艦隊これくしょん - そこで生きる少女たち - 作:みどいろCPU
ゆるーく短いお話です。
「いやったぁー!いっちばーんっ!」
「あー!ズルいっぽいー!私もー!」
「二人とも、あまり走らないほうが…」
白い砂浜、青い海、青空には焼けつくような熱を放つ太陽。
世はまさに、常夏時代とでも言わんばかりの光景だ。
だがこの海は本物の海ではない。
とある県に作られたオープンルーフの人口ビーチ。
早くも水に飛び込んだ少女の他にも、ビーチに続々と水着を来た少女達が更衣室から姿を現す。
その少女達も、ただの少女ではない。
自らに過去の軍艦の意思を宿した少女達、
今日はそんな彼女達の数少ない休みの日であった。
ワイワイと騒がしくなったビーチに、一人だけボクサータイプの水着を着た男性が更衣室から姿を現した。
「…にしてもデッカいなぁ…こんなところを貸切とは…」
眩しそうに目を細めた男性、幡山の隣に水着の上にパーカーを着た少女、吹雪が歩み寄る。
「本当にいいんでしょうか…ここ、かなりの人気施設ですよ。それを私達で貸切なんて…」
「その辺りは流石佐々木海将と言うしかないだろう…。どんなコミュニティ持ってるんだか…」
『彼女等には夏休みというものが無いのだろう?それなら彼女等にも休みらしいことをさせてあげなさい』
そう記された手紙が幡山の元に届いた頃には既に、ビーチ施設のHPには『休業日』の文字が追加されていた。
「でも、こういう時に深海棲艦が鎮守府に攻めてきたりしないんでしょうか…。それにカチコミとかも心配ですし…」
「お前はいつの時代に生きてるんだ…。深海棲艦は海にむやみに出なければ襲ってはこないし、カチコミが来てもアイツがいるさ」
真顔で呟く幡山。
「…アイツ?」
「…なぁ、知ってたか。間宮ってな、最年少で空手の六段を取ったそうだ」
「えっ」
「嘘だ」
「嘘なんですか」
「多分な」
「どっちなんですか…」
「ちなみに、もしも深海棲艦が襲って来たら皆水着で出撃だから」
「冗談ですよね」
「にしても…皆元気だなぁ…大丈夫なのか、色々と」
「え、否定しないんですか」
幡山の目の前では艦娘達が各々笑顔で戯れている。
あんまりジロジロと見るのも気が引けるので、幡山はビーチパラソルを広げて砂丘に寝転がった。
吹雪もその隣にちょこんと座る。
「皆楽しみだったんですよ、この日が。水着新注した人もいるんですよ?」
そう言われると気になる幡山は若干顔を上げた。
目の合った金剛がセクシーポーズを決めてきたが無視をかます。
確かに、学校指定のものもあればフリルやリボンが付いたもの、中にはどこで買ったんだというようなものもある。
何故か競泳用水着を着ている者もいた。
「italiaのとかは…ちょっと年頃の子が着るようなものでは…」
「い、italiaさんはスタイル良いし…良いんじゃないですか…?あ、ちなみに金剛さんはさっき気絶して運ばれて行きました。駄目ですよ、冷たい態度取っちゃ」
「あぁ…また比叡に何か言われる…」
再び頭を砂に付ける幡山。
「司令官また寝るんですか?散々大破や中破で破れたりしてるんですから…今更見られたって誰も気にしませんよ。あ、凄い、加賀さん一番高いところから飛び込みしましたよ」
そうは言われてもなぁ…。幡山は内心毒づく。
「うわ、見てくださいよ司令官、足柄さんのスパイクでビーチボールなのに鬼怒ちゃんが吹っ飛びましたよ。あ、今度は叢雲ちゃんの水着を外そうとした秋雲ちゃんが埋められてます。
あれ出られるんですかね、というか案外深さあるんですねこの砂浜。あぁ、五十鈴ちゃん…潜水艦の子達をそんなに追いかけ回しちゃ…」
「どんな状況だそれ…。そういえば、吹雪は入らないのか?俺なんかと話してないでどうせならお前も遊んで来いよ」
幡山がビーチを指さすと吹雪は『あーっ…』とでも言わんばかりに目を逸らした。
おい…お前まさかと言おうとした瞬間、幡山の後ろから足音がした。
「吹雪姉さん、こんなとこで何してんのさ。折角来たんだしほら、泳ごう泳ごう!」
「えっ、いや、ちょっと待って深雪ちゃん、服着たままだし私海はあっちょっやっ…」
キャーッ!という悲鳴が次第に遠ざかっていき、やがてザバーンという音が響いた。
南無三。そんな言葉が思い浮かぶ。するとまた、幡山の後ろで砂が鳴る。
「…なぁ、長門。吹雪って…泳げなかったのか…?」
「さぁな。しかし出撃の時はいつも膨らんでない浮き輪を携帯していたぞアイツは」
黒いビキニを来た比較的高身長の少女、長門が受け答えた。その隣には赤色のバンドゥビキニを着た少女、陸奥もいる。
「そうか…てっきり俺は艦娘は全員訓練でしっかりと泳げるようになっていたのだとばかり思っていたのだがな」
「まぁ、そういうな。彼女が海に出る事はもうないであろうし、きっと犬かきくらいは出来るだろう。そういう貴様は泳げるのか」
そういう問題…?といった顔で陸奥が首を傾ける。
しばらく考え込む幡山。
「…いや、泳げない」
「…は?」
「冗談だ。元海上自衛隊員が泳げなくてどうする」
ハハッと笑いをこぼし幡山は再び寝ころぶ。
すると突然、幡山は軽い圧迫感を覚える。
見ると、両腕が双方からガッチリと固定されていた。
「…なぁ陸奥、元海上自衛隊員がどんな泳ぎを見せてくれるのか。気にはならないか?」
「あら、奇遇ね長門。私もそう思ってたところよ」
「…えっ」
- 深海棲艦 -
とてつもない戦力を持つ彼らに立ち向かうのは、意志を宿した少女達。
それが使命だと、終わりの見えないしかし終わらせなければならない戦いに、彼女らは命を懸けて身を投じる。
艦娘となったその日から。明くる日も、明くる日も。
そんな日々に訪れた束の間の休日。
『少しでもこの日を満喫してもらえたら、私は嬉しい』
手紙の文末に記されていたそんな言葉を思い出しながら、
幡山は熱い日差しを感じて水面上へと投げ出された。
- END -
暑いですね!夏ですね!
…という気持ちになったのでちょっと書いてみました。
艦娘達の休日です。一応水着回ということにはなりますが、あまりそういう描写は入っていなかったと思います。(ごめんなさい)
ごくありふれたというか、こういった普通の風景も大事かななんて思いつつ。
そんな感じです(笑)
楽しそうにしている彼女たちを想像して、少しでもニッコリして頂けたら幸いです。
最後まで読んで下さった皆様、ありがとうございます。
これ以上書き込むようなものも無いので今回はこの辺りで。
次回も、どうぞよろしくお願いいたします。