HIGH SCHOOL D×D ―――(再)――― 作:ダーク・シリウス
一誠がヨーロッパで修行すること半年以上が経過した。定期的に通信用魔方陣で一誠と
連絡する誠と一香たち。あっちも様々な神々と出会い、そこで修業したりと世界を
見聞していて楽しんでいる様子だった。
「一誠くん」
「ん?なにルーラ」
「えへへ、呼んでみただけです」
施設の中では一誠とルーラが一緒にいることが当たり前のようになり、授業も討伐も常に一緒だ。
一誠がいるところにルーラがあり、ルーラがいるところに一誠がありと別れるその日まで続いた。
「戦士一誠。この一年間でお前は確実に強くなった。誇っても良い」
「ストラーダ先生やクリスタルディ先生の稽古のおかげだよー」
「非常に惜しい。このまま教会の戦士としていてくれれば私たちの後継者になって
ほしかったところだ」
「うーん、ごめんなさい」
「謝る必要は無い。私たちが教えたことを忘れなければそれでいいのだからな」
その日、何時ものように広場で剣術を稽古してもらっていた。気温も低くなり冬が
近いせいか若干漏らす息が白くなる。一誠の修業期間が近づいてくると、
話の話題が別れに関することばかりでしんみりとした雰囲気になる。
「ところで戦士一誠」
「ん?」
ストラーダ猊下が一誠を見下ろしながら問うた。
「お前は敵対している者たちを次々と味方にしているな」
「味方じゃないよ、家族だよ」
少々ストラーダ猊下の言い方に不満げで言う一誠。一誠にとっては味方にしたいなど考えていない。
周りからしてみれば敵を味方にしているとしか見えないだろう。
「ああ、お前からしてはそうだな。だが、我々教会の戦士にとっては複雑極まりないのだよ。
特に吸血鬼を味方にしたのは。もしも戦士一誠が教会の戦士として敵である吸血鬼と
仲良くなってしまったらお前は他の吸血鬼を討伐することはできたかな?仲良くなった
吸血鬼の目の前で吸血鬼にとって同胞の吸血鬼を。それで仲が悪くなってしまったら
戦士一誠はどうする」
「・・・・・」
その問いに一誠は戸惑いの色を隠さずにはいられなかった。
ストラーダ猊下は一誠のことを認めている。その純粋さと力、潜在能力さえも。
だが、ストラーダ猊下は・・・・・一誠は教会の戦士に不向きであることを悟った。
教会が敵とする存在を間違っても仲良くなってはならない。一誠の甘さが味方を
危険に晒す可能性がある。―――――倒すべき敵を倒さなければ意味がないのだ。
物言いたげな視線をクリスタルディ猊下から感じる。
「ストラーダ猊下・・・・・」
「分かっている。戦士一誠にとっては酷な質問だろう。
戦士一誠、答えは言わなくても良い。ただ私からの一方的な質問だ。すまんな」
「・・・・・うん、でも、これだけは言えるよ」
「「?」」
首を傾げる二人を見詰める一誠がこう答えた。
「友達になれないヒトがいることは分かっている。襲われて死ぬのは嫌だし、
もしもその友達が僕を殺そうとして襲いかかってきたなら・・・・・生きるために
戦うしかないと思う」
「稽古ありがとうございました」とお辞儀をして二人から離れた一誠。
残されたストラーダ猊下とクリスタルディ猊下は。
「・・・・・自分なりの答えを出したか」
「兵藤一誠くんにとって辛い選択でしょうな。あの子は純粋だがかなり甘い部分がある。
「そうだな。あの者が教会の戦士として育てれないのが残念だったが、
この方が良かったかもしれないな」
去って行った一誠が歩いた方へ視線を向ける。人の出会い方次第で人は変わる。
自分に置かれた状況と状態、人生と環境さえ善し悪しが左右される。
その日の夜。一誠はイタリア語を一人で勉強していた。
マスターとはいかないが最初のころより大分読み書きできるようになった。
無言で集中し勉強していると扉が叩かれる音が聞こえた。そのノックの音を反応して
「誰だろう?」と呟きつつ扉に近づき開け放った。
「まだ起きていたんですか?もう寝る時間ですよ」
「グリゼルダお姉さん?」
一誠の世話役のシスター・グリゼルダが様子を見に来たらしく、まだ起きている一誠を窘めた。
中に入るとイタリア語が書かれているノートに目をやり息を一つ。
「勉強も良いですが、決められた時間に寝ないと明日に響きます。いいですね?」
「はーい」
「はい、です」
「はい」
「結構、それと彼女はどこにいるか知りませんか?」
彼女?小首を傾げる一誠に「レティシアのことです」とシスター・グリゼルダが言う。
「部屋にいないのでここかと思いましたが・・・・・違うようですね」
「僕がこの部屋に戻って来てからルーラは来てなかったよ?」
「そうですか。では、私はあの子を探しに行きますのであなたは早く寝るのですよ。いいですね」
それだけ言い残してシスター・グリゼルダは部屋からいなくなろうとしたら一誠に呼び
止められ、一誠に振り返ると、
「見て見て、ヤドカリー」
頭とハサミを象った手だけ掛け布団の中から出してシスター・グリゼルダに見せると、
「・・・・・」
無言で扉が閉められた。無反応でいなくなってしまったことでショックを受けるものの
一誠は言われた通りに明かりを消してベッドに潜り込んで目を瞑った時、
再び扉が開く音が聞こえた。
「・・・・・誰?」
侵入者に問いを投げる一誠。窓から射す月明かりでその侵入者の姿を照らした。
「こんばんわ、一誠くん」
「ルーラ?」
「しぃー」と静かにしてと言動をするルーラ。そんなルーラに小首を傾げると、
「一誠くんと話がしたくなって部屋から抜けだしたんです」
「ああ、そういうことだったんだね。さっきグリゼルダお姉さんが探しに来ていたよ」
「そうだったんですか」
「明かり・・・・・付けたらまた来ちゃうからダメだね。ほら、布団の中で話ししよう?」
上掛け布団を捲り入ってくるように促す。ルーラは嬉しそうに肯定し、
明かりを付けないままベッドにいる一誠の傍に寄る。
二人同時に寝転がって顔を向け合い雑談を始めた。
「もうすぐクリスマスですね」
「そうだねー、イタリアのクリスマスってどんな感じなのか楽しみだよ」
楽しげな会話は程なくして終わりを告げルーラは一誠に訊いた。
「一誠くん、このまま教会にいてくれないですか?」
「ごめん、ここにいるのは一年間だけだって決められているから」
「・・・・・そうですか。じゃあ、一誠くんともう会えないんですね」
寂しそうに顔を曇らすルーラの手を掴んだ。
「ううん、会えるよ。だって僕がいつかまた、ルーラに会いに行くから」
「本当ですか・・・・・?」
「うん、本当。絶対に会いにくるよ」
言い切る一誠に嬉しく感じ、さらに一誠に寄る。
「約束ですよ」
「うん、待っててくれる?」
「はい、ずっと待っています。一誠くんの傍にいられるぐらい強くなっている間でも」
「その間僕はもっと強くなっているよー?」
挑発的に笑みを浮かべる一誠と「負けません」と一誠に釣られて笑むルーラ。
程なくして二人は眠りにつき、互いを放さないとばかり抱き合っている様子を―――。
「まったく・・・・・この子たちときたら・・・・・」
溜息を零し、呆れるがどこか微笑ましいとシスター・グリゼルダが見ていたのであった。
―――○●○―――
そしてクリスマスの日が訪れた。その日の教会は一段と賑やかで特にカトリック教会の
総本山とも云われているサン・ピエトロ大聖堂に一誠たち教会の施設にいる幼い信徒や
教会の戦士たちが集い―――今までしなかった前代未聞の事例を行っていた。
それは大聖堂の中で食事をすることだった。純白で清楚な白いシーツを横長のテーブルに敷き、
数々の料理の前に立っている一誠たちと同じく神父やシスターも同席していた。
今回の事例の無い展開に誰もが内心不思議がっているが、
これは神―――神によって―――と教会上層部から説明を受け納得した後に祈りを捧げた。
「戦士兵藤一誠、こちらに来なさい」
「ん?」
クリスタルディ猊下に呼ばれトコトコと近づけば一本の剣を手渡された。
「この剣は聖剣『
私たち教会の者を祝福の光を照らすことができる聖剣。
この聖剣を使って私たち信徒に祝福してくれ」
「どうやって使えばいいのか分からないよ?」
「大丈夫、皆が幸せになることを祈り、願う聖剣は応じてくれる。キミならできる」
促され、一誠は聖剣を頭上に構えて見せた。
「あ、そうだ」
なにを思ったのか、一誠は金色の杖を発現して聖剣と合わせた。
一誠はルーラに言われたことがある。
『一誠くんが放ったあの光、凄く好きになりました。きっと一誠くんがアラクネーに
強く思ったから、私の心だけじゃなく身体も温かくなったんですよ?』
そう言われたことを思い出して、あの時のように、アラクネーの身体を人間に戻すその時の
気持ちを思い出しながら杖と剣に想いを籠めた結果、
二つの得物が光に包まれ神々しい閃光を大聖堂全体に散らばせた。
その光を浴びた信徒たちの身体が光る。特に変化は無い。
だが、心が温かくなるのを一誠以外の信徒は感じた。
それはまるで神から祝福されているかのような―――。
「信仰がなければこれほどまでの祝福の光が無い。
いや、彼自身の純粋さが相乗効果を発揮しているのか・・・・・!」
聖剣による祝福の力と創造を司るメリアの力が具現化した杖。
一誠の他者に対する祝福の想いが創造の力によって具現化し、光と成って効果を発揮する。
―――それはイタリア全土、いや、全世界にも光が届き数々の奇跡さえももたらした。
例えば国同士の戦争が治まり、大勢の乗客を乗せたトラブルが起きた飛行機は山に
墜落しても乗員も含めて全員助かり救助され、生き別れになった者同士が再会を果たし、
貧困に苦しんでいる者たちに幸福が訪れ、不治の病で苦しんで病院にいた病人全てが治った。
その他にも様々な奇跡が起こり世界中は今回の一件で『奇跡の一日』と称することとなった。
「クリスタルディ猊下」
「ストラーダ猊下?」
「戦士一誠は教会の戦士としては不向きだと私は言ったな」
身体が光に包まれているストラーダ猊下がクリスタルディ猊下に声を掛けた。
その目は真っ直ぐ光に包まれている一誠に向けられている。
「あの時の言葉を撤回するつもりはないが、やはり戦士一誠は教会にとって惜しい存在だな」
「・・・・・そうですね。私もそう思います」
やがて光が治まり、一誠がいい仕事をしたとばかり息を一つ零すと周囲から拍手が送られた。
ルーラに抱き付かれる様子を見て口元を緩ます。
「説得、してみるとしようか」
「手伝いますよ」
教会の戦士として、一人の信徒、信者として本気で一誠を教会に属させようと試みる
エクスカリバーとデュランダル使いの一誠の師であった。
その後、一誠は自分に剣術を教えてくれた二人の師と世話役の女性と何時も傍にいてくれた少女と
寂しげに別れを告げ次の修行の場へと家族と共に馳せ参じていくのだった。
「一誠くん、またきっと会いましょーう!」
「元気でね、ルーラァーッ!」