星を司るプロの話   作:零円

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デュエルの場の状況把握がガバガバすぎて、デュエル書き直してたら一日逃しました。
ユートのデッキも殆ど同時進行で考えてるから、仕方ないね。

因みに、ユートのデッキがカオスですが、TFSP(『ダクリベ』軸謎デッキ)が原因です。俺は悪くねェ。



07 遊斗

 デュエルの勝敗が着くや否や、都姫はその場にへたりこんでしまう。

 一方、光莉は息を荒げつつ、流石に痛みが出てきたのか、右手をひらひらと振っていた。

 その光景を前に、オベリスクフォース達はどうしたものかと考え――光莉に牙を剥く事を選んだ。敗将よりも、手負いの獲物を選ぶ。今まで苦汁を飲まされ続けてきたのだから、当然だ。ニヤニヤと勝ち誇った様子で、ディスクを起動させつつ光莉に近づいていく。男達は知らない。手負いの獣程厄介な相手は居ない。

 

「やる気か?上等。お前ら全員、ここで潰す」

 

 ギロリと、なおも衰えぬ眼光を光らせ、光莉がオベリスクフォースを見据える。既にデッキトップに手が掛かっていて、いつでも引ける状態だ。

 

「そこまでだ!」

 

 だが、オベリスクフォースと光莉がデュエルに入るよりも先に、男の声が周囲に響いた。

 声の方向へ視線を動かせば、紫色のコートを着て、赤いマフラーとゴーグルで顔を隠した男を中心に、鶴翼之陣を取る不審者――レジスタンス達の姿があった。

 囲まれていることに気がついたオベリスクフォース達が、そちらを振り返り、デュエルをする為の姿勢を取る。相対すべく、レジスタンス達も構える中、「辞めなさい」と都姫の声が響いた。

 

「貴方達は、これ以上の恥の上塗りをするおつもりですか」

「なっ!? 何を言っているんだ!?」

「それは私のセリフです。貴方達、今、笑っていましたね」

 

 ゆらりと揺れながら、都姫が立ち上がる。長い髪に顔が隠れ表情は見えないが、まるで幽鬼のようであった。

 

「全力を賭して戦い、消耗した光莉様を大人数で甚振ろうとし、それに愉悦を感じていましたね」

(ん?)

 

 どうにも、先程までの『光莉様』とニュアンスの違いが感じられ、光莉は首を傾げる。

 言いようのない不信感というか不安感というか。妙なもやもやを抱えてしまう。そんな光莉を他所に、都姫は更に言葉を続ける。

 

「恥を知りなさい。それでもアカデミアの戦士ですか」

 

 恐ろしい覇気に、オベリスクフォースの全員がその場に直立した。僅かに体を震わせながら、都姫の言葉を待つ。

 

「撤退します。急ぎなさい」

 

 言われ、大慌てでオベリスクフォースの全員がディスクについた次元転送装置を起動し、融合次元へと帰還する。そして全員が居なくなったタイミングで、俯いたままであった都姫が徐ろに顔を上げた。真っ直ぐ、光莉の目を見据える。光莉には、先程までは見えなかった光が、都姫の瞳の奥に見えた気がした。

 

「申し訳ありませんでした、と、謝るべきなのかもしれません」

 

 唐突に、都姫は光莉にそう告げる。

 

「ですが、私自身。私の行った行為について、過ちを認めるわけにはいきません。貴方の言う通り、私達アカデミアに所属する全員にとって、プロフェッサーの言葉は至上の物ですから。あの人の言った言葉が過ちであったなど、認めるわけにはいきません。人形にだって、プライドがあります」

「そうか。こっちとしても、謝られたって、どうしようもないからな。謝る必要はない」

 

 謝られて、街が直ったり人が帰ってくるのなら兎も角だ。今のエクシーズ次元の住人にとって、アカデミアの行う謝罪は、相手の自己満足にしか思えない。

 

「ですが、貴方の言う言葉も一理あると、私は先程のデュエルで認識させて頂きました」

「あん?」

「貴方が言ったのでしょう。エクシーズのデュエル。気高さと輝き。きちんとこの眼で見させて頂きました」

 

 ありがとうございますと、頭を下げる都姫に、困ったように光莉は頭を掻く。どうにもやりづらくて仕方が無い相手であった。

 

「私は、一度融合次元へ戻ります。そこで、私達の行いを、改めて見定めたいと考えております」

「好きにしろ」

「――見定め、やはりアカデミアに間違いは無いと判断した場合は、再び他の次元へと鍛えたこの力を向けるでしょう」

「その力がこっちに向くようなら、また叩くだけだ」

「ええ。そのときは再び全力にて合間見えましょう。今度は此方が、パーフェクトデュエルを行いたいものです」

「……」

「それではまた。いつかの機会にお会い致しましょう。光莉様」

 

 頭を下げ、次元転送装置を装置させる都姫。そんな都姫へ、少し悩んでから光莉は口を開いた。

 

「デュエル中も言ったが、腕はいい。それは本音だ。お前のデュエルに足りない物はお前自身だと、俺は思う」

「……はい。必ずや、見つけてまいりましょう。それでは」

 

 都姫が姿を消す。周囲を探るも敵の気配はなく、ようやく光莉は肩の力を抜いて、バイクへと歩み寄った。すっかり入れすぎたせいで、タンクからガソリンが漏れいでそうになっていて、慌てて抜いて、栓を閉める。

 

「やべーやべー……」

 

 振り返る。轟々と燃え上がる火は、悪化の一途を辿っていた。

 

「……あー。済まないんだが、消火に手を貸して貰えると凄く助かるんだけど」

 

 どうかな?とレジスタンス達の方を見ると、全員が揃って溜息を漏らし、消火の為に活動を開始した。

 本当に申し訳なくて、土下座しそうな勢いだった。

 

***

 

 幸い、火は1時間程で消し止められ、光莉とレジスタンス達は、場所をレジスタンスのアジトへと移していた。流石に此処へ来る為にバイクを使うことは許されず、一度光莉の隠れ家によってバイクを置き、子ども達と紗乃へもう暫く出掛けるということを告げてからの移動である。

 移動した先のアジトで、光莉は右手の治療を受けながら、赤いマフラーの男――黒咲隼と話をしていた。やたら右手が撫でられているのがどうにも落ち着かないが、消火活動に治療までして貰っている身の上。あまり我が儘は言えない。撫でているのが女性だから、というのも理由の一端にはあるのだが。

 

「……瑠璃。さっさと治療するなら治療しろ」

 

 だが、流石に真面目な話をしようとしている隼は我慢ならず、光莉の治療を勝手でた妹――瑠璃に対し苦言を告げる。「えー」とボヤいた妹を前に、隼のこめかみに青筋が浮かんだ。

 

「早く治療しますね!」

 

 やばいと悟ったのか、瑠璃は先ほどまでの時間が嘘のようにテキパキと光莉の右手の治療を終える。かなりの手際の良さであった。

 

「素人見立てですから、あんまり当てになりませんけど、とりあえず骨は折れていません。ただ罅とかに関しては何とも言えなくて。もう少し時間を置いてみて、あんまり酷く腫れ上がるようなら、添え木したほうがいいかもしれません。後は暫くは安静にして下さいね、星野プロ」

「分かった。ありがとう、黒咲さん」

「……る、瑠璃でいいです」

「そう?じゃあ、ありがとう。瑠璃さん。良かったら俺も、苗字じゃなくて、名前で呼んでくれ。そっちのほうが好きなんだ」

「じゃ、じゃあ。光莉さん」

「うん」

 

 プロ時代に培ったファン向けの笑顔で頷くと、瑠璃は歓声をあげながら、パタパタと走って行った。その背中に手を振って、光莉は隼の方へと向き直った。隼はしかめ顔をしていたが、生憎ファンサービスは脊髄反射である。光莉はその顔を無視して、改めて礼を告げた。

 

「改めて助かったよ。ありがとう」

「いや。気にしなくていい」

 

 相変わらずクールだなぁと思う光莉。

 

「でも、まさか知った顔がレジスタンスのリーダーをしているとは思わなかったな。ていっても、ハートランドチャンピオンシップの準決勝で会ったきりだけど」

「ああ。しかし、覚えられていたとはな」

「アマチュアでかなりの実力を持ってたら、記憶にも残るさ」

 

 かなり白熱したデュエルであった。特殊召喚主体の光莉のデッキに対し、特殊召喚されたモンスターを殲滅する『RR』の攻撃と、高度な魔法・罠での防御術。隼があまりライフアドバンテージを重要視しない決闘者であった為、ギリギリのデュエルをしながらそこを突くことで勝利したのだが、一つボタンをかけ違えれば、決勝の舞台に立っていたのは隼であった事は間違いない。

 もう一度、機会があれば戦いたいと思っていた相手だ。覚えていないはずもない。

 

「それで?話っていうのは――やっぱりレジスタンスに関する事、なのかな?」

「そうだ。是非レジスタンスに入って欲しい。今日のデュエルを見ていた全員の総意だ」

「まあ、そういう話だよね」

 

 困った様子で、光莉は頭を掻く。

 

「あのデュエルをする前だったら、ノーって一蹴するつもりだったんだがな」

 

 溜まりに溜まっていた澱が、先程のデュエル。正確にはメタメタにされた給油マシンのおかげで幾分か晴れ、思考もクリアになった今だと、にべもなく一蹴出来ない光莉。アリだと思うのだ。オベリスクフォースを叩き続けたせいか、少し強い相手を引っ張り出せた。一歩前進したという事実。これからもそれを続けようと考えれば、一人だと限界があるのも事実。

 しかし。

 

「さっき、俺の隠れ家に行った時に見ただろ?俺はあの子達を守らないといけない。守って、あの子達の親を見つけ出さないといけない。何か大きな戦いの時に力を貸してくれ、っていうのならまあいいかなとは思うが、レジスタンスとして常時って言われると、直ぐにいい返事は出来そうにない」

「それなら、ここに連れてくればいい」

 

 それは、光莉も考えたが。

 

「ここは言っちまえば戦場の最前線基地だ。もし何かあった時、いの一番に危険に晒される可能性が高い場所だろ。そこにあいつらを置いておくってのはちょっとな」

「……言い分は分かる」

「そう?」

「だが、俺も奪われた仲間を取り戻す。その為には、少しでも人手も力も必要だ」

「……まぁ、な」

 

 アカデミアという組織は、未だに底が見えない。次元を渡る技術に、攻撃を実体化する技術。どれをとってもエクシーズ次元以上だ。厄介なこと、この上ない。

 

「それに、子ども達の両親だって、アカデミアに捉えられてるかもしれない」

「……」

「だから、ああして戦っていたんだろ」

「……ああ。そうだよ」

 

 隼の言葉に、光莉は短く答える。だが、今ひとつ、煮え切らない。

 

「ねぇねぇ、お兄ちゃん」

「なんだ、瑠璃」

 

 先程部屋を出ていったはずの瑠璃が、こそこそと戻ってきた。

 

「いっそデュエルで決めれば?」

「何?」

「手っ取り早いでしょ?光莉さんが勝ったら、お兄ちゃんが光莉さんの言い分を飲む。お兄ちゃんが勝ったら、光さんがお兄ちゃんの言い分を飲む。それでいいじゃない」

「……成る程」

 

 頷いたのは光莉であった。

 

「分かりやすくていいな。どのみちこのままじゃ平行線だ。どうする?俺は、瑠璃さんのやり方でいいんだけど」

「……そうだな。俺自身が力をつける為にも、少しでも強い相手とデュエルをしたい」

「なら決まりってことで」

 

 その言葉を切っ掛けに、光莉と隼は立ち上がる。だが――。

 

「待った!」

 

 そんな2人を、大声が止めた。

 

***

 

 場所を移して、近くの広場。レジスタンスの仲間達が周囲を警戒する中、光莉と隼――ではなくユートが対峙する。

 

「光莉さん。右手の調子はどうですか?」

「大丈夫。治療が効いてる」

「そうですか。なら良かったです」

「瑠璃さん、ありがとう」

「さっきも言って貰いましたよぉ」

 

 えへへ~と顔に手を当てつつモジモジする瑠璃にを尻目に、手を開閉して右手の調子を再確認しながら光莉はユートの方へと向く。

 

「さてと。アンティについては分かってるか?」

「俺が勝ったら黒咲の要求を星野さんが飲んで、俺が負けたらこっちが星野さんの要求を飲む、でいいんですよね?」

「Exactly. 因みに俺の要求は現状維持。有事の時は力貸すよ程度だ」

「こちらの要求は、星野さんの正式なレジスタンス加入です」

「……なあ。その場合、子ども達はこっちに連れてきていいのか?」

「ああ。構わない」

 

 最後だけ、答えたのはユートではなく隼である。その言葉を受けてふむと納得した様子で頷いた光莉は、ディスクの具合を確かめた。デュエルアンカーなんて付けられたのは初めてだから、調子が気になる所だったのだ。ワイヤーが巻き付いただけで壊れるような、やわな機械ではないが。

 

「じゃあ、始めるか。ハンデってわけじゃないが、先攻か後攻か位は選んでいいぜ」

「なら先攻を貰います」

「分かった」

 

 お互いにディスクにそれを設定して、向き直った。

 自動シャッフルが終わるのを見るや否や、互いにトップから5枚のカードを引いた。

 

「行くぞ!」

「はい!」

 

「「デュエル!!」」

 

「俺の先攻!俺はカードを4枚伏せる!そして『オーバーレイ・スナイパー』を召喚。このカードは召喚成功時に守備表示になる!このままターンエンド!」

「『オーバーレイ・スナイパー』。エクシーズ召喚軸ってのは間違いはなさそうだな」

 

 『オーバーレイ・スナイパー』は攻撃力2000と高い代わりに、召喚時、守備表示になってしまう制約のあるモンスターだ。また、墓地から発動する効果もある。こちらこそ真価といった所だ。

 

「俺のターン。ドロー」

 

 『オーバーレイ・スナイパー』の出た時点でエクシーズ召喚が軸という事は察しても、光莉はユートのデッキを知らない。手札を見下ろし、少し悩む。いきなり手札を使い切ってのガン伏せ。罠が無い、というのはありえないだろう。どうするか悩んで、オーソドックスに様子見、という結論に至る。

 

「俺は『星因士 シャム』を攻撃表示で召喚する」

 

 珍しく『ウヌク』スタートではない光莉。手札には居るのだが、『ウヌク』が破壊された挙句、除外されてしまう『奈落の落とし穴』を警戒したのだ。今の段階で踏んでしまうと、後が続かない。ライフは4000しかないのだから、慎重に。

 

「『シャム』の効果。1000ポイントのダメージを受けてもらう。ピアシング・ショット!」

「っ」

 

 順当に1000ポイントのバーンダメージを与えてから、光莉はバトルフェイズへ突入する。

 

「行け『シャム』!『オーバーレイ・スナイパー』を攻撃しろ」

 

 引き絞られた弓から、矢が放たれる。『オーバーレイ・スナイパー』の守備力は0。これで十分足りるのだ。

 

「そうはさせない。速攻魔法『ドロー・マッスル』!」

「ほう」

「表側守備表示で存在する守備力1000以下のモンスターを対象に発動!カードを1枚引いて、このターン、対象のモンスターは戦闘では破壊されない!」

 

 ユートが手札を増やし、飛んできた矢は『オーバーレイ・スナイパー』が自身の持った銃で叩き落とす。伏せは減らせたが手札は増えた。これでは意味がない。

 

「エクシーズは免れないか。仕方が無い。『シャム』に『神剣-フェニックスブレード』を装備。攻撃力を300上げる。カードを1枚伏せて、ターン終了だ」

「エンドフェイズに永続罠『ソウル・オブ・スタチュー』を発動!このカードは発動後、モンスターカードとなり、特殊召喚される!そして俺のターン、ドロー!」

「罠モンスターか」

 

 カードを引くユート。だが、彼の手札にモンスターカードはない。

 それもそうだ。彼のデッキのほぼ半分は、罠カードで構築されている。ユートの記憶が間違えていなければ、メインデッキに入っているモンスターは7体だ。既に1体出ているから、残りは6体。

 

「行くぞ!俺は『ソウル・オブ・スタチュー』と『オーバーレイ・スナイパー』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!」

 

 現れた黒龍が、産声にも近い雄叫びを上げる。僅かに眉をしかめながら、光莉は黒龍を観察するも、モンスターに見覚えがなかった。

 

(なんだこのドラゴン、初めて見るぞ)

 

 光莉とて、既存のOCG全て記憶している訳ではないが、モンスターエクシーズに関しては、その限りではないし、ランク4であるのなら尚更だ。そもそもこんなにかっこいいカードを、見逃すはずがない。

 

(厄介そうだな)

 

 脳内で呟く光莉。その一方、エクシーズ召喚を行ったユートは、そのままシャムを睨めつける。

 

「バトルだ!行け、『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!『星因士 シャム』を攻撃!反逆のライトニング・ディスオベイ!」

 

 顎下に伸びる2つの刃がバチバチと放電しながら、体全体を使っての特攻攻撃。迫る一撃を前に、弓を捨て『フェニックスブレード』を構える『シャム』。その背中を見ながら、光莉は思案する。

 

(エクシーズ素材を消費しての効果は使ってこないか……。それとも戦闘時の誘発か)

 

 何もせず、受けることを選ぶ光莉。『シャム』が『ダーク・リベリオン』によって破壊され、800ポイントのライフを失った。

 これでバトル終了、そう思った光莉であったが、ユートの攻撃は止まらない。

 

「更に俺は、永続罠『カース・オブ・スタチュー』を発動!」

「ちっ」

「このカードも発動後モンスターカードとなって、場に特殊召喚される!攻撃表示で特殊召喚!

 バトルフェイズ中の特殊召喚により、攻撃権を持っている!行け、『カース・オブ・スタチュー』!」

 

 『ソウル・オブ・スタチュー』の攻撃力は1800。受ければ合計2600ポイントのダメージとなる。

 

(幾ら何でも、それはきつい)

「防がせて貰う。永続罠『強化蘇生』を発動!墓地の『シャム』を守備表示で特殊召喚し、レベルを1、攻守を100ポイント上昇させる!更に、『シャム』の効果で1000ポイントのダメージだ!」

「追撃できないばかりか、ライフまで……」

 

 『シャム』の守備力は意外と高く1800。『強化蘇生』により1900になっている為、『ソウル・オブ・スタチュー』では突破出来ない。

 ユートは大人しくメイン2に入る。

 

「『マジック・プランター』を発動。『ソウル・オブ・スタチュー』をコストに2枚ドロー」

 

 2枚引き、3枚になる手札。その中から2枚取り、それを伏せる。

 

「ターンエンド」

「俺のターン、ドロー」

 

 カードを引く。これで4枚。

 

(彼のデッキは罠モンスターを主体としたランク4軸、と見て間違いないはず。罠モンスターは通常召喚権を使わずにモンスターを展開出来る強みがあるが、魔法・罠除去にも弱く、魔法・罠ゾーンも圧迫する。カードを1枚でも多く伏せるために、反応系よりはフリーチェーンの方が多いかな。面倒だ)

 

 戦ったことのないデッキタイプを相手にしながらも、光莉は冷静だった。

 

「俺も『マジック・プランター』を発動。『強化蘇生』をコストに2枚引く。更に、『強化蘇生』が場を離れたことにより、『シャム』のステータスは元に戻る」

 

 引いたカードを確認し、その内の1枚を発動する。

 

「『増援』を発動。効果で『星因士 ベガ』を手札に加え、そのまま召喚。効果で『星因士 ウヌク』を特殊召喚し、デッキから『星因士 デネブ』を墓地へと送る。

 さて、リカバリーが効くのはこいつだな。俺は『ベガ』『ウヌク』『シャム』の3体でオーバーレイ!3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!灼熱の夜空に輝きし大三角の輝きよ!今こそ我が刃に宿り全ての敵を殲滅せよ!エクシーズ召喚!ランク4『星因子 デルタテロス』!」

 

 光莉のエース。夏の大三角の化身である金色の騎士が現れる。だが、攻撃力は2500と『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』と互角だ。

 

「『デルタテロス』の効果を発動!エクシーズ素材を取り除き、場のカード1枚を破壊出来る!俺は俺から見て右側の伏せカードを選択!撃ち抜け、ブレイザー・レイ!」

「チェーンして、対象になったカードを発動!『幻影騎士団シャドーベイル』!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』の攻撃力と守備力を300ポイント上昇させる!」

「外れか」

 

 剣先より放たれた光線により、『シャドーベイル』のカードが打ち抜かれる。だが、『ダーク・リベリオン』の攻撃力は2800まで上昇。『デルタテロス』を上回った。

 

「関係無いがな!バトル!行け、『デルタテロス』!『ダーク・リベリオン』を切り裂け!ブレイザー・スラッシュ!」

「攻撃だと!? っ、迎え撃て!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!反逆のライトニング・ディスオベイ!」

 

 剣を構えて立ち向かう『デルタテロス』と、切っ先を帯電させて突撃する『ダーク・リベリオン』。

 今にも攻撃がかち合う、その間際、光莉はカードを発動した。

 

「ダメージステップに速攻魔法『禁じられた聖槍』!『ダーク・リベリオン』の攻撃力を800下げる!」

「やっぱりコンバットトリックか!」

 

 空中に現れた槍が『ダーク・リベリオン』を突き刺し、突撃姿勢だったその体勢を崩す。直後に『デルタテロス』の刃が振るわれ、『ダーク・リベリオン』は破壊された。

 

「『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!?」

「バトルは終了。メイン2、俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド」

「まだだ!エンドフェイズに罠発動『エクシーズ・リボーン』『死霊ゾーマ』!『ゾーマ』は発動後モンスターとなり、守備表示で特殊召喚される!そして再び飛び上がれ、『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!」

 

 魔法陣が生まれ、轟ッ!と唸りを上げながら『ダーク・リベリオン』が再び飛翔する。『エクシーズ・リボーン』はそのまま『ダーク・リベリオン』のエクシーズ素材となった。

 

「俺のターン!」

 

 そしてユートのターン。

 

「俺は『ジェネレーション・フォース』を発動!俺の場にモンスターエクシーズが存在する時、デッキから『エクシーズ』と名のつくカード1枚を手札に加える!俺は『エクシーズ・ユニット』を選択!」

「そのカードか……厄介だが、止める術はないな」

「手札に加えた『エクシーズ・ユニット』を『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』に装備!『エクシーズ・ユニット』の効果で、装備モンスターのランク×200ポイント、攻撃力を上昇させる!800ポイントアップさせて、攻撃力は3300だ!」

 

 『デルタテロス』の攻撃力を上回る『ダーク・リベリオン』。だが、上昇値としては心許ない。それに、先程の『聖槍』を受ければ、返しが効かない。だからこそ、ユートは『ダーク・リベリオン』の効果を起動した。

 

「『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』の効果発動!オーバーレイユニットを2つ取り除き、相手の場のモンスター1体を選択!そのモンスターの攻撃力を半分にして、その数値を『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』に加える!」

「なんだと!?」

「オーバーレイユニットになっている『エクシーズ・リボーン』。足りないオーバーレイユニットは装備してある『エクシーズ・ユニット』で代用する!やれ、『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!トリーズン・ディスチャージ!」

 

 衝撃と共に効果を受け、『デルタテロス』の攻撃力が半減し1250ポイントとなり、その数値分『ダーク・リベリオン』の攻撃力が上昇、3750になった。

 

「『死霊ゾーマ』を攻撃表示に変更してバトル!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』で『星輝士 デルタテロス』を攻撃!反逆のライトニング・ディスオベイ!」

 

 光莉の現ライフは3200ポイント。この攻撃を受ければ、残りは700まで減少してしまう。

 

「真っ向から喰らうつもりはない。速攻魔法『ハーフシャット』!『ダーク・リベリオン』の攻撃力を半減させる!」

 

 3750の半分。1875ポイントまで『ダーク・リベリオン』の攻撃力が減少するが、それでも『デルタテロス』よりも高い。帯電しての突撃が『デルタテロス』を貫き、破壊した。1875と1250の差、625のライフが光莉から削られ、2575ポイントとなる。計算がだるい。

 

「この瞬間、『デルタテロス』の効果を発動!このカードが墓地に送られた場合、デッキから『テラナイト』モンスターを特殊召喚出来る!効果で『アルタイル』を特殊召喚!更に『アルタイル』の効果で『デネブ』を蘇生!『デネブ』の効果で2枚目の『アルタイル』を手札に加える!」

「相変わらず、リクルートからの回復力が凄まじいな……。バトル続行!『ゾーマ』で『アルタイル』を攻撃!」

 

 幽霊のように滑るように移動してきた『ゾーマ』が、守備表示の『アルタイル』を手に持った剣で切り裂いた。

 

「メイン2に『一時休戦』を発動」

 

 お互いに1枚ずつ引いて、戦闘ダメージを免れるカード。相手にもドローさせてしまうとは言え、あらゆるダメージを抑えるこのカードは優秀な防御札だ。

 

「更に『マジック・プランター』を発動!『ゾーマ』をコストに2枚ドロー!

……2枚伏せてターンエンド!この瞬間、『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』の攻撃力は、3750ポイントに戻る!」

 

 威嚇するような『ダーク・リベリオン』の咆哮を聞きながら、光莉は状況を観察した。

 

(場には攻撃力3750の『ダーク・リベリオン』と2枚の伏せカードか……。

 どのみち次のターンはダメージを与えられない。だったら、状況を整えるのが先決か)

 

「俺のターン!ドロー!」

 




3.28
変な表現があったので訂正しました。
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