HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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すみません!これが正真正銘本当の完結!そして次回は投稿しますので!


エピソード67

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『ハハハハハハッ!懐かしく、久しいな善神群!再びお前らと戦えることを喜びに思えるぞ!』

 

「アジ・ダハーカ・・・・・・っ!」

 

「どうしてここに、あの介な邪龍が・・・・・っ」

 

『よくも星黎殿を破壊してくれたな。貴様らの命で償ってもらうぞっ!』

 

ギェエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

 

一誠の真上で戦意の姿勢でいるアジ・ダハーカ。アムシュ・スプンタは今まで保っていた余裕の表情が無くなり、警戒と敵意を顔に浮かべ臨戦態勢に入る。スプンタ・マンユはジッと一誠を見続けていた。リーラを守り、アジ・ダハーカを引き連れた目の前の少年、兵藤一誠のことは耳に届いている。

こうして初めて対峙して、兵藤一誠の存在を改めて確認して―――。

 

「―――――っ?」

 

スプンタ・マンユの目にある者と被って見えた。自分でもおかしくなったかと、かつての敵の姿が一誠と被ったのだ。相手は元人間のドラゴン。そんなわけはないと、軽く瞑目して兵藤一誠という少年を視界に入れた。

 

「その者を庇う理由はそれか。だが、これは我々の問題だ。邪魔立ては許さない」

 

「リーラがお前らとどんな関係だったのか、俺には分からないし興味もない。だけどな、俺の家族を目の前でまた殺されるなんて絶対に見過ごすことなんできる訳がないんだよッ!」

 

互いの主張が衝突。これは譲れないと相手を見下さず睨みつける。

 

「彼女は連れて帰らせてもらう。あの移動要塞はそっちの好きにすればいい」

 

「駄目だ。悪は滅ぼさなければならない。その悪魔も破壊の対象者だ」

 

「―――――――――」

 

破壊の対象者。一誠の中で何かがキレた。

 

「お前達の事は知らないが・・・・・」

 

禍々しいオーラを全身に纏い、鎧へと具現化する。

 

「俺の家族を狙う以上。相手は神だろうが魔王だろうが、絶対に許さない」

 

黒と紫が入り乱れた身体の各部分に赤い宝玉がある全身鎧を装着を果たす一誠は躊躇もなかった。

 

「リーラを守る為にお前らを倒すっ!」

 

「やってみろ」

 

左籠手だけ赤い籠手に装着し直して

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!』

 

『Transfer!!!!!』

 

瞬時で赤龍帝の倍加の能力を発動し、『幻想食龍者の鎧(イリュージョンイーター・スケイルメイル)』の能力を高め消滅の力を、腕を横薙ぎに振り払って発動した。

 

「―――なんて禍々しい力だ」

 

迫りくる大地を穿ち消滅し続ける闇の力。一誠が鎧を装着した瞬間にアムシャ・スプンタがいる場所まで移動していたスプンタ・マンユは神剣を振るった。飛ぶ神力が込められた斬撃波はいかなる悪しきものを切り裂く浄化の力。

目の前の闇の力のオーラも例外なく切り裂く―――。

 

「なに?」

 

切り裂くことは叶った。しかし、浄化までは至らずスプンタ・マンユの斬撃は通じなかった。

 

「バカな、主神の攻撃が通じないはずがない!」

 

「私の炎でっ!」

 

女性が力を放つ。手の平から聖なる力が込められている炎の巨大な火炎球を放ち、吹き飛ばすつもりだったのだが、衝突することもなく瞬く間に禍々しいオーラに呑みこまれて消滅する。

 

「なっ!?」

 

「退避!」

 

攻撃が通じないと悟るや一斉に宙へ逃れる。しかし、宙には敵がニヤリと笑みを作って待ち構えていた。

 

『待ちかねたぞ!』

 

アジ・ダハーカの全力の魔法攻撃。千の魔法を駆使する最強の邪龍の筆頭格の魔法の力は惜しみなく発揮した。

 

『星黎殿よ、我らは帰って来たぞ。我らを迎える準備をするのだ!―――我らを忘れたわけではあるまい!』

 

彼の邪龍の問いの叫びは崩壊した星黎殿へ飛ぶ。原型が留まっているとはいえ、盛大に貫かれ損傷が激しい移動要塞がアジ・ダハーカの声に応じるはずもないと考えを覆す光景が起きた。

 

地に墜ちた巨大な移動要塞がゆっくりと浮遊し始め、自己再生を始めた。星黎殿の様を見て険しい表情を浮かべるアムシャ・スプンタ。

 

「・・・・・悪神群の登場に本来の力を発揮し始めたか」

 

「やはり、悪は倒すべきですね」

 

アジ・ダハーカやリーラ、そして一誠を敵として認識し攻撃を構えた。禍々しい消滅の力は消失し、リーラを守るように一誠はスンプタ・マンユ達を見上げ、アジ・ダハーカも狂喜の笑みを浮かべアムシャ・スプンタを見つめる。

 

「早々に倒そう。他の神々がここに駆けつけてこられては面倒だ」

 

「はっ。かしこまりました」

 

それぞれの敵を善神群は見据え、飛び掛かった―――時、真上から影が落ちてきた。両者は何だ、と思いながら影の正体を見て、絶句した。

 

黒い十二枚の翼を生やし、衣服が機能しないほど無残にボロボロで全身も満身創痍、片腕がなく、足が有り得ない方へ折れ曲がっていたリゼヴィムと戦っていたはずの大天使であった。

 

「ハルワタートッ!?」

 

「バカな・・・・・っ」

 

スプンタ・マンユも目を張って味方の凄惨な状態に言葉を失った。ここまで大天使がダメージを負うのは悪神群と戦って以来かつ天使の象徴だった白い翼が完全に黒く染まって・・・・・堕天使と化していた。

 

「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃッ!残念でしたー!俺のゾフィリスちゃんに倒されちゃいました!」

 

笑い声の主と大天使を倒したドラゴンが近づいてきたことで、一誠やスプンタ・マンユの意識はリゼヴィムへ切り替わる。

 

「貴様・・・・・っ!」

 

「・・・・・っ」

 

「善神群とか悪神群とか揃いも揃ってニ天龍みたいに戦うなら、あの星黎殿っていう古代兵器、俺にくれない?くれたらすぐにいなくなるからさー。ね、いいでしょ?」

 

リゼヴィムの言葉はアジ・ダハーカとスプンタ・マンユにとってふざけた発言だと揃って「『断わる!』」と主張した。

 

『あれは貴様みたいな三流魔王が我が物顔で居座らせるほど、安くないわ!』

 

「ムッカッ!?俺は魔王ルシファーの息子なんだぜい!三流はないだろう三流は!魔王の血を引く魔王の中の魔王、それが俺だ!」

 

アジ・ダハーカの発言に食って掛かるリゼヴィム。現魔王と同じく前魔王ルシファーの子供で三流呼ばわりされて黙ってはいられない。

 

『否―――!我が主こそが魔王と名乗る貴様より魔王の中の魔王なのだ!あの星黎殿は、我が主、兵藤一誠が引き継がれるべき魔の巣窟!』

 

「・・・・・なんだと?」

 

「アジ・ダハーカ?」

 

彼の邪龍の言葉はスプンタ・マンユを驚かせることになった。一誠自身も少なからず衝撃を受ける。

 

『我が主、兵藤一誠は―――悪神群の、七大魔王の頂点に立つアンラ・マンユ大魔王の転生者なのだっ!!!!!』

 

 

 

・・・・言ってしまった。明かしてしまった。兵藤一誠の傍にいる理由をアジ・ダハーカが告げてしまった。

 

「・・・・・俺が、魔王の転生者?」

 

『その通りだ我が主。そこにいる我が主が愛しているメイドの本当の正体は俺と同じ悪神群の一人であり大魔王アンラ・マンユの母にして愛人。リーラ・シャルンホルストという名は偽名なのだ。本当の名前は―――ジャヒーだ』

 

一誠はリーラに顔を向けた。本当なのかと顔の部分のマスクを開けて視線で訴えた。

彼の少年からの視線にリーラ・シャルンホルストと偽りの名で生きていた悪魔ジャヒーは。

 

「・・・・・っ」

 

沈黙を貫き、堪え切れないとばかり、バツ悪そうに、申し訳なさそうに一誠から向けられる視線から合わすことなく地面を食い入れるように見つめるばかり。

 

「アンラ・マンユの転生者・・・・・こんな馬鹿な話があるのか?」

 

「そ、そんなこと有り得るはずがっ。奴は、奴は確かに主神の手によって死んだはず!」

 

「彼の魔王の母親が兵藤一誠の傍にいる時点で、奇妙だと思っていましたけれど・・・・・そんな」

 

「死んで尚、亡霊として生きていたとはっ」

 

アムシャ・スプンタは攻撃の矛先を一誠に集中する意識を持ち始める。

 

「・・・・・リーラ」

 

「・・・・・」

 

「俺の傍にいてくれるのは、俺が魔王の転生者だからなのか?俺を愛しているじゃなくて、俺を魔王と重ねて愛していたのか?」

 

答え辛い質問を厳しくリーラに突き付けられる。

 

「答えてくれよ・・・・・リーラ」

 

「っ・・・・・」

 

心が不安で支配されそうになる。自分を自分として見てくれず、別の者として今まで傍にいて、愛していたのだと言われれば一誠の精神はどうなるか、想像難くない。

 

「・・・・・申し訳、ございません。私は―――」

 

「―――――っ!?」

 

愕然と目を張った一誠は身体にも衝撃が襲った。

 

「―――例え、転生者だろうとあの魔王の関わりがあるならば」

 

「悪は全て滅ぼさなければならない」

 

「恨むなら、己の出生を恨んでください」

 

背後から、一誠の不意を突き剣で串刺しにしたアムシャ・スプンタ。

 

「一誠様っ!」

 

『貴様らぁっ!?』

 

リーラは叫び、アジ・ダハーカは怒りで魔法を発動して襲いかかった。迫る邪龍を察しながらあろうことか、一誠をそのままスプンタ・マンユのところまで連行した。

 

「主神様、連れてまいりました」

 

『スプンタ・マンユッ、善神群とは思えないことをしてくれるなっ・・・・・!』

 

「次はお前らを破壊するそこで大人しく見ていろ」

 

一誠の首を鷲掴みにして目と合うように持ち上げた。口の端から血を流す若いドラゴンの顔を覗き込むスプンタ・マンユは眉間を皺に寄せる。大魔王の顔とは全く似ても似つかない、感じる力も違う。だが、悪神群の配下だった者がともに慕っていることで偶然とは思えない。

 

「俺も含めお前自身も予想だにしなかった事実だったようだな。まさか、アンラ・マンユの転生者だと微塵も思わなかっただろう」

 

「ぐ、う・・・・・っ」

 

「いくら転生者とはいえ、見逃すわけにはいかない。それだけ悪神群と我々善神群の戦いは凄まじかったのだ。そちらの神話の世界、世界の覇権を狙うなどとくだらない戦争をしてきた第三勢力戦争よりもな」

 

腕力に込められる力は少しずつ増し、一誠は苦し紛れにスプンタ・マンユの手首を掴み消滅の力が込めた拳で殴りかかった。

当たれば即死の危険な力を宿したその一撃を目の当たりにしても。

 

「無駄だ」

 

輪後光と翼が光り輝き、消滅の力を浄化し尽くす。鎧もその光に浴びることで消滅のオーラは消え、鎧が砕け崩れ落ちた。身に起きた現象に心中驚き、一誠の中に宿っているドラゴンも驚愕しただろう。

 

「先ほどの斬撃とは比較にならない神光だ。至近距離で浴びれば魔の力は浄化され滅する。お前が悪魔か本当に魔王だったらこの光を浴びただけで凄まじい激痛か、塵となって消滅していただろう。―――己がドラゴンであることを幸運に思え」

 

ゾロアスター教の主神と神話に関する歴史にも載っているスプンタ・マンユ。初めて彼の神の力を知り、一誠は苦しみながらも口角を上げ笑みを浮かべた。

 

「ははは・・・・・やっぱり、世界は凄いな・・・・・色んな神さまを見てきたけど、お前みたいな神は初めてだ。俺の中で最強の力が、効かないなんて・・・・・驚きを通り越して清々しい気分だ。これで、俺はもっと強くなる修行をしなくちゃいけないじゃないか」

 

「修行だと?今死ぬお前にその時間は無い」

 

「・・・・・神の力、か」

 

声を殺す風に小さな声が動く口から洩れ、スプンタ・マンユは怪訝な表情を浮かべ出す。

 

「―――初めて神の力を奪ったけどどんな感じだろうなぁ」

 

皮肉なことが起きた。世の中の事象は善と悪の二に分類されてきた。アンラ・マンユの悪とスプンタ・マンユの善、この二つが分離、それぞれの神と魔王が選んだことで世界は善悪の概念と認識が生まれた。

 

「・・・・・なん、だと」

 

だと言うのに、アンラ・マンユの転生者と認識された一誠にスプンタ・マンユは驚きを隠せなかった。

 

―――己の力を再現したかのように一誠は青白い天使化をした。これだけなら変わらない姿なのだが、背中に生えている十二枚の青白い翼の他に青白い輪後光が展開されているのだった。

 

「異世界の神から得た力にお前の力・・・・・。この力をフルに使用すれば精々5秒程度ってとこか」

 

「―――っ!?」

 

遥か上空から青白い稲妻が轟きながら一誠達がいる地に落下する。その稲妻はスプンタ・マンユの力が宿っていた。アムシャ・スプンタは目を大きく見張り、一誠から反射的に放たれた矢のごとく後退しながらも己の力を奪われた事実にスプンタ・マンユは忌々しげに顔を歪め一誠を睨む。

 

「アンラ・マンユの転生者が・・・・・っ!」

 

「俺は兵藤一誠だ!」

 

両者が溝を作ったように離れ、対峙する。

 

『我が主!流石だなっ!』

 

「一誠様・・・・・」

 

背中の輪後光が消え、青白い天使として戻った一誠に称賛するアジ・ダハーカと不安そうな表情を浮かべるリーラ。

 

「うひゃひゃひゃひゃっ!坊ちゃん、すっげー!神の力奪ってやんの!でもでも、俺達の存在を忘れちゃ困るってもんだぜぃ!こっから俺達も大暴れだぜラードゥンくんとゾフィリス!」

 

『お相手を願いますよ』

 

静観していた第三者のリゼヴィム達も動きだす。一誠とスプンタ・マンユはリゼヴィムを一瞥し、お互い二人の敵を同時に相手をしなければならないと言う状態と状況になった。

 

「断わられる前提での提案だけど、あの悪魔は共通の敵だから一緒に倒すなんて考えは?」

 

「あるわけがない。お前達諸共我々の神威の光のもとで浄化してくれる」

 

「残念でした坊ちゃん!因みに俺はカモンだぜ?どっちか俺と組んで片方の敵と戦ってみなーい?」

 

「「寝言は寝て言え」」

 

ここで三つ巴の戦いが発展した。誰もがそう思い、機を見計らって攻撃を仕掛けようと考えた。

 

「両者、そこまでにしてほしいかな」

 

「HAHAHAHA!おいおい、滅茶苦茶暴れてくれたなお前ら」

 

この場に二人の人物が前触れもなく現れた。一人は五分刈りの頭に、丸レンズのサングラス、アロハシャツ、首には数珠というラフな格好をしている。もう一人は外見は青光りする黒髪の持ち主で、歳は14、5ほどに見える端正な顔立ちの美少年。

 

「・・・・・破壊神シヴァ、インドラ・・・・・」

 

『ほう・・・・・これはまた懐かしい者が揃ったな。かつての仲間よ』

 

「・・・・・」

 

意味深な視線をスプンタ・マンユ、アジ・ダハーカ、リーラは現れた二柱の神に送る。この場に現れたインド神話の神に注目をして、戦意は和らぎ警戒が強まる。

 

「HYE!そこのスプンタ。俺達に了承もなくここで暴れんじゃねーよ。人間どもがもうすぐここに来ることをまだ気付かないのかテメーは」

 

「双方、矛を収めてくれないか。ああ、魔王の子息は逃げないで大人しく捕まって欲しいぐらいだがどうだ?」

 

戦いの収拾をしに来たシヴァと帝釈天に対して―――。

 

「邪魔をするな。この地で戦場となってしまったのは非がないわけではないが、我々神話の者同士の問題だ。貴様等もかつての七大魔王の一人として葬ってやろうか」

 

「嫌だねー嫌だねー!神が二人も揃って俺達の喧嘩を止めるなんてさ!せっかくの面白可笑しい三つ巴の戦いができそうだったのに!もう帰る!」

 

神が反抗的に、悪魔は状況が不利になったことで見逃される形で逃走した。

 

「おい聞いたかぁ?俺達も標的にされちまいそうだぜぇ?」

 

「随分と懐かしいことだね。でも、今は神の一人の立場としてここにいるのだが」

 

二人は当然のように一誠の前に立ち、スプンタ・マンユとアムシャ・スプンタと対峙した。

 

「でてかねーと、正当防衛としてテメーらを雷の餌食にしてやんぞ」

 

「お互い神同士、破壊神の力を味わってみるか?」

 

「―――――っ」

 

神としての威厳と威圧、一誠は初めて神のレベルの高さ、神がいる頂との差を感じた。まだまだ到底及ばない、特にこの二人に追い付くのは・・・・・いや、足元にも及ぶほどになるのはどのぐらい先のことになるだろうか。スプンタ・マンユとは違う神の質を肌で感じるこの経験は貴重だと感じた。

 

「神はともかく、人間までここに来られては・・・・・」

 

「主神様。如何致します。敵を前にこの場から去るなど遺憾なのですが」

 

アムシャ・スプンタは一誠達に対して敵意を失っておらず、スプンタ・マンユの戦闘続行の意志があればシヴァと帝釈天だろうと戦い、標的の抹殺を行うだろう。

 

しかし、答えを聞く前にこの場まで聞こえる騒音が空から聞こえ出す。見上げれば、戦闘機が通り過ぎ、少し遅れ兵隊を乗せた戦闘ヘリまで現れた。

 

「・・・・・我々は人類を守護する存在。ここで戦闘をすれば守るべき人類まで被害が及ぶ。―――誠に遺憾ながらここは退く」

 

「「「「「はっ」」」」」

 

「ハルワタートは深く残念ながら堕天してしまった・・・・・もはや我々の領域に足を踏み入れることはできない」

 

「・・・・・っ」

 

一人の女性が悲しみと怒りが宿った目を一誠に向けた。お前のせいだ、と訴えられた感じを覚える一誠は目を細める。

 

「―――良く聞け、アンラ・マンユの転生者」

 

スプンタ・マンユは一誠に真っ直ぐ向かって発した。

 

「我々はお前の存在を絶対に忘れない、監視もするだろう。お前という存在はこの世界にいてはならないのだ。我々が存在しているこの現実世界は、太古から善神と悪神の被造物が混じり合い、互いに戦い合う『善と悪との戦場』となっている。いずれ世界の終末の日に最後の審判を下し、善なるものと悪しきものを再び分離する戦いが訪れる。その時まで力を―――」

 

「嫌だね」

 

彼の神の言葉を拒否の言葉で遮った。

 

「俺は兵藤一誠って言うグレートレッドとオーフィスの力に寄って甦った転生ドラゴンだ。俺が、アンラ・マンユの転生者だって言われても実感しないし、実際その魔王の転生者だなんてレッテル、俺はどうでもいいんだよ。

俺は俺だ!世界を巻きこむような戦争や戦いは自分から起こす気もないしする気もない。俺は家族と一緒に生きていらればそれで十分だ!」

 

「・・・・・」

 

「だけど、お前らが俺の家族に手を出すって言うなら俺は許さない。お前らの望み通りに戦ってやる。かかってこい!」

 

腕を組んで胸を張って言い切ったと態度をする一誠。神相手に啖呵を切る。帝釈天が愉快そうに意味深な笑みを浮かべ、シヴァは微笑ましく見守った。スプンタ・マンユは―――この瞬間一誠をアンラ・マンユと確かに被って見えた。

 

「・・・・・兵藤一誠・・・・・その名前は我が胸に、魂にお前の存在を刻もう。いつか必ず訪れる戦いの相手となる者の名を」

 

「俺もお前という神を死ぬまで忘れない。いい経験も得れた。感謝するよスプンタ・マンユ」

 

二人の会話はそこで途切れ、スプンタ・マンユとアムシャ・スプンタは眩い閃光に包まれ、空の彼方へと飛んで行く。これで全てが終わった。一誠はリーラを守り切り、新たな事実を知った。

 

「・・・・・アンラ・マンユの転生者、か。とんでもない存在だったんだね君は」

 

「HAHAHAHAッ!坊主、お前一体どんだけ異常な存在になろうとしてんだよおもしれぇー!」

 

バシバシと帝釈天に背中を叩かれ、苦笑いを浮かべる一誠の目に再生し切った星黎殿が目と鼻の先まで近づいてきて、地面が隆起し階段へと形になり星黎殿の方まで伸びた。

 

「あの移動要塞も君を迎え入れるようだ」

 

「かつての主の宝具でもあるからな。俺が欲しいぐらいだぜ」

 

「・・・・・本当に、俺ってアンラ・マンユの転生者なんだな」

 

『何を言うか。ジャヒーがお前の傍にいる時点でお前はそう言う星のもとで生まれたのだと言っているようなものだ』

 

星黎殿に迎え入れられている光景に何とも言えない気分で、アジ・ダハーカの言葉を思い出してリーラに振り返った。

 

「リーラ、俺はリーラにとってどんな存在だ?やっぱり・・・・・アンラ・マンユの転生者?」

 

「・・・・・」

 

愛おしい少年の問いにリーラは今度こそ答えを口に出そうと意を決した。

 

「・・・・・申し訳ございません。私は、今日まであなた様を我が主の、私の息子のアンラ・マンユの転生者として傍にいて生き続けました。兵藤一誠としてではなく、アンラ・マンユの転生者として見守っていました」

 

「・・・・・」

 

「あなた様を愛していたのも息子のアンラ・マンユとしてでした。あなた様もアンラ・マンユの転生者ですので」

 

偽りのないリーラの本音。静かに心から受け止め、同時に寂しさを覚えた。兵藤一誠としてではなくかつての息子が転生者として誕生した者と愛し愛されることで愛を、絆を深めていたことに。

 

「・・・・・ですが、もしも・・・・・もしもです」

 

その場に跪き、頭を垂らした。

 

「今日、私はアンラ・マンユの転生者としてではなく、兵藤一誠として守られました。深く、感謝の念を抱き、喜びを感じました」

 

リーラは深く懇願した。今までの言動の懺悔と願望と一緒に。

 

「もしも許されるなら、私はあなたに対して永遠の愛の誓いを、絶対服従の誓いを立てたい。息子のアンラ・マンユの転生者ではなく、一人の兵藤一誠として・・・・・」

 

「・・・・・」

 

静かに耳を傾ける彼女の言葉を、無表情で見下ろし続け聞いた。今までの言動は全て偽りである事を凄まじいショックを覚えた。あの温かい笑顔や優しい言葉も全て自分に向けたものではない。怒りを通り越して虚無感を覚えてしまった。だが、リーラを守りたかったのは事実。家族の事情や秘密まで知ることはできないし喋ってくれるまで待つつもりでもあった。

 

この瞬間からもう一度最初からやり直しを求めているリーラ・シャルンホルスト、否ジャヒー。

一誠は・・・・・深く吐いた。

 

「なあ、訊ねていいか?お前は何て名前だ?」

 

彼の少年の問いに、彼女は直ぐに答えた。

 

「リーラ・シャルンホルストです」

 

「・・・・・なら、答えはもう決まっているだろう」

 

彼女から踵を返して星黎殿に繋がっている階段を一歩踏んだ。

 

「俺達の家に帰ろう、リーラ。皆が心配してる」

 

「―――――っ!?」

 

顔を上げた先には、威風堂々とした歩みで階段を登っていく兵藤一誠の姿。その姿は―――アンラ・マンユと同じだった。懐かしくも見えてしまった。だが、彼女の目は瞑目して目を開けた瞬間は、兵藤一誠として琥珀の瞳の視界に入れ、立ち上がった。

 

「はいっ。一誠様っ!」

 

 

 

「・・・・・いやぁ、思いっきり懐かしく感じている俺がいるんだけど」

 

「そうだね。もう歳かな・・・・・」

 

『クッ・・・・・!目から大量の汗が・・・・・っ!』

 

付き添うように歩く二人を、二柱と一匹が何時までも生温かく見守り続けていた。

 

 

 

「主神様・・・・・今後の兵藤一誠の活動を監視する者は如何致しましょう」

 

「それは俺の方で決めている。まず、注目すべきはルシファーの子息の行動だ。ハルワタートを倒したあのドラゴン、警戒するに値する。野放しにすれば人類の害となる」

 

「では、我々は独自でルシファーの子息を追うのですね?」

 

「他の神々が何を言おうと無視しろ。我々の存在理由はただ一つ」

 

「はっ!悪しきなき『善の王国』の建設!いずれ、この世の全ての悪しきものを滅ぼしましょうぞスプンタ・マンユ様!」

 

 

 

「・・・・・イッセーの奴が、善神群の連中に喧嘩を売ったぁー!?」

 

『・・・・・ああ、誠に信じられないが、彼はアンラ・マンユの転生者だとも聞いた』

 

「はっ!?それこそ冗談過ぎるだろうが!魔王の中の魔王だぞ、あの男は!」

 

『ミカエル殿から聞けば、他神話体系の神々もこの話で盛り上がっているそうだ。いずれ訪れる世界の終末にイッセー君と善神群が戦争をするだろうと疑いの余地もなさそうだとか』

 

「・・・・・もう、俺はイッセーの奴が恐ろし過ぎてしばらく顔をみたくないかも」

 

『ふふっ。堕天使の総督も言葉も出ないか』

 

「てか、お前何だか嬉しそうだな。さっきから顔が笑みで固まっているぞ」

 

『うむ。あの大魔王の転生者ならばリアスを嫁がせる相手としてまた格が上がったと嬉しいのだよ。本人は自分は自分だというだろうけど、悪魔の世界では放っておけない存在だ彼は』

 

「五大魔王が・・・・・いや、冥界の上層部どんな反応するか想像できねえぞ?」

 

『手を出すならば、私はグレモリー家の全てを投げ打ってでも守るよ。あの子は、誰にも縛られず自由に生きる方が似合っているからね』

 

 

インドで起きた事件は瞬く間に収束し事無き終えてから数日が経った。

リーラが行方を暗ましてからも同じ日数で残された面々は、心配と不安を胸に引き絞められながらも日々を過ごしたそんなとある日の事。インターホンが鳴り、メイドとして咲夜が応対する。

 

「はい、どちらさまですか」

 

『―――久し振り、咲夜』

 

男の声。それも咲夜が今、一番聞きたく会いたかった者の声だった。何かに弾かれたように扉を開けてすぐ見つけた。リーラとオーフィス、クロウ・クルワッハに見知らぬ女性も一人いたが、それよりも目立つ真紅の髪を生やしている若い少年が目に飛び込んだ。

 

「ただいま・・・・・咲夜」

 

「―――やっと、帰ってきて下さったのですね。・・・・・お帰りなさいませっ!」

 

後に他の家族達も咲夜と同じように歓喜で抱き絞め、心から迎え入れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――(完)―――

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