が選ばれただけなんです。それに」

 

 

雪は海の方を見て

 

 

「それが駆逐艦吹雪として私が与えられた使命であり、私の望みなんです」

 

力強く、そう言った。

 

「だからといって…そんなシステム…。強制的にそんなのに…」

 

「幡山君」

 

佐々木に呼ばれて幡山は振り返る。

 

「私達は一体何だ?そう、軍人だ。戦いになったら命をかける国家公務員だ。それと同じだ。彼女はもう覚悟を決めたんだ。私達と同じ戦いになったら命をかける」

 

佐々木は海の方を望む。

 

「私は3年前。あの第二次海域奪還作戦で多くの隊員を死なせてしまった。私の指揮のせいでだ。…皆、死にたくなかっただろう。

しかし、その中に誰一人として作戦に反対の奴はおらんかった。皆、私に命を預けたのだ。こんな年寄りにな。

皆、取り戻したかったのだ。昔の海を。彼女も同じだ、託したのだ。自らの命を、彼女が宿すその力に。そして、彼女もまた、思っているのだ。海を取り戻したいと…」

 

 

「そしてそれが、彼女と死んだ隊員達の願いなのだよ」

 

 

佐々木は雪を見る。

 

「そうなのだろう?」

 

佐々木が問いかけると、雪は優しく二人に笑いかけた。

 

「よし、そうと決まれば作戦を立てなければ。幡山君、キミも手伝え」

 

突然のオファーに幡山は戸惑う。

 

「は、え!?俺…あっ、自分ですか!?いやでも、今謹慎中で…」

 

「そんなもん取り消してやる。今日からはしばらく眠れんぞ。覚悟しておけ。よし、行くぞ」

 

「は…はい!…ハァ…」

 

思わずため息が溢れる。

 

「まぁ、こんな形だが復帰できただけ良いとするか…」

 

二人は用意してある車へ向い始めた。

 

「あの…!」

 

すると、雪に声を掛けられる。

幡山は一呼吸置いた後、振り向き

 

「…、俺らと一緒に戦ってくれるか?海原雪」

 

幡山は雪に問いかけた。

 

「はい!」

 

何の迷いも無いような、清々しい返事だった。

幡山の口元が少し緩む。

 

「お前を死なせない作戦を考えてくるよ」

 

 

 

深海棲艦と人類の海を取り戻すための戦いの幕が3年の時を得てこの瞬間、再び切って落とされた。

 

 

 

【#】

 

 

 

2週間後。

 

剛腕佐々木海将のもと滞ることなく作戦が練られていき、とうとう決戦の日を迎えた。

 

出発は横須賀港。

人工衛星もみじが運良く小規模の瘴気、小型深海棲艦一体を横須賀港から南西の方角で発見したからだ。

 

作戦は特型駆逐艦吹雪の思念体を宿した少女、海原雪を中心として展開される小編成大規模な作戦であった。

 

 

《今作戦は護衛イージス艦4隻、空母一隻、他連合艦隊(6隻×3)が就き、目標近くまで輸送、

戦闘開始時には一時退却して艦載機や地対艦ミサイルで離れた場所からの援護に回るという流れで進む。

 

その間、戦闘海域周りに他深海棲艦艦隊が接近しないように機動部隊を配置、哨戒する。

 

今回の目的は『深海棲艦を倒せる』という事が実証されるかどうかを目的とした作戦であるため目標以外の深海棲艦との戦闘は無意味。

その上、海原雪一人では勝ち目が低いと見られる。

 

よって、帰還する条件は目標を殲滅するか、敵増援が来るかどちらかとなる。

 

なおこの作戦は秘密裏に進められ一般国民には公表しない形になっている。》

 

という形であった。

 

「ほぁー…凄い事になってますねぇ…」

 

ココアを片手に計画書を見ながら雪が幡山に言う。

 

「そりゃそうだろ。あの深海棲艦を倒せるかもしれないんだぞ」

 

「そうですけど…」

 

多少不安なのか、俯きがちに呟く。

 

「大丈夫だ。きっと上手くいく。お前も誰も死ないさ」

 

「幡山さん…。もう、励ましてくれるんですか?照れますよ…えへへ」

 

「…お前なぁ…」

 

呆れた顔で幡山は雪を見る。

するとニヤけていた雪が突然少し悲しそうな顔で話し始めた。

 

「私、今でも少し覚えてるんです。6歳頃…ですかね、家族で沖縄の海に行ったこと。凄く綺麗な青色の海で…ずっとここにいたいなーって思ったんです」

 

空になったココアの缶をゴミ箱に捨てて雪は続ける。

 

「そこからなんです、私が海を好きになったのって。勿論、舞鶴の海も大好きですよ。沖縄ほど綺麗では無いですけど、そこで育ってきたし、なんか、歴史みたいなのを感じますし。

だから、3年前ショックだったんです。

海が深海棲艦に奪われたって聞いて。もう楽しそうに浮かぶヨットも、夢見た豪華客船に乗ることも出来ないし見れない思うと悲しくて…」

 

 

 

俯き、悲しそうに話す雪。

幡山は雪を励まそうと肩に手を置こうとする。

 

しかし、直後雪が先程とは逆に明るい表情で顔を上げた。

 

「でも、私が皆の海を取り戻す事ができるとしたら、それってとても素晴らしい事じゃないですか!

また、あの海を取り戻せるなら私、頑張ろうって思うんです。それに、それが私にしか出来ない事なら、尚更!」

 

雪の声のトーンの変わりよう少し驚いた幡山だったが、肩に置こうとした手を引っ込めて、

 

「…そうか」

 

口元に少しの笑みを浮かべて独り言の様に呟いた。

 

「それに」

 

「ん?」

 

「私はあの日、海で…あの…は…幡山さんに」

 

「失礼します、海原さん」

 

突然、後ろから自衛官の女性が雪の名前を呼んだ。

 

「はっ!はいっ!?」

 

雪から素っ頓狂な声が出る。

 

「こちらから戦闘装備品の支給があります。あちらで着替えをしてください」

 

「戦闘用!?は、はい…。あ、幡山さん、その…またあとで!」

 

女性に連れられ顔を真っ赤にした雪は施設内に向かっていった。

 

「全く…忙しい奴だなぁ…」

 

幡山は苦笑いをしながら歩いてゆく後ろ姿を見送る。

 

さっき、雪が何を言おうとしていたのか。

幡山は敢えて考えようとはしなかった。

 

 

幡山達が今いる場所は横須賀港の海上自衛隊駐屯地施設内。

作戦開始まであと1時間に迫り、戦略ミーティングが終った後偶然、自販機の前で雪と会ったのだ。

 

雪が去っていき、自販機コーヒーを買っていると今度は佐々木がやってきた。

 

「よう幡山君、調子はどうかね?」

 

「そうですね…早く帰って寝たいかなと…。あ、コーヒーどうぞ」

 

「お、ありがとう。それは何よりだ。こういう場で私に冗談を言ってくるのは君が初めてだよ」

 

「あまり冗談ではないのですが…お気に触りましたか?」

 

「いいや、嬉しいのだよ。どうしてもお固いレッテルが貼られるからな」

 

「それは災難ですね」

 

「ハハッ。……どうだ、行けそうかね今日の作戦は」

 

世話話から唐突に作戦について質問される。

 

「どうですかね…。正直、自分が今作戦に参加しているのかが不思議でたまりませんが…」

 

「まぁ、幡山君は彼女と初めて接触した人物だからね。それに、彼女としても話せる相手が居た方が良いだろう」

 

「はぁ…。そんなもんなんですかね…。でも、この作戦が成功するかどうかは8割方彼女にかかってますから。自分には、何もできませんよ」

 

「…そうだな」

 

佐々木は飲み終わったコーヒーの缶をゴミ箱に捨てる。

 

「犠牲は出したくない…前回のように。しかし、最も重いものを背負ってるのは彼女だ。私達も、最善を尽くして彼女を助けよう」

 

そう言って佐々木はその場を立ち去った。

 

「…、そうだな…」

 

まだ暖かいコーヒーを持ちながら幡山は呟く。

 

天井のスピーカーから放送が流れ出した。

 

『作戦開始まで残り40分。作戦に参加する隊員はそれぞれ艦艇に乗り込んでください。繰り返します。作戦開始まであと…』

 

 

 

 

「始まるか…」

 

 

集合の合図が掛かり、幡山はコーヒーを飲み干す。

 

あの日、あの少女と出会ったことから全てが始まった。

 

彼女がもたらすのは変わることへの希望か、変わらないという絶望か。

幡山は、決意を込めた眼差しで前へ歩き出した。

 

 

 

 

 

【#】

 

 

 

 

 

『予想接触地点まであと約6.3マイル。護衛艦は低速運航に切り替え、海原雪は抜錨してください』

 

 

横須賀を出港してから約1時間。

 

船内にアナウンスが流れ、雪は目の前の海に降り立った。

 

海に立ち、手を前にかざし艤装を身に纏う。

 

すると、耳に付けた小型端末に佐々木からの通信が入った。

 

『海原くん。改めて、今回の作戦に参加してくれてありがとう。君という存在がなければ、私達は一生陸暮らしとなっていただろう。

ここからは君にほとんど命運を託すことになると思うが…。どうか、頑張ってくれ』

 

通信は続く。

 

『君も説明は受けたと思うが、君が身につけているその我々と同じ様な迷彩柄の服は、似ていても少し違う。ある程度の熱や爆風に耐えられる様になっている。

それこそ直撃すれば服の一部は吹き飛ぶが君自身にダメージは無いとのことだったので運動性を重視させてもらった。

了承してくれ。どちらにしろイージス艦を沈めるような攻撃だ。我々では防ぎきれんよ。

それと、ヘルメットに付いているカメラを通して我々は君の戦闘の様子をモニターしている。何か問題があれば直ぐに連絡してくれ。最悪囮にはなれる。

耳の端末のボタンを押せばマイクが繋がるからな。応答は幡山君がしてくれるだろう。これが、私達が出来るせめてもの助けだ。何か質問はあるか?』

 

 

「いえ、大丈夫です。問題ありません。それと」

 

 

 

「囮になんてしません。誰も死なせませんから」

 

 

 

雪はぐっと足に力を入れ、

 

 

「吹雪、出撃します!」

 

 

叫び、海を滑走して進み始める。

 

彼女の向かう先にはただ、何も無い海が広がっていた。

 

 

 

 

 

【#】

 

 

 

 

 

「訓練では何度か走ったけど…。意外と早いよね、これ」

 

海の上を進みながら、雪は呟く。

海の上には障害物どころか、漂流物さえ無く、潮の匂いだけが広がっている。

 

「会敵まであと2マイルちょっとのはず。警戒しないと…。っていっても、小型だし見つかるかなぁ」

 

眉を潜めて周りを見回すが、やはり今だ何も見えない。

ピリピリとした緊張感が漂う。

 

すると雪は前方に、海中を進行する複数の物体を視認した。

 

(何?魚…?…いや!)

 

 

正体に気づいた雪はすぐに重心を左に移し回避行動をする。

直後、雪が先程いた場所が水柱を立てて爆発した。

 

(やっぱり…あれは…)

 

- 魚雷 -

 

(来た…!)

 

 

魚雷が進行してきた方向を睨みつける。

 

すると、それを察知したかの様に海中から全長2mほどの生き物が顔を出した。

 

楕円の様なフォルム、巨大な口、緑色の目。

 

 

「深海…棲艦…!」

 

 

右舷側に旋回して距離を取る。

すると雪の小型端末に通信が入る。

 

『こちら幡山。とうとう来たな…。大丈夫か』

 

「問題ありません。…ていうか、案外大きいんですね…。幡山さん!撃ってださい!」

 

『了解!打て!』

 

雪が無線で指示を出すと数秒で後方から複数のミサイルが襲来し、深海棲艦に命中した。

 

「本当は通常兵器で倒せれば良いんだけど…」

 

しかし、願いも虚しく結果は3年前と同じ。小型の深海棲艦にさえ傷1つ付けられていなかった。

 

「やっぱり駄目…。それじゃあやっぱり…!」

 

雪は姿勢を低くし、加速の体勢に入る。

 

 

「私がやっつける!」

 

 

海を蹴り一気に近づく。

容赦なく撃ち込んでくる敵の砲撃を蛇行して避けつつ照準を合わせる。

 

 

「当たって!」

 

 

雪の腕の武器、縮小された12.7cm連装砲から2つの砲弾が打ちだされる。

砲弾はほぼ直線的に進み深海棲戦に命中した。

 

爆発と爆風が広がり、やがて晴れていく。

 

そして視界に見える深海棲艦の体からは、青い体液が出ていた。

 

「効いた…。…効いた!」

 

無意識にそんな声を発したと同時に雪の耳の小型端末から自衛隊の人々の歓声が聞こえてくる。

 

そう、その瞬間、人類が太刀打ち出来なかった相手に対して、海原雪という存在が初めて、有効であることが証明されたのだ。

 

「攻撃有効です!幡山さん!」

 

『あぁ!よくやった!この調子で落ち着いて状況を見ながら…』

 

「いける…!」

 

深海棲艦の左舷側にいた雪は態勢を立て直し、再び攻撃を仕掛ける。

再び襲ってくる敵の砲撃をかわし、照準を合わせ始めた。

 

『おい、駄目だ!近づきすぎだ!落ち着いて様子を見ろ!敵はまだ…!』

 

焦った声で幡山が雪に警戒を促す。

だが、遅かった。

雪の目の前には既に3本の魚雷が迫っていた。

 

「うわっ!」

 

雪は無理矢理海体を倒して横へ逃げる。

一瞬足が浮き、コンマ数秒後に魚雷は爆発した。

間一髪雪は回避する。

 

「ううっ、危ないっ…」

 

体から海に倒れた雪はふらつきながら立ち上がった。

 

『海原!』

 

幡山の叫び声で我に返り、冷や汗を浮かべた顔で敵を睨みつける。

しかし、目の前に写ったのは、深海棲艦ではなく歪な形をした1発の砲弾。

 

「しッ…!」

 

砲弾は雪に命中した。凄まじい程の爆発が起こり、黒い煙が立ち込める。

 

しかし、最新鋭のイージス艦をも沈める威力を持つ深海棲艦の砲撃を受けながらも、雪は生きていた。

命中した左腕の服は燃えてしまい無くなっているが腕はある。雪の中の吹雪がダメージを請け負ってくれたのだ。

 

すかさず雪は距離を取り一度、落ち着いて状況を把握する。

 

 

(油断した…。敵は恐らく軽めの小破。けど、私は中破手前の小破…。吹雪もあまり持ちそうにない…どうすれば…)

 

すると突如、頭の上を何かが通過し、目の前の深海棲艦付近に爆発が生じた。

それと同時に幡山から通信が入る。

 

『おい!大丈夫か?今取り敢えず時間稼ぎをしたが、被害は?』

 

先程とは違い、酷く焦った声だった。

雪は少し申し訳なく思う。

 

「すいません…私は大丈夫です。装備にも問題は無いです。多分小破程度かと…」

 

『そうか。まったく…無理はするな!いいか、見た限り敵は魚雷と砲撃を混ぜてくる。魚雷に警戒しつつ近づきすぎない程度で蛇行して避けろ。

落ち着いてこちらもも砲撃を混ぜつつ隙が出来たら魚雷を打ち込むんだ。いけるか?』

 

雪は自分の太腿を確認する。

魚雷は一本も減ってはいなかった。

 

「…はい。やってみせます!」

 

雪は再び加速に入り、深海棲艦に一気に近づいてゆく。

蛇行して砲撃を行うタイミングを待つ。

 

「くぅっ…。照準が定まらない…。」

 

セオリーを外れた不規則な敵の攻撃は、雪に撃つタイミングを定めさせない。

 

「これじゃこっちが不利に…。どうすれば…」

 

その時、雪の頭に先程被弾した時の事が浮かぶ。

 

 

(不規則な攻撃…魚雷…そういえばさっき…)

 

 

「…やってみる価値は…ある…!」

 

 

直後、雪は照準を諦め深海棲艦に向かって真っ直ぐに進んで行く。

 

『なっ、おい!何をやっている!そんなの敵のいい的だ!下がれ!おい!』

 

幡山の警告も無視してひたすら真っ直ぐ進む。

砲弾が肩を掠め、足元に水柱が立つ。しかし雪は気にもせず進む。

 

深海棲艦までの距離が20mほどになった時、敵の魚雷が発射された。

着弾までは数秒程しか無い。

 

『海原!!』

 

 

魚雷が迫る。

 

その瞬間

 

 

「待ってたんです!この時を!」

 

 

そう叫ぶと同時に雪は膝に力を貯め、歯を食いしばって海を蹴った。

 

そして、跳んだ。

魚雷の上を跳び越えるようにして3mほど跳び上がる。

 

「やった…!魚雷、発射用意!」

 

 

ガシャンと音を立てて魚雷発射管が斜め下を向く。

 

 

「いっけぇー!!」

 

 

装填されていた魚雷が全て射出された。

撃ち出された魚雷は深海棲艦の前方に落ち10mほど直進すると、大きな水柱を立てて全弾命中した。

 

海に着地した雪はすぐに深海棲艦を警戒した。

 

だがそこには、黒い瘴気と共に存在する小型深海棲艦の姿は無く、ただ、いつも通りに広がる青い海だけが写っていた。

 

 

「やった…。…やった…!」

 

 

雪が両手を広げて喜ぶと同時に、耳の端末からまるで野球場内の様な凄まじい大きさの歓喜の声が聞こえる。

そんな中、再び通信が入った。

 

 

『海原!良くやった…良くやったぞ!ヒヤヒヤさせるな全く…』

 

「へ…へへ…。ありがとうございます…」

 

『今そっちへ迎えを送った。疲れただろうからまぁ、ゆっくりして待っててくれ。周りに増援の深海棲艦もいないから安心していいぞ。それと…次からはちゃんとした作戦を立てて少しは相談しろ…』

 

「わ…分かりました。すいません…タハハ…」

 

 

遠くからヘリコプターの音が聞こえる。

足の力が抜けて雪は海に座り込んでしまう。

 

「私が…私がやった…」

 

疲れ切り呆然とした表情で目の前を見つめる雪。

 

 

青い海と青い空。

 

いつもと変わらない光景のはずなのに、雪の目にはまるでその時は人類の勝利を祝っているかのように見えていた。

 

 

 

【#】

 

 

 

 

「艦隊…ですか…?」

 

 

雪が深海棲艦を撃破してから2週間が経ったある日、幡山は雪と一緒に佐々木に呼び出されていた。

 

「そうだ。海原君は深海棲艦が現れてから唯一、奴らを撃破した存在だ。その事実に変わりはない。

しかしどうだろう。果たして海原君のような存在は全国に彼女1人だけなのだろうか」

 

「…と、いうと…」

 

「そうだ。幡山君、君には彼女と一緒に彼女の様な仲間を探して欲しい。そして、その子らで艦隊を組み、敵深海棲艦の殲滅をするのだ。

どうだ、やってはみないかね?」

 

突然のオファーに戸惑う幡山。

 

「えーと…。あの…何故自分を…?」

 

「そりゃあ、若い女の子達とうまく渡り合えそうな若い人物だからだよ。私達のような老いぼれには務まらん。それに、ある程度の実績もあるようだしな。

ちなみに職場は旧横須賀鎮守府を少し改装した場所だ。横須賀の海自本部も近いし、バックアップは万全だぞ?」

 

「し、しかし…」

 

「幡山さん、私からもお願いします!」

 

雪が突然幡山に頭を下げる。

 

「私、何か出来ることをやりたいんです。それで、やっぱり私には深海棲艦を倒すという役割があって…。

それが私に出来ることなんです。だから私、その仕事やってみたいんです!」

 

真っ直ぐに幡山の目を見て話す雪。

それに押されて、幡山は目を少し逸らす。

 

「だが…別に俺じゃなくても…」

 

「幡山さんが良いんです!

やさしいし、話しやすいし、えーと、あっ、そう!頼りになりますし!えーと…あとは…そのー…えーと…」

 

あたふたとしている雪を見て幡山は思わず吹き出した。

 

「ハハッ!なんかお前を見ていると本当に深海棲艦を倒したのか不安になってくるな」

 

「あー!なんですかそれ!ひどー

い!」

 

「ハハハッ!女の子にそうまで言われちゃあ無下に断れんな幡山三曹?」

 

不満そうに顔を膨らませる雪と皮肉っぽく笑う佐々木。

一度深呼吸をして幡山は佐々木と再び向き合う。

 

「分かりました。その仕事、責任をもって請け負わせて頂きます宜しくお願い致します!」

 

佐々木に頭を下げる幡山。

その横では、雪がパァっと顔を明るくさせた後、ビシッと幡山に向かって敬礼をする。

 

「私は、特型駆逐艦一番艦吹雪。幡山司令官、どうぞよろしくお願いいたします!」

 

 

 

目標は日本周辺に現れる深海棲艦の殲滅、及びそれと対になる存在である子供の捜索。

作戦本部は、第二次世界大戦で利用された、旧横須賀鎮守府。

 

 

彼女達との辛く、険しくも、希望に満ちた新しい生活が今、始まった。

 

 

 

 

 

 

- 提督が、鎮守府に着任しました。これより、艦隊の指揮に入ります。 -

 

 

 

【#】

 

 

 

コンコン、と部屋のドアがノックされる。

 

「入っていいぞ」

 

男性がそう言うと、ツインテールの身長150後半程の少女が入ってきた。

 

 

「失礼。今日の開発の結果よ、はいどうぞ。今回も0/3、全部失敗。…本当に配合これで合ってるわよね?

まぁ、いくら五十鈴が開発しても、ソナーなんて出ないときは出ないんだけどね」

 

 

自らを五十鈴と呼んだ少女は書類を男性に手渡し、ツンとした態度で報告をする。

 

「そうか、まぁ、仕方がないな。配合はこれでいい。気長に次も頼むよ」

 

「はいはい、りょーかい」

 

そう言うと、彼女は部屋をあとにした。

すると、再びドアがノックされる。

 

「はいはい、どーぞ」

 

ガチャリとドアが開き、今度は少し髪の長く、顔に幼さを残した160cm前半程の女性が入ってきた。

 

 

「司令官、お疲れ様です。あ、何か飲みますか?」

 

「あぁ…すまない。コーヒーを頼む」

 

「はい。…どうですか?最近来た彼女、上手くやってますか?」

 

コーヒーを作りながら彼女は男性に話しかける。

 

「あぁ。相変わらず無口で掴めない奴なんだが…弓の腕は確かでな。あの赤城と同等だよ。まったく、そんな子が来るなんて…上手く出来てるなぁ艦娘とやらは」

 

「何を今更言ってんですか。ここに勤めてからもう5年にもなるのに」

 

「…そう言えばそうだったな。お前が艦娘じゃなくなってからもう1年か。早いもんだな」

 

「ええ、本当に」

 

コトンと男性の座る机にコーヒーの入ったカップが置かれる。

カップを持った女性の指には指輪が付いていた。

女性は向い側のソファーに座る。

 

「駆逐艦、軽巡になれるのは約10歳~18歳、それ以外は約12歳~20代後半まで…。特に駆逐は機動力が求められますから。

仕方のないことですよ。そのうち、新しい私も出てくるでしょう」

 

コーヒーを飲みながら女性は話す。

椅子に座った男性は、どこか悲しそうな表情でそれを聞いていた。

 

「そうか…、そうだな。ハハッ、またお前の戦ってる姿を見てみたいよ。あん時なんかびっくりしたんだぞ、いきなり足のスクリューぶっ壊してまでな」

 

 

「あーあーあー、その話はもういいですよ!良いじゃないですかあの時は倒せたんだし…。そんなこと言ったらこの前三隈ちゃんなんてドラム缶で敵倒してましたよ!

…若気の至りって奴ですよ…」

 

 

 

「分かった分かった。まぁ、そうしょげるなって。…ところで話が変わるが、飛龍と蒼龍がドロップしたんだって?」

 

 

「あ、あぁはい。先程赤城さんが2人のドロップ反応を感知しました。人工衛星もみじもその反応付近の沖合でドロップ光を観測しています。ほぼ間違いありませんね。

あと…これは余談なんですがその2人、加賀さんの…」

 

男性は顔を渋らせる。

 

「…そうか、わかった。あぁ…戦力の拡大は嬉しいが…。最近舞風を迎えに行ったばかりなのになぁ…。結構心苦しいんだよ、あれ」

 

「ふふ…」

 

女性はクスクスと笑う。

 

「まぁ、仕方が無いな…これも仕事だ。大和はしばらく帰ってこないし…。加賀は長時間入渠中だし…」

 

男性は女性の方を向く。

 

 

「付き添い、頼めるか。吹雪」

 

「はい、喜んで。幡山さん」

 

幡山と吹雪は、向かい合い少し笑った。

 

 

すると廊下から足音がしたと思うと、ドアがノックされ開いた。

 

 

「失礼しまーす。あ、吹雪さん、こんにちは。てーとくさん、第一艦隊が帰還したってさ」

 

ドアから顔だけ出した短めのツインテールの少女が幡山を呼ぶ。

 

「分かった。すぐに行く。吹雪、手配を頼めるか?」

 

「分かりました。やっておきます。取り敢えずドックに向かいますね。加賀さんに一言挨拶をしてきます」

 

「あぁ、頼むよ」

 

執務室から出た2人は一本の廊下互いに背を向けて歩き出した。

 

「でさー、白雪が言うんだよ、『それって発煙筒でしょ』ってさ!いやーもうそれが面白くて…あ、吹雪姉さん!何処か行くの?」

「こんにちは、深雪ちゃん。うん、今からドックにね。話したい人がいて…」

 

 

「てーとくさん、早く早く。翔鶴姉が大破してないか心配なんだよ」

 

「おいおい、あせるな瑞鶴。誰かが大破したなんて電報は入ってないぞ」

 

「いいからいいからー」

 

瑞鶴と呼ばれた少女に引かれた幡山の手には、銀色に光る吹雪と同じ指輪が付いていた。

 

 

 

 

 

人類が初めて深海棲艦を撃破してから5年。

未だに深海棲艦との戦いは終わっていない。

 

鎮守府の創立から始まり、艦娘と呼ばれる少女の出現、艦隊の編成、出撃、撃破、轟沈。

 

様々な事が起こり、様々な事が変わっていった。

しかし、そんな中でも変わらないものもある。

青い海、青い空、町の景色…。

そして、とある少女の願い。

 

 

 

《美しく、平和な海を取り戻したい…。》

 

 

 

当時抱いたそんな夢は、彼女の中に今でも残っている。

 

そして、その願いは今では彼女の夢であり、同時に彼女達の夢にもなった。

 

一番初めにそれを願った少女は、今では自らその夢を叶えることが出来なくなった。

しかし、きっと戦いが終わるまで、その夢は変わらずに受け継がれ、変わることは無いだろう。

 

とある少女と1人の男が、海で出会ったあの日から。

 

 

これからもずっと。

 

戦いが終わる、その日まで。

 

 

 

 

 

 

 

【#】

 

 

 

 

 

【extra episode-海-】

 

 

 

「私が…吹雪…」

 

 

 

時刻は夜の7時。

雪は布団の中でうずくまっていた。

 

雪が吹雪になったその日。

雪が幡山に自分について打ち明ける前の日。

 

 

「私が吹雪に…。深海棲艦と戦う…。戦わなくちゃならない…。大丈夫…大丈夫…私は死なない…死なない…けど…」

 

暗い部屋、自室の布団の中で雪は独りで呟く。

 

 

「怖い…怖い…」

 

 

幡山と会った後、冷静さを取り戻した雪は怯えていた。

 

吹雪の本能的な闘士が雪の中にあるとはいえ、今まで普通に暮らしていたただの中学生の少女がある日突然深海棲艦と戦う事になる。

日本の自衛隊が手出し出来ないほどの、あまりにも大きい敵と。

 

いままで前例の無いそれは、一人の少女には重すぎる事だった。

 

 

 

「大丈夫…分かってるよ…。戦う、戦うよ…。でも…死ぬかもしれない…。そんなの…やだ…怖い…」

 

 

ただガタガタと震える雪。

すると突然、部屋に何かが割れる音が響いた。

 

「…何?」

 

 

 

雪は暗い表情のまま布団から抜け出し、部屋の電灯を点けた。

 

床には割れたガラスと写真立てが落ちていた。

部屋の棚に置いてあったものが落ちたのだろう。

 

 

(なんでいきなり棚から…)

 

 

雪は疑問に思うが、取り敢えず散らばったガラスを片付け始める。

 

すると、ガラスを無くした写真立てから一枚の写真が落ちてきた。

 

そこには美しい海を背景にした、笑顔の幼い頃の雪が写っていた。

 

 

 

「うわぁ…。懐かしい…。沖縄に行った時だよねこれ。記憶はあるけどいつだったっけ…えっと…2033年…だから6歳、でいいのかな」

 

 

 

作業の手を止め、写真を見つめる雪。

 

 

「綺麗な海…」

 

 

「あら、本当ね」

 

 

「うん、本当に……ってうわっ!お母さん!いつの間に!」

 

 

驚きのあまり、飛び退いた雪の横には、いつの間にか写真を覗き込む母の姿があった。

 

 

「あなたが6歳っていうのを計算した辺りからかしらね。そんな事よりどうしたのこれ、懐かしい」

 

 

雪の手から落ちた写真を拾い上げる。

 

「あぁ、さっき写真立てが落ちちゃって、その中にあったの」

 

 

「そうなの。割れたのは勿体無いわねぇ」

 

 

「うん…」

 

「もう一度…行きたいわね。深海棲艦さえいなければ…。高校受験前にもう一度くらいとは思っていたのだけれど。…今じゃ海なんて、恐くて近寄れないわ」

 

- 深海棲艦さえいなければ -

 

 

きっとそれは、皆の願い。

 

誰もが願うけれど、誰にも叶えられない願い。

 

誰にも…?

 

私は___

 

 

 

「ねえ、お母さん」

 

 

雪は俯いたまま口を開いた。

 

 

「ん?」

 

 

「もし、もしもだよ?…自分にしか出来ない事があって、でもそれって凄く危険で怖いことでそれでも誰かがやらなきゃならない事だったら…お母さんどうする…?」

 

 

雪の母は顔を上げて俯いたままの雪を見つめる。

 

そして、微笑んで

 

 

「やらなくても良いと思うわ」

 

 

優しい口調で、そう言った。

雪は顔を上げる。

 

 

「危険な事なんでしょ?それならば自分がわざわざ犠牲になってまで無理にする必要なんか無いわ。雪は悪くない」

 

雪は少し悲しそうに再び俯く。

 

「でもね」

 

再び、雪の母が口を開いた

 

「それって、あなたにしか出来ない事なんでしょ?さっきも言ったけど危ない事なんか無理にやる必要はないわ。

でも、その、雪にしか出来ない事があるっていうのは、とても誇らしい事じゃない…?」

 

 

彼女は話を続ける。

 

 

「でも何を思って動くか、動かないかはお母さんが決めることじゃない。あなた自身が決めることよ。

どちらにしたってきっと、その選択は間違ってなんかいないわ。それがあなたの意思と望みなんだからね」

 

雪の母は立ち上がり、部屋のドアを開ける。

 

 

「それじゃあ、そろそろご飯にするからね。降りて着なさいよ」

 

 

雪の母はそう言い残して階段を降りていった。

 

 

再び一人になった部屋の中で雪はポツリと呟く。

 

 

「私の意思と…望み…」

 

 

吹雪や、他の人の意思ではなく、私自身の…。

 

私の願い。

 

 

 

- そんなの、始めから決まっていたんだ -

 

 

 

あの時からずっと、何も変わらない。

 

ただ、あの海を…。

 

 

 

「なにやってんだろ…私…」

 

 

雪は立ち上がり、前を向いて歩き始める。

 

 

「取り戻してみせる。私が、絶対に」

 

 

食卓へ向かう雪の足取りにはもう、迷いは見えていなかった。




- そこで生きる少女たち -の始まりとなるお話、その2/2です。


2分割にして投稿しましたが、如何だったでしょうか?

相変わらずの文章力ですが...『自分の考える艦これ』というか、『艦これの世界観がこんな感じだったら面白そうだな』と考えて執筆しました。

勿論、艦これ公式からの明確な世界設定は発表されていないわけですから考え方は人それぞれだと思いますし、私の考える艦これが合わないと思う人もいるかと思います。

けれど、こんな様になってない文章力でも
「あ、この人はこう考えてるんだ」
なんて思ってもらえたらそれだけで感激です。

もしお時間さえありましたら、これからも(不定期気味ですが)小説を投稿していきたいと思いますのでその時は是非、目を通してやってください。

閲覧、どうもありがとうございました!

(誤字、脱字等ありましたら(というかあります)、是非ご指摘願います。)
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