HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード16

「フハハハ!九鬼英雄降臨である!」

 

「同じく九鬼揚羽顕現である!」

 

「・・・・・リーラさん、誰?」

 

「九鬼家の者かと思います一誠さま」

 

「ふーん、なんかヘリコプターがいっぱい飛んでいてうるさいね。それに人が多いし

何をしに来たんだろう?」

 

バラバラと上空に騒音を川神院に轟かせる無数のヘリに川神院を囲む執事服を身に包む従者たち。

そして額に☓の傷跡がある少年と少女や両親らしき男性と女性が登場する。

 

「おーおー、なんだなんだぁ?随分と参拝客が多いじゃねぇか」

 

「釈迦堂先生、鍛練の時間だけどこれじゃできないんじゃないの?」

 

「あー、確かにこれはできやしねぇな。今日の鍛練は休みってことで自由にして良いぞ」

 

「はーい」と一誠は返事をしたその時。

 

「あー、ここに兵藤家の人間がいると聞いたがどいつだ?」

 

額に☓の傷跡がある男性がキョロキョロと求人を探す仕草をする。

 

「あなたは?」

 

「ん?俺は食い財閥現当主の九鬼帝だ。うちの部下が迷惑を掛けたみたいだからよ。

謝りにに来たんだわ」

 

「謝りに・・・・・それにしてはそのような振る舞い方ではないとお見受けします」

 

「それはすまんな。俺はこう言う奴で堅いことが苦手なんだわ」

 

「そうですか。そのような者は身近におりますのでその気持ちは分からなくはございません」

 

「おっ、そうなのか?そいつは嬉しいねぇ。是非とも会ってみたいもんだ」

 

朗らかに笑い「でだ」と話を言い続ける。

 

「兵藤一誠ってお前で良いんだな?」

 

「・・・・・」

 

尻尾があれば毛と共に逆立たせて威嚇している様子を思わせる一誠に帝は頬を掻く。

 

「物凄く警戒されてんなこりゃ。いや、本当にうちの部下が失礼なことをしてしまって

本当に申し訳ない」

 

腰を折って合掌するように両手を合わせて謝罪する帝。女性も静かに恭しくお辞儀をする。

二人の謝罪の念を感じたのか、一誠は言い放った。

 

「貸し、一つだよ」

 

「兵藤家の貸しはデケェな。うちの企業を潰されないなら何だって願いを

叶えるつもりで来たんだがな」

 

苦笑を浮かべる帝は安堵で胸を撫で下ろし、指をパチンとはじき鳴らした瞬間。

帝の指示による呼応の行動か手に大小様々な箱が持って現れた多くの従者たちが

次々と重ねて置いていく。

 

「いらないと言われたらしいが、こいつは謝罪の込めたプレゼントとお近づきの印と

して用意させてもらった。それと俺の息子と娘と遊んではくれないか?」

 

「・・・・・その子たちと?」

 

「おう、きっとお前にとって良い友達になると俺は信じてるぜ。

それじゃ、俺は仕事で行かないといけない。後のことはクラウディオに任せる。じゃあな」

 

嵐のように現れては嵐のように去る。大量の箱を置いて子息と令嬢、一人の執事を残して去って。

 

「・・・・・リーラさん、どうすればいい?」

 

「あの方の飄々とした態度に察するとあまりいい思いではありません・・・・・」

 

眉間にしわを寄せるリーラ。兵藤家の者と交流することはそれなりにリスクがあり

利益にも繋がるとリーラは思っている。特に利益の方はリスクよりも大きいだろう。

一誠を利用して企業を拡大するという考えを帝はしているだろうと思えばあまりにも

不愉快。一誠を兵藤家のパイプとして自身の子と接しさせ、あわよくば娘の婿として

迎い入れて兵藤家と固い繋がりを得ようと企んでいるのかもしれない。

 

「(一誠さまを政略結婚の道具になんかさせません)」

 

企業の娘、九鬼揚羽を一瞥して誰にも気づかれず息を零すリーラ。

 

「一誠、話は終わったかー?」

 

「あ、百代。うん、終わったっぽい」

 

「なら、川原で野球をしに行こう」

 

「いいよー。丁度二人増えたから野球はもっと楽しくなるね」

 

「二人?ああ・・・・・そいつらか。ま、別に今更増えようが変わりないがな」

 

百代の視界にも九鬼姉弟の姿が映り込む。対して気にしないとばかり一誠に視線を戻す。

 

「ねえ、野球をやるけどどう?」

 

「野球?フハハハ!我が得意とするスポーツではないか。よかろう、我も参加してやろうではないか!」

 

「・・・・・なあ、何であいつはあんな偉そうに上から目線で物言いを?」

 

「分かんないよ。まあ、悪い奴じゃないから気にしないでいいんじゃない?」

 

「一誠がそう言うなら」

 

「ん、じゃあリーラさん。野球をしに川原の原っぱに行ってくるね」

 

「はい、お気をつけてください。オーフィスさま、一誠さまをお願いします」

 

「ん、分かった(ピョン)」

 

「って、オーフィス。最近僕の肩に乗っかる様になったけどちょっと歩きづらいよ・・・・・」

 

九鬼姉弟を引き連れ外へ出かける一誠と百代の様子を微笑ましく見詰めるリーラ。

 

「仲睦ましいのー」

 

「そうですね。ですが、逆に一誠さまが引き寄せる力に目を付ける輩がいないとは限りません。

それが心配ですが―――鉄心さま」

 

「なんじゃ?」

 

「腕の一本を失う覚悟がおありですなら、

私のお尻に触ろうとするその腕に攻撃してもよろしいですね?(ギリギリッ!)」

 

「いだ、いだだだだっ・・・・・・!?」

 

「総代・・・・・なにをしておられるのですカ」

 

「セクハラジジイが辿る末路はこんなもんだろ」

 

ルーと釈迦堂から呆れの溜息が零れる。後に釈迦堂も暇潰しとばかり一誠たちの後を追う。

 

 

―――○●○―――

 

 

カキーン!

 

「フハハハ!ホームランである!」

 

「むぅ・・・・・本当に得意だなんて」

 

「だが、まだまだこっちが有利だ。このまま勝つぞ一誠」

 

誰もいない原っぱで野球をする一誠たち。釈迦堂を万年キャッチャー役に仕立て上げ、

一誠、百代、オーフィス、辰子(+釈迦堂)チームVS英雄、揚羽、亜巳、竜兵、天チームと別れて

勝負の真っ最中。

 

「皆様、そろそろ御昼食の時間です」

 

「おっ、九鬼の従者さんは気が利くねぇ」

 

「私にできないことはございませんので」

 

クラウディオが大きめのブルーシートを敷いて昼食用に用意されていたのだろう数々の

重箱が展開していて、一誠たちに声を掛けた。野球を一時中断してお昼タイムに入る。

 

「誠に野球は楽しいであるな!」

 

「野球が強い人が入るとやり甲斐があるよね」

 

「片方が強過ぎると力のバランスが崩れて一方的な勝負となりつまらぬからな。

だが、お前たちとする野球は心が躍る。食べ終え休憩したらもう一度野球をしようぞ!」

 

英雄が高らかに笑う。心底楽しんでいると誰から見ても明らかでクラウディオが微笑む。

 

「良かったですね英雄さま」

 

「うむ、休暇の際は川神院に訪れお前たちと遊ぶことに没頭しよう。時に兵藤よ」

 

「ん?」とアスパラのベーコン巻を咀嚼中の一誠に英雄は尋ねた。

 

「兵藤はどこの学校なのだ?」

 

「んと、学校なんて行ってないよ」

 

「む?行っていないだと?」

 

「そうだよ。僕も別に行きたいとは思っていないし別にいいんだ」

 

「それでは社会に出た時にはどうするのだ」

 

「さぁ、リーラさんから勉強や色々と教わっているからね。

未来のことは未来にならないと分からないよ」

 

のほほんと述べる一誠に不思議そうに見つめる揚羽が声を掛けた。

 

「友達ができないのではないのか?」

 

「友達?百代やオーフィス、辰子や竜兵、天や亜巳の他にもたくさんの友達がいるけど?」

 

「む、そうだったのか。意外と社交的なのだな」

 

「父さんと母さんたちの方が社交的だよ。僕は父さんたちに紹介されて友達になっている感じだから」

 

「学校に行かなくても困るようなことは無い」と言ってのける一誠だった。

 

「おいおい坊主。学校を通うことは大切なんだぞ?そんなこと言って

将来右も左も分からない状態で状況を作ったらどうするんだ?」

 

「釈迦堂先生は学校に行ったことがあるの?」

 

純粋無垢な質問に釈迦堂はサッと一誠から顔を逸らした。

 

「・・・・・ないんだ?意外。釈迦堂先生が学校に行かないまま大人になっただなんて」

 

「私たちもこんな大人になるのかねぇー」

 

「ま、ウチらはウチらで生きてればいいんじゃね?」

 

「社会に馴染めたいなんて思っちゃいないしな」

 

「うーん、一誠くんと一緒に生きれるなら私はそれで・・・・・ZZZ」

 

学校に行っていないメンバーが釈迦堂に一瞥しつつそう発する。

 

「うっせ、学校なんてな最低限の知識を与えるだけであとは自分の力で生き抜くもんだよ」

 

「じゃあ、小学校を卒業したら僕たちは大人になるの?お酒も飲める?」

 

「そいつはノーコメントだ」

 

「あー!はぐらかしたぁー!」と一誠の叫びに場は賑やかになる。

 

「だが兵藤よ。学校に行くことは大切であるぞ」

 

「んー、兵藤家にいたときは色々と学んだから学校なんて行かなくても良いと思うんだよ。

今でもリーラさんから教わってるし」

 

「そこまで申すのであれば・・・・・クラウディオ、6年生の数学テストのプリントを」

 

「はっ、ここに」

 

クラウディオから渡される鉛筆と消しゴム、一枚の紙を受け取った英雄が一誠に突き出す。

 

「ん?」

 

「この算数の全ての問題の答えを書いてみせろ」

 

「分かった」

 

英雄から受け取り、その場でサラサラと筆を走らせることを三分後。

 

「できたよ」

 

「む、早いな。クラウディオ、採点を頼む」

 

「かしこまりました」

 

赤ペンを片手に採点を始める。そして終わればクラウディオの口から。

 

「お見事でございます兵藤さま。満点でございます」

 

と一誠を称賛する言葉が発せられた。受け取ったプリントに全問赤い丸のマークがあり、

100点と書かれていたのを見て英雄は問いかける。

 

「兵藤、お前は歳はいくつなのだ?」

 

「えっと、百代より一つ歳が下だよ」

 

「ということはお前は小学四年生ってことか。よく六年生の算数問題を解けたな」

 

「だって、今やってる算数は中学二年生の問題なんだもん」

 

「「な、なんと・・・・・」」

 

「兵藤さまは英才教育が施されているようですね。

それならば学校に行かずとも問題ございませんでしょう」

 

九鬼姉弟が驚く最中、クラウディオが納得の面持ちで顎に手をやった。

 

「ですが兵藤さま。学校に行くことは将来において大切なことですよ?」

 

「僕にそう言われても・・・・・」

 

困ったように首を捻る一誠。

 

「んー・・・・・一誠くん、尻尾出してー」

 

「いいよ(ポン)」

 

その申し出に一誠はアッサリ了承し九本の狐の尾を生やせば、辰子はそのうちの一本に

抱き枕のように抱きしめ寝始める。

 

「・・・・・兵藤さま、その尾は一体・・・・・?」

 

「狐だけど?」

 

「狐・・・・・兵藤さまは妖怪でいらっしゃるのですか?」

 

「違うよ、ドラゴンだよ」

 

「ん、イッセーはドラゴン」

 

オーフィスまでもが肯定し、クラウディオは一誠が学校に行かない理由を悟った。

 

「(・・・・・なるほど、深い事情が御有りのようですね・・・・・)」

 

敢えて口から発する事無く、百代とオーフィスも尾にしがみ付く光景を見据える。

 

「か、可愛い・・・・・」

 

「姉上?」

 

揚羽が立ち上がり、一誠の頭に生える獣耳を触れる。

それから尻尾を触れると抱き抱え始め顔を押し付けてすり寄せ始める。

 

「兵藤っ」

 

「ふぇ?」

 

「ああ、モコモコして温かいではないか。我の布団の中でも抱き枕にして

寝たらさぞかし寝心地がよいだろうな」

 

ギュッと力強く、それでいて割れ物のように優しく抱きしめ一誠の尾を堪能する。

 

「決めた、今日からお前は我のペットとなるがよい!」

 

「いやだ!」

 

心の底から否定する。揚羽ごと尻尾を豪快に動かして振り払った。突然の出来事に

尻尾から離れてしまいクラウディオの腕の中に収まった揚羽に窘める言葉が。

 

「揚羽さま、兵藤さまにそのような事を言ってはいけません」

 

「む・・・・・だが・・・・・」

 

「揚羽さまもペットになれなど言われたら嫌だと仰るはずです。

兵藤さまは事情があるのです。ですから相手の人権を害する発言をお止めになられてください」

 

ふーっ!と全部の尻尾を逆立たせて揚羽を睨む一誠。完全に獣の威嚇のような姿は

百代を楽しませ、弄られる。

 

「おい嬢ちゃん。ここに坊主のメイドがいなかったことに幸運だと思えよ」

 

「どういうことだ?」

 

「お前の発言でメイドは怒り、九鬼家が制裁される時間の問題だったってことだよ。

兵藤家って知ってるだろう?日本を代表する王さま。日本の総理大臣より偉い一族を。

そこの坊主はその兵藤家の人間なんだ。だから嬢ちゃんの両親の家が

なくすことなんてワケが無いんだ」

 

「っ!?」

 

「理解したか?ペットにするなんて坊主に言えば兵藤家に対して喧嘩を売ったと

認識されてもおかしくないんだわ。その時、嬢ちゃんの家は―――あっと言う間に無くなるぜ。

嬢ちゃんのせいでよ」

 

釈迦堂に指摘され揚羽は自分がとんでもない発言で家は崩壊すると思い知らされた。

そして、一誠に深く揚羽は謝罪して二人の間に溝を作らずに済んだのだった。

 

―――○●○―――

 

その日の夜、一誠は何時ものように今回はルーから課せられる鍛練をこなし終えた時だった。

風呂で汗を流しさっぱりしてリーラのところに顔を出そうとすれば、

心底信頼と信用をしている従者の目の前に見知らぬ男が座っていた。

 

「・・・・・誰?」

 

「一誠さま」

 

「こちらへ」とリーラが自分の隣に座るように催促され、その通りにすれば見知らぬ

男がお辞儀をした。

 

「お目に掛かります。私は兵藤源氏さまにお仕える側近でございます」

 

現当主の側近。そのような者がどうしてここにいるのか一誠は不思議でならない。

聞く姿勢を保ったまま金色の双眸を側近の者に目を向ける。

 

「私たちに何かご用でしょうか。当主の側近の御方がわざわざここまでお越しになる

理由をお聞かせ願います」

 

「・・・・・単刀直入に申し上げます。元現当主である兵藤誠殿のご子息、兵藤一誠を

兵藤家に預からせてもらいたい所存でございます」

 

「「・・・・・」」

 

側近から発せられた一誠を兵藤家に引き取りたいと言う申し出。

それには驚愕を通り越して一誠は目元を細めて睨むように側近を見詰めた。

 

「なぜ、いまさら一誠さまを求めるのですか」

 

冷徹に心も氷のように冷たく冷静でいようと気持ちで理由を求めた。側近の者はこう答える。

 

「兵藤家の者は文字通り門外不出でなければなりませぬ。

たとえ、追放された同族のご子息であろうと

他の流派の武術を会得しようとなどあってはなりません」

 

「私たちがここに滞在している理由は川神の流派を会得するつもりではないです。

一誠さまに心得を学ばせたいと誠さまがそう仰り、私たちはここにおるのです。

ですが、兵藤家はこの川神院のように清い心得を学ばせるほどの

師範代はおられるのですか?―――一誠さまを弱いと言うだけで大人も子供も蔑ろに

し続けたあなた方兵藤家に一誠さまを心身共に強くなされることはできるのですか?」

 

「・・・・・」

 

リーラの発言に沈黙する側近の者。一誠がどんな非道な仕打ちに遭っているのか

側近の者も耳に入っているし見掛けたこともある。

一誠を蔑ろにしてきた兵藤家にリーラはもう縁を切りたいほど兵藤家を毛嫌いしている。

 

「それにそちらには一誠さまよりお強い誠輝さまがおられるはずです。

弱い一誠さまなど眼中にないのではございませんか?

さらに言えば、以前兵藤家の者が一誠さまを襲撃した件・・・・・お忘れではないはずです。

なのに、一誠さまを狙っている輩がいるであろう兵藤家に預からせるなど信用も信頼もできません」

 

「・・・・・それについては誠に申し訳ございませぬ」

 

「謝罪をされても私たちは兵藤家に信用と信頼など皆無に等しいです。

現当主の願いであろうとこのお方に兵藤家と関わらせないでください」

 

バッサリと切り捨てるリーラ。これで諦めて欲しいと切に願うが、側近の者が口を開いた。

 

「・・・・・いえ、預からせて欲しいという願いは建前でもあります」

 

「建前ですか。それはなんですか」

 

「はい・・・・・悠璃さまと楼羅さまも日に日にお強くなられております」

 

「よかったですね」

 

「いえ、リーラ殿がお考えになられているお強くなられたという意味が違います。

その・・・・・禁断症状が発病すると申し上げますか・・・・・」

 

側近は苦渋の面持ちで漏らした。

 

禁手(バランス・ブレイカー)に至っては兵藤一誠を会わせろと現当主に脅―――いえ、

お願いをされることが多くなってきておられるのです」

 

リーラは思わず額に手を当て出す。今思えばあの二人が一誠に久しく会いに来てはいない。

一誠を心底好意を抱いている二人の少女が会いたいという願いが溜まりに溜まって

側近の者がここに現れたと言うことは既にその思いが起爆寸前と言う事なのだろう。

最悪の場合、兵藤家から抜け出して誠と一香のような行動をしてしまう恐れがあると側近は

それを危惧して一誠を預からせて欲しいと言う事なのだろう。

 

「つまり兵藤家全体と言うより、現当主とあなたはあのお二人を一誠さまに

お鎮めてほしいということなのですか?」

 

「お恥ずかしいながら・・・・・その通りでございます。私はこの場にいることも独断でいます」

 

バッ!と側近の者は深く土下座をした。

 

「一週間!いえ、五日間だけでも構いませぬ!どうか兵藤一誠を兵藤家に預からせてください!

もう現当主では頼りないほど実娘に迫れて奥方に任せっきりで、奥方も抑えるのに

もう限界に近いのです!このままでは内乱もとい争乱になりかねないのです!

どうか、どうか我ら兵藤家にお慈悲を!」

 

「「・・・・・」」

 

あまりにも必死な側近に一誠はリーラの服をクイクイと引っ張った。

 

「兵藤家は嫌いだけど、この人・・・・・可哀想と思ってきたよリーラさん」

 

「あのお二人をお鎮めにできるとすれば現当主とその奥方、

誠さまか一誠さましかおりませんですし・・・・・」

 

「悠璃と楼羅の二人をここに連れて来られないの?それだったら僕は嬉しいけど」

 

「申し訳ございませぬ。あのお二方を容易に外の世界へ連れ出すのは

禁じられておりますゆえ・・・・・」

 

申し訳なさそうに側近の者は頭を下げた。

 

「・・・・・僕、兵藤家が嫌い」

 

「承知の上でございます」

 

「でも、あの二人に会いたいな」

 

「そのお言葉を悠璃さまと楼羅さまにお伝えして欲しいです。さぞかしお喜びになるでしょう」

 

と、述べた側近に一誠はこう述べた。

 

「じゃあ、僕とリーラさん、オーフィスを他の兵藤の皆と会わせないようにしてくれる?」

 

「現当主と奥方、悠璃さまや楼羅さま、私だけしか入れない部屋でお過ごしになられば可能です」

 

「じゃあ次ね。僕、兵藤家の鍛練なんてしたくないから。

苛められたら僕、皆をどうしちゃうか僕自身でも分からないんだけど・・・・・いいよね?

苛められたその百倍やり返しちゃうよ?それでもいいなら参加するよ」

 

「勿論でございます。鍛練に参加せず悠璃さまと楼羅さまとお過ごしになられてください」

 

若い芽を詰まられては堪ったものではないと内心そう思いながら清々しい土下座をする側近の者。

 

「い、一誠さま・・・・・」

 

「ん?なに?」

 

「いえ・・・・・なんでもございません」

 

何時の間に誰かを脅す事ができるようになったのかリーラは当惑や困惑で一杯でいた。

 

「兵藤家・・・・・くふふ・・・・・楽しみだなぁ・・・・・」

 

幻覚だろうか。一誠から黒い靄が出ているのを側近の者とリーラは見えてしまった。

 

「・・・・・兵藤家で過ごした日々を思い出しながら笑う一誠さま・・・・・そこまで御心が・・・・・」

 

「も、申し訳ございませぬ・・・・・今世代の若い者たちは血気盛んで・・・・・」

 

「言ったはずです。今さら謝罪など意味がないのです。私からもフォローはします」

 

「助かります」

 

「貴方には関係ないことですが誠さまにこの事をお伝えします。よろしいですね」

 

「・・・・・はっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なるほど。一誠も大変だな』

 

「はい、本心ではあのような場所になど行きたくもないはずですのに・・・・・」

 

『同感だな。俺も親父がよほどのことでもない限り自分から行く気なんてない。

が、一誠は行くんだろう?』

 

「私とオーフィスも同行します。ご心配を掛けません」

 

『お前がそう言うならこっちは気兼ねなく仕事に専念させてもらう。悪いな』

 

「今はどちらに?」

 

『ああ、魔術教会―――いや、魔法使いの協会の理事メフィストのところにいるよ。

いま一香とメフィストが契約について話しこんでいる』

 

「契約、ですか。悪魔か魔物と契約なされるのですか?必要ないとお聞きしたのですが」

 

『一香も追放されたとはいえ式森家の魔法使いだ。一香に相応しい契約者を

メフィストも手伝っているんだ』

 

「それで、一香さまにお目に掛かった立候補はおりましたか?」

 

『彼女ほどのクラスなら五大魔王の悪魔クラスが最適だろうな。

いまはまだ―――おっ、決まったようだ。って、本気かよ一香』

 

「誠さま?」

 

『ああ・・・・・一香がな魔物と契約をしたいって言いだしたんだ。

魔物は魔物でもドラゴンだけどよ』

 

「・・・・・まさかとは思いますが。一香さまが望んでいらっしゃるのは」

 

『リーラが思っている通りだと思うぜ。そう、一香が契約したい相手は―――一誠だ』

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