星を司るプロの話   作:零円

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ちなみに対戦相手のアカデミア女子の名前は「あけの みやび」です。
ふりがなの振り方わからん(´・ω・`)


06 激昂

 ハートランドシティ郊外にあるガソリンスタンド。

 その場所で、星野光莉と明野都姫によるデュエルが行われていた。

 初回の攻防は、4枚の手札を消費しての攻撃を行った光莉に対し、2枚のカードを消費しながらも、2体のモンスターを展開し、光莉のモンスターも同じく2体破壊した都姫。どう見ても状況は、都姫の有利で終わっていた。

 そんな状況ながら、光莉はバトルフェイズを終了。メインフェイズ2に入った。

 

「融合を見せて貰ったんだ。今度はこっちがエクシーズを見せないとな」

「是非」

「つっても、アンタと違って、エースじゃないがな。俺は『ウヌク』と『ベガ』でオーバーレイ!2体の光属性レベル4モンスターでオーバーレイネットワークを構築!神話に名を連ねし月影の化身。現れろ!エクシーズ召喚!ランク4『武神帝-ツクヨミ』!」

 

 『トライヴェール』が出せない時の、光莉のデッキにおけるエクシーズモンスターの切込隊長だ。出す機会はあまり無いのだが、相手の想定以上に優秀だった除去カードを念頭に入れると、少しでもアドバンテージを取り戻せるこのカード以外の選択肢はなかった。

 

「カードを1枚伏せ、エクシーズ素材を取り除き、『ツクヨミ』の効果を発動。手札を全て墓地へ送り、手札が2枚になるようにドローする」

 

 1枚だけ残っていた手札を捨て、2枚ドローする光莉。2枚を見て、そのうちの1枚を追加で伏せる。

 

「ターン終了。そっちの番だ」

 

***

 

「居た、あそこだ」

 

 光莉と都姫がデュエルしているガソリンスタンドから少し離れた場所で、男女入り混じった数名の人影が集結していた。各々が覗き込んでいる先には、光莉がアカデミアの兵士達と対峙している姿がある。

 現在は、1対1のデュエルが行われているようであったが、いつそうでなくなるか、わかったものではない。早く助けに行こうという者達と、暫く様子を見るべきという者達で、意見が分かれた。

 

「彼がレジスタンスに入ってくれれば、大きな戦力になる。ここで失うわけには行かない。早く助けに行くべきだろう」

「いや。彼の力を見極める為にも、ここは様子を見るべきだ。幸い、デュエルしている女以外のアカデミアは、デュエルに参加する様子は無いからな」

「そんなこと分からないだろうが!」

 

 言い争いは、平行線。視線の先では、デュエルが進行していく。

 

「様子を見る」

 

 言い争いを両断するようにそういったのは、紫色のロングコートに身を包み、赤いマフラーとゴーグルで顔を隠した男であった。その一声に、揉めていた全員が押し黙る。

 

「危険と判断し次第、突撃。星野光莉を救出する」

 

 いいな、と問うた男の言葉に、全員は無言で頷き、それぞれが持ち場へと散っていった。

 

***

 

「私のターン、ドローします」

 

 ドローし、都姫の手札が4枚に増える。場には2体のモンスター。伏せてあるカードは無い。

 

(『連契』だけならいざ知らず、『騎襲』まで使う羽目になるとは)

 

 念の為にセットしておいて正解だった、ということだろう。もし伏せていなくてもデュエルに敗北する事はなかったが、それでも大ダメージは避けきれなかった。

 

(『アルタイル』、『ベガ』。展開の要、星野光莉の用いる『テラナイト』デッキのキーカードとして報告は受けていましたが……。それ以上に『シャム』が厄介ですね。出てくるだけで1000ポイントのバーンダメージ。極論、あのモンスターを4回出されれば私の負け)

 

 光莉のデッキには『天架ける星因士』や『フォトン・リード』の他、『リビングデッドの呼び声』のような特殊召喚を行うカードが多数入っていると、報告で聞いていた。たった1体の特殊召喚を起点に、モンスターを並べていくプレイスタイル。モンスターの効果制限が1ターンに1度とある為、展開してきたターン中にモンスターを叩くというのが基本戦術だと、アカデミアの戦術部門の人間からは言われた。

 そしてそれを行えるのは、『連契』を持っている都姫が一番の適任だと考えられたから、こうして直接彼女が送り込まれたのだ。だが正直、気分がいいものではなかった。

 

(私だけ一方的に相手の手の内を知った状態でのデュエル、というのはフェアではありませんから)

 

 正々堂々。あって然るべきその絶対条件が、満たされていないのだ。

 だからこそ光莉の問いにはなるべく答えるようにしようと思った。しかしそれでも満たされないだろうとも考えていた。情報アドバンテージというのは、それだけ重要なのだ。

 

(私としたことが。すっかり相手を軽んじておりました)

 

 気持ちを切り替える。手に入れている情報アド。全てを利用してでも勝ちに行かねばならない相手だ。

 

「どうした?さっさとしろ」

「失礼致しました。私は『霊獣使い レラ』を攻撃表示で召喚します」

 

 召喚したのは、先ほどサーチしたモンスター。新たな『霊獣使い』だ。

 

「このモンスターは召喚に成功した時、墓地の『霊獣』モンスター1体を特殊召喚出来ます。この効果で『精霊獣 ペトルフィン』を守備表示で特殊召喚」

 

 続いて、ピンク色のイルカが現れる。『カンナホーク』程でないにしろ、このモンスターもそこそこ大きかった。

 

「『ペトルフィン』の効果は1ターンに1度、手札の『霊獣』カード1枚を除外することにより効果を発動でき、相手の場のカード1枚を手札に戻せます」

「バウンス能力か。鬱陶しいな」

「コストとして手札から『アペライオ』を除外し、効果発動!『ツクヨミ』を手札に戻します!」

「通さん。カウンター罠『エクシーズ・リフレクト』。モンスターエクシーズを対象とするモンスター効果・魔法・罠、いずれかの発動に対して発動。その効果を無効にして破壊する」

「くっ」

「更に、相手プレイヤーに800ポイントのダメージを与える」

「バーンダメージまで!?」

「喰らえ」

 

 『エクシーズ・リフレクト』から光線が放たれ、都姫を襲う。800ポイントのダメージを受け、残りは2200ポイントまでダウンした。だがそれ以上に、『ペトルフィン』が破壊されたことが痛手である。2体融合を狙い、一気に攻勢に出る予定だったのだ。

 

(きっちり対策されてしまいましたか。しかし、厄介ですね)

 

 『ツクヨミ』の守備力は2300とそこそこ高い。『連契』であれば、対象を取らずに突破出来る。だが、既に1枚使っている以上、相手に警戒をさせる意味でも温存したいのが本音だ。ならば戦闘で突破するしかない。

 

「『カンナホーク』の効果を。私は『アペライオ』をゲームから除外します」

 

 新たな『精霊獣』モンスターをゲームから除外し、準備を整えていく都姫。戦闘で突破する為のモンスターは決まっているが、その為にはまず下準備が必要だ。

 

「私は『レラ』と『カンナホーク』で除外融合!『聖霊獣騎 カンナホーク』を融合召喚します!」

「2体目か」

「全て3枚ずつ積んでおりますので。『聖霊獣騎 カンナホーク』の第1の効果を『レラ』と『アペライオ』を対象に発動。チェーンして第2の効果を。自身をエクストラへ戻し、『レラ』と『カンナホーク』を特殊召喚します。その後、チェーン1の効果で『アペライオ』を墓地へと戻し、デッキから『連契』を手札に加えます」

「面倒だな」

 

 挙句厄介だ。光莉はまだ、『霊獣の連契』に対しての有効な手段を思いつけていない。

 

「それで?もう一度『聖霊獣騎 カンナホーク』を出して、サーチするのか?」

「そうしたいのは山々ですが、貴方を相手にドローソースを残すのは悪手らしいので、『ツクヨミ』を破壊しておきたい所ですね」

「『連契』使えばいいだろ」

「ご冗談を。流石に勿体ないです。だから新しい子で行かせていただきます。

その前に『カンナホーク』の効果で2体目の『アペライオ』を除外します。

では……私は、『レラ』と『カンナホーク』で再び除外融合!『霊獣使い』と『精霊獣』。異なる種の絆紡ぎて、新たな力を呼び起こしなさい!融合召喚!レベル6『聖霊獣騎 アペライオ』!」

 

 先程現れた『レラ』と、除外された『アペライオ』。2体が姿を現す。『アペライオ』は、その鬣が量を増しており、牙の鋭さ、表情の厳しさも際立っている。百獣の王。それにふさわしい風格を携えていた。

 

「戦闘を行います!『聖霊獣騎 アペライオ』!その牙の鋭さを持って、『ツクヨミ』を破壊しなさい!バーニング・ファングバイト!」

 

 少女を乗せた『アペライオ』が、地面を蹴って『ツクヨミ』へと襲いかかった。構わず冷静に。光莉は伏せカードを起動する。

 

「ダメージステップ。速攻魔法『ハーフシャット』を『ツクヨミ』を対象に発動。攻撃力を半分にして、このターン、戦闘では破壊されない」

「防御札でしたか」

 

 迫り来る『アペライオ』の牙を、『ツクヨミ』はその手に持った盾で防ぎ、弾き返す。それでも相応の衝撃波が生まれ、光莉は僅かに眉を顰め、それに耐えた。

 一方、都姫もあまり表情が晴れない。『ツクヨミ』が結局場に残ってしまったからだ。『連契』を使うべきだろうかと悩むも、それなら展開した所を叩けばいいかと、考えを改める。『アペライオ』の融合解除も含めれば、3体まで相手のモンスターは破壊出来るのだから。

 

「カードを1枚伏せ、ターンを終了します」

「俺のターン。ドロー」

 

 1枚引いて、スタンバイフェイズをへてメインフェイズへ。

 

「カードを伏せる。エクシーズ素材を取り除いて、『ツクヨミ』の効果を発動するぞ」

 

 1枚だけの手札を捨て、2枚引く。

 

「さっき伏せた『死者蘇生』を発動。墓地にいる『戦士ラーズ』を蘇生」

「『戦士ラーズ』?そんなカード……ああ、『ツクヨミ』の効果ですね」

「ああ。『ラーズ』は召喚・特殊召喚成功時、デッキから『ラーズ』以外のレベル4以下の戦士族を選択して、デッキトップにおける」

「デッキトップですか。随分と悠長なサーチですね」

「『封印の黄金櫃』やら『カンナホーク』の効果を真面目に使った時よりは早いぞ。俺は『ラーズ』の効果で『星因士 デネブ』をデッキトップへ仕込む。更に、場の『ラーズ』を対象、墓地の『ベガ』をコストとして除外し、魔法カード『モンスター・スロット』を発動」

「成る程」

 

 『モンスター・スロット』は場のモンスターを選択し、同レベルのモンスターを墓地から除外して発動出来る。1枚ドローして、そのモンスターが選択したモンスターと同じレベルなら特殊召喚出来るというカードだ。普通に使っても手札交換は可能。

だが、今回光莉の行ったのは有名なコンボだ。デッキトップを操作出来るカードと併用し、『モンスター・スロット』による展開を狙う。特に『戦士ラーズ』は、自身がレベル4戦士族モンスターという事もあり、戦士族エクシーズないし、シンクロに繋げることが可能だという利点もある。

 

「デッキから1枚ドロー。引いたカードはさっきデッキに仕込んだ『星因士 デネブ』。よって特殊召喚。更に『デネブ』の効果で『星因士 アルタイル』を手札に加える」

「『デネブ』のサーチ効果を使うことで、『モンスター・スロット』の消費分を打ち消した」

 

 結果的に手札2枚のまま、場に2体のモンスターを展開したことになる。おまけにまだ、召喚権は使っていない。

 

「『アルタイル』を召喚。効果で『シャム』を蘇生し、バーンダメージを与える。ピアシング・ショット!」

「くぅ」

 

 都姫は更に1000ポイントのダメージを受け、残り1200。一方の光莉は、ノーダメージのまま。

 

(戦闘では不利だと悟って、即座に効果ダメージに切り替えてきた。場に出されただけで1000ポイントのダメージが飛んでくるのは本当に厄介ですね)

 

 いよいよ猶予が無くなってきた感じだ。少し慌てて、都姫は行動を開始する。

 

「私がバーンダメージを受けた時、『聖霊獣騎 アペライオ』の効果を発動します。自身をエクストラへ戻し、『レラ』と『アペライオ』を特殊召喚!更に、特殊召喚成功時、罠発動『霊獣の連契』!このカードの効果で、『デネブ』『アルタイル』『ラーズ』を破壊します!」

 

 光莉の場の、攻撃表示モンスターが全て破壊され、光莉の場には守備表示の『ツクヨミ』と『シャム』のみが残る。『シャム』と『ツクヨミ』ではエクシーズを行えない。だが。

 

「『ツクヨミ』を攻撃表示に変更してバトル。『カンナホーク』に攻撃しろ」

 

 地面を蹴った『ツクヨミ』が、そのまま『カンナホーク』へと肉迫し、殴り倒す。守備表示であった為、ライフは削れない。

 

「ターンエンド」

 

 手札1枚。場には2体のモンスター。

 

「私のターン。ドロー」

 

 対して、伏せは無いがモンスターは3体。手札も3枚ある都姫。ボードアドバンテージこそほぼ五分だが、手札差は圧倒的である。

 後はライフポイントの差を、今引いたカードで補えればいい。

 

「私は、『魂吸収』を発動します!」

「やっぱ入ってるか」

 

 『非常食』と並び有名なライフゲインカード。汎用性こそ劣るものの、機能すればえげつない回復量を誇る永続魔法『魂吸収』。自分、相手問わず、カードが1枚除外される度に500ポイントずつライフを回復するカードだ。

 霊獣デッキに置いては単純な話、融合1回が1000ポイントのライフ回復に繋がる、ということ。加速し始めれば、一気にライフ差をつけられる。

 

「警戒はしてた。一回こっきりの対策はついさっき引けたばっかだけどな。発動にチェーンして『増殖するG』を手札から捨てる」

「このタイミングで!?」

「ああ。これでこのターン、お前が特殊召喚する度に、俺はカードを1枚ドローする」

「くっ」

 

 本来であれば、『死者蘇生』などのチェーンブロックを組む特殊召喚カードにチェーンして使うべき『増殖するG』。だが、霊獣の除外融合はチェーンブロックを組まない融合だ。融合召喚にチェーンして打てない以上、このタイミングか、『聖霊獣騎』共通効果である融合解除効果のタイミングで打つしかない。

 融合解除効果のタイミングで打てば、確実にカードを1枚はドロー出来、手札交換を行える。これに対し、光莉のプレイはこのターン1枚もドロー出来ず、ディスアドバンテージになる可能性が高い。それでもなお、このタイミングで打った理由。

 

(回復以上に、『連契』のサーチ対策もあるんでしょうね)

 

 都姫のプランとしては、この後はライフを回復しつつ、今まで同様に『聖霊獣騎 カンナホーク』を特殊召喚して『連契』をサーチ。次ターンに備えながら、このターンで削れるだけのライフを削るつもりでいた。

 だが、『聖霊獣騎 カンナホーク』を召喚すれば、ライフを回復出来るし『連契』もサーチ出来るが、光莉に1枚引かれる。それどころか、『聖霊獣騎 カンナホーク』の攻撃力では『ツクヨミ』相手でも『シャム』相手でもステータスが足らない。それを解消するために、融合解除と融合を行えば、更に追加で2枚引かれ、手札は3枚。次のターンのドローを考えれば4枚になる。

 

(このまま何もしないでターンエンド、というのが正しいのでしょうか)

 

 都姫の残り2枚の手札はどちらもモンスター。おまけに片方は特殊召喚でしか場に出せないカードだ。除外ゾーンの肥やしの為に入れたカードだが、『増殖するG』を使われた今では、死に札に近い。相手に1枚引かせてまで出したいカードではないから。

 

(……大人しくモンスターを守備にして耐える、というのが正解だとも思いますが)

 

 それでは次のターン、モンスターが全滅してしまう可能性が高い。『レナ』と『長老』の守備力はそれぞれ2000と1000。もしモンスターを引かれてエクシーズされれば、『レナ』も突破されるだろうから。

 それに『シャム』の存在がどうしてもネックであった。1000ポイントのバーンダメージを飛ばしてくるあのカードを持つ光莉相手に、悠長なことをしていていいのだろうか。

光莉の手札は現在0枚。相手のドロー次第だが、情報によれば光莉のデッキは魔法・罠に傾倒しているという訳ではなく、どちらかといえばモンスター数の方が多い。それに戦士族は『増援』や『戦士の生還』といったカードが多いから、モンスターを出される率は十分過ぎる程にある。

 

(考えが纏まりませんね)

 

 牽制としての意味合いはあるが、基本的にただのドローソースであるはずの『増殖するG』1枚で、まさかここまで動きを止めるハメになるとは思わなかった。

 

(……困った時こそ、王道で行きましょう)

 

 モンスターは一先ず無視。展開し防御を整える。2枚引かれるが、必要経費だ。

 

「私は『精霊獣 ラムペンタ』を召喚します」

 

 4体目の精霊獣である緑色のペンギンが現れた。ペタペタと動き回るその姿に、少し心が癒される。

 

「『ラムペンタ』の効果。1ターンに1度、エクストラから『霊獣』モンスターを1体除外し、そのカードと同じ種族の『霊獣』モンスターをデッキから墓地へと送ります。私は『聖霊獣騎 ペトルフィン』を選択。このカードを除外し、デッキから『ペトルフィン』を墓地へと送ります。カードが除外されたことにより、『魂吸収』の効果でライフを回復。

 そして『ラムペンタ』と『長老』をゲームから除外し、『聖霊獣騎 カンナホーク』を特殊召喚します!」

「効果で1枚ドロー」

「構いません。私も回復します。『聖霊獣騎 カンナホーク』の効果。除外されている『ラムペンタ』と『聖霊獣騎 ペトルフィン』を墓地へと戻し、3枚目の『連契』をサーチ。更に墓地の『カンナホーク』をゲームから除外して、『シルフィード』を守備表示で特殊召喚します。『魂吸収』で回復を」

「『シルフィード』……除外ゾーンの肥やしの為に入れていたのか。特殊召喚により1枚ドロー」

「カードを伏せます。これでターン終了です」

 

 手札は0枚になってしまったが、場には『聖霊獣騎 カンナホーク』、『霊獣使い レラ』、『シルフィード』の3体。融合解除を含めれば4体の壁。しかもセットは『連契』だ。今のままでも2体、融合解除すれば3体まで破壊出来る。更にこのターン、『ラムペンタ』の効果、『カンナホーク』の融合コスト、『シルフィード』の召喚コストの計4枚のカードが除外された事により2000ポイント回復していて、計3200ポイントまでライフは上昇している。

 打てる最善手を、都姫は打ったつもりだ。ドローしても手札3枚。場のモンスターも乏しい光莉。突破は困難であるはずだが。

 

「俺のターン」

 

 光莉は、瞳に微塵のゆらぎも見せず、まっすぐ都姫を見据えていた。

 

「何か?」

 

カードを引かず、自分を見据える光莉に尋ねる都姫。「ああ」と呟き、光莉は切り出す。

 

「いい腕だなと思った。前に戦った名無しなら、『増殖するG』を捨てても、構わず展開して来そうだし、後ろの奴らもそうだ。でもあんたは違った。最低限の召喚で、出来うる最大限の場を整えた。思慮深い、いいデュエリストだ。素直に賞賛出来る」

「あ、ありがとうございます」

 

 唐突な褒め殺しに、僅かに都姫は頬を染める。外見の賞賛されたことは数あれど、デュエルの腕をこうも真っ直ぐ褒められたことは無い。誰も彼も『連契』や『聖霊獣騎』が強いだけというばかりだったから、尚更だ。

 

「アンタなら、話が通じそうだ」

 

 ふと、光莉が切り出した。

 

「何の話でしょうか」

「聞きたいことがある。答えて欲しい」

「……内容によります」

 

 警戒しつつ、そう言った都姫に、構わないと光莉は頷いて、言葉を続けた。

 

「内容は単純だ。なんでお前らアカデミアは、このエクシーズ次元に侵攻してきた。一週間前のあの日、プロフェッサーと名乗ったあの男の言っていた、崇高なる目的ってのは一体何だ。俺達にはそれを知る権利ってのが、あると思うんだが」

「……確かに、そうですね」

 

 常々、幾ら目的の為とは言え、何も言わずに侵攻していいのかと、そう考えることがあった都姫だ。

 プロフェッサーの言葉は至上の物。アカデミアに蔓延しているその思考が、間違えているとは思わない。自分もそうだと思うから。だが、必要な犠牲を払わせる相手に、何の説明も無しというのは、フェアプレーの精神がある都姫には我慢出来ない。

 

「ご説明しましょう。私達の目的を」

 

***

 

 隠れ、状況を見計らっていたレジスタンス達に、衝撃が走る。

 今まで幾ら求めても手に入れられなかった情報。それが今、敵の手によってもたらされようとしていた。一字一句聞き逃すまいと、身を隠したまま、少しずつにじり寄る。

 

「私達アカデミアは世界を1つにするために戦っています」

「世界を1つに?」

 

 まるで複数の世界があるかのような発言だ。同じ事を思ったのか、光莉も眉を顰めた。

 

「お前らの言う融合次元。俺の生まれ育ったエクシーズ次元。他にあるっていうのか」

「はい。もう2つ。シンクロ次元とスタンダード次元が」

「シンクロ? スタンダード?」

 

 ネーミングの通りに捉えるのであれば、シンクロ次元というのはシンクロ召喚とかいう召喚方法、スタンダード次元というのは……ちょっと分からないが、何か特殊な召喚方法でもあるのだろうかと、話を聞きながら考える。

 

「ええ。それら全ての次元を1つにする。そのために、私達アカデミアの戦士は、集められ、鍛えてきました」

「成る程。で? その後どうするつもりなんだ?」

「その後?」

「世界を1つにした後。どうなるんだ?」

「それは……」

 

 そういえば、聞いていない。世界を1つにした結果、プロフェッサーがどうするつもりなのか、都姫は聞いたことがなかった。答えられず、口をつぐむ都姫に対し、「まあ、」と光莉。

 

「お前らが世界を1つにした末に、何をしようとしているのか。何を企んでいるのかはどうでもいい。興味も無い」

 

 言い切って、光莉は指を向ける。ボロボロの、街が広がる。無残に破壊されたビル。街の象徴として中央広場に立っていたタワーも中程で折れかけている程。

 

「その、世界を1つにするって目的の為に、このエクシーズ次元を、ハートランドシティを。ここまで滅茶苦茶にする必要はあったのか?」

「それは……致し方がない犠牲と考えていただけると」

「コラテラルダメージってか? ……くっ、くくく」

 

 あっはっはと大声で笑い始める光莉。笑いながら、その足が給油タンクの1つへと向いた。デュエルアンカーには余裕があり、光莉が歩いても内蔵してあった残りが伸びるのみで都姫は動かない。

 やがて給油タンクの1つまで歩いてきた光莉は、そこで「はぁ」とため息を漏らすと

 

 ズガン!

 

 右拳をそのタンクへと叩きつけた。安全面を確保するため、金属製であるハズのそれが、大きく凹む。

 

「ふざけるなよ」

 

 振り返った光莉は、まさに夜叉であった。

 

「さっきも言ったが、どんな目的だろうと関係無い。

 お前らは、笑いながら街を壊した。人を襲った。平和だったこのハートランドを、一瞬にして戦火の中に叩き込んだ!」

 

 再び拳を、叩きつける。

 

「許せるはずがない。お前らの身勝手のせいで、大切な場所は壊された。大好きな人達は家族を失った悲しみに泣いている」

 

 叩きつける。

 

「挙句なんだ、お前。お前らも。口を開けばプロフェッサー、プロフェッサー。てめぇらの意思は何処にある」

 

 叩きつけて。

 

「プロフェッサーの命令だから。それを免罪符に好き勝手やってんじゃねぇよ、ここはお前らの居場所じゃない」

 

 叩きつけて。

 

「お前らが好き勝手に暴れていい場所じゃない。お前らが何かを奪っていい場所じゃない」

 

 振りかぶって

 

「ただの人形でしかないお前らが、壊していい場所じゃねぇんだよぉおおおおおおおおおおお!」

 

 殴り飛ばす。派手に歪んだスタンドが、数メートル吹っ飛んで、地面に落ちた。火花に引火して、ガソリンが爆発的に炎上を始めた。

 轟々と燃える炎をバックに、ポタポタと右手から血を滴らせて。光莉は都姫と、オベリスクフォースの方を振り返った。

 

「世界を1つに、なんて大層な目的語ってる割に、デュエル、行動、お前らの全てから、夜天の気高さも星々の輝きも見えはしない」

 

 右手を大きく振り、そのひと振りで血を落とす。

 

「魅せてやるよ、融合次元。これが、俺の――エクシーズのデュエルだ!俺のターン!ドロー!」

 

 キレよく、カードを引く光莉。

 

「魔法発動『ナイトショット』!」

「っ」

「セットしてある魔法・罠を選択して発動!そのカードを破壊する!その時相手は、対象になったカードをこのカードにチェーンして発動出来ない!」

 

 『サイクロン』と肩を並べる、魔法・罠除去。いつでも発動出来るというフリーチェーンの強みすらも握り潰すこのカードだが、当然抜け道はある。

 

「チェーンして『聖霊獣騎 カンナホーク』の効果を!コストとして自身をエクストラに戻す事で、除外ゾーンの『霊獣使い』と『精霊獣』を1体ずつ特殊召喚します!この効果にチェーンして『霊獣の連契』を発動!」

 

 それが、都姫の行った間に他のチェーンを挟む事だ。伏せ1枚相手であればほぼ無敵の『ナイトショット』も、こうしてモンスターを挟めれば、対象になったカードを発動出来る。

 

「『連契』の効果!私の場に居る『霊獣』モンスターは『レラ』のみ。よって、モンスターを1体破壊します。私は――」

 

 悩む。『ツクヨミ』を破壊してドローを止めるか、『シャム』を破壊してエクシーズを止めるか。

 一瞬悩み、不確定要素を潰すことを都姫は選んだ。

 

「――『ツクヨミ』を破壊します!」

 

 『レナ』の放った光線が、『ツクヨミ』を破壊する。だが、元よりこのターン。『ナイトショット』を引いた時点で、モンスターが全滅しようと関係なかった。

 

「チェーン2で『長老』と『カンナホーク』を特殊召喚!」

「『ナイトショット』の効果で『連契』を破壊」

 

 これで、都姫を守るカードは場にいるモンスターのみ。

 

「俺は墓地の『神剣-フェニックスブレード』の効果を発動!」

「『フェニックスブレード』!? まさか、それも『ツクヨミ』の効果で!?」

「墓地の『アルタイル』と『ウヌク』をゲームから除外して、このカードを手札に加える!」

「っ!でも!カードの除外により私はライフを回復します」

 

 2枚除外で、1000ポイント。計4200。初期値を上回った。

 

「そして回収した『フェニックスブレード』をコストに『D.D.R』を発動!」

「そんなっ」

 

 『フェニックスブレード』は墓地の戦士族モンスター2体を除外する事で手札に加わる装備魔法だ。攻撃力増加というそれだけ大した効力はないが、ターン内に何度も使えるこのカードは、手札コストとしても除外ゾーンの肥やしとしても優秀である。

 

「『D.D.R』の効果で『アルタイル』を帰還!更に『アルタイル』の効果で『デネブ』を蘇生させる!『デネブ』の効果発動にチェーンして速攻魔法『地獄の暴走召喚』!」

 

 モンスターを大量展開するカード、と言われて1番ないし2番目には出てくるであろう、『地獄の暴走召喚』。攻撃力1500以下のモンスターを特殊召喚し、相手の場に表側表示のモンスターがいなければ発動出来ない制約はあるが、デッキだろうが手札だろうが墓地だろうが、所構わず同名モンスターを引っ張り出す展開力は今なお捨てがたい。

 

「効果でデッキから『デネブ』を2体特殊召喚!更に『デネブ』の効果で『星因士 リゲル』を手札に加える!」

「私は『カンナホーク』を守備表示で特殊召喚します!」

 

 3積みだが、モンスターゾーンの枠が1つしか余っていないため、1体だけの特殊召喚だ。

 だが、モンスターを増やされようと、やはり関係ない。

 

「行くぞ!3体の『デネブ』でオーバーレイ!3体の『テラナイト』モンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

 場に銀河の渦が生まれ、そこに光球となった『デネブ』達が飛び込んでいく。3体で行われるエクシーズ召喚。エースの登場である。

 

「極寒の夜空に輝く大三角の気高さよ!今こそ我が剣に宿り仇なす敵を滅殺しろ!エクシーズ召喚!ランク4『星輝士 トライヴェール』!!」

 

 現れた白銀の騎士。その効果を、報告を受けた都姫は知っていた。

 

「もろとも吹き飛べ!シェイリング・ブリザード!!」

 

 エクシーズ召喚成功時、自身以外の全てのカードを手札に戻す効果。

 都姫のモンスター、そして光莉のモンスターと発動していた『D.D.R』が手札へと戻っていった。

 ディスクから弾き出された都姫のカードが、バラバラと都姫の周囲を舞い、落ちていく。整えたはずの万全が、一瞬にして脆くも朽ち果てる様に、都姫は呆然とした。

 

「『D.D.R』発動!『アルタイル』をコストに『ベガ』を帰還!『ベガ』の効果で『シャム』を特殊召喚!『シャム』の効果発動!ピアシング・ショット!」

「きゃっ」

 

 1000ポイントのバーンダメージを受けるが、既に総攻撃力は4700。都姫のライフを上回っていた。

 

「『リゲル』を召喚!効果の対象は『トライヴェール』!攻撃力を500アップ!」

 

 場には再び、3体のレベル4モンスター。

 

「『リゲル』『シャム』『ベガ』の3体でオーバーレイ!3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!灼熱の夜空に輝く大三角の輝きよ!今こそ我が刃に宿り全ての敵を殲滅せよ!エクシーズ召喚!ランク4『星因子 デルタテロス』!」

 

 銀河の渦に飲まれた光球が、その姿を光莉のエースへと変貌させた。

 こうして場には黄金と白銀の2体の騎士。攻撃力の合計は4600ポイント。

 2体の騎士を従える光莉は、ふぅ、と短く息を吐いてから、都姫を睨めつける。

 

「行け!『デルタテロス』!『トライヴェール』!星光宿りし断罪の刃を持って、愚者に裁きの一閃を!スターレイ・ジャッジメント・クロススラッシュ!」

 

 『デルタテロス』と『トライヴェール』がそれぞれ持った刃を振り上げ、都姫を斬る。

 その一撃で、都姫のライフは0ポイントを刻んだ。

 




3.25
霊獣使い レラの名前ミス修正
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