HIGH SCHOOL D×D ―――(再)――― 作:ダーク・シリウス
『主、主・・・・・』
「ん・・・・・」
誰かに起こされ、閉じていた目蓋を重たげに開き、目をパチクリした一誠の目の前に
数体のドラゴンが暗い空間の中だがハッキリと姿を晒して見詰めていた。
「あれ・・・・・ここって・・・・・」
『主の意識を
「どうして?」
『主は宝石を欲しがっておりましたね?』
「あ、見てたんだ?うん、だけど買えなかったから諦めたよ?」
『まだ諦めるのは早いですよ』
金色のドラゴン、メリアが一誠に対してそう告げた。諦めるのは早いとはどういうことなのか一誠はチンプンカンプンで疑問符を浮かべる。
「どういうこと?」
『主は私の力を使いこなせていない。私は封印される前では、有機物・無機物、万物を
創造できる力を司るドラゴンでした。だから主、私の本来の力を使えるようになれば
宝石や指環すら創造できるようになるのです』
「本当?それって凄いじゃない!」
キラキラと目を輝かせてメリアを見上げるとメリアは苦笑を浮かべた。
『私は創造を司るドラゴンであるが為に、他の神話体系の神々に良く狙われていましたけどね』
「オー爺ちゃんもメリアを狙っていたの?」
『いえ、あの神はそうではありはありまん。極一部の神が私を狙っていたのです』
『メリアの能力は
堕天使、神、様々な種族に対して有効な万物を創造できる。
無論、俺たちドラゴンを倒すことができる武器でさえもな』
メリアの話に凶暴で凶悪そうなドラゴン、ゾラードも補足した。
「でも、メリアの姿・・・・・ドラゴンになるのが
『あれは別の形で発現しただけに過ぎません。私の本来の力は創造。万物を作ることです』
「じゃあ、本当の
頭を垂らし「残念」と身体全体で伝える一誠。
『大丈夫です。主の想いが
自分を信じて私の本来の力、創造を駆使してください』
その言葉を最後に一誠の意識は再び闇の中へ落ちたのだった。
―――○●○―――
『ううう・・・・・これじゃないのに』
ズーンと金色の大きなドラゴンが肩を落として頭を垂らしている姿が川神院で見れた。
落ち込む一誠を余所に、オーフィスや百代、辰子が背に乗って思いのまま楽しんでいる。
「・・・・・あいつ、朝から何やってんだ?」
「本当の力を使いこなしたいと仰っておりますが・・・・・」
「あ?本当の力?」
「御存じであるかどうかは分かりませんが、私たち人間、もしくは人間の血を流す者に
一誠さまは本来の
「へぇ、そいつはファンタジー的なことじゃねぇか。
もしかすると、今のあの坊主の姿もその摩訶不思議な能力によるものなのかい?」
壁に背を預け腕を組む釈迦堂の問いに肯定と頷くリーラ。
「驚かないのですね。一誠さまのあの姿を」
「今さら百代が楽しげに遊んでいるアレを見ても驚かねぇよ」
人型に戻った一誠が再び光に包まれると、金色のドラゴンとなってしまい落ち込む。
「摩訶不思議な能力ねぇ・・・・・俺もその力を宿しているってことだよな?」
「ええ、そうです」
「その力を使える方法ってなんだ?使えるなら使ってみてぇ」
口角を上げてもしも使えたらその力で暴れてみたいと脳裏で思ってリーラに視線を向けると、
「心・・・・・想いが主に左右するそうです。
それで
「けっ、ジジイやルーが口酸っぱく言っているもんと一緒かよ。
んじゃ、俺には一生使えない代物だな」
つまらなさそうに舌打ちした。力こそが全て、正義と考えの釈迦堂に鉄心とルーの
考えには賛同できない様子だ。
「そうでしょうか?知らないよりマシでありますよ。殆どの人間が有しているのに
一生気付かず一生を終えるケースが多いと誠さまが仰っておりましたから」
「俺はラッキーってところかよ。使え方が分かっても俺に不適合なことじゃどうしようもないわな」
肩を竦めた釈迦堂と同時に『できたぁっー!』と歓喜の声が聞こえてきた。
リーラと釈迦堂は一誠の方へ顔を向けたら、金色の杖を持っていた。
杖自体が十字架を模した形で大きな十二枚の金色の天使の翼を生やし、輪後光もついている。
それを嬉しそうに持ったままリーラに近づいた。
「リーラさん、リーラさん。見て見て、僕の
「お見事でございます。一誠さま」
「ほー、何だか変わった杖だな。それが摩訶不思議な能力のやつか?」
「これで何でも作れるかもしれないよ。えーと、どうすればいいんだろう?思えばいいのかな?」
「だと思います。試しに何か物を思い浮かべてごらんください」
一誠は頷き、杖を前に立て構えて瞑目した直後、翼が広がり輪後光に光が帯び始め、
先端に光が収束し―――空へと打ち上がった。
「一誠、なにをしたんだ?」
「んーと、雪!」
「雪?おいおい坊主。暑くなってきたこの時期に雪なんてできるわけが―――」
と、釈迦堂が否定の言葉を最後まで言えなくなった。空から白く小さな物がたくさん振ってきたのだ。
「・・・・・雪ですね」
「マジかよ・・・・・本当に雪が降って来やがったのかよ」
「降ってきたー!」
「おおっ!」
「イッセー、できた」
この日、季節外れの雪が川神市に降り注ぎ、後に数日間ニュースで話題になった。
「ねね、リーラさん。この後ちょっと手伝って欲しいんだけど」
「私にできる事ならなんなりとお申し付けください」
「んふふふっ、百代を絶対に驚かすんだぁー♪」
そして、創造の力をさらに扱える練習をする最中、ついに百代の誕生日となったのだった。
川神院は何時もより増して賑やかになった。人間界で交流した者たちが百代の誕生日を祝いに集い、
豪華な料理やたくさんの酒やジュースなど用意され誕生日パーティが幕を開いた。
「今回の誕生日は何時にも増して賑やかだ!」
嬉しそうに、楽しそうに子供相応しく笑う百代。たくさんのプレゼントをもらって上機嫌だった。
「だが、まだ物足りないぞ。お前だけだ、貰ってないのは」
得物を狙う鷹の目如く、一誠を捉えてビシッと手を差し伸べた。
「一誠、お前のプレゼントはなんだ?早く私にくれ」
「ん、分かった。ちょっと待っててね」
退出した一誠。また戻ってきた時には小さい箱と長細い箱を手に持っていた。
「はい、百代。誕生日おめでとう」
「開けていいか?」
「勿論だよ」
「中身は何だろうなー♪」
好奇心で二つの箱を包むリボンを解き、箱を開けた。
「・・・・・これは」
「僕の自信作!」
それぞれの箱にはネックレスと指環が入っていた。
八月の誕生石、サードニックスとペリドットの装飾品。
四つ葉のクローバーの形で凝った意匠に装飾が百代の誕生日プレゼントとして贈られた。
「ほう、これはこれは」
クラウディオが一誠が作った装飾品を見詰める。
「兵藤さま、これはあなたさまが作ったのですか?」
「そうだよー。こうやってね」
金色の杖をなんなく発現して能力を発動した。翼と輪後光が光を放ち、
虚空から様々な宝石が一誠の周囲に具現化した。
「この杖のおかげで僕は色んな物を作れるようになったんだー」
「摩訶不思議な能力ですね。一つ、宝石を貰っても?」
「うん、いいよ」
アメジストの宝石を手にしてマジマジと見つめるクラウディオから視線を逸らし百代に問うた。
「百代、どう?」
「驚いたぞ・・・・・こんなに女の子してる贈り物だとは思わなかった」
「ははっ、驚いてくれて嬉しいよ。ほら、指環の方を嵌めてあげるね」
ペリドットの指環を右手の薬指に嵌めた後、サードニックスのネックレスを首に装着させた。
「うん、ピッタリだねー。似合ってるよ」
にひーと笑みを浮かべる。対して百代はジッと指環を見詰める。
キラリと輝くオリーブグリーンが百代の目を逸らさせない何かが宿っており、
「指環の方は何時か指に嵌めれなくなるけど、ネックレスの方はずっと首に身に付けれるからね。
大事に付けてね百代」
と、一誠が満足気にそう言うと、
「・・・・・ああ・・・・・その・・・・・何て言っていいのか」
百代が顔を赤くして赤い目が潤い始めた。
「あ、ありがとな一誠・・・・・」
指環とネックレスと順に触れて、
「お前から貰ったこれ・・・・・大切にする」
「えへへ♪喜んでくれて僕は嬉しいよー」
杖を持ったままクルクルと回って嬉しさを表現した。
「・・・・・オチたかの?」
「うんや、まだまだじゃねーの?精々五分五分ってことろだろ」
「百代のあんな顔ハ、初めて見るネ」
「ふむ・・・・・あの子と百代か・・・・・案外悪くないかもしれんのぉ・・・・・」
「仮に結ばれてガキを産んだら・・・・・」
「その子供は間違いなく最強だろウ」
「もしもその子供が生まれれば川神院は安泰じゃな」
鉄心の目が怪しく光る。ルーと釈迦堂は鉄心の思惑に無意識で互いに顔を見合わせ
一拍してから苦笑を浮かべた。
「面倒くせぇことになるなこりゃ」
「あの子に幸あらんことを願うヨ」
『一誠』
『何エスデス?』
『やっぱり、私も今欲しい』
『誕生日プレゼント?でも、まだ早いんじゃないの?』
『いや、女の子に贈り物をする日は何時でもいいんだ。誕生日は誕生日でだ』
『うーん?エスデスがそこまで言うなら・・・・・』
『よし、ならば貰うぞ』
『え?』
『んっ・・・・・』
「いや、ルー。女難の相があるみたいだぜ」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた釈迦堂の目に、一誠とエスデスの唇が重なった光景が入る。
場は静まり返り、誰もが一誠とエスデスのキスシーンを見入る。
エスデスが一誠から離れると白い顔の肌に朱が全体に広がった。
「お前の・・・・・ファーストキス、貰ったぞ・・・・・」
「ファーストキス・・・・・?なにそれ?ね、リーラ・・・・・ひぅっ!」
短く悲鳴を上げた一誠。身体が委縮してガタガタと震わせ始めるその理由は、
顔に表情が消え、氷のように冷ややかなオーラを身に纏い、視線を向けているリーラである。
「リ、リーラ・・・・・さん・・・・・?」
「一誠さま」
「は、はいっ」
何時ものリーラではないと本能が察し、逆らえばどうなるか分からないと一誠は
恐怖心による衝動的な返事をした。リーラはスッと跪き、一誠の顔を覗きこんだ。
「今日は私と一緒にお風呂を入りましょう」
「え?」
「その後、私と一緒に寝ましょう」
「えっと、それは何時もと変わらないような・・・・・」
「寝る前に私とキスをしましょう」
刹那。
「「「まてまて!子供になんて要求をするんだ!」」」
大人たちが一誠にリーラへ突っ込んだ。
「なにか」
それでも平然と対応するリーラ。
「何かってお前・・・・・犯罪間際な事をするんじゃねーって」
「外国では当然の行為でございます。そして私は一誠さまのことが好きなのです。
―――一人の女として」
「年齢を考えて言いなさイ!既にそれは保護者として失格の範疇を超えているヨ!」
「手は出しません。まだ・・・・・ですが」
「前提であるとはのぉ・・・・・。お主、嫉妬しておるのか」
「そうですがそれがなにか。それに何か勘違いをされていますが、
私が言うキスは頬に唇を押し付ける行為の事を指しております」
開き直るリーラは立とうとする小鹿のように震えている一誠を抱きしめる。
「・・・・・お前から言うことは勘違いどころか本当に犯罪の一歩、
片足を踏んでいるような言い方にしか聞こえねぇ」
「間際らしいにもほどがあるわい」
「一番身近な所ニ・・・・・灯台下暗しとはこのことかも―――イエ、ナンデモアリマセン」
リーラに睨まれ、ルーが委縮するその間にも乙女の戦いが始まっていたのは別の話である。
―――○●○――
百代の誕生日が過ぎてからもうすぐ秋の季節に入ろうとしている。
鍛練も既に慣れた一誠にとってまた強くなった証に等しい。
「・・・・・」
横で鍛練する百代がチラチラと一誠を見るようにもなった。
一誠から貰った装飾品は稽古の間身に付けず、自由な時間だけ装着する。
二人の稽古の様子をほのぼのと見守る大人組。
「もうすぐ秋じゃのー。焼き芋を食べたくなってきわぃ」
「山籠りの一つでもすれば、野生のイノシシやキノコとか手に入るしなぁ」
「食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋、芸術の秋と言葉があるほどですからネ」
ルーの言葉に内心同意とし、澄んだ青い空を視界に入れる。
「そう言えば、百代の学校では体育祭が近いじゃったな」
「だからどうしたって?何時も通り行けばいいだろうが」
「もしや、あの子も連れていくト?」
「そうじゃ。ま、何も問題は起きらんじゃろ」
と、鉄心はそう言うが当日ではとんでもないことが起きるのである。
―――体育祭―――
「・・・・・なぜお前までここにいるのだ」
「・・・・・そいつは俺が知りてぇよクソ親父」
「えへへ♪」
「ま、息子の頼みとあれば親として叶えたいという思いは本当だろう?」
「お前ではなく孫からの頼みだからOFFを使って来てやってるのだ」
兵藤家現当主と元当主の親子が百代の体育祭を観たいが為に一誠に呼ばれて来訪したのであった。
「久し振りー、お父さんとお母さん、お爺ちゃんとお婆ちゃ―――じゃないお姉ちゃん」
「・・・・・羅輝、孫に何を言わせておるのだ。家族構成では―――すまぬ、何でもない」
「お、お袋・・・・・」
ニコニコスマイルな兵藤羅輝だが、その笑みを見てどこか怖ろしく感じた一誠と源氏。
誠でさえ冷や汗を流す程の威圧、プレッシャーを感じたのだった。
「一香さま・・・・・」
「触れちゃダメよ。こういう世渡りも必要なのだから」
教訓・女性に対して年齢に関する話は厳禁。
「しかし、運動会か・・・・・随分と懐かしいじゃないか」
「兵藤家と式森家の両家対抗運動会振りよね?」
「ああ、そこでお前と出会ったんだからいい思い出だわ」
「うふふっ、私もよ」
指を絡ませ手を重ね合い、肩を寄り添って幸せオーラ、桃色の空間を展開した誠と一香。
「そんな出会いを二度とさせんが為に廃止したがな」
無粋な発言を威風堂々と腕を組む源氏が一刀両断した結果。
「この外道!皆の幸せな出会いを潰しやがって最低な奴だな!」
「堂々と禁忌を破ったお前にだけは言われたくは無いわ!」
「うるせっ!過去の歴史の紐を解けば―――!」
「それ以上は言わせるかァッ!」
場所が場所な為、殴り合う二人はかなり目立っていた。喧嘩をする二人を見て、
頬に手を添えながら微笑む羅輝が言う。
「相変わらず言葉は乱暴で態度も悪いけど、仲だけは良いわね」
「あれが・・・・・仲が良いと?」
「本気で殴り合っているところを見ても流石の私ですらそうは思えないわ・・・・・」
「喧嘩するほど仲がいいってことかな?」
「ふふっ、その通りよ一誠ちゃん♪さ、鉄心さんのところに行きましょうか。あの二人は放っておいても来るでしょうし」
場所取りは川神院の修行僧が抑えておる為、鉄心たちは既に学校の中へ。
一誠たちも百代が通う学校へと足を運んだ。
学校の校庭はこの日の為に購入したと思われる最新式の(ビデオ)カメラを片手に集っている
家族が勢揃い。仲でも一気は異様な集団が一角の場所を陣取っていた。
道着を身に包みブルーシートを大きく敷いて座っている一団や誰も関わりたくないと
雰囲気を伝わせる強面の大人たちの集団の二つだ。一誠たちはその一角に赴く。
「おお、これはこれは」
「久しいな鉄心。孫に呼ばれてお前の孫娘の応援をしに来た」
「それは光栄極まりないことじゃ。狭いがどうぞごゆりとしてくさいませ」
何時の間にか誠と喧嘩していたはずの源氏が鉄心と話をしていた。
一誠が不意に視線を上に向けると誠の姿が目に映った。
「おお、やはり来たな一誠」
「あっ、エスデス」
「私も百代の応援をしに来たぞ。家族とだ」
ズラリと強面のおじさんが一誠たちに向けて頭を下げた。エスデスの隣には青い髪に髭面の中年男性が
柔和な笑みを浮かべる。
「お前が娘から聞く一誠という子だな?俺はエスデスの父親のガルドだ。よろしく」
「初めまして、兵藤一誠です」
「これからも娘と末長く仲良くしてくれ。何分、色んな事情で友達がいないもんでな、娘が笑うようになってくれて安心している。こうやって俺たちに頼んで友達の運動会に
顔を出す程だ。父親として嬉しい限りだ」
「ほほう・・・・・なんだか気の合いそうな男だ」
誠が自然とガルドに近づいて傍に腰を下ろした。
「初めまして、俺は一誠の父親の兵藤誠だ。お互いの子供が仲良くしているように
父親同士の俺たちも仲良くしようぜ」
「兵藤・・・・・ならば、兵藤家の者か」
「ああ。あそこにいる現当主の息子だ」
「なるほど。堂々とマフィアのボスを構えている俺に近づくだけの度胸がある。
お前とは良い関係ができそうだ」
出会ってすぐに一誠とエスデスのことで会話の花を咲かせ、何時しか意気投合をし始めた。
「初対面の方ともうあそこまで・・・・・」
「あれが誠の魅力の一つよ。警戒心を抱かせず、誰とも打ち解けるんだからね」
「僕もお父さんのようになりたい!」
「一誠なら絶対になれるわよ。その為には色んな人と話しかけ、相手の善し悪しを見抜けなくちゃね」
「うん、頑張る!」
一誠は返事をする。そうこうしているうちに体育祭が開幕した。
百代が出る競技になると一誠たちは応援をし、大和たちの姿を見れば応援をする。
「一誠、どうしたの?」
ジィーと運動会の様子を見ていたら一香が声を掛けてきた。「うん」と頷きこう言った。
「何だか学校って楽しそうだなぁーって。今も楽しいけど、運動会って楽しそうだね」
「・・・・・」
「あっ、学校を通いたいなんて言わないよ?
だって、僕は人間じゃないし学校に行けるとは思えないもん。
それどころか怒って他の皆に迷惑を掛けちゃいそうだよ」
学校を行く必要がないと思っていた一誠が学校に興味を抱き始めた。それはとても喜ばしいが、
一誠を親として学校に通わせれない理由は様々ある。だから、一香は心の中で謝り頭を撫でる。
「将来、一誠が大きくなったら学校に行けるわ。それまでもうちょっとだけ修行を頑張りなさい」
「うん?別に学校なんて行かなくてもいいんじゃない?」
「今は良いわ。だけど、将来は行く必要があるの。だから今は修行に集中しなさい」
「うーん、はーい」
分かっているようで分かっていない返事。それから運動会は順調に進行し、昼食タイムに突入した。
「お疲れ百代。ずっと一番で勝ってて凄いね」
「そうだろう?まっ、当然の結果だがな。お前と一緒に鍛練したらもっと強くなっていくんだぞ私は」
「むー、僕だって百代と一緒に強くなるよ」
顔を膨らませちょっと不機嫌になる一誠の言葉に百代は照れた。
「そっか、一緒に強くなるか・・・・・ジジイ、預けた私の返してくれ」
「ほいほい」
鉄心からネックレスと指環を受け取り、
短い時間の中だがそれでも付けたいと思う気持ちからか身に付けた。
「百代?」
「付けれる時に付けたいだけだ。お前から貰ったこれ、気に入っているからさ」
プレゼントした装飾品を目の前で付けてもらい、やっぱり嬉しいと満面の笑みを浮かべる一誠。
「あっ、そうだそうだ。お母さん、見て見て」
「なにかしら?」
一誠は金色の杖を具現化させて自慢げに見せびらかした。
「僕の
「あら、それは凄いじゃない。だけど一誠。ここでそれを出しちゃダメよ?」
「ダメなの?宝石を作れるところ見て欲しいんだけど」
「メリアの創造の力ね?ええ、それは家に帰ってから見せてちょうだい」
「はーい」
金色の杖が消失して弁当を食べ始める様子を見守った一香は源氏に声を掛けられた。
伺うように尋ねられて。
「孫にも
「三つ、いえ四つもあります」
「複数だと?なぜそんなに持っておるのだ」
「内一つは一誠自身の
正確には誠輝にも渡して二つだったけれど何故か三つに。その三つともドラゴン系統の
難しく険しい表情を浮かべる源氏に説明をした一香。
「ドラゴン系統のか・・・・・。それらは全て使いこなせておるのか孫は?」
「聞いた限りでは一部の
他はまだみたいですがそれなりに使えるようになっている様子です」
「順調のようだな」
「まだまだこれから。この子の成長は止まりません」
―――○●○―――
その日の夕方。一誠は百代に呼ばれて二人きり川原に来ていた。
「どーしたの?こんなところで話がしたいって」
「ああ、ちょっと聞きたいことがあってな。家じゃ聞きづらくて」
コテンと首を傾げ百代に尋ねると、百代は一誠に振り返った。
朱に染まる空、穏やかに流れ続ける多馬川の水面に夕日が映り、一誠の目に焼き付ける。
「お前・・・・・好きな子はいるか?」
「好きな子?」
「そうだ。家では私や辰子。外ではエスデス、京、こゆきがお前の傍にいる。オーフィスはお前の家族だから問題ないと思っている。だから私を除いた四人のなかで好きな奴はいるか?」
「・・・・・んー」
百代の言いたいことがあまり分からない。好きとは相手を思う気持ちだと周りから説明されていて、
一誠は一緒にいて楽しい存在に対して好きという気持ちで伝えている。
「ごめん、百代の言いたいことがあまりわからない。女の子に好きなんて気持ちが分からないよ」
「・・・・・そうか」
「うん、それにちょっと苦手なんだよね」
「苦手?」と百代は不思議そうに聞く。一誠は頷いてこう答えた。
「教えたよね。僕はイジメられていたって」
「ああ、そうだな」
「僕、今こうして百代と話せれるけどさ。大人や僕たちと同じ年の子供と接するのが苦手なんだ。
話したこともない子供、見たこともない大人に悪口言われたりイジメられていたから。
その中には女の子もいた」
「・・・・・」
「まだ子供だから僕は百代が言いたい好きと言う意味は分からないだけかもしれない。
リーラさんや釈迦堂先生たちに訊いてもチンプンカンプンだと思う」
一誠の話を耳に傾ける百代に一誠は言い続ける。
「百代は僕のことどう思っているの?」
「私がお前のことを?」
「うん」
「お前のことが凄く気に入っている」
返事が直ぐに返ってきた。百代は夕日によって朱に染まる水面を見詰めた。
「お前以外にも確かに強い奴はいた。お前の家のお前や私と同年代のやつらがな。
見ていて興奮した、楽しく見ていたのは確かだ。私と戦った準決勝の奴もな」
「・・・・・っ」
ズキッと胸に痛みが生じた一誠を露知らず百代は語り続ける。
「だが、あいつらなんかよりお前の方がよっぽど強い」
一誠に振り返り瞳を覗きこんできた。
「私はお前と同じように子供だ。世界にはもっと強い奴らがいるだろう。
だから今はお前が私と並ぶぐらい強い男だ」
「百代?」
「この目を見た瞬間からお前はただ者ではないと思っていた」
金色で垂直のスリット状の双眸と赤い双眸がぶつかる。
「何度見ても飽きないお前の眼は格好良いな。
私はこの目を、私と初めて戦って引き分けの勝負をしたお前を凄く気に入っているんだ」
そして百代は一世一代の台詞を言った。
「私はお前のことが好きだ一誠。ずっと何時までもどこまでも私の隣に並んで、
一緒に生きよう」
その後、エスデスのように一誠の唇へ自分の唇を押し付けた。
「知ってたか?」
「え?」
「男と女が口をくっつけることってお互いが好きだったらできることなんだ。
その逆、一方的に相手の口に自分の口を押し付けることもあるがキスとは
好きな者同士が行うことなんだ。こんな感じでな」
もう一度軽く触れ合う程度のキス。百代一誠に口づけ、キスのことについて説明した。
「・・・・・そうなんだ」
「一誠、私とキスをしても・・・・・分からないのか?
私はちょっと恥ずかしいんだが・・・・・いや、聞くのは野暮だったな」
「・・・・・?」
「分からないなら、分からせればいいだけだ。お前を私の色に染めてやる。ただそれだけだ」
急に狩人の眼つきとなった百代。なぜだか知らないが、今の百代は危険だと本能がそう言う。
「も、百代?そろそろ帰らない?皆、心配するよ」
「そうだな。帰るとしようか」
あっさりと当然のように言い、川神院へと帰ろうとする百代。
一誠の手を掴んで上機嫌に鼻歌までする。
「一誠、私はお前のことが好きだ。今分からなくても私の気持ちだけは覚えてくれ」
「うん、覚えるよ。百代の気持ちを」
「ははっ、分かるようになった時の一誠の顔を見てみたいなぁー♪」
遠くない未来、最も強い者同士が激突し合い最高の戦いを繰り広げる。
その時まで一誠と百代は知らず共に切磋琢磨をしていくのであった。