艦隊これくしょん - そこで生きる少女たち - 作:みどいろCPU
【act3 響】
今の時期、息を吐けば白くなり目の前の海には流氷だらけ。
まぁ、当たり前といえば当たり前だけど。
あまり頻繁に見るようなものでは無いけど、もはやこんな光景見飽きてる。
「コート、重いな…」
もう少し軽くすれば良かったと自分の中で毒づく。
「
後ろから執事の
こんな寒いところで長い間待たせるのもアレだし、そろそろ車に戻ろう。
ザクザクと音を立てながら少し固くなった雪を歩き始める。
…この海もしばらくはお預けかな…。
「ゴメンよ、家に帰ろうか」
執事に向かって話しかけた銀髪の少女
【#】
- レジスタンス -
他の国では、確かそう呼んでるんだっけか。
土は枯れ果て、空は濁り、町が燃え、悲痛な叫びが空気を震わす。
少し大袈裟かもしれないが、今のロシアはまるでそんな感じだ。
日本の海が謎の生命体に侵されたことによってロシアが貿易に使用していた水路は大幅に変更され、経済状況が悪化。
それによって国内では大恐慌が勃発、それに乗じた政府に反感を持った組織が時折反乱を起こし始めた。
それが
それを脅威とみた政府はレジスタンスの殲滅行動を開始。
その命を受けた軍はレジスタンスが潜むとされる町や建物を強襲していった。
しかし、その行動は残虐極まりなく無差別な殺戮や空爆が激化。住民は街を出る事を余儀なくされ、常に怯えながら生活する日々。
私もそうだ。
私も他の人と同じく常に不安の中で暮らしている。
しかし、一つだけ他の人と違う事がある。
それは、私の家族がレジスタンスだという事だ。
パパはレジスタンスの幹部の一人でブズロフはその執事。
日本人である私のママは死んでしまった。
今から丁度1年前に、軍の空爆の餌食となって。
その時からパパはレジスタンスに加わった。
政府のやり方を変えるために、仲間と共に立ち上がったんだ。
でも、本当はやめて欲しかった。
私は平和に暮らしたい。
この国にいる限りそれは叶わないのかもしれないけど、戦争なんか考えずにただひた向きに生きたい。
生きたいんだ。
ただ、それだけなんだ。
…それだけなのに…。
「ヴェラ」
部屋のドアがノックされる。
恐らくパパだろう。
作戦会議が終わったのか。
「おかえり。どうしたの?」
「いや、特に用はないんだが…。思ったよりも会議が早く終わってな。飯は食べたんだろう?」
「うん、ブズロフが作ってくれたよ」
「そうか…」
そう言うとパパは俯いて少し口元を緩めた。
あぁ…これはきっと…。
「何かあるんでしょ。言いたいこと」
咄嗟に顔を上げた。
図星のようだ。
「何?」
「…」
パパは黙り込んでそのまま部屋の扉へと歩いてゆく。
「…時がくれば…分かるよ。おやすみ、ヴェラ」
キィと音を立てて、ドアはゆっくりと閉まっていった。
【#】
「ハァッ…ハァッ…」
息が詰まる。苦しい。
あとどれくらい走ればいいのだろう。
足がもたつき転びそうになる。けれど、それでも走り続ける。
海に向かわなきゃ…。
私の中にある命令は、ただ、それだけだった。
午前4時。
突如街が燃え始めた。
軍によるこの街の空爆が始まったのだ。
甲高い音を立てて落ちてくる焼夷弾は、家も、道路も、公園も、全てを焼き尽くしてゆく。
家の窓から覗くそんな景色は、まるで地獄。
TVニュースで見るような光景がいま目の前にあるのに、未だに実感が沸かない。
どうして…こうなったのだろうか…。
「ヴェラ!」
乱暴にドアを開けてパパが部屋に入ってきた。手と背中には重そうなリュックと武器。
「ヴェラ、ここは危ない。北の方には兵もいるらしい。残念だがもう、恐らくこの街は駄目だ。…潮時なんだ。ブズロフに頼んで港に船を用意してある。お前はそれで遠くへ逃げるんだ」
「なんで?ここが燃えちゃったのならまだ別の街へ行けばいい…。行けばいいじゃないか!」
冗談じゃない。私はこの街が好きだしこの国も好きだ。
出ていくなんて
考えたくもない。
「…駄目なんだ…。私達も、もう長くは持ちそうにない。この前の第三支部の壊滅でウチは壊滅的な被害を受けた。あの時お前には言っていなかったが…終わりなんだよ。
私も軍に顔が割れてしまっている。せめて、お前とブズロフだけでも何処かへ…」
「駄目だよ!そんなの嫌だ!」
「ヴェラ…頼むから…最後にパパの言う事を聞いてくれ…」
「嫌だ!ふざけないでよ!あの時から…ママの仇を討つためにパパは動いたんでしょ?私やブズロフを散々振り回したくせに、こんな所で諦めないでよ!なんの為にここまできたのさ!」
私が声を張り上げたその瞬間、向かいの家が爆発した。
赤黒い煙を上げて屋根がガラガラと崩れていく。
怖い…。
嫌だ…嫌だ…。
「嫌だ…」
「ヴェラ…」
パパが私の肩に手を掛ける。
「確かに私はママが死んでからレジスタンスに入った。仇を討ちたかった。でもな、それだけじゃないんだ。
ママは死んでしまった。だけどなヴェラ、お前は生きている。だからな、ママの仇よりもパパはお前を守りたいんだ…いや、守りたかったんだ」
そう言うとパパはポケットに手を入れて私に何かを手渡した。
1つは星型、もう1つは錨の様な形の金色に光る2つのピンバッジ。
「これはな、ママと初めてデートした時に買ったものなんだ。…たかがピンバッジって思うか?けど、こんなものでも凄く思い出が詰まってるんだ。これを、お前に…」
部屋のドアが開き、仲間のアランさんが入ってくる。
「ヴェラちゃん、こっちに車が用意してある。早く行こう」
アランさんが私の手を掴んで引っ張って行く。
嫌だ、行きたくない。
「パパ…!」
「…行ってらっしゃい。ヴェラ」
いつもはうるさいドアの開閉音がこの時は、やけに寂しく感じた。
階段と引っ張られながら足早に降りてゆく。
私は部屋を出てからずっと泣いていた。
「うっ…えぐっ…」
「ヴェラちゃん…君はお父さんの分も生きなきゃならない。だから泣かないでくれ。君のお父さんは、誇るべき人だよ…。よし、乗って」
車に乗り込み、シートベルトを付けるとすぐさま車は発進した。
窓から見える景色はいつものような古く優しい街並みではなく、赤く燃え盛る火の海。
「大丈夫、車とは言っても海までそう遠くはない。このまま行けば…」
アランさんがそう言った瞬間、上空から聞き覚えのある高い音が聞こえた。
これは…まさか…。
「まずい!」
アランさんがハンドルを切ろうとするが遅かった。
窓ガラスの前に写ったのは道端に落下する寸前の焼夷弾。
次の瞬間、目の前が真っ赤に染まり、私は変な感覚に囚われた。
「う…んっ…」
目が覚めるとそこは朝を迎えた部屋のベッドの上。…なんてことになっているわけはなく、横転した車の中であった。
「痛っ…アランさん…大丈夫…アランさん…」
シートベルトを外して運転席の方を見る。
しかし、そこにはもうアランさんではなく
「う…ぐうぅ…」
車は壊れた。アランさんは死んでしまった。パパにはもう会えない。
…助けは来ない。
そう思った瞬間、私は車から這い出て無意識のうちに走り出していた。
走らなきゃ…。
何処からか湧いてくるそんな思いだけが、ろくに運動をしていない私の足を動かし続ける。
息がつまり、足がもたつく。
どの位走ったのかも、走るのかも分からない。
けれどもど私は、ただ海を目指して走り続けた。
道路沿いを走っているうちに海が見える場所まで来た。
本当に、どのくらい走ったのだろう。
もはや足の感覚は無くなって、自分が何をしているのかも分からない。
するとその時
「ヴェラ様!」
どこからか聞きなれた優しい声が聞こえた。
顔を上げて前を見ると、そこにはスーツを着た年老いた老人、ブズロフの姿。
その瞬間、私の足から力が抜け地面に座り込んでしまった。
「ヴェラ様…よくぞご無事で。あぁ、…よく、頑張りましたね」
「ブズロフ…」
「さぁ、行きましょう。船がそこに」
ブズロフにおぶられて港まで行き、停泊していた小型のクルージングボートに乗り込む。
ブズロフは慣れた手つきで操縦席の機械を弄ってエンジンをかけて、ボートはすぐさま海を進み始めた。
まさか、こんな形で再び海を見ることになるとは。
しかし流氷が浮いていないとはいえ、昨日の様な美しい青と白ではなく街の風景が反射した色。真っ赤な海。
ほんとうに…なんでこんな…。
次第に遠ざかっていく故郷に私は、小さく手を振った。
瞳から流れる涙は赤く染まった街が見えなくなるまで、ずっと流れ続けていた。
【#】
街を出てから2時間が経った頃。
航海中、突如航路の天候が悪化。
私とブズロフの乗った船はまるで地震でも起きているかの様な揺れに襲われていた。
「ブズロフ!一体いつになったらこれ収まるのさ!」
「分かりません!波の影響で一時的にスクリューと舵が動きません!」
「現在地は!?」
「レーダーも駄目です!動いていません!」
「そんな…」
いつ難破するかも分からない状況。
一体どうなってしまうのか。
ここまで来たのに、もう、駄目なのか…?
船が横に縦にと、より一層強く揺れた。
その後、突如揺れが収まり、窓の外に青い空と白い雲が見える。
不気味な程の静寂が訪れた。
「…嵐を…抜けた…?」
なんとかなった。助かった。
ドッと息を吐き出して深くシートに寄っかかる。
「ふぅ…。何とかなりましたね。少しお待ちくださいヴェラ様、只今レーダーが復旧し……て…」
突然、ブズロフの表情が変わった。
目を見開いて、信じられないといった表情でモニターを見つめている。
「なんということだ…」
「…ブズロフ?」
渡すが呼びかけるとブズロフは恐る恐るこちらを向いて
「流された私たちがいるここは…ここの海は…。…日本の領海です」
「え…」
それって…。
そう言おうとしたが、遅かった。
気づいた頃には、私は浮き輪と共に宙を舞っていた。
頭から落下していく感覚に包まれながら私の目に映ったものは、私を海へと放り投げたブズロフの姿ともう一つ、腕に付いた大きな銃を船に向ける仮面を付けた人型の何かであった。
【#】
ある日、北海道のとある海岸。
そこに一人の少女が打ち上げられていた。
銀色の髪を持ち、小柄な体系の何処から来たのかも分からないその少女を見つけた近所の住民はすぐさま警察へ連絡、間もなくして病院へと運ばれた。
そして3日後、その少女は目を覚ますと少し驚いた様子で
「此処は…日本?」
と、見た目からは想像がつかない流暢な日本語で、対応の看護師に質問した。
看護師は『そうよ』と答えた後、彼女に名前を尋ねる。
すると
「私は…。私の…名前は…」
頭を抱えて、彼女は考え込む。
苦しそうに呻きながら、彼女から出た答えは
「私は…誰…?」
【#】
「…以上が今回の出撃の結果と報告よ。これでもう5回目位だと思うけど…あの子を責めないでよ、司令」
夕暮れ時のオレンジ色に染まった部屋、『執務室』で赤茶髪に黄色の髪飾りをした少女と司令と呼ばれた男性が向かい合っている。
「あぁ、分かってる。あそこはかなりの難海域だ、仕方がないさ。電にもそう伝えておいてくれ。取り敢えずお疲れさん。しばらくはゆっくり休んでくれ」
「サンキュ了解。あ、あとこれからもあの海域は私達が担当するからね!勝手に編成変えたりしないでよ!」
「はいはい分かってる、次も頼むよ陽炎殿」
「 へへっ、それはどーも」
陽炎と呼ばれたその少女はニカッと笑ってそのまま執務室を後にした。
「司令は何か言っていた?陽炎」
執務室の外で待っていたピンク髪の少女は陽炎に話しかける。
「いえ、いつも通りよ。取り敢えず休め、だってさ。次の出撃はいつかしらね。…というか不知火、あんた入渠は?一応被弾したんでしょ?」
問い詰めらた不知火という少女はしまった、という表情でため息をついた。
「まぁ、そうなんですが…。折角あの子ら4人で入渠してるのに割って入るというのも…気が引けるので」
少し目をパチパチとさせてから
陽炎はわざとらしく不知火を下から見上げる。
「…ヘぇ?…。不知火…。あんた、意外と可愛いとこあるわね」
「…これだから言いたくなかったんです」
「へぇ~…へぇ~…そっかぁ~…ふ~ん…」
「はぁ…。早く部屋に戻りましょう。黒潮も待ってます」
「あーっ、そうやって話逸らすぅー。そうだ、お姉ちゃんが一緒に入ってあげようか?お風呂。ねぇ?ねぇ?」
「必要ありませんというか止めてください」
「そんなこと言わずにさぁー」
「うるさいです。…あら」
会話をしながら自室のある寮へ向かう2人が通りすぎたのは『入渠ドッグ』。
「ちょっとー!響!私のシャンプー勝手に使わないでよ!それ高いのよ!」
「仕方がないだろう丁度今切らしてるんだから。それに一人前のレディーならこれくらいでは怒ったりしないぞ」
「ぐぬぬ…」
「なによ暁、いいじゃない貸すくらい。何なら私のシャンプー貸してあげる?」
「そういう問題じゃないし!」
「はぁ…生き返るのです…」
中から聞こえてくるのは4人の少女の楽しげな会話と笑い声。
扉の外まで聞こえてくるそんな声に2人は顔を見合わせ、目尻を下げて微笑した。
【#】
「…へぇー。で、あなたがその時分かっていたのは日本語ともう一つ、どこかの国の言葉が話せるってことと、年齢だけだったのね」
「うん。自分が誰なのか、何処で育ったのか、今でも分からないんだ。あの時ポケットに入ってた帽子とピンバッジだけが頼りなんだけど…」
「それで、そのピンバッジの裏に彫ってあった『kyoko』っていう文字から今の名前が響子?」
「そうそう、ここに入る前に見つけてね。ひとまず名前はこれで行こうってなってさ」
「でもなんで北海道から長崎に?」
「うーん、よく分からないけどそれは大人の事情ってやつじゃないかな」
「なるほどなのです」
「…で、朝陽はまだ?」
なずなが呆れたように朝陽の部屋の方を向く。
するとドアが開き、朝陽が鞄いっぱいの荷物を抱えて走ってきた。
「朝陽遅いわよ!…って、何その荷物の量」
「しっ、仕方無いじゃない!レディーには沢山持つものがあるのよ!」
「ただ星空の皆とピクニックに行くだけなのです」
「い、いいのよ!ほら遅いわよ!行きましょ!」
「…朝陽もすっかり丸くなったわねー…」
「なのです」
「
「うるさい!」
そんな調子で4人はバスに乗り込む。
今日は星空荘の全員でピクニックをする日であった。
季節の変わり目に行われるこの行事は毎回場所が異なる。まだ星空荘に入ってから日が浅い
なずな、かづほ、響子、朝陽は初めての参加となり、今回は海沿いの海岸公園での開催となった。
「はーい、ここからは各自自由に行動してオッケーです。必ずグループで行動してくださーい。集合時間は午後の4時だから間違えないでねー」
公園に到着し、バスが停ると子供達は一斉にバスから降りてはしゃぎ始めた。
かづほ達も例外ではなく、ワクワクとした様子で昼飯を食べる場所を探し始めた。
「やっぱ海が見えるベンチよね」
「というか、海の近くになんか来ちゃって深海棲艦に襲われたりしないの?」
「海に入らない限りはまず襲って来たりはしないって学校の先生が言ってたのです」
「ほんとに訳の分からない生物だなそれは」
「響子は深海棲艦については知ってるんだっけ?」
「うん。…とはいっても社会の教科書に載ってた事しかわからないけど」
「よくよく考えると…響子、あんたよく助かったわね。溺れることもなく深海棲艦に襲われることもなく…」
「「「確かに」」」
なずな、かづほ、響子が声を揃えて頷く。
「…なんでだろうね」
「よっぽどの運の持ち主よね」
「深海棲艦が助けてくれた…とか…?」
「…まっさかぁ…。あ!ねぇここにしましょ!いい眺めよ」
「うわぁ…」
「綺麗…」
なずな達がたどり着いたのは港が一望できる公園内の丘の上。
そこから見えるのは、コンテナポートの向こうに見える一本の蒼い水平線。
深海棲艦によって作られた
小さな少女達は、思わずその光景に見惚れる。
「…」
「海って、こんなに青かったっけ…」
「そうね…」
「うん…」
「?響子ちゃん、どうしたので」
「いや、どことなく懐かしい気がしてね。なんだろう…」
「こんなところが?どの辺が懐かしいのよ?」
「私もよくは分からないんだけど…ちょうどあんな感じの…」
コンテナポートの一角を指差そうとしたその時、響子の動きが止った。
その視線の先にあるのは、先ほど見た水平線。
「…?響子?」
「…ねぇ朝陽…。確か日本の海って船、浮かんでないんだよね…?」
「?なに言ってんのよ。当たり前じゃない。」
「じゃあ…あれは何だ…?」
響子は水平線を指さす。
「え…」
「なに…あれ…?」
「船…」
響子が再び指差す方向には、勿論海以外何もない。
しかしその時、四人の目が捉えるのは、先ほどの海ではなく、少し錆びれた四隻の軍艦。
特ⅲ暁型駆逐艦、暁、響、電、雷が確かにそこに映っていた。
【after episode-
「敵艦隊を視認!軽巡2,駆逐2、輸送2総員,総員単縦陣で迎え撃つわよ!砲雷撃戦、用意!」
陽炎が叫ぶと後から随伴してきた5人、不知火・響・暁・電・雷は縦方向一列になって主砲を構える。
「ようやっと最深部か」
「あんなの、暁がちゃっちゃとやっつけちゃうんだから!」
「とか言って大破しないでよね暁。…くるわ!」
「
主砲が火を噴き、空気を震わす大音量の砲撃音が鳴り響いた。
400m程の距離を保ちつつ6人は照準を合わせながら砲撃を繰り返す。
「あぁもう!!すばしっこいあのイ級!!」
「ワ級に命中!轟沈を確認なのです!」
「この…ぉ!やった!暁にかかれば軽巡なんて…え?効いてないぃ!?」
「うっ!くっ…至近弾…です」
海を駆ける6人の少女達は、体重移動を上手く使い回避運動をしながら深海棲艦に攻撃し続ける。
しかし戦況は拮抗、お互いに大きな損害を与えられないままであった。
「…!日が沈み始めてきたわ!夜戦に突入するわよ、総員一時退避!」
「了解!」
「了解した」
6人は陣形を組み直し、敵と一時的に距離を取る。
運命の決戦、夜戦への突入だ。
「日が…」
「沈みました!陽炎!」
「よし、夜戦に突入する!総員、単縦陣!探照灯は私がやるわ、撃ち方始め!」
「徹底的に追い詰めてやるわ…」
「てーっ!」
主砲の吐く炎と探照灯の光だけが、黒く染まった海を照らす。
特に探照灯は敵を照らして位置を味方に教える事が出来る代償に、それを照射する者の位置を敵に知られてしまう。
それ故に味方艦娘達は探照灯役が大破、轟沈する前に敵深海棲艦を轟沈させなければならなかった。
「電!二時の方向にホ級フラグよ!」
「分かってるのです!てー!」
「ナイス電ちゃん!ホ級轟沈…ッきゃあ!」
「陽炎!」
「ッ大丈夫!まだ中破よ!不知火!四時にイ級!」
「くっ…!沈め!!」
「やった!イ級轟沈!残りは…!」
「陽炎さん!!!後ろ!!」
「えっ…」
危険を察知して、陽炎が後ろを振り向く。
そこには海中から浮上し水を滴らせながら砲塔を陽炎に向けた軽巡ホ級エリート。
「まずい!」
「陽炎さん!」
ホ級の砲口の奥で砲弾が赤く燃えながら回転する。
「嘘…」
「逃げてぇっ!!」
電が叫んだその時
「やれやれ、陽炎をマークしておいて正解だったね」
陽炎の前に肩の主砲を構えた状態で銀髪の艦娘、響が滑り込んで来た。
「遅いよ」
一段と大きな爆発音が響き、穏やかだった水面が爆風により波打つ。
ホ級の砲撃を免れた爆風が止んだだ後、陽炎は防御態勢を解いて探照灯をホ級のいた場所へと向ける。
するとそこに先ほどまでのホ級の姿は無く、響が顔に付いた
「やぁ陽炎。危ないところだったね」
「響ちゃん…」
「任務…完了だ」
「「「いやったあああああああ!!!!」」」
海の上をジャンプしながら暁、電、雷が響に向かって滑ってくる。
「すごいわ響!お手柄じゃない!」
「かっこよかったのです!」
「ま、まぁ!あれくらい暁だって出来るけどね!…多分」
「
「…こっちは助けられた身だけれど、まるで漫画みたいな感じだったわね…」
「…もしもし、横須賀鎮守府所属艦娘の不知火です。キスカに停泊中の第十六師団ですか?…はい、北方択捉島周辺の深海棲艦を殲滅しました。
カムチャッカ海溝に沿って移動を始めてください。領海に入りましたら私たちが護衛しながら帰投となりますので…。はい、分かりました。それでは」
「ふぅー…これで島の守備隊も数年ぶりに帰投ね…」
「ええ。よかったですね」
「よし、はーい皆!敵は殲滅した訳だけれどもまだ守備隊の護衛が残ってるからねー!今のうちに少し休んでおいてねー!」
陽炎がメンバーの面々に呼びかけると電たちは海の上に座りだした。
ここからは守備隊が来るまでの時間は暇になる。
「そういえば、この辺りってどこかの国と近かったよね?どこだっけ?」
珍しく暁が電達に疑問を投げつけた。
「そういえばそうね。確か…」
「ロシアなのです」
「あっ!電!それ私が今言おうと思ったのに!」
「えへへ…ごめんなさい」
「もうっ…」
すると突然、響が勢いよく立ち上がった。
ただひたすら、北西の方をじっと凝視する。
「ど…どうしたのよ響…」
「まさか敵!?」
「いや…違うんだ…なんかこの雰囲気…どこかで…うっ!?」
「響!?」
今度は突如胸を押さえて苦しみ始める響。
立っていられなくなり、海の上に膝をついた。
「ど…どうしたのよ響…ちょ…」
「はわわ…」
「陽炎さん!」
「うん?どうしたの…って響ちゃん!まさか、さっきの砲撃で…!」
「まさか、いや…違う。これは…!」
その時、響に変化が起こった。
艤装が灰色から段々とスモークのかかった銀色へと変色していき、腰の辺りに付いていた魚雷が対潜爆雷に換装されていく。
「第二次…改装…」
不知火が信じられないといった様子で響を見つめる。
一方改装の最中、響は一人憑りつかれたように独り言を呟く。
「ブズロフ…パパ…深海棲…あぁそうか…あの時のは…私はこんなことすら忘れて…ハハッ」
そういうと響はポケットから2つのピンバッジを取り出して、換装され色の変わった帽子に取り付ける。
「もしかして響、あなた…」
「記憶が…」
そして、帽子を被り直した響は仲間の方を向いて
「
響改め
笑顔で、涙を流しながらそう言った。
-END-
- そこで生きる少女たち -episode02(2/2)でした。
いかがだったでしょうか。
こちらは結構なハイペースで書き上げたのでロシア語間違えてたりちょっとアレな部分があるかもしれませんが…。そこは温かい目で見て下さると幸いです。
(ご報告して頂くともっと嬉しいです…)
(1/2)、(2/2)と合わせて第六駆逐隊のお話でした。
4人一緒のエピソードはなかなか難しかったですが…なんとかなってよかった!
最後は割と救われる方向に終わらせたいとは思っていたのでなんとかそうなってよかったです(笑)。
(ちなみに、陽炎と不知火は私的にとても好きなのでちょっと出番を多めに書いたり…)
次のお話は再びあのお二人が登場する予定です!
最後まで読んで下さった皆様、ほんとうにありがとうございました!
次回も、どうぞよろしくお願いいたします!