HIGH SCHOOL D×D ―――(再)――― 作:ダーク・シリウス
最強の邪龍が迫っていることを気付かないまま吸血鬼の本拠地にて一誠とルーラは
吸血鬼の城に居座り続けて一週間が経とうとする。
チューチューチュー
今日もアルトルージュの朝食は一誠の血。飲むにつれ、目が潤い熱に浮かされたように
ほんのりと顔が朱に染まる。自分の血を吸われ生きた心地がしない一誠は不安げな顔で
アルトルージュを見詰める。
「ん・・・・・いつ飲んでも一誠の血は至高の味ね・・・・・」
「こっちは怖い思いをしているんだけど・・・・・」
「慣れないと精神的にキツくなるわよ?」
「じゃあ吸わないでくれる?」
「それは無理」
「即答!?」と目を張る一誠にペロリと一誠の腕に流れる血を艶めかしく舐め取る
仕草をしたアルトルージュ。
「だって、この味を知ったから止められないもの」
「うう・・・・・病み付きになったの・・・・・?」
「そうね、ふふふっ」
意味深に笑うアルトルージュは熱い視線を一誠に向けるようになっていた。
「ところで一誠」
「うん?」
「あなたって好きな人はいる?」
いきなりそんなことを聞いてきた。ルーラーは目を丸くしているのを気にせずに一誠は答えた。
「いないよ。でも、僕のことが好きだって言う女の子が一杯いるよ」
バンッ!
「では、私と毎夜熱く過ごす関係になろうではないかぁっ!」
扉を破壊しながらル○ン並のジャンプ力で一誠に飛び掛かったフィナ。
「プライミッツ・マーダ」
冷たくどこまでも低い声音でアルトルージュは命令した。
主の命令に忠実に動くプライミッツ・マーダはフィナを巨大な身体で体当たりして
のし掛かり、
「プライミッツ・マーダ!?は、放したまえ!私は麗しき美少年の一誠と
私の棺桶の中で一時を過ごす役目が―――!」
『・・・・・』
どこかへと引きずられていくのであった。その光景を一誠とルーラーは冷や汗を流す。
「ねえ、あのヒト・・・・・」
「なにも言わないでちょうだい」
「意外と吸血鬼も様々なんですね・・・・・」
「私の父上の代からいる凄腕の吸血鬼なのだけれど、昔からのあんな感じだったみたい」
「「・・・・・」」
そうなんだぁ・・・・・と二人の心が一つになった瞬間だった。
「でも、あんな私の騎士だけど私の大切な家族でもあるから好きよ。
リィゾやプライミッツ・マーダもね」
「・・・・・ははっ!」
「どうして笑うのよ?」
おかしなことでも言ったかと一誠に見据えると、
「アルトルージュも家族を大切に思っている優しい女の子なんだなって知ったから、
僕と同じだから嬉しいんだよ」
「・・・・・」
純粋無垢なアルトルージュに対する発言。
一誠からそう言われて最初は思考が停止仕掛けたが理解するにつれ次第に
耳まで朱に染まっていく。
「な、なによ・・・・・いきなりっ」
あまりにも照れ臭く、ツンデレのような反応をしたアルトルージュに一誠は朗らかに言い続けた。
「別にいきなりじゃないよ?リィゾお兄ちゃんからキミの話を聞いているから。
一生懸命立派な吸血鬼になろうとしていて、お父さんの家を継いでいる
自分たちの主は誇り高い吸血鬼だってね」
「(―――っ。あいつ、何勝手にヒトの話をベラベラと・・・・・ッ!)」
「だからそんなアルトルージュは良い吸血鬼だと僕は思ってるからね。
だからリィゾお兄ちゃんやプライミッツ・マーダ、・・・・・フィナお兄ちゃんが
アルトルージュの傍にいるんだよきっと。アルトルージュのお父さんの娘だから
じゃなくて一人の女の子として、立派になろうとしている一人の吸血鬼としてさ」
トクン・・・・・ッ
アルトルージュの胸が小さく高鳴った。まだ子供なのに一誠は大人のようなことを述べて―――。
「ね、ルーラー」
「・・・・・協会の信徒としては複雑ですけど、あなたは良い吸血鬼だと知ったからには
嫌いにはなれません。好きにもなれませんが・・・・・」
「もう、素直じゃないなぁー」
「こ、これは素直とかそうじゃないの問題ではありませんっ」
「僕はルーラーが可愛い女の子で優しいことを解っているのに」
一誠の発言で顔が真っ赤になったルーラーたちから音もなく部屋から出たところで、
「姫、顔が赤いのですが・・・・・」
「・・・・・(キッ)」
ゲシゲシッ!
「ひ、姫?何故足に蹴りつけるのですか?」
「うるさいうるさいうるさいッ!リィゾ、あなた私のことを喋ったわね!?
聞いていて恥ずかしかったわよ!」
「・・・・・ははぁ、なるほど姫」
「なにかしら・・・・・」
フィナが爽やかに言った。
「美少年に褒められて照れておられているのですな?」
「んなっ!」
『・・・・・』
扉の向こうに待機していたリィゾ、フィナ、プライミッツ・マーダと出くわした。
そしてフィナに指摘されリンゴのようにまた真っ赤になった。
「リィゾ、もっと美少年に姫の良さを教えたら姫を崇拝するのでは?」
「・・・・・悪くないな」
「なら、姫の幼少時代の写真でも見せて―――」
ゴゴゴ・・・・・ッ!
「貴方たち、覚悟はいいかしら・・・・・っ」
アルトルージュの声音はどこまでも低く、怒りで空間に歪みができるほどキレていた。
リィゾとフィナは姫の怒りとそのオーラに息がピッタリで
「「・・・・・」」
―――ダッ!(逃走)
「こらぁっ!待ちなさい二人ともぉーっ!」
逃走し、逃走する二人の騎士を追いかける。その様子をプライミッツ・マーダは
見送り一誠とルーラーがいる部屋に入らずにどこかへと行った。
それからしばらくしてアルトルージュが疲れた表情で一誠とルーラーのところに
戻ったとき・・・・・、
「あっ、お帰りー」
「・・・・・子供の頃のあなたの写真を見させてもらっています」
深紅の表紙の本みたいな物を開いていた。それはアルトルージュの過去の写真が収まっている
アルバムであったので、甲高い悲鳴を上げたアルトルージュ。
そして、二人の手にあるアルバムは一体誰の手によって渡らせたのか―――。
「―――プライミッツ・マーダァァアアアアアアアアアアアアアアッ!」
怒号が城の外まで轟いたのを城下町の住人(吸血鬼)たちが聞こえた程だった。
「二人とプライミッツ・マーダー・・・・・大丈夫?」
「大きいタンコブですね・・・・・」
「ははは、あんな姫を見たのは初めてだったからつい」
フィナが苦笑いをするも頭に痛々しいほど大きなタンコブを作っていた。
「それもキミたちのおかげだろう」
「僕たち?別に何もしていないよ」
「お前たちという存在が姫を楽しませているのだ」
リィゾも話に加わり、二人に視線を送る。
「兵藤一誠、姫と親しい関係になって欲しい」
「なんで?」
「姫は友人という存在がいないのだ。フィナと共々、
騎士として姫を守りプライミッツ・マーダーは姫のマスコットみたいな存在だ」
「姫には妹君がいるのだが、仲がとても悪くて姫と話し相手になってくれる存在がいないんだ」
二人の話を聞き、一誠とルーラは顔を見合わせた。そして一誠は二人と一匹に向かって言った。
「僕は嫌だよ。アルトルージュと親しくなるなんて」
「「・・・・・」」
拒否され、二人はやはりか・・・・・とどこか落胆の気持ちが―――。
「友達じゃなくて家族だったらいいよ。そしたら友達以上の関係になれるからね。
リィゾお兄ちゃんやフィナお兄ちゃん、プライミッツ・マーダーみたいにさ」
一誠の言葉を聞き目を丸くした。
「私とリィゾ、プライミッツ・マーダーは姫の家族・・・・・だって?」
「僕はそう思っているよ?だってお互い仲が良いし大切に想い合っているじゃない。
僕が言う家族ってさ、皆が相手のことを大切に思っていて一緒にいたいっていう気持ちがある、
そう言う意味なんだよ」
不意にリィゾとフィナは顔を見合わせる。一誠が家族になりたいという気持ちが
あるということは、アルトルージュを受け入れてくれるのではないかと思い始めた。
「姫を受け入れてくれるのか?」
「アルトルージュみたいな面白くて楽しい、良い吸血鬼がいるって分かったから家族になりたいな」
「美少年がいた施設は教会と通じている。教会が姫に襲うようなことがあればキミはどうする?
今キミの隣にはその教会の関係者がいるのに」
「僕は一年間、あそこで暮らして強くなるためにいるんだ。
だから関係ないと言い切れないけど僕は大切な家族を守りたい」
そう言い切った一誠。金色の瞳の奥からでも固い意志と決意が覗きこめる。
一誠の話を聞き一度目を瞑ったリィゾは頭の中であることを考え、
「そうか・・・・・なら―――」
リィゾが剣をルーラに突き付けた。その行動をするリィゾを誰もが目を丸くしたが
リィゾは一誠に真っ直ぐ向かって語りかけた。
「この者と姫、お前はどちらしか救えないという選択を迫られたらどうする?
姫を選択して姫を救う―――。この者を選択してこの者を救う―――。お前はどちらを選ぶ?」
「おい、リィゾ。まだ子供の美少年にその選択は・・・・・」
「黙っていろ。何時かぶつかる辛い選択だってある。二つに一つしか選べれない
現実に強いられてどちらも―――」
と、リィゾの剣の切っ先を触れた一誠。―――刹那。一誠は黒と紫が入り乱れたオーラに包まれ、
剣がそのオーラに包まれながらリィゾの手に届こうとした。
「っ!?」
その剣を手放すことで剣だけが消失した。信じがたい光景を目の当たりにし、
当の一誠は黒と紫が入り乱れた、赤い宝玉が各部分にある龍を象った全身鎧を装着した状態で
リィゾに向かって返事をした。
「僕は二人とも助けるよ。例え僕が死んでも、死んでも助ける」
「その姿は・・・・・っ!」
「僕の中にいるドラゴンの力だよ」
禍々しいオーラが一誠から発し、吸血鬼の二人と魔獣のプライミッツ・マーダーを
警戒させるほど濃厚で濃密なオーラを窺わせる。
「僕は強くなって僕をイジメる皆を見返す他にも、
大切な人を守りたいから強くなりたいと思っている。
だから、ルーラもアルトルージュも何がなんでも僕が守るよ」
鎧が光と化となって消失し、生身の姿の一誠が現れた。
「今の鎧はとっておきなんだ。なんたって全部削って消しちゃうんだからね。
リィゾお兄ちゃんが持っていた剣のようにさ」
「消滅の力か・・・・・」
「うん、そう。だけど余計なものまで消しちゃうからまだまだ上達しないとダメなんだよねー」
「あはは」と苦笑いを浮かべる一誠だったが、二人の騎士は冷や汗ものだった。
「(あ、あっぶない力を持っていたとはこの美少年は・・・・・)」
「(末恐ろしいドラゴンだ。いつしか私たちを超える実力を身に付けるだろう)」
敵になるのならば今ここで始末していた方が後顧の憂いを絶つことができるものの、
家族になりたいとさっき宣言した手前、そうすることはできない。
「あっ、そろそろ夕飯の時間だね。ルーラ、作りに行こう?」
「あ、はい。わかりました」
年少組は厨房へと向かい、二人と一匹から離れた。二人がいなくなろうとしている
後姿を見ながらフィナが苦笑を浮かべながら言葉を漏らす。
「・・・・・家族、か」
「誰かにそう言われるとは思わなかったな」
「そうだね。それにあの二人がいると、あの二人と接すると私たちは何らかの変化が
生じていく。それは良い意味でなのか悪い意味でなのか分からないが」
「今までの日常よりはマシな感じはすることだけは確かだ」
『・・・・・(コクリ)』
プライミッツ・マーダーも同意と頷く。すると、一誠とルーラの声が聞こえてきた。
『一誠くん、今日の夕飯なにしましょうか?』
『ニンニク入りの肉料理でもしようかなー』
『そうですね。思いっきりニンニクを入れてみましょう』
『吸血鬼ってニンニクがダメだって言うし、好き嫌いはダメだからね』
「「――――――」」
聞き捨てにならない発現が聞こえたのは幻聴ではないはずだ。だから―――。
「「ちょっと待て殺す気かっ!?」」
吸血鬼が苦手とする一つが発揮される前に慌てて吸血鬼キラーな小さいシェフの二人に駆け寄って
ニンニクだけは入れるな!と激しく注意する二人の騎士だった。
その様子を見ていた兵士や侍従は苦笑を浮かべていたのは気のせいではなかった。
―――○●○―――
その日の夜。ニンニク入りの肉料理ではないグリルされた肉料理やサラダ、
ご飯にスープを食べていた最中だった。一人の兵士が扉を開けてはリィゾに耳打ちをし、
リィゾがアルトルージュに近づき耳打ちをすると嫌そうな面持になった。
「何で呼ばれなきゃならないのよ・・・・・」
「ですが、行かなければなりません」
「面倒くさいけどしょうがないわね・・・・・」
アルトルージュはどこかに行かないといけない雰囲気を醸し出す。一誠は気になり質問をした。
「どこかに行くの?」
「ええ、王さまのところにね。あ、行く前に一誠。ちょっとだけ血を吸わせて」
椅子から降り、一誠の血を吸えばフィナを同伴させてこの場からいなくなった。
「この国の王さまって・・・・・」
「教会側は知っているだろうが、ここはツェペシュという吸血鬼が王の座に座っている。
姫はその王がいる城へお向かえになられたのだ」
「どうして呼ぶんだろうね?」
「わからない。だが、今の吸血鬼の世界は面倒なことになっていてな」
「と、いうと?」
ルーラの反応に「知らないのか?」とリィゾが不思議そうに答えた。
吸血鬼の敵である教会が吸血鬼の世界の事情と状況を全てではなくとも
把握しているはずだと思っている。
「私たちは吸血鬼との戦いを教わっているのですが、吸血鬼の世界の社会までは
まだあまり教わっていないんです」
「そうか。知らないなら教えよう。今の吸血鬼は二つに分かれているのだ」
「二つ?」
「噛み砕いて言えば男が吸血鬼を纏めるか、女が吸血鬼を纏めるかと揉め合っていてな。
今じゃ男尊派のツェペシュ王のツェペシュ派、女尊派のカーミラ王女のカーミラ派という
二つの派閥が分かれている」
「じゃあ、あのおっきなお城って」
「ツェペシュという吸血鬼の王さまが住んでいる城だ」
広大な室内。下には真っ赤で大きな絨毯が敷かれており、魔物を象った始終が金色に
輝いていた。絨毯の先には―――一段高い所に王座が置かれていた。
王座に座るのは中年の男性。その王座から少し離れた位置に若い男性や中年、
初老の男性も列席している。
「アルトルージュ・ブリュンスタッド。王の前に馳せ参じてまいりました」
王座の前で跪き恭しく頭を下げるアルトルージュとフィナ。心の中では王に敬意と
忠誠などないが形だけでもと失礼のない言動をすると、王座に座っている吸血鬼が静かに口を開いた。
「アルトルージュ・ブリュンスタッド。最近、お前の騎士と魔獣と共に城下町で余所者が
見掛けると噂を小耳にしてな。その余所者について聞かせてもらいたくお前を呼んだのだ」
「・・・・・」
やはりこうなってしまったかと心中溜息を吐き、何とかあの二人に迷惑をかけないように
しなくてはと頭の回転を早くして真実と嘘を混ぜた説明をする。
「私の騎士一人が同性でまだ幼い人間の血だけしか飲まないのです。
人間の血を吸血しようと騎士が少し遠出をしたところお目当ての人間を見つけ
気に入ってしまい、私の城に閉じ込めているだけに過ぎません」
「まだ吸血鬼になっていない様子を見るにお前の騎士は敢えて生かしておるのか家畜として」
「・・・・・ええ、何分、私も気に入りましたから」
嘘は言っていない。王座に座る吸血鬼―――ツェペシュ王は怪訝な視線をアルトルージュに
向けてくるも言い続ける。
「私の眷属にしてしまえば、余所者の血を飲めなくなりますしわざわざ危険を冒して
人間たちが住んでいる町まで行かなくて済みます。そう思い余所者を敢えて生かし、
私たちの食事のポンプとして住ませております」
「・・・・・」
「これが全てでございます王よ」
それ以降、沈黙がこの場を支配し、アルトルージュは何とも形容し難い不安が徐々に
胸の奥から湧き上がる。
「アルトルージュ・ブリュンスタッド」
ツェペシュ王がアルトルージュに声を投げた。何を言われるのか、アルトルージュは静かに耳を傾ける。
「この地に余所者をいつまでもいさせるわけにはいかない。その余所者をここに連れてまいれ」
「っ・・・・・!」
予想だにしなかった言葉にアルトルージュとフィナは目を見張った。
なぜ、そんな事を言い出すのか理解しがたい思いで驚愕の色を浮かべたのだ。
「なぜ、あれは私の物です。王とは言え私の―――」
「私を謀る気か?その余所者、人間ではないのであろう」
「・・・・・っ」
「その証拠に一日も欠かさず余所者の血を吸っていたのだろう。
その結果、隠しきれていない力のオーラを感じてしょうがないのだよ。それがただの
他所者ではないという証だ」
しまったと、アルトルージュは思わず顔をしかめた。
「猶予は与えん。今すぐここへ連れてまいれ。逆らえば反逆罪とみなしブリュンスタッド家を消す」
「なっ、そんな横暴な・・・・・!」
「去れ。謁見は終わりだ」
短く突き放す言葉でアルトルージュは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、
フィナと王座の間から退出した。
「(一誠を連れて来なければ家が潰される。だけど、この王に一誠を渡せばどうなるか
分かったもんじゃない。どうすれば・・・・・!)」
アルトルージュとフィナが戻ってきた。だが、顔が暗いアルトルージュに一誠と
ルーラ、リィゾは何が遭ったのかと心配をした。
「どうしたの、アルトルージュ」
「・・・・・」
心配し、近づいて声を掛けると・・・・・。一誠は何か思い出したような言動をした。
「あ、そうだ。アルトルージュ。キミにあげたい物があるんだよ」
アルトルージュの心情を知らない一誠は金色の杖を具現化して能力を発動する。
眩い光が一誠たちを照らし、やがて光が消える頃には上から
赤い宝石の指環とネックレスが落ちて来てソレを一誠はキャッチした。
「はい」
「・・・・・これは?」
「落ち込んでいる子がいればプレゼントすると元気になるってお母さんが言ってたから。
だからプレゼントだよ。元気出して?」
「―――――っ」
自分を心配し尚且つプレゼントをしてくるなんて・・・・・。
驚きのあまりアルトルージュは「貰っていいの?」と尋ねた。
「うん、アルトルージュは僕たちの家族だからね」
「家族・・・・・?」
「僕とルーラ、リィゾお兄ちゃんとフィナお兄ちゃん、プライミッツ・マーダーは
アルトルージュが大切だから家族なんだよ?」
どこからともなく取り出した赤くて大きな首輪を出した一誠だが、残念そうに漏らす。
「これ、プライミッツ・マーダーの首輪だけど、
嫌がって付けてくれないんだよね・・・・・」
一誠の視線を受け顔を逸らすプライミッツ・マーダー。さらには「付けてよ」と首輪を
近づければ「誰がそんな物を付けるか」と大きな足でベシッと叩き、
身体全体からも醸し出している。そんな一人と一匹の様子にアルトルージュは小さく噴いた。
「プライミッツ・マーダーはプライドの高い魔獣だから犬のような扱いは絶対に嫌うの」
「・・・・・お手」
『・・・・・』
ポンッ
一誠が差し出した手より高く、大きな手が一誠の頭の上に乗っけられた。
自分のほうが偉いんだぞと威厳を示したプライミッツ・マーダーにちゃんと
手の平に乗っけてくれないことに一誠は不満げに頬を膨らます。
「いやはや、何とも珍妙な光景だろうか」
「美少年と野獣・・・・・悪くないか?いや、私という吸血鬼と美少年でなければ認めんぞ!」
「それ以前に一誠くんに敬遠されがちなあなたと慣れ合うことができるのでしょうか?」
「それは難しいところね」
いつしか和やかなムードとなり、プライミッツ・マーダーに犬の躾をし始めるものの、
一誠をあしらい、逆にしつこいと顔を引っ掻いた。
「ふぎゃっ!?」
「ああ、一誠くんっ」
痛そうにゴロゴロと床に転がる一誠を心配そうにルーラが声を掛けた。
その光景が微笑ましく、暗かったアルトルージュも既に明るくなっていた―――その時だった。
ドタドタと騒々しい足音が近づいてきた。
閉められていた扉が勢いよく開け放たれ、中に入ってきた兵士が慌てた様子で告げた。
「た、大変ですっ。ツェペシュ王の兵士がこの城を囲んでおります!」
「―――なんですって?」
「・・・・・美少年をただで渡さないと踏んだんだろう」
「え、どういうこと?」
状況が把握できない一誠とルーラ。リィゾは窓に近づき外を眺めた途端に目元を細めた。
「完全に囲まれているな。数は圧倒的にあっちの方が上だ。フィナ、王の城で何が遭った?」
アルトルージュとフィナしか知らない事実を、説明を求めた。
外では武装した吸血鬼たちがズラリと囲むように佇んでいて、
何時でも戦争が起きてもおかしくない状況と状態だった。
「・・・・・美少年を連れて来いと姫に命令したのだ。美少年の血のことを知られて」
「・・・・・そういうことだったのか」
ならばこの状況を回避する方法は限られる。
「王さまが僕と会いたいの?」
「そのようだな。だが、相手は吸血鬼だ。お前の血を吸いたいと思わない方がおかしい相手だぞ」
「その時は龍になってでも逃げるよ」
「では、いいのだな?」
確かめるリィゾをアルトルージュはその意図に気付く。
「待ちなさい。一誠をツェペシュに差し出すつもりなの・・・・・?」
「姫、この状況を打開する為にはこの手しかないかと存じ上げます」
「ダメよ。それだけは」
「では、他に打開する方法が御有りなのですか?よもやツェペシュ派の吸血鬼を
全て敵に回してでも兵藤一誠を気に入っているのですか?先代の家をあなたの代で
潰す覚悟はお有りか?」
リィゾからの質問に出掛けた言葉が咽喉につっかえて何も言えなくなる。
「姫、あなたが思っている兵藤一誠は弱くなど有りません。
もしも兵藤一誠が自分の力で逃走をできたならば陰ながら
私たちがあの教会の施設までフォローすればいい」
「帰って良いの?」
「お前たちの帰るべき場所はここではないからな」
「そっか、ちょっと寂しいかなー」
「では、私と永遠の愛を誓ってー!」
「ごめんなさい」
ズバッ!と拒否するのであった。
「僕がここにいると迷惑を掛けちゃうから行くね」
「だ、だめです一誠くん!」
ルーラーは吸血鬼が一誠の身の安全を保証するはずがないと思いで
制止の言葉を発するが安心させる笑みを浮かべた一誠に言われた。
「大丈夫。二、三日したら逃げるよ。必ずね。そしたらまた施設でイタリア語を教えてね」
「一誠くん・・・・・」
「それじゃ行ってきます」