星を司るプロの話   作:零円

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12 進展

 アカデミアの校舎の中を、都姫は1人、黙々と進む。

 ヒデオと別れて暫くしてから、思う所があったのだ。その為、都姫は普段近づかない開発部のある校舎の方へと向かって歩く。

機密性故か古城によく似た作りをしている為の雰囲気作りか、それとも単純にただの趣味か。開発部へ向かう廊下は電灯の少なく窓もないから薄暗い。こういう雰囲気は余り得意では無い都姫は、見た目こそ気丈に振舞っているが、内心震えていた。

 

(アンデット族とか、使ってる人の気がしれませんわね)

 

 何を好き好んで、あんなおどろおどろしいカードを使っているのか。そういうのが好きだという人もいるのは分かるが、苦手な都姫にはさっぱり訳が分からない。

 兄がいれば無理矢理引きずってでも連れてくるのにと考えて、都姫はヒデオとの別れ際に聞いた話を思い出した。総司が単身、エクシーズ次元に向かったという事。恐らくはハートランドシティへ。目当てが光莉だということは、想像するに易かった。

本来であれば、そんな単独先行などできるはずもないのだが、都姫と総司が産まれた明野家は、融合次元内でも有数の資産家であり、特にDMに力を入れているというのうは、融合次元での常識の1つであった。実際アカデミアにも多額の寄付を行っている。兄である総司は、金にものを言わせるタイプでは無いが、それでも発言権は大きい。ワガママ言って恐らく強引に向かったに違いないと都姫は確信していた。頼んでいないのにと、都姫は溜息を1つ。

しかしながら、そんな都姫自身、身に覚えがない訳ではない。自分がオベリスクフォースの小隊隊長に抜擢された理由。その理由が、実力以上に実家からのアカデミアへの寄付の存在が大きな割合を占めていることを知っていた。だからこそきちんと成果を出して、認めさせたかったというのに。自分は光莉に負けた。明野家が金に物を言わせて作らせた、融合次元でオンリーワンのテーマ、『霊獣』デッキを使ったにも関わらず。

 

(いえ、これで光莉様を責めるのはお門違いですわね)

 

 戦わなければよかったと、思わないといえば嘘になるが、戦ってよかったと思う方が大きいこともまた事実。気がつかぬ間に、すっかりお人形にさせられていた事に気が付けたのだから。今後もアカデミアへ忠誠を誓うか、それとも反旗を翻すか。それは自分で決めることが出来るのだ。結果、実家から勘当されようとも悔いはない。

 その判断基準に、まずは光莉の言葉が本当かどうかを調べる為に此処に来たのだ。正直すぐにでも取って返したいのだが、頑張って耐える。

 

「それにしても、問題はお兄様ですね」

 

 恐怖心を少しでも紛らわせる為、都姫はあえて声に出した。

 

「まあ、そう簡単に負けるとは思いませんし、光莉さんも負かした所でどうすることもしないでしょうが」

 

 それでもやはり不安だ。彼が何もせずとも他のレジスタンスのメンバーが何かする可能性は否めないのだから。

 

「……まあ、自業自得ですね」

 

 勝手に突っ走ったのだから、どうにかするのも自分の力であるべきだ。自分の為の行動といえば、都姫としても思うところがないわけではないが、都姫は基本的に総司に辛辣である。

 

「それに、私も目的地に着いてしまいましたから」

 

 足を止め、都姫は扉を見上げる。

 

「お兄様、ご武運を」

 

小さく呟き、都姫はドアノブに手をかけた。

 

***

 

 1枚引き、3枚になった手札を、光莉は見る。伏せカードは『くず鉄のかかし』。今の光莉にとっての生命線たる1枚だが、ぎりぎりの延命措置というに過ぎない。

 とはいえ、そのおかげでライフが残っており、先程の『やりくり上手』で引いたカードからの流れも、思いついた。このまま一気に攻勢へ転ずる。

 

「手札から『フォトン・スラッシャー』を特殊召喚!」

 

 まず出たのは、光刃を持つ戦士。レベル4ながら攻撃力が2100あり、通常召喚出来ない代わりに自分の場にモンスターが居ない場合に特殊召喚出来るという利便性のあるモンスター。また、自分の場に他のモンスターが居る場合、攻撃出来ないデメリットもあるのだが、今はさしたる問題ではない。

 

「そして『星因士 アルタイル』を召喚!」

 

 何ターンか前に、『デネブ』からサーチしてきたモンスターだ。墓地の『テラナイト』を蘇生する効果がある代わりに、このターン『テラナイト』しか攻撃出来ないというデメリットを持つモンスター。

 

「『アルタイル』の効果で『デネブ』を蘇生し『デネブ』の効果で2枚目の『アルタイル』を手札に加える!」

 

 ここに来て、一気に加速する光莉。レベル4のモンスターが3体並んだ今、出すのは不動のエースである。

 

「『アルタイル』『デネブ』『フォトン・スラッシャー』の3体でオーバーレイ!」

 

 3体のモンスターが光球となり、銀河の渦へと飛び込んでいく。

 

「3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!灼熱の夜空に輝く大三角の輝きよ。今こそ我が刃に宿り全ての敵を殲滅せよ!エクシーズ召喚!ランク4『星因子 デルタテロス』!」

 

 銀河が爆ぜ、金色の騎士が現れる。攻撃力は2500。『フォートレス』と同じ数値。

 

「『デルタテロス』の効果発動!エクシーズ素材を1つ取り除いて、場のカードを1枚破壊する!『ギアフレーム』を破壊だ!ブレイザー・レイ!」

「『ギアフレーム』だと!?」

 

 剣の切っ先から発射された光線が、1体目の『ギアフレーム』を破壊する。

 

「続けてバトル!『ギアフレーム』に攻撃!ブレイザー・スラッシュ!」

 

 場に伏せカードはなく、墓地誘発のカードもない。『デルタテロス』の攻撃に『ギアフレーム』は破壊され、700のライフが削られる。

 瞬く間に2体のモンスターを破壊されるが、場には未だ3体のモンスターが居る総司。対して光莉は1体のみ。

 

「カードを伏せて、ターンエンド」

「……俺のターン」

 

 カードを引く。墓地のカードを思い出し、今度こそ総司は手札のカードを発動した。

 

「『貪欲な壺』。『ギアフレーム』2体『ピースキーパー』『レアメタル・ナイト』『レアメタル・ソルジャー』の5枚のデッキに戻し、2枚引く」

 

 3枚に手札を増やしながら、総司は1ターン前に光莉のプレイについて考える。

 

(『フォートレス』を狙って来なかった……。面倒臭いと言ったんだ、効果を知らない訳ではないはず。戦闘破壊時の道連れ効果を警戒した……それなら納得も出来るが)

 

 それでも、効果破壊に関しては道連れに出来ないし、手札を伏せたということは、間違いなく罠カード。ハンデスが嫌なら、先に伏せてから効果を発動すればいいだけだ。

 

(ユニオンをしての攻撃を警戒した。ライフを少しでも詰めに来た。再生効果があるのだから、倒すだけ無駄と判断した。『ギアフレーム』を狙った理由を考えれば、いくつか浮かぶが……)

 

 なにか理由があるのではないか。その予感が頭をよぎる。

 

(となると、問題は新たに伏せたカードか)

 

 あれが、『ミラーフォース』のような逆転につながるカード。だからこそ『フォートレス』を残した可能性。

 

(まあ、こうして深読みさせ、攻撃を躊躇わせるのが目的、という可能性もあるのだがな)

 

 こうして考え込まされた時点で、術中の可能性が高い。

 

(『デルタテロス』が持つリクルート効果を考慮すると、このターンでの決着はほぼ不可能だが)

 

 モンスターは残したくない。3枚に増えた手札、守勢に回れる手札ではなかった。

 

「俺は『融合回収』を発動!墓地に存在する『融合』と融合召喚に使われた素材モンスターを手札に戻す。『レアメタル・レディ』と『融合』を回収!

 そして『融合』発動!『レアメタル・レディ』と『沼地の魔神王』を融合!この時、『魔神王』は融合召喚の素材になる時、融合モンスターの代替素材になれる。俺は『レアメタル・ソルジャー』として扱う!」

「素材の代替モンスター。そんなのまでいるのか」

 

 初見のモンスターに感心する光莉の前方。総司の場に『レアメタル・ナイト』が三度出現する。

 だが、それだけでは止まらない。

 

「起動しろ、『龍の鏡』!」

「『龍の鏡』!?」

「このカードは、場か墓地から融合素材モンスターを除外する事で、エクストラデッキからドラゴン族融合モンスターを特殊召喚する!俺は『レアメタル・ソルジャー』と『レアメタル・レディ』、2体の通常モンスターをゲームから除外!」

「ッ!?」

「原初の力。今、神秘の渦の中交わり、新たな力として顕現しろ!融合召喚!『始祖竜 ワイアーム』!」

 

 直後、雄叫びが響く。4体の機械族モンスターの中央。4体を率い、総司を守るように現れ、真っ向から光莉と相対するそのモンスター。『始祖竜 ワイアーム』。対効果モンスターとしてはこれ以上無い、厄介なモンスターだ。

 気圧されるように、光莉の表情も険しさが増す。

 

「また厄介そうなのが……」

「『ワイアーム』は通常モンスター以外との戦闘では破壊されず、また効果モンスターの効果を受け付けない」

「……」

「バトルだ!行け、『フォートレス』!『デルタテロス』を攻撃しろ!フルナパーム・ショット!」

「……いいぜ、来いよ!?」

 

 相討ち覚悟の『フォートレス』の一撃を前に、光莉は『くず鉄のかかし』を発動しない。

 抵抗するように、『デルタテロス』が刃を振るい、発生した衝撃波と砲弾が、それぞれ『フォートレス』と『デルタテロス』を破壊した。

 

「『フォートレス』の破壊効果と『デルタテロス』のリクルート効果は発動タイミングは同じ!優先権でターンプレイヤーである『フォートレス』の効果が先に発動するぞ!対象を選んでもらおうか!」

「……対象は――『くず鉄のかかし』だ!」

「『デルタテロス』の効果発動!来い、『星因士 ベガ』!」

 

 『フォートレス』が最後のあがきと砲撃を放つ。それが、このターン未発動であった『くず鉄のかかし』を打ち抜いた。爆風に煽られながらも、光莉はデッキから『星因士 ベガ』を守備表示で特殊召喚する。その瞬間、『ベガ』の効果が発動した。

 

「『ベガ』の効果で『アルタイル』を特殊召喚!『アルタイル』の効果で『ベテルギウス』を特殊召喚!」

 

 瞬く間に3体のモンスターを並べる光莉だが、総司の場には残り4体のモンスターがいる。

 

「『レアメタル・ナイト』!『フォートレス』!攻撃しろ!」

 

 3体のモンスターが、光莉のモンスターへと襲い掛かる。対して光莉は、攻撃宣言にもダメージステップにもカードを発動することなく、モンスター3体が破壊された。

 先程以上の爆煙が、光の場を包む中、『ワイアーム』がその鎌首をもたげた。

 

「打ち砕け――!」

 

 ワイアームの口から、爆煙の向こうにいる光莉へ向け、光線が放たれた。

 

***

 

 都姫がドアを開けた先には、当然ながら研究室が広がっていた。

 あちこちに散乱する書類に都姫では何に使うのか想像もつかない計器の数々。あまりにごちゃごちゃしすぎていて、ここで本当に研究が出来るのかと、疑ってしまうほどだ。

 

「こんな人外魔境のような場所だったんですね」

 

 もはや同じ空間にある場所とは思えない散らかりようである。潔癖性のつもりはないが、それでもこれは気になって仕方がない。

 

「勝手に片付けてしまいましょうか」

 

 ぼそりと呟くと「待って待って!」と慌てた声が聞こえてきた。

 

「ちょっと、勝手に触らないでよ!?」

「いえ、触る気はありませんが……あら?」

 

 はてどこからの声だろうかと、都姫はキョロキョロと辺りを探る。

 すると、もぞもぞと書類の山が動き出した。

 

「ヒィ!?」

 

 本気でビビる都姫を前に、書類の山は蠢きながら徐々に書類を体から落としていき、最終的に残ったのは少女が1人。小学生くらいだろうかと、都姫は当たりを付ける。このアカデミアには、元々ただの学園だった頃から初等部から大学まで存在し、今でもそれが生きているため、これくらいの歳の子が居る事自体は不思議ではない。此処が研究室でなければ、だが。

 

「えと……迷子かしら、お嬢ちゃん?」

「違うわ」

 

 精一杯取り繕っての都姫の言葉を、少女は一蹴する。何言ってんだ、このアマと言わんばかりの表情もおまけとばかりについてきた。

 一瞬で会話が途切れる。どうしようかと都姫が悩み出すと、あれ?と少女は首を傾げた。

 

「……あんた、明野都姫よね?」

「え?ええ。そうですわ」

 

 少女に尋ねられ、都姫は首を縦に振る。会った事があるだろうかと都姫は心中で首を傾げた。

 

「成る程。ヒデオから聞いた噂のカード、見に来たってわけね」

 

 いきなり出てきたヒデオの名前に内心で驚きながら、億尾にも見せず都姫は頷く。

 

「――はい。直に見てみようと思いまして。事実か否か」

「事実よ。あたしが作ってるもの」

「……え?」

「来なさい」

 

 一瞬少女の言葉が飲み込めず、首を傾げた都姫に少女が告げた。そのままずんずんと研究室内を進み始める少女を、都姫は慌てて追いかける。

 

「あ、あの!さっきの言葉って」

「言った通りよ。あたしが作ってる――ていうか、開発主任やってんの。ナンバーズ、ダークシンクロ、その他諸々。色々ね」

「……本当ですか?」

「嘘ついてどうすんのよ」

 

 研究室を横断し、重厚な扉の前へ。ピポパと慣れた手つきでパスワードを入力し、指紋認証と網膜認証を経て、その重厚な扉が開く。

 中は、真っ白な空間であった。天井、床、壁、全てが真っ白の空間。その左右の壁にはカードショップにあるようなガラスケースが一面に設置されており、カードが並べられていた。

 

「これ……は……」

「右側がエクシーズ次元。左がシンクロ次元関係ね

 一応説明しておくと、エクシーズの方は、ナンバーズと関連カード。それにランクアップマジックね。といっても、ランクアップに関しては元々エクシーズに存在してるんだけど。そこに融合次元の技術を混ぜてのカオス化が主かしら。カオスナンバーズ、カオスエクシーズ。そっちが本命といってもいいかも。

 シンクロの方は、ダークシンクロにダークチューナー、それに地縛神。後はシンクロメタの機皇帝って感じ。地縛神はシンクロ次元の実在の伝承をもとにしたし、機皇帝もシンクロモンスターを強制的に自軍モンスターに融合させるって考えれば直ぐ出来たんだけど。ダークシンクロとダークチューナーがねー。レベルマイナスって概念が中々」

「……」

 

 色々と脇で説明している少女の言葉を話半分に聞きながら、都姫は部屋の中を眺めていく。

 ヒデオの話が本当だった。それだけでもショックなのに、ナンバリングだけを見れば1から100まで存在している筈のナンバーズモンスターが。隣同士に収納されていたのであろうダークシンクロとダークチューナー一式や、機皇帝が。虫食い状態になっている光景が、都姫には信じがたい光景に見えてならない。

 

「――あの」

「それで――ん?なによ。まだ話してるんだけど」

「何故、カードが揃っていないのでしょうか?」

「ああ。そりゃそうよ。まだ出来ていないカードもあるけど、実戦投入されてるんだから。エクシーズは兎も角、シンクロの方は機皇帝が分かりやすくメタ張ってるお陰で、戦況が更に有利になったみたいね」

「……」

 

 エクシーズもメタ張れればなぁと呟く少女が、都姫には別の人間にしか見えなかった。

 

「……貴女は、何も思わないのですか?」

「何が?」

 

 きょとんと首を傾げる少女。本当に分かっていない事は明らかだった。だからこそ都姫は恐る恐る言葉を告げる。

 

「貴女の作ったカードで、人がカードに封印されているんですよ?」

「その為に作ったんだから、当たり前じゃない」

「何とも、思わないのですか?」

「……思わないわ。思ってたら仕事にならないし」

 

 そう、少女は言い切り、都姫の方をまっすぐ見る。一分の揺らぎすら見せないその瞳に、都姫は気圧された。

 

「普通に生活していれば、一生関わり合いになることなんて無いだろう多次元の人間が、カードになろうが何になろうが、知ったこっちゃない。――多次元だけじゃないわね。私はこの次元の人間にだって同じ考えを持ってるわ」

「……」

「両親にだってね。私の味方はヒデオだけ。興味の対象も同じ。理解してくれた?」

「……なら、私を此処に案内したのは」

「ヒデオが来るかもって言ったから。来たら見せてやれともね。ああ、そうだ」

 

 そういった少女が、カードを1枚、都姫に渡す。黒縁のカード。エクシーズモンスターであり、ナンバーズカードであった。

 

「これもあげるわ。失敗作――という訳じゃないけど、要らないから。効果は優秀だし勿体ないから持ってきなさい」

「……ナンバーズは危険なのでは?」

「大丈夫よ。ナンバーズだけど、恐怖心強化の効果は無いわ。入れる必要も無かったからね。最初はヒデオに上げたんだけど、要らないから別のやつに渡せって言われちゃったの。だから此処に来た記念に持ってきなさい。アンタのデッキなら、出せない事もないでしょ」

「……ありがとう、ございます」

 

 受け取ったカードを、ろくに確認せずエクストラへと入れる都姫。ディスクを腰へ戻す。

 

「――1つ忠告しといてあげる」

 

 ふと、少女が言った。

 

「ヒデオにも聞いたと思うけど、アンタのディスクのデータ。回収されたわ。警戒された可能性があるから、気をつけなさい」

「……あ、はい」

「しっかりしなさいよ」

 

 呆けた様子の都姫に喝を入れて、少女は「さっさと出るわよ」と言って歩き出す。

 保管庫から少女が出る間際、都姫は少女を呼び止めた。

 

「あの」

「何よ」

 

 振り返った、少女へ「どうして」と都姫。

 

「どうして、心配して下さるのですか?」

「……アンタがヒデオの友人だから」

 

 少女は短く、それだけ言った。

 

***

 

 決まったと、総司は考えていた。だからこそ、爆煙が晴れた先に、それでも立っていた光莉に、総司は驚きを隠せなかった。

 

「何故……何故ライフが残っている!?」

 

 ライフは削れず、なぜか手札も1枚増えていた。

 

「『ガード・ブロック』か」

「残念。答えは墓地のカード」

 

 思いついたカードを言うも一蹴された総司。大人しく光莉の墓地のカードを確認し、そのカードを見つけた。

 

「『ブロークン・ブロッカー』……だと!?」

 

 プレイヤーの場にいる守備力が攻撃力より高い守備表示モンスターが戦闘破壊されたとき、デッキから同盟モンスターを2体まで特殊召喚出来る罠カードだ。自爆特攻によるリクルートが行えないが、デッキ圧縮と戦線維持の両方が一気にできるカードである。

 だが、当然その使い勝手の悪さから、使用するデッキを選ぶカードだ。

 

「『ベテルギウス』はその条件を満たしている。俺は『ベテルギウス』が破壊された段階で、デッキから『ベテルギウス』を2体呼んだ。そのうちの1体の効果を使い、墓地から『アルタイル』を回収し、もう1体で最後の攻撃を受け止めたって訳だな」

 

 言う通りなのだろう。光莉の墓地には、3枚の『ベテルギウス』が眠っていた。

 

「……メイン2。『レアメタル・ナイト』の効果を使う」

「攻撃力上昇以外に効果があるのか?」

「このカードをエクストラに戻すことで、『レアメタル・ヴァルキリー』を特殊召喚する。守備表示だ」

「そんなこと出来るなら、さっきもすれば良かったじゃないか」

「特殊召喚したターンは入れ替えられないんだ」

「成る程」

 

 ふむふむと頷く。

 しかしながら。

 

「融合モンスターを入れ替えたり、同じ素材で別のモンスターを融合召喚したり。中々エンターテイナーだな」

「煩い。お前のターンだ」

「……俺のターン!」

 

 ドロー!とカードを引く光莉。引いたカードを見て、残念そうな顔になる。

 その表情を見て、総司は勝利を確信した。

 

「どうやら逆転の一手は引けなかったようだな!これで俺の勝ちだ!」

「ん? ああ、いやいや。逆転出来るどころか、前のターンの時点で勝ち確だったんだけどさ。どうしてもワイアームが倒せないのが残念だなって」

「……は?」

「まあいいか。デッキ的に余裕無いし。オーディエンスも居ないんだ。勝てるときに勝つ!俺は『アルタイル』を召喚!」

 

 このデュエル3度目の『アルタイル』。効果で『シャム』が蘇生し、総司へ1000ポイントのダメージを飛ばす。残りのライフは500ポイント。

 後は『ガガガガンマン』を出して800のダメージを飛ばせば勝ちなのだが、今引いたカード。折角だから、『フォートレス』は倒したい。

 

「『アルタイル』と『シャム』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!星光に導かれし美しき光剣の騎士!エクシーズ召喚!ランク4『輝光子 パラディオス』!」

 

 『トライヴェール』と同じく白銀の、しかし角ばった鎧と光剣がロボのような印象を与える騎士が現れる。召喚に際し、光属性縛りがあるが、光莉のデッキの大半は光属性。さしたる問題ではない。

 

「手札を1枚伏せて、『パラディオス』の効果発動!エクシーズ素材を2つ取り除いて、相手モンスターの効果を無効化し、攻撃力を0にする!俺は『フォートレス』の攻撃力を0にする!」

「ちっ。効果対象になった時点でハンデスが発動するが……手札は0枚か」

「そうだ!くらえ、フォトン・ディバイディング!」

 

 光剣が振られた衝撃が『フォートレス』を襲い、攻撃力を0にする。総司の残りライフは500。攻撃出来ればこれで決まるが、『アルタイル』の制約により『パラディオス』は攻撃出来ない。

 逆に言えば、『パラディオス』でなければ攻撃出来る。

 

「エクストラのモンスター入れ替えが、お前だけの専売特許と思うなよ!『エクシーズ・シフト』を発動!」

 

 発動するのは、光莉の十八番。

 

「俺の場のモンスターエクシーズをリリースして発動でき、リリースしたモンスターと同じランク、属性、種族の別の名前を持つモンスターエクシーズを特殊召喚する!」

 

 光球になった『パラディオス』が、そのまま銀河の渦へと飲み込まれる。

 

「美しき光剣の気高さに惹かれし極寒の大三角!その力を我が刃に宿し、仇なす敵を滅殺しろ!エクシーズ・シフト!ランク4『星輝士 トライヴェール』!」

 

 銀河が爆ぜ、2体目の白銀の騎士。光莉の2体目のエースが姿を現した。

 『トライヴェール』は命ぜられる事なく、レイピアを構える。切っ先は、攻撃力が0となった『フォートレス』の方へ。

 

「バトルだ!『トライヴェール』で攻撃力0になった『フォートレス』に攻撃!気高さ宿し刃を持って、機械兵士に裁きの剣を!ブリザード・スタッブ!」

 

 飛びかかった『トライヴェール』のレイピアが、『フォートレス』を突き刺し、破壊した。巻き起こった爆風に、総司の体が吹き飛ばされる。

 

「おおおおお!?」

 

 ゴロゴロと転がって、瓦礫にガツンと頭をぶつけた。

 

「あ」

 

 光莉が思わず声を上げる中、総司が頭を押さえつつ、足をガタガタとさせながらも立ち上がってきた。

 頭を押さえていた手を、再びディスクへとかける総司。

 

「ま、負けん……俺はぁ……絶対に負け」

 

 ガン!と盛大な音が総司の頭の上から響く。

 暫しの間。直後、総司がうつ伏せに倒れた。受身も取らず顔面から地面へと突っ込む。かなり痛そうだ。

 倒れた総司に視線を向けたまま、光莉は総司へと近づき、息がある事と意識を失っている事を確認してから、総司の腕からデュエルディスクを外した。それを暫く見回して、電源ボタンを漸く見つけてオフにする。

 それで漸く一息ついて、光莉は顔を上げた。どこから持ってきたのか、バットほどの大きさをした木の棒を抱えて持つ瑠璃の姿があった。

 

「計画通りですね、光莉さん!」

「ちょっと危うかったけどな」

 

 ディスクを手にしたまま立ち上がる。

 

「ていうか、あんなふざけた会話、する必要なかっただろうが」

「いやぁ。つい」

「ついって」

「何かこの人の言動を前にしたら、真面目にやってるのが馬鹿らしくなってしまいました」

「……まあ、何かアカデミアの人間って分かってても憎めないよな」

 

 それは都姫にも言えたこと。明野家の気質なのだろうかと、光莉はぼんやり考える。

 

「隼は呼んだ?」

「はい。今、こっちに向かってると思います」

「それじゃあ、合流次第、俺の家に移動するか。アジトに連れて行くわけにもいかないし、探し物が出来た」

「探し物?」

「ああ」

 

 光莉は目を回して倒れている総司へと視線を落とした。

 

「こいつのお陰で、新デッキがようやく頭の中で纏まったからな。その為に必要なカードを家に取りに行く」

「ありますかね?」

「……」

 

 少し考えてみて、火事場泥棒よろしく誰かに持ち出された可能性が否めなかった。

 

「……こればかりは見てみないと何とも言えないなぁ」

 

 そうぼやくしかなかった。

 

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