Nanoha×MGS = The Rebrllion = 作:No.20_Blaz
原作:魔法少女リリカルなのは
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灰色の空が広がる雨の夜
私はそこで死ぬ筈だった
しかし、少女は救われた。一人の名もなき蛇に。
彼の創り上げた、国境なき軍隊に。
愛され、武器を与えられ、技術を教わり、知恵を授かった。
やがて少女は心に誓う。
絶望の心に溜まった復讐を。
例によって例の如くというヤツですが新作の試作短編です。
ですが内容というのが全く決まってないので、多分連載は無いかなと・・・(汗)
灰色の空が広がる雨の夜
私はそこで死ぬ筈だった
「・・・・・・・・・。」
冷たい雨水に曝され、無気力に横たわる私にはもう力は微塵も残されていなかったし、残っていたとしても動こうとはしない。
元より生きるという気力もない。生きる意味もなくした私は、いつも死にたいと思っていた。
だから死ねるとなれば私も本望だ。
これでようやく楽になれる。
先に逝ってしまった『あの人たち』の所へと行ける。
死へと近づくにつれて、恐怖ではなく喜びを感じていた私は、最早生きる意味を無くしていた。
死ねる。それだけが今楽になれるのだから、私は喜んでそれを受け入れる。
私はそうやって死後のことを考え、ゆっくりと目を閉じた。
だけど。神様はそんなことを、私の願いを聞き入れてはくれなかった。
寧ろ、神様はこう言ったのだ。
『それでも生きなさい』と。
そして、その神様の使いの者が、私の前に姿を見せた。
「こんな所で寝てては風邪を引くぞ」
私の前に姿を見せたのは体格の良い男だった。
顔や服などはその時、視界がぼやけていたのであまり覚えていない。
だが、その人物が男と言う事、体格がしっかりとしていた事は覚えている。
突然現れた男に対し、私は小さな声で尋ねた。
「・・・・・・だれ?」
「ん?俺か。そうだな・・・君が立っている墓の人物の知り合い・・・と言ったところだ」
私の小さな声が聞こえにくいのか、男は身をかがめるとずっと私を見つめていた。
しかし私にはあまり見えていないので、私はそのまま話を続けた。
「・・・にいさんの?」
「兄さん?と言う事は・・・」
「にいさんをしっているのですか?」
「・・・・・・どうやらその様だ」
敬語で話す私の言葉とは違う返し方をした男は自分の左胸の辺りをさわり、独りで話し始めた。
「こちら『・・・・』」
『こちら『・・・』。どうした?』
「一人回収を頼む。女の子だ」
『『・・・・』。俺たちは孤児院じゃないんだ。子供なんか回収しても・・・』
「『アイツ』の妹だ。と言ったら?」
『何・・・?』
「本人がアイツの墓前の前で自殺しかかっている。このままだとあと一時間ほどで凍死する」
『・・・。』
「それにその子がアイツのことを兄と呼んでいた。話も繋がる」
『確かに・・・アイツよく妹のことを話していたからな・・・』
「それにアイツの言っていた特徴とも一致する」
『・・・わかった。だが、どうする?回収装置はこの天気じゃ使えんぞ』
「ヘリを頼む。場所は後で伝える」
『了解』
独り言を終えたのか、男は改めて目を此方に向けたのが分かった。
さっきよりも目が見えるようになってきたので、段々とではあるが男の目線がどこを向いているのかが分かり、目の色と鋭さをぼやけが入っているが分かっていった。
視線も強く、改めて分かる男の目力に私は言葉を失う。
その目だけでも放たれる気迫は強く、幼い私でも圧されたのだ。
「・・・・・・。」
「どうした、寒いのか?」
「・・・・・・。」
当然だ。雨の中ずっと寝そべっていたのだ、体温は常温よりもはるかに下がっている。
自然と身体を小さく丸め、身体全体を温める為に小さな手に力を入れて震える。
死を望んでいたのに私は針の穴の様な小さな光を見せられ、この世に留まりたいと願い、私は改めて『生きたい』と願った。
「随分とそこで寝そべっていたようだな」
「・・・・・・。」
「・・・まともな物がない・・・仕方ない」
すると、私の目の前で男が自分の着ていた服を脱ぎ始め、上着を私の上に被せてきた。
上着の大きさは私の丸くなった身体の殆どを多い被せ、いきなり目の前が暗くなった事に私は驚いた。
「・・・?!」
「大丈夫だ。直ぐに元気にしてやる」
男はそう言い、自分の上着に包まれた私を担ぎ、その場から立ち上がった。
上着に包まれて私の視界は殆ど黒く塗りつぶされていたが、歩く足音とそれによる揺れ、そして男の身体の温かさが僅かではあるが伝わってきたのだ。
『こちらモルフォ!まもなく其方に到着します!』
「分かった。いま墓地から離れている。近くの駐車場跡地に着陸してくれ」
『了解』
その後の事を私は殆ど覚えていない。
ただ覚えていたのは、雨水に濡れた外から少し柔らかい場所に寝かされたと言う事。
そして「大丈夫か」と声を掛ける男の声だった・・・
◇
あの雨の日の出会いからもう数年の月日が経つ。
私はあの後、その時の男に拾われて彼の所で住む事になった。
元よりもう身寄りの居ない私だ。誰も悲しまないといえばそれまでだが、私には引き止めてくれる人が一人も居なかった。
だから、今の生活を、私はとても充実した日々を送れて嬉しい。
あの日を境に私の周りには人が溢れかえった。
私を素直に歓迎してくれた人。素直ではないが気にしてくれた人。
わらかしてくれた人。暖かい食事をくれた人。
見た目は・・・アレだけど信頼できる人。
そして。
「そろそろ帰投するぞ
ティアナッ!!」
「ッ!了解です『ボス』ッ!!」
「・・・スネークと呼べと言ってるだろうに・・・」
私を新しい世界に導いてくれた、ボス。
またの名を『スネーク』。
私は今。彼の指揮する私設軍隊の一員として、様々な次元世界を渡り歩いているのだ。
◇
誰にも邪魔されない。どんな組織にも縛られない。
戦う事しか出来ない者たちが集う場所。兵士達の楽園。
『国境なき軍隊』ミリテールサンフロンティエール。通称MSF。
それが私の所属する部隊。私の居る場所。
私は彼に拾われ、生きる術として戦いの技術を学んだ。そして、戦いに身を投じた。
そこで私は多くの事を学び、経験し、知った。
そして、絶望したのだ。
自分が正義と信じていた組織が偽善を語る組織だったのだと言う事を。
本当の善意を持ち合わせている人なんて、ほんの一欠けらだけなのだと。
だが、それで裏切られたとは思っていない。
そんな組織なのだと期待していただけだったのだ。思ったよりも、その現実には直ぐに慣れた。
所詮、金と地位にしか目のいかない連中はそんなものだ。
そんな組織に、私の兄は殺された。
自分の正義を貫いただけだというのに、その正義を否定され、殺されたのだ。
憎かった。それを聞いたとき、私の中に黒い炎が燃え上がり瞬時に怒りとなったのを今でも忘れられない。忘れる事はできない。
いつか奴等を地獄へと叩き落す。それが私の意思だ。
◇
= 無人世界『ローラシア』 =
地表の約70%が海という自然豊かな無人世界ローラシア。
そこに私達MSFの本拠地がある。
だが、実際そこには基地とも呼べるような場所は無い。あるのは大きめなベースキャンプが一つと、その近くにある小さな山の地下に僅かではあるが施設を造っている。
組織としては正直いえば小さなレジスタンス組織と何も変わりない。
人数も当初から変わらず、大体30人前後でそれぞれが五つの部署に分類されている。
実戦戦闘を行う実戦部隊
技術開発や武器の整備などを行う研究開発班
食料の調達や食事の調理を行う糧食班
医療薬品の製作や負傷者の治療を行う医療班
そして、情報収集などを行う諜報班。
この五つに僅か30人が振り分けられ、人手不足に悩まされつつも日々その役割を果たす。
「おかえり、ティアナァァァ!!さぁこの俺、カズヒラの胸の中にとび
「膝蹴りじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「マブラヴ?!」
・・・若干一名、重役のクセに色々と駄目なヤツが居るが。
「・・・・・・。」
「ふ、副司令官・・・」
「だいじょうび・・・ガクッ」
「カズ。留守の間は大丈夫だったか」
「ああ・・・特に問題は無い」
MSF副司令官、カズヒラ・ミラー。
二枚目の顔とグラサンが特徴の男だが、その腕と能力はボスであるスネークも頼りにしている。
ビジネスに関しては彼が第一人者であり、MSFの実質的運営を任されている。
一体どうして彼がそこまでスネークに信頼を置かれているのかは不明で、二人ともその事に付いては誰にも話していないとの事。
だが互いをかなり信頼しているのだろう。彼ら二人のコンビネーションは素人の目から見ても明らかで、正に以心伝心しているといえる。
・・・性格にかなり難があるが。
「にしてもカズ。そろそろ親ばかを卒業したらどうだ?彼女ももう戦士だ」
「フッ、甘いぞボス。俺はティアナに実が実るまではまだ諦め
「いっぺん死にますか、グラサン」
「すいません」
「・・・・・・。」
「ああ。それとボス。後で話しがある」
「話?」
「そう、今後のMSFの方針についてだ」
「分かった。だが先ずは・・・」
「分かっている。後で研究開発班の連中に渡してくれ」
◇
MSFの表向きの面ともいえるベースキャンプ。
彼らの表向きの活動方針は民間警備及び警護。そして『管理外』の世界の軍事組織の訓練。
しかし裏の顔は『管理外』の軍事組織への兵力供給。または後方支援、敵地潜入による諜報活動などと実質的に管理組織への反抗勢力として存在している。
だが余り公の場には姿を出さず、出たとしても痕跡を消して管理組織のいい加減な情報操作で存在は気づけば消されている。
少数精鋭の部隊ならではの方法だ。
頭数が足りなければそれだけ一人一人の能力をフルに活かせば良い。
そうした事で今まで管理組織から姿を隠せていたのだ。
だから、大胆な手を打つことも出来る。
「で。話ってなんだ、カズ」
「ああ。ま、コーヒーでも飲んでゆっくり話そう。少し長くなるからな」
「・・・なるほど」
任務を終えてひと段落をつけたスネークはベースキャンプの中でカズと二人、コーヒーをお供に彼の言う話をしようとしていた。
コーヒーを出して話をすると言う事はそれだけ長いか重要な話であると言う事。
過去にもなんどかそんな事があったので、スネークはなんとなくではあるが察し付いていた。
「さてと」
「・・・で、話は」
「・・・ボス。いや、スネーク。そろそろ俺たちも『攻勢』に出るべきだと思う」
「・・・。」
「『この世界』でMSFを立ち上げてもう十年近くになる。情報もある程度集まったし、スタッフの指揮も纏まった。若干人数や資材には確かに難がある。だが、今なら」
「奴等の懐に入れる?」
「そうだ。幸いパイプも出来ているし、連中の腹を探る事を始めないと・・・」
「・・・カズ。お前が気にしているのは俺たちか?それとも客か?」
「両方・・・と言いたいが、今はビジネスよりも俺たちの身の危険だ」
「・・・・・・。」
副司令官であるミラーは誰よりもビジネスに熱心な男だ。
彼らがMSFを立ち上げると決めたときも自分たちを雇ってくれるだろう顧客を探しに様々な次元世界を渡り歩いた。
自分達を雇ってくれる人物を見つけてくれると言う事でスネークは賛成していたが、時折彼も思う所あるような発言や行動をするので、全部を納得しているわけではない。
だが、彼の様に信頼の出来る有能な人物はスネークの知る所ではミラーただ一人だ。
その彼がビジネスよりも優先する。それだけ今の状況をよく理解しているということだ。
「思い出して見てくれ。三年前の反管理組織の殲滅作戦を」
「・・・・・・。」
「あの一件で俺たちの組織が奴等の上層部だけじゃなく下の連中にまで知られてしまった。下の連中は馬鹿だ。変な噂を作っては広げてしまう。そうなったら・・・」
「俺たちを武装カルトか何かと決め付けて、血眼になって探すか」
「そうなっては全て遅い。だから」
「先に先手を打つ、か」
「そう言うことだ」
管理組織。彼らはこう呼んでいるが、実際には『時空管理局』という正式な名称がある。
だが、その管理局が管理しない世界では彼らを管理組織と呼ぶのが主流となっており、その他呼び名は様々だ。
管理局は自身を法と秩序の守護者と称しているが、実際には独裁とも遜色ない行いを平然とやっている組織だ。彼らがMSFを武装カルトと呼ぶのなら、彼らは過激派宗教組織と呼べる。
だからその組織への対抗手段として、ミラーはある決断をしたのだ。
「奴等の内情を探り、可能なら重要な情報を持ち帰らせる。つまり」
「奴等の中にスパイを送り込む・・・か」
「そうだ。典型的な方法だが効果的なのは確かだ。敵地に潜入し、味方と偽り情報を聞き出す。潜入での情報収集もいいが、此方の方が長く潜伏できるし色々な情報を集められる」
「だが一体誰を送り込む?俺たちのような組織にそんなヤツは・・・」
「居るだろ。一人、適役が」
「・・・まさか」
「そう。彼女だ」
「・・・・・・。」
スネークとミラーの頭の中には同じ人物が浮かび上がっていた。
管理局に送り込むスパイ。その適役が誰かといわれると、現状のMSFの中ではただ一人しか居ない。
察しづいたスネークは苦い表情で苦いコーヒーを口の中に流し込む。
「だが、これはあくまで俺の推薦だ。無理だというのなら、別の手を考えるが・・・」
「・・・いや。一番効果を期待できるのは確かに彼女を送り込むことだ。だが・・・」
「心配なのは分かる。だが、彼女ももう12だ。チコだってそれを不満にしていたのを覚えているだろ」
「・・・・・・。」
「それに。彼女は一度外の世界を知る必要がある。戦場じゃない、別の世界をだ」
「戦場じゃない、別の世界・・・か」
「彼女は戦いだけでしか生きられない俺たちじゃない。戦い以外にも知ることが沢山ある」
「・・・そうだな」
「それに。どの道、俺たちが行っても上手くいく保障は無い。俺たちはお尋ね者だからな」
「・・・・・・カズ、お前・・・」
「まぁ幸いアイツは顔もいいし、知られても居ないからな」
「・・・・・・。」
そう言って茶化すミラーに対し、スネークは鼻で笑うと先ほどよりも少し苦くなかったような気がするだろうコーヒーを全て喉に流し込むのだった。
◇
その後、そのベースキャンプ内にティアナが姿を見せた。
何でもスネークとミラーの二人が自分に用があると言う事で、諜報班兼ミラーの補佐官でもあるマングースが伝えたのだ。
任務後のシャワーなども終えてひと段落をつけたところだったので休みたいという気持ちもあったが、ティアナは二人に呼ばれると言う事は余程のことなのだと、地下からベースキャンプに繋がる通路を走り、二人の前にへとその幼い顔を見せるのだった。
「失礼します。ティアナです」
「おお、来たか」
「ティアナ、ちょっとコッチに来てくれ」
「・・・はい」
なにがあるのかと警戒するティアナは少し固まった歩き方で二人前に立つ。
まだ十代になったばかりだというのに体つきはしっかりとしており、筋肉も付いている。訓練をしっかりとしているという証拠だ。
しかし、そのしっかりとした身体とは別に表情は安定せず目を左右に動かしたり、口元を動かしたりして気を紛らわそうとする。
「そんなに緊張するな。別にお小言とかじゃないさ」
「・・・では、一体?」
「・・・実はな。お前に・・・ある任務についてもらいたくてな」
「任務ですか」
「ああ。それも、期間はかなり長い、長期間の任務だ」
「・・・・・・。」
「もったいぶっても仕方ない。俺から言うが・・・いいか?」
「構わん」
「あの、任務って一体・・・」
「・・・ティアナ。今回、君には管理組織への潜入、及び敵地での情報収集などの諜報活動を行ってもらいたい」
「えっ・・・!?」
ミラーから語られた任務にティアナは驚く。敵地への潜入は過去になんどか行っているが、その大元に潜入するというのは彼女は過去に経験したことのない任務。しかも、敵地での情報収集と諜報活動が主と言う事は
「・・・スパイ活動をしろ・・・と」
「ま。そう言う事になるな」
「そんな重要な任務、私には・・・」
「大丈夫だ。此方で出来るだけのバックアップはする。君一人でどうにかしろとは言わんさ」
「けど、別に私じゃなくても他に・・・」
自分の実力を過信したりする事はせず、ティアナは謙虚に自分の未熟さを認め断ろうとする。過信や慢心こそ自分の死に直結する。
スネークから教わった事であり、自分でもそれは分かっている。過信した者。慢心した者がどれだけ惨めな最期を遂げたのか。
「生憎、俺はこのベースキャンプでの運営指揮もある。今回の任務は長期間だ。長く部隊を空ける訳にはいかない」
「それに、他のスタッフもやる事が山積みでな。何人かは手の空いているヤツも居るが・・・正直、君より能力やスキルのある人間はココにはボスくらいしか居ない」
「そんな・・・」
「謙虚なのも結構だが、自分の力にそろそろ自信を持ったらどうだ、ティアナ。お前のは少し度が過ぎていると思うぞ」
「・・・・・・。」
そうだ。謙虚すぎては逆に自信が無いとも取れる。
自分に自信がもてない。自分なんかよりも他の誰かの方が優れている。だから自分よりも他の人が良いのではないか。
彼女の態度は他人を気遣っているというよりも自身を責める事と自信の力の無さ、それによる自身の保身に見えるのだ。
「無理にやれとは言わん。だが、俺もカズもお前が一番適任だと思っている」
「ですが・・・」
「嫌なら嫌と言え。最悪、俺が出る」
「スネーク。アンタ今、ココからは離れられないって言ったばかりだろ」
「ああ。まぁ余裕があったりしたら何度か潜入するさ。存外、あそこの警備はザルかもしれんからな」
「・・・ま。それはそれで別にいいんだがな。で、どうするんだ?」
「・・・・・・。」
正直、彼らは延々と回答を待てるほど気長な性格ではない。
常人と似た、あるいはそれよりも少し短い普通の人となんら変わりない。彼女自身もそうだ。長々と回答を待たれるのは大の苦手で最悪腹が立って切れる事もあるだろう。
だから、今の彼女はその回答に追われるのだ。
「嫌なら・・・まぁ他の手が無いと言う訳ではない。だが、実際これが一番効果的な方法だ。敵の生の情報を入手する。それで俺たちMSFの活動は格段に楽になる」
「敵・・・ですか」
「敵と言うよりも敵に回したくない相手と言った方が良いか。俺たちはしがない傭兵部隊だ。大規模な組織に対抗できるほどの力は持っていない」
「だから敵の情報を掴む・・・ですか」
「そう言うことだ」
「・・・・・・。」
一拍置く。そして、ティアナは二人が聞こえる程度の息を吐き、彼らと目をむき合わせた。
決心したという目だった。
「了解です。ですが、一つ条件・・・と言う程ではないですが、お願いがあります」
「何だ」
「仮に奴等の中に潜入できたとして、それ以降の事は私に一任してくれませんか?」
「・・・・・・。」
スネークとカズは目を見合わせる。彼女が自分達に堂々と何かを要求するというのは今まで無かった事だからだ。自分の必要な物や事は自分で何とかする。それが彼らから見た彼女なのだ。
そして、彼女の言葉に驚いていたのかスネークは考えカズは彼女の要求について確認する。
「つまり。行動とかについては口出しするな。と言う事だな?」
「はい。ですが、その代わりとして情報はキチンと報告しますし、必要な情報があればそれを掴んできます」
「・・・だそうだが、どうするスネーク」
「・・・ヤケに嬉しそうだな」
「いやぁ・・・なんか高校大学の進路について話し合う親父と娘みたいでなぁ」
「その子供に愛想つかされたクセに」
「・・・・・・。」
そんな茶番はさておき。
スネークは気を落ち着かせる為にサイドポーチから自身が愛煙している葉巻を取り出す。
何でも彼はタバコよりも葉巻の方が好みらしく、その葉巻の愛煙家でもあるのだ。常に彼の身には葉巻が常備されており、その葉巻に火をつけるライターは何度か故障したり油切れがあったりする程。
彼の愛してやまない物の一つなのだ。
「ふぅ・・・・・・」
「・・・・・・。」
「なるほど。つまり、任務はやるがお前の行動については余り制約するなと。お前はそう言いたいんだな」
「・・・まぁ言えばそう言うことになるかと・・・」
「随分大きく出たな。今までは何処かで引き下がっていたのに」
「それは・・・」
いきなりここまで積極的になったのだ。
流石のスネークも少し驚いた様子で、小さく笑みを見せていた。
今に至るまで、ここまでの積極さを見せた事は無く、彼の言う通りどこかで必ず退いていた。自虐と言うよりも恐怖で怯えていたからだ。
「まぁいい。正直、組織内がどうなっているのか、その詳細を一々言うよりも自由にしてもらった方がかえって分かりやすい」
「・・・!じゃあ」
「但し」
「ッ・・・」
「・・・無理はするなよ。お前は直ぐに無茶をする。今も昔もな」
「あ・・・」
「もうお前の無理で苦労するのはゴメンだ。いいな?」
「・・・・・・はい」
(スネークのヤツ・・・結局アンタも彼女が心配なんじゃないか)
これじゃあどっちが親父代わりなんだか、とミラーは彼の言葉の裏にある意思に呆れつつも彼の事を理解していたからか、何も言わず二人の会話をただ見守っていた。
まるで親子の会話を見守る兄貴的光景だが、それを突っ込む人間は生憎と誰も居ない。
「よし。それじゃあ、カズ。任務の説明を頼む」
「分かった。改めて今回の任務の説明をするぞ」
「はい!」
「今回、ティアナには単身で敵組織へと潜入、諜報活動を行ってもらう。対象組織は『時空管理局』」
「・・・・・・。」
「連中についての情報が少ない俺たちにとって、今回の諜報活動は敵の内情や詳しい組織構成を知ることが出来る絶好の機会だ。可能な限り、敵の情報や資料をかき集めてきて欲しい。大なり小なり、種類については問わない。出来るだけ多くの情報を集めてくるんだ!」
「了解!」
「それと、今回の任務だが期間はかなり長い。こちらが任務が完了したと判断した時が任務完了だからな。場合によっては一年は軽く越すだろう。かつて無いほどの長期の諜報活動だ。何が原因で素性がばれるのかも分からないからな。出来るだけ細心の注意は払ってくれ」
「はい」
「それと。向こうにはウチの仲間が何人か紛れ込んでいる。彼らは諜報員というわけじゃないから、そこ等辺も覚えといてくれ」
「何時の間に・・・」
「前に何度か首都に潜った事があってな。その時に仲間になった。今は向こうの情報だったりをこっちに流してくれている」
「一応向こうから仲間である事を示す合図を伝えている。このポーズと合言葉を一緒にしたのなら、そいつはウチの仲間だ」
ミラーはそう言い、ティアナにその合図であるポーズを見せる。
左手に嬉しいときなどにやるだろうピースサインがあり、それがティアナ同様にMSFの仲間であるという証拠になる。
そして、それと同時に言う合言葉は・・・
「合言葉は『セイ・ピース』」
「・・・勝利の
「ま。そういう事だ。分かったな?」
「はい、了解です」
「以上が任務の説明だ。分からない事があれば、目を盗んで連絡してくれ」
「あ。武器はどうします?」
「現地調達・・・とは言わん。奴等の目を掻い潜って、最低限の装備を送るように手配する」
「後は、本当に向こうで調達してくれ。こっちも流石に前面パックアップは難しいからな」
「・・・・・・ありがとう御座います」
◇
漸く始まる。
雨の降る中、ティアナはベースキャンプから少し離れた場所に一人立っていた。
豪雨ではないが、雨は激しく彼女の身体は一分とせずに全身に雨水が行き渡り、髪からは雨水が滴り落ちていく。
それでも彼女は気にもせずにただジッとその場に立っていた。
あの時と同じだ。あの日、彼に救われた、大切な人を失ったあの日と。
「もう直ぐ・・・」
ティアナは右手で自分の首から掛けられていたペンダントの様な物を取り、そのペンダントに込められた思い、過去を脳裏に浮かべていた。
辛いことが多かった日々。だが、決して苦しいだけではなかった。少なからずの幸福はあった。
だが。それは直ぐに奪われた。あの日を境に
「・・・もう・・・失いたくない・・・」
ならば、今度は私が奪う番だ。
弱者から奪った全てを奪い返す番。
「大丈夫だよ、兄さん・・・仇は、必ず・・・!」
少女は復讐する。
全てを奪った者達に。全てを奪い返す為に。
他が為ではない。己が目的を果たす為に。
冷たい銃を手に持ち、神にその銃口を向ける。
復讐の弾丸が込められた銃爪を少女は引くのだった。