HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード26

そして、ついに別れの日がやってきた。

一誠とオーフィス、リーラは川神院に居座ってから交流するようになった面々に見送られている。

 

「一誠、また・・・・・会えるよな?」

 

「うん、絶対に戻ってくるよ」

 

「じゃあ、戻ってきたら私と勝負してくれよな」

 

「分かった。その時は決着も付けようね」

 

「お前が戻ってきた頃に私は今より強くなっているだろうがな」

 

「それは僕も同じだよ」

 

百代と一誠は拳を突き付けて最後の別れを告げた。

 

「亜巳、竜兵、辰子、天。キミたちも元気でね」

 

「絶対に帰って来いよな!」

 

「まっ、お前に心配されるようなヘマはしないさ」

 

「お前も元気でいろよ」

 

「ううう・・・・・一誠くんがいなくなっちゃうのはやだよ・・・・・」

 

四者四様、一誠と別れの挨拶を告げた。辰子は渋っていたが一誠が徐に金色の杖を

具現化させて力を振るった。一誠がなにを作りだしたかと思えば。

 

「はい、これを僕だと思って寝てね?」

 

金色の長細い枕。一誠は所謂抱き枕を辰子に作ってやり渡した。

 

「・・・・・うん、これで我慢する」

 

ギュッと枕を抱きしめると立ったまま寝始めた辰子から視線を逸らした。

 

「エスデス、学校に行けれるようになったら友達を作ってね」

 

「できたらな。だが男との友達は作る気は無い。お前だけでいいからな」

 

「もう、そんなこと言っちゃダメだよ?」

 

苦笑いを浮かべているとエスデスが抱き付いてきた。

 

「外国に行っても、私のことを忘れるなよ」

 

「忘れないよ。エスデスと最初に出会った時はとても凄かったんだからね」

 

「あ、あの時のことは忘れろっ」

 

淡く朱を顔に散らばませてプイと顔を逸らしたエスデス。

 

「揚羽、僕はいなくなるけど元気でね?」

 

「お前がヨーロッパにいる間、我ももしかしたらヨーロッパに行くかもしれん。

その時はお前のことを探し出してやるからな」

 

「じゃあ、その時はお土産をちょうだい?」

 

「分かった。では、楽しみにしているがいい」

 

不敵に笑む揚羽と握手を交わしたあと、

 

「こゆき、京。元気でね」

 

「「うー・・・・・一誠、行かないでよ・・・・・」」

 

「二人揃って同じことを言わないでよ」

 

困った顔をして、抱きついてくる二人に抱きしめ返した。

 

「京、イジメに負けないでね?百代に頼ることも大事だから」

 

「・・・・・うん、分かった」

 

「こゆき、いっぱい友達を作って元気でいてね」

 

「うん、頑張る」

 

それからお世話になった鉄心やルー、釈迦堂にも別れの挨拶をしたら

リーラから促しの声が掛かった。これが最後だとばかり、一誠は満面の笑みを浮かべ

大きく手を振った。

 

「それじゃ、行ってくるね皆!」

 

皆に見送られる中、一誠たちは空港へ向かった。

 

「行ってしまったのぉ・・・・・」

 

「あいつらといた一年は忘れられねぇな」

 

「そうだネ。いい思い出を残してくれたヨ」

 

「師匠、早速稽古をしよう!」

 

「なんだ、坊主がいなくなって寂しがるのかと思ったらやる気あるじゃねぇか」

 

「一誠はもっともっと強くなるんだ。再会したときに私が弱いままなんて嫌だ!

だから私も一誠と張り合える位の強さを身に付ける!」

 

「ははっ、そうかよ。たくっ、しょうがねぇな。ほら、お前らもついてこい、稽古をするぞ」

 

「(釈迦堂の心にも変化が起きているようですネ)」

 

「(ほっほっほっ。あの子には感謝することができたのぉ。川神院は安泰じゃ)」

 

だが、ほんの数時間後。一誠たちは災難な目に遇っていた。

 

―――○●○―――

 

東京の波嶺騨空港に到着しヨーロッパ行きの飛行機に乗り込み、問題もなく出発した。

真っ直ぐヨーロッパへ飛行する最中、初めての飛行機に目を輝かせてオーフィスと窓の

外、空を見ていた。

 

「オーフィス、凄い眺めだね」

 

「雲がわたあめみたい」

 

「そうだねー」

 

西に飛行する乗客、乗員合わせて百人以上の人を乗せる飛行機。

ヨーロッパはどんなところなのか、胸に期待を膨らませて睡魔に襲われながら思って眠った。

 

 

―――数時間後―――。

 

 

突然だった。ガクンッ!と、飛行機が揺らいだのだ。

 

「ん、なに?」

 

「揺れた」

 

眠っていた一誠が目を覚まし、オーフィスがポツリと原因を告げた。

乗客たちも異変を感じたようでざわめき始める。

 

「リーラさん、どうしたの?」

 

「いえ、気流とぶつかった模様かと」

 

「ふーん」

 

気流と言われてもまだ幼い一誠にとってチンプンカンプンなことで何気なく

窓の外を眺めた。眠っている間、随分遠いところまで飛んでいたようで最後に

見た光景とは違い、銀色の大地が見えていた。そして銀に覆われた巨大な山が見えくる。

 

「綺麗だねー。雪山かな?」

 

「アルボルズ山脈の中部ダマーヴァンド山でしょう」

 

リーラが一誠の肩から顔を出す感じで窓の外を見た。リーラと共々しばらく外を見ていると

ヌゥッと窓の向こうからギョロリと獣のような目が雪山を遮ってこちらを覗くように動かしていた。

 

「・・・・・リーラさん、これ、なに?」

 

「・・・・・まさか」

 

―――刹那。

 

『見つけた』

 

鋭い鉤爪が、巨大な手が飛行機の壁を突き破って一誠たちを外へ引き摺りだした。

その結果、飛行機は損傷してかなり危険な状態で飛行する光景を目の当たりにした

一誠は金色の杖を具現化して、

 

「氷れっ!」

 

開いた穴に氷を張って塞いだ。そのおかげか飛行機は状態を保ったまま航空するが、

一誠たちは雪だらけの地上へ落下していくばかり。

 

「リーラさん、ドラゴンになって良い!?」

 

「構いません!」

 

「よーし!」

 

一瞬の閃光が一誠を包み弾け、金色の巨大なドラゴンへと成った一誠は空中でリーラと

オーフィスを背で受け止めた。

 

『ううう・・・・・ここ寒い』

 

「しばらくのご辛抱を。ですが、今のは一体・・・・・」

 

「イッセー、上から来る」

 

『え?』

 

オーフィスの指摘に一誠が目を上に向けた瞬間、黒い巨大な影が迫っていた。

慌てて間一髪避けると影は通り過ぎた。

 

『今のなに!?』

 

「あれ、ドラゴン。懐かしいドラゴン」

 

「オーフィスさまが御存じのドラゴンですか。では、あのドラゴンはなんですか?」

 

「天龍と邪龍に近いドラゴン・・・・・『天の邪龍』アリュウ」

 

入り乱れた神々しさと禍々しいオーラが纏う頭部に二本角を生やしたドラゴン。

タンニーンより二回り大きく、白と黒の紋様みたいな模様が全身に広がり、

尾が二尾なドラゴン。ニ対の巨大な翼を生やし、紫の双眸が一誠を見据える。

 

『オーフィス。このような場所で龍神のお前と会うとはな』

 

「久しい、アリュウ。でも、どうしてここにいる?」

 

『答える必要があると思うか?』

 

「どっちでもいい。けど、我とイッセーは戦うつもりは無い」

 

『そうはいかん。珍妙なドラゴンが目の前にいるのだ。

ひとつ、どれだけの実力なのか試してやる。―――久方ぶりに死闘を興じようぞ』

 

咆哮を上げたアリュウ。戦意が満ちた双眸が一誠に向けた。

 

「イッセー、逃げる」

 

『逃げるってどこに!?』

 

「アリュウは邪龍と同じぐらい厄介。アルビオンとドライグの次に強い。

もう一匹の天龍と謳われているドラゴン。だから、今のイッセーじゃ勝てない」

 

『それって実際どれだけ強い―――うわっ!』

 

身体全体からレーザービームのような光線を放ったアリュウから離れる。

一つ一つのビームの威力は強大で、銀色の大地に次々とクレーターを作るほどだった。

 

「とにかく逃げる」

 

「オーフィスさまなら倒せるのでは?」

 

「あいつ、ドラゴンから奪った魔力を探知して襲いかかってくる。

我も奪われたら追いかけられるから無理」

 

「魔力を吸収能力があると言うことですか。ならば物理的な攻撃でならば」

 

「ん、アリュウを倒すならそれがいい。でも、アリュウは強い」

 

逃げ惑う一誠の背で話し合っている二人だが、執拗にアリュウは追いかけてくる。

 

『どうした。お前はその程度か!』

 

『僕はまだ子供だよ!それに戦う理由もないのにどうして戦わないといけないのさ!』

 

『その姿はハッタリか。お前からオーフィスの力を感じるというのにな!』

 

『僕はまだ修行中だいっ!』

 

『ならば、今はそれが修行だと思え!』

 

『無理ぃっ!』

 

どこに行こうとも、逃げようとも追いかけてくるアリュウ。

そんなアリュウにリーラはグンニグルを展開して攻撃を始めた。だが、軽やかに回避されてしまった。

 

「けん制ではまったく通じませんか」

 

「イッセー、頑張る」

 

『何気にこの状態はタンニーンと修行したような感覚だよ!』

 

『ほう、タンニーンと出会ったのか。そいつはどこにいるか聞かせてもらおうか!』

 

『何か殺る気が増した!?』

 

山にまで逃げる一誠。背後から光線が放たれ、

直撃コースではリーラとオーフィスが相殺し防いでいくが

 

『しつこいと嫌われちゃうの知らないの!?』

 

『生憎だが、俺に好く物好きなドラゴンはいない』

 

『いたらどうする?』

 

『邪魔だから消す』

 

『・・・・・』

 

このドラゴンは会いたくなかったと一誠は心の中で泣いた。

しばらく逃げ惑い、山に沿って急上昇する際にリーラが指摘した。

 

「一誠さま、山に向かって攻撃してください!」

 

『分かった!』

 

口内からタンニーンと同じような攻撃をと思い浮かべ、火炎球を吐けば、

リーラとオーフィスも山に攻撃を始めた。すると、その衝撃で山に積もっている雪が

波のように激しく怒濤に迫ってきた。

 

「そのまま真っ直ぐ!」

 

リーラの指示に従い、雪崩に突っ込む一誠。グンニグルの一撃が一誠の進む道となり

雪の中を突き進みついには抜け出した。

 

『で、出られた・・・・・。さ、寒い・・・・・』

 

「あの雪崩でアリュウが身動き取れていなければいいのですが」

 

「・・・・・アリュウの気配が感じなくなった?」

 

オーフィスの疑念は一誠とリーラにも伝わり、アリュウの姿を捉えようと目を辺りに動かすと。

 

『―――俺はここだ』

 

『えっ!?』

 

突如、一誠の至近距離から歪んだ空間から顔を出すアリュウが極太のエネルギー砲を放った。

回避する暇もなく、リーラとオーフィスを包むように手で覆って全身に金色の球体状の膜を

張った瞬間に攻撃に当たってそのままダマーヴァント山に墜ちる。

 

ドゴゴゴゴゴゴゴッ!

 

勢いは留まらず、穴を作りながら地下深くまで突き進む。

それほどまでアリュウの攻撃の威力は凄まじいと認識させられる。

そして一誠たちは空洞があるところで止まった。

 

『だ、大丈夫・・・・・?』

 

「一誠さまこそ、お怪我は」

 

『全力でガードしたから怪我はないよ』

 

ここで何時までも隠れているわけにはいかないと一誠は思うが、

戦いやすくするため龍化を解いた。

 

「この姿なら負けないぞっ」

 

ドラゴンの翼を展開して意気込む。神器(セイクリッド・ギア)を使えるようになり、

ネメシスの能力を駆使すれば相手の力を封じることも可能だ。一誠はネメシスの力を使って

早々に逃げる算段だ。リーラとオーフィスに自分の身体にしがみ付くようにと言おうとした矢先、

ズシンと鈍い音が聞こえてきた。

 

『―――――フハハ。こいつは珍しい。珍しすぎて愉快だ』

 

「今度は誰!?」

 

『こっちだ』

 

ジャラリと金属同士が擦れる音。音がした方へ振り向くが常闇のように真っ暗な洞穴で何も見えない。

ドラゴンの翼を仕舞うと天使のような金色の翼を生やして発光させた。眩い光が洞穴を照らすと

一誠たちの目にとんでもない光景が飛びこんできた。

 

手足を獣の皮で作った縄で縛り、鉄の杭と鎖で動きと開かないように口を封じられている

三つ首の生物。黒光りする鱗は時折紫色の発光現象を起こし、

その姿は名だたる生物であることを窺わせてくれる。

 

「ドラ・・・・・ゴン?」

 

困惑する一誠が漏らした言葉に三つ首の生物ことドラゴンはニヤリと口角を上げた。

 

『久しいなネメシス。なんだ、お前も封印されたのか。くくく、皮肉だなぁ?』

 

「え、ネメシスのこと知ってるの?―――――うん、分かった」

 

聞いた一誠が誰かと話し合ったような言い方をした時、

一誠の前に一つの巨大な魔方陣が出現をして一瞬の閃光と共に巨大なドラゴンが出現した。

 

『その言葉そっくり返してくれる。よもや、こんな山の地下深く幽閉されていたとはな』

 

「ネメシス、知っているの?このドラゴン」

 

一誠の言葉にネメシスは一誠へ一瞥しながら答えた。

 

『こいつは「魔源の禁龍(ディアボリズム・サウザンド・ドラゴン)」アジ・ダハーカ。

堕天使の総督から邪龍の事を聞いた時に出た名の邪龍の筆頭格の一匹だ』

 

「おおー!アジ・ダハーカなんだ!」

 

『・・・・・なんだこいつ、妙に嬉しそうだな』

 

目を爛々と輝かせて尊敬の眼差しを向ける一誠に、アジ・ダハーカは怪訝な眼つきで見ていると、

ネメシスが答えた。

 

『この人間、いやドラゴンはお前を含めた邪龍の筆頭格と会いたがっていたんだ。

そのうちの一匹であるお前と会えたから嬉しいんだろう』

 

『邪龍に会いたいなどもの好きなドラゴンだな』

 

『アジ・ダハーカ。聞いて驚け、この兵藤一誠は元人間だ。身体はグレートレッドの

肉体の一部とオーフィスの力で復活した元人間であり人型のドラゴンだ』

 

アジ・ダハーカの目が丸くなった。それを見てネメシスは愉快そうに笑みを絶やさない。

 

『・・・・・嘘ではないのだな』

 

『私が嘘を吐く以前に感じているはずだが?目の前にオーフィスがいるのにもう一つ

オーフィスの力を感じ、グレートレッドの力を感じているのを』

 

『・・・・・』

 

当の一誠は、何故かアジ・ダハーカを拘束している鎖を懸命に解こうとしている。

その行動に訝しいと目を細める。

 

『何をしている』

 

「え?痛そうだから釘を抜こうと思って」

 

『俺は暗黒龍と呼ばれ、人間を喰らう凶悪なドラゴンだぞ。

そんなドラゴンを解き放とうとお前はしているんだが?』

 

「そうなの?」

 

『間違ってはいないな』

 

あっさりと同じ邪龍のネメシスが肯定した途端に難しい顔を浮かべた。

 

「そうなんだ・・・・・うーん、家族になって欲しいんだけどなぁ・・・・・」

 

『・・・・・家族だと?』

 

『こいつ、アルビオンやティアマット、タンニーンと友達になってという

物好きなドラゴンだぞ?』

 

『あの天龍と龍王、元龍王にもか!フハハハハ!本当に物好きなドラゴンだ!

始めてみるぞこんなバカなドラゴンを!』

 

杭で口が塞がれて開けれないが、アジ・ダハーカは盛大に笑った。笑われて一誠は頬を膨らます。

 

「笑うなよ!」

 

『これが笑わずにいられるかっ。俺がここまで笑ったのは本当に久し振りだ。

おい、ネメシス。クロウ・クルワッハとアポプスはどうなっているか知っているか?』

 

アジ・ダハーカは同じ邪龍の情報を聞きだした。一度ネメシスは首を縦に振って答えた。

 

『アポプスは忘れたが、クロウ・クルワッハは人間界と冥界を行き来して

修行と鍛練の為に見聞している』

 

『なるほど、あいつはまだしぶとく生きているか。アポプスは封印されているかも

しれないがどうでもいい。それより、外で暴れていたようだな?誰と暴れている』

 

『ああ、厄介なことにアリュウと出会ってしまってな』

 

目元を細め出すアジ・ダハーカ。アジ・ダハーカもアリュウの存在を知っていたらしく、

若干嫌そうな顔を浮かべた。

 

『奴か・・・・・それは厄介だな』

 

『どうだ、一緒にアリュウを撃退しないか?今の今までこの洞穴の中で封印の形で

幽閉されていたんだ。暴れたいところだろう』

 

いきなり共闘を申し込んだネメシス。リーラとオーフィスは静観の態勢でいて、

何故か一誠はアジ・ダハーカの頭の上に乗った。

 

『その後の俺はどうすればいい?お前の能力なら俺を倒せんでも

封印することぐらいは可能だろう。が、俺は封印される気はないがな』

 

不敵な物言いを言うアジ・ダハーカ。ネメシスは人差し指を立てて提案した。

 

『まだ成長途上の兵藤一誠と、私たちとついてこないか?』

 

『なんだと?』

 

『こいつらといると退屈な時間がなくなる。ドラゴンは力を呼ぶ特性だからな。

勝手に向こうから強者が現れて―――』

 

ドッガアアアアアアアアアアアアアアンッ!

 

洞穴に風穴が開いた。そして翼の羽ばたく音と共にアリュウが侵入してきた。

 

『見ての通り、強い奴が来てくれたぞ』

 

ネメシスがアジ・ダハーカに背を向け、アリュウと対峙する。

アリュウは一誠たちを見渡し、口角を上げる。

 

『なんだこれは。こんな場所に邪龍の筆頭格が二匹もいるではないか。

しかもどうやら封印されている様子のままだなアジ・ダハーカ』

 

『こんな無様な姿でお前と再会なんて願い下げだったがな』

 

ジャラリと鎖を揺らしながら発するアジ・ダハーカ。アリュウから視線を逸らし、

ネメシスに話しかけた。

 

『取り敢えず、目の前の厄介なあいつと戦うのは構わない。が、その後のことは終わってからだ』

 

『決まりだな』

 

歪みだす空間から飛び出す幾重の鎖がアジ・ダハーカの動きを封じる杭や鎖に巻き付き、

 

『久方ぶりのシャバの空気を思う存分吸うが良いアジ・ダハーカ』

 

その言葉と共に杭と鎖があっという間に解かれて、

邪龍の筆頭格の一匹『魔源の禁龍(ディアボリズム・サウザンド・ドラゴン)』アジ・ダハーカの

解放と復活の瞬間が一誠たちの目の前で起きた。

 

ギェエエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

 

激しく咆哮を上げるアジ・ダハーカが洞穴の中で猛突進してアリュウを

外まで追いやれば六枚の巨大な翼を生やして空を舞う。

 

『フハハハハッ!久し振りの自由という気分は実に愉快で最高だっ!アリュウ、覚悟しろ!』

 

『邪龍の筆頭格と数えられている戦の魔法を駆使する邪龍が相手ならば不足ではないな!』

 

空に二匹のドラゴンが舞い戦闘を始めた。幾重の魔方陣を展開し魔力弾を放つ応戦、

肉弾戦の様子を一誠たちは見ていた。

 

「すごーい」

 

『あれが邪龍同士の戦いだ。いや、アリュウは天龍にも近いドラゴンだったな』

 

「天龍なの?邪龍なの?どっちも近いってオーフィスから聞いたんだけど」

 

『性格的には邪龍だ。それはそうと兵藤一誠どうする?』

 

「なにが?」

 

『今ならアリュウをアジ・ダハーカに任せて目的の地へ向かうことができる。だが、アジ・ダハーカを放っておけばいずれお前の脅威となる』

 

ネメシスの言いたいことをリーラは悟る。だが、これは一誠自身が答えなければならない

問いで静かに一誠へ視線を向けて耳を傾ける。と、リーラの目に複数の魔方陣が出現したのを

確認した。魔方陣の光と共に見覚えのある人物たちが出現した。

 

「あ、父さんと母さん、神王のおじさん・・・・・と誰?」

 

「ああ・・・・・良かった。無事なのねっ」

 

「・・・・・心配したぞまったく」

 

誠と一香が一誠とリーラの姿を見て安堵で胸を撫で下ろす。ユーストマと頭上に

金色の輪っかを浮かべている男性がアリュウとアジ・ダハーカを見て目を丸くしていた。

 

「こいつはどういうことだ。アジ・ダハーカとアリュウが戦っているだと?」

 

「アジ・ダハーカについては退治されていたはずでは・・・・・」

 

二人の背後からネメシスが意外そうに話しかけた。

 

『神王と大天使か。お前らまで来るとはな』

 

「「ネメシス・・・・・っ!」」

 

警戒するがネメシスの前に一誠が庇うように立って頬を膨らます。

その姿にユーストマと男性は誤解されていると察知し弁解を試みた。

 

「悪い坊主。ただネメシスが表に出ていることに驚いているだけだ」

 

「申し訳ございません」

 

「むー」

 

『兵藤一誠、私は気にしていないからそう怒るな』

 

ネメシスからもそう言われ、一誠は頷いた。それから一誠とリーラに事情聴取。

 

「これはどういう状態なんだリーラ」

 

「はい、私たちは飛行機で問題なくヨーロッパに向かっていましたが、

途中でアリュウと遭遇し私たちを見つけては一誠さまに興味と好奇心を抱いた模様で

力を示せと襲いかかってきたのです。ですが、今の一誠さまでは敵うはずもなく、

このダマーヴァンド山の地下深くまで追いやられたところ、封印の形で幽閉されていた

アジ・ダハーカと出会い、アリュウを撃退に協力してもらっているところです」

 

リーラの説明を聞き、四人は頬を引き攣らせた。

 

「・・・・・一誠、お前はどれだけ力を引き寄せるんだ」

 

「一度にしかもこの場でドラゴンを二匹と出くわして」

 

「邪龍の筆頭格のドラゴンに協力を得るなんて」

 

「本来絶対に有り得ないことなのですが」

 

「????」

 

何のことだか分からないと小首を傾げ疑問符を頭の上に何度も浮かばせる一誠。

その間にもアリュウとアジ・ダハーカは熾烈な戦いを繰り広げている。

 

「そう言えば一誠。お前、あの剣を使わなかったのか?」

 

「使う暇がなかったよ。ドラゴンになって逃げ回っていたんだし」

 

「あー、そりゃそうか。んじゃ、今使え」

 

「分かった」

 

リーラからカードを受け取り何時ぞやの装飾と意匠が凝った金色の大剣を具現化して手に持った。

 

「お、何だ坊主その剣は?」

 

「神聖な力を感じますね」

 

「ユーストマとミカエルは知らなくて当然か。この大剣は原始龍、

ドラゴンを生み出すシステムという存在がドラゴンを封印もしくは倒す為に創った

この世界で数少ないドラゴンスレイヤーだ」

 

誠の説明を聞き驚くユーストマとミカエルという男性。もっと色々と聞きたいところだが、

まずこの現状を治めることが最優先と判断した。

 

「一誠、試しにその剣でアリュウと戦って来い」

 

「ん、分かった。ネメシス、行こう」

 

『ああ、私も久々に戦うとしようか』

 

ネメシスと共に空を駆け、アリュウに攻撃を仕掛けた。

 

「勝負っ!」

 

『私たちも交ぜてもらう』

 

周囲の空間が波紋を生じ数多の鎖が飛び出してアリュウに伸びて行くも

数多の光線がそれを消し去った。横からアジ・ダハーカの攻撃を避け、

小さい体で高速に動く一誠からも躱し態勢を整えると幾重にも魔力による攻撃をした。

 

『流石に多勢に無勢か。しかも厄介な能力を持つドラゴンが二匹も同時に相手じゃ面倒だ』

 

アリュウの背後の空間が歪みだして穴が開いた。

 

『今回は退こう。だが、次はもっと戦いを興じようぞ。それまで―――兵藤一誠』

 

「ん?」

 

『グレートレッドとオーフィスの力を宿すドラゴンとしてお前の成長を期待している。

俺が再びお前の前に現れた時は―――』

 

最後まで言わず、開いた空間に姿を暗ました。空間も元に戻るように閉じた。

一つの脅威が去ったことで一誠は一安心とアジ・ダハーカに声を掛けた。

 

「アジ・ダハーカ、大丈夫?」

 

『お前に心配されるほど俺は弱くは無い』

 

『その割には人間に封印されて弱体化していないか?あの時より力も覇気を感じないが?』

 

『その言葉そっくりそのままお前に返してやろうか』

 

「あー喧嘩はダメだよー!」

 

戦意が籠った双眸で睨み合う邪龍の間に両腕をパタパタと動かして止めようとする。

それが削がれたのかネメシスはアジ・ダハーカに問うた。

 

『アリュウはいなくなった。残る問題はお前だ』

 

『ふん、俺を封印でもするか?さっきも言ったがせっかく自由になったんだ。

そう簡単に再び封印されるほど俺は甘くない』

 

「じゃあ、一緒に行かない?」

 

純粋に一誠は誘いの言葉を投げた。怪訝な視線を送ると、一誠はこう答えた。

 

「ねね、僕と家族になってよ!」

 

『またそんな事を言うか。それとも俺の力が目的か?』

 

「違うよ。アジ・ダハーカ格好良いもん。

それに他のドラゴンや邪龍と出会って家族にすることが僕の夢の一つだからね」

 

『・・・・・』

 

「ダメ?帰る場所がないなら一緒に行こうよ」

 

ドラゴンとはいえ一誠の戯言に付き合う気は無いとアジ・ダハーカは思っている。

封印を解いて自由にしてくれたことに関しては貸しとして受け止めている。

 

『オーフィスを取りこんで次はグレートレッドも取り込む気か?』

 

「ううん、グレートレッドって言うドラゴンとは戦ってみたいなぁー」

 

『なに?』

 

「だって、オーフィスより強いドラゴンなんでしょ?それにオーフィスと一緒に

僕を生き返らしてくれたドラゴンでもあるからさ。ありがとうと言って、オーフィスと

グレートレッドが生き返らせてくれた僕がどれだけ強くなったのか何時か戦って証明したい。

倒せなくてもね?」

 

―――バカげている。あの不動の存在と自ら戦いたがるドラゴンはいない。

感謝の印に自らの強さを証明する考えを持つドラゴンは後にも先にも

目の前の小さなドラゴンしか現れないだろう。

 

『お前が思っているよりグレートレッドは強いぞ。分かっているだろうな?』

 

「ドラゴンは皆強いってことぐらいは分かっているつもりだよ」

 

当然のように一誠は発した

 

『・・・・・ならば、証明してみろ』

 

「証明?」

 

アジ・ダハーカは口角を吊り上げた。

 

『お前の心の強さを俺に証明してみせろ!もしも俺を倒せた暁にはお前の望みを叶えてやる!』

 

アジ・ダハーカが襲いかかった。一誠はギョッと目を丸くするが、自分を試しているんだと悟り

大剣を前に構えた後にアジ・ダハーカへ勇敢にも飛び掛かった。

やらなければやられる。倒さないと自分が倒される。その思いが一誠を駆らせ支配し、

持てる全ての力を以って、一誠は邪龍に立ち向かった。

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