HIGH SCHOOL D×D ―――(再)――― 作:ダーク・シリウス
翌日の朝、朝食を終えて学校に登校する一行。昨日の下校の出来事が嘘だったかのように登校する生徒たちや教師を出迎える学校。
『・・・・・』
リーラたち教師、一誠とクロウ・クルワッハはそれぞれのクラスに入るや否や、一誠に対して敵意と警戒心を孕んだ視線が向けられる。「毎日こんな感じか」と内心溜息で自分の席に座ろうとしたら。
「HEY!兵藤、GOOD MORNING!」
元気に一人だけ一誠に挨拶をした女子、金剛。一誠は嬉しそうに顔を明るくして金剛に返事した。
「おはよう!」
『(か、可愛い・・・・・)』
何人かその顔を魅入られた。
「ホームルームを始めるぞー」
教師もしばらくして入ってきた。
「あー・・・・・兵藤」
「はい?」
「もしかしてなんだか・・・・・お前昨日何かしたか?」
具体的な質問をせず、曖昧に訊く教師に一誠は一度首をかしげた。
「昨日・・・・・?・・・・・あー、今度は大勢で襲ってきたバカどものことですか?
何か問題でも?」
呆気にとられ、しばらく教師は思考を停止した。
次にとった行動は。
「やっぱりお前かぁ・・・・・」
脱力感を醸し出す教師。教卓にだらけながら言い出した。
「お前にやられた兵藤の家族がモンスターペアレントの如く電話で抗議してきたぞ」
「じゃ、何もせずに黙ってやられていろと?俺の家族を強姦されるのを許せと先生は
そう言いたいのですか?」
「違う!もう少し穏やかに済ませろと言いたいんだ!」
「相手はあの傍若無人の兵藤ですが?そのもう少し穏やかに話で解決しているなら、
ここにいる女子の皆は被害を受けなかったはずだ。違うか?」
教師は喉から出そうになった言葉を詰まらせた。
女子は一誠と教師の話を聞き、一誠の指摘にその通りだと何人かが頷いた。
「先生、俺だって好きで攻撃をしているんじゃない。
相手から攻撃されての正当防衛―――過激だっただろうけど黙って攻撃を受けるほど俺は
物分かりはよくない。それが俺の大事な家族に手を出そうとする連中なら尚更だ」
「・・・・・」
「先生たち教師には申し訳ないないと思うけど、相手が直接手を出してくるなら俺は
容赦しないんで。例え停学になろうが退学になろうが関係なく」
威風堂々と言いきった一誠に対し教師は深く溜め息を吐く。
「一時間目は自習にする」
それだけ言い残して教師は教室から去った。
「一誠、あんなことを言って良かったの?」
「本当のことなんだからしょうがないだろう。ヴァレリー、咲夜、オーフィス、
他のクラスにいる、教師の仕事をしている皆も俺の家族なんだからな。
この手の届く範囲内でだが絶対に守る」
「・・・・・ありがたき言葉です一誠さま」
「我も、イッセーを守る」
「ありがとう」
三人の言葉を聞き満足げに頷いた。さて、教師がいなくなり自習という自由時間が生まれた。
クラスメートたちは読書したり、復習したり、友達と雑談したりと教室の中で過ごす。
一誠たちもまたそう過ごしている。オーフィスは一誠の傍にいたい為、
小柄な体を活用し、一誠の胸と太股に背中を預け跨がっている。
咲夜やヴァレリーは静かに読書、一誠も古ぼけた分厚い本を開いて読んでいた。
「兵藤、何を読んでいるノー?」
金剛が一誠に背後から訪ねた。背後にいる金剛に顔を向けて返事をした。
「魔法使いが読む本だ」
「OH! マジシャンのBOOKネ!」
好奇心で本の内容を理解しよう読んでみたものの。
「・・・・・全然解らないヨ」
と、根をあげた。一誠はそうだろうな、と心中で思い。
「俺も勉強中だから全部解らない。なにせこれって魔導元帥ゼルレッチから渡された
魔法の本だからよ」
ポンポンと手で本に軽く叩く一誠と誰のことだかさっぱり解らない金剛。
「―――魔導元帥ゼルレッチ、ですって?」
「「?」」
一人の女子がオウム返しをしたことで、知っていそうな人物を発見した一誠と金剛。
「知っているのてすカー?」
「知っているも何も、宝石翁、万華鏡、魔導元帥ゼルレッチと他多数の二つ名を
持っているキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグのことよ?」
若干興奮気味に説明する三日月の髪飾りを頭に、長い紫髪の先にリボンを付けている
紫の瞳の女子。顔をズイと一誠の本に近づけさせた途端に、
「凄い・・・・・ッ!本人の直筆で書かれた魔法の本が実在するなんてこの本は魔法
使いの世界では命よりも価値があり、あの魔術協会の理事長であるメフィスト・フェレスさえ
持っていない代物がこんなところで巡り会えるなんて!
―――うっ、はぁ、はぁ・・・・・」
「・・・・・大丈夫か?」
若干引き気味な一誠は女子に鞄から水筒を取り出して水を飲ませた。それから女子は気を取り直した。
「え、ええ・・・・・ありがとう。それであなた、魔法使いなの?
この貴重な本を持っているということは」
「や、魔法使いじゃないんだこれが。ただ魔法を使えるだけだ」
「それは魔法使いというのだけれど」
「それ言ったら魔方陣を媒介にして色々としている悪魔と天使、堕天使はどうなんのさ?」
「・・・・・そこを突かれると少々言いづらいわ」
女子は一誠から視線を逸らし、じーっと本に目を落とす。
「ところで、名前なんて言うんだ?」
「パチュリー・ノーレッジよ。これでも私、魔女なの」
「へぇー、魔女なんだ。でも、さっき苦しそうだったんだけどどうした?」
「喘息と貧血で興奮すると何時もこうよ。
だから魔女なのに魔力を碌に扱えない・・・・・役に立たない魔女って周囲に呼ばれていたわ」
自嘲するパチュリー。このクラスに魔女がいることなど知る由もなかった。
そしてパチュリーを知って他人事ではない、なんとなく自分に似ていると思いも浮かんだ。
「そうだったんですカー。でも、パチュリーは本が好きみたいですネー?
何時もBOOKを読んでいましたシ」
「ええ、本当なら授業なんてすっぽかして図書室で引き籠って読書をしたいのだけれど、
あの忌々しい兵藤が一人になった女性を襲う習性もあるみたいだから、
何時も一人で読書する私も格好の餌食となるし、不服だけど教室で読むせざるを得なくなった」
「・・・・・お前は襲われたのか?」
「いえ、友達に助けてもらったわ。あの子の人形にはとても助かってるの」
「友達?人形?」
「隣のクラスに私と同じ魔法使いがいるわ。・・・・・まだ時間はあるわね」
自分の席に戻ったかと思えば、椅子だけを持ってきて一誠の隣に置けば当然のように座り、
肩を寄せ合い読書していた本のページを最初から読もうと意思を示すパチュリーによって
一ページまで戻された。
―――○●○―――
自習の時間を終え、パチュリーとも魔法の知識講座で打ち解けた。この調子で一人ずつ
仲良くなっていきたいと一誠は思った。
「次の授業は・・・・・選択授業・・・・・?」
初めて知る一誠にとって不思議な授業。その内容は学校に編入したばかりの
一誠たちにとっては首を傾げる。
「YES!その通りネ!」
「うおっ!?」
一誠の背後から金剛がハイテンションで発した。
「金剛・・・・・?選択授業ってのはなんだ?」
「選択授業とはこの授業だけ他のクラスと色々な勉強をするのデース!」
「でも、F~Dまでの女子だけのクラスは男子がいるクラスとはしないけどね」
つまり、女子は女子で男子は男子でこの時間だけ
自分の好きな授業を受けることができるということであった。
「で、二人は何の授業に?」
「「自習」」
「授業じゃないやん!(ビシッ!)」
「OH!兵藤、突っ込みが鋭いネッ」
「なにを言っているの。自習もちゃんと含まれているのよ?」
そうなのかよ・・・・・と信じがたい気持で一誠は周囲を見渡す。
―――全員、誰一人も自習の体勢で授業を受けようなどしていなかった。
「他のクラスと授業ってどこかの教室で集まってするんだよな?」
「そうだけどそれがどうかしたの?」
「や、ただの確認。そっか、なら俺も自習にしようっと」
「って、どこにいくのですカー?」
「料理実習、甘い物でも作ろうかなって。
ここ、教室のはずなのに食材まで揃っているから―――腕の見せ所だ」
不敵に笑みを浮かべた一誠は咲夜とオーフィスを引き連れてキッチンへと向かったのだった。
―――十分後―――
「はい、デザートの出来上がりだ」
「OH!美味しそうなケーキやクッキー、ゼリーがいっぱいデース!」
爛々と目を輝かせる金剛の前に台車で運び込まれたデザートの数々。
飲み物も用意されていて、女子たちの意識を逸らすのに十分だった。
「・・・・・よく短時間で作れたわね」
「魔法って便利だよなー」
「本来の魔法の使い方ではないと思うのは私だけかしら・・・・・」
「まーそう言うなって。ほら、読書しながらティータイムは穏やかになるぞ」
「あら、気の利く言葉を言うのね。それじゃ紅茶とケーキをいただこうかしら」
「私はプリンと紅茶をPLEASE!」
甘いものには目がない。二人の女子は一誠たちが作ったデザートを一口食べると、
「美味しい」と高評価の言葉が出た。
「咲夜、悪いけど他の皆にも」
「かしこまりました」
男の自分では手渡ししても受け取らないだろうという考慮で咲夜に変わって頼んだ
結果、女子たちは咲夜からケーキや飲み物を受け取って飲食した。
『・・・・・美味しい』
『男がこんなにも美味しく作れるなんて・・・・・』
『くっ・・・・・ますます許せないじゃないっ』
負け惜しみの言葉も聞こえてくるものの評価は上々であった時、教室の扉が開いた。
「えっと・・・・・失礼します」
廊下から顔を出してきた一人の男子。女子の反応はとても薄く、冷たかった。
「・・・・・あ、キミ」
「・・・・・俺?」
「うん、そう。ちょっと来てくれるかな」
こっちに来るように手招きする男子に催促され、
一誠は怪訝な面持ちで教室から出ると直ぐに扉は閉められて男子と対面した。
「・・・・・」
呼びだした男子は一誠の身体を見定める。何かを確かめようとしているのが雰囲気で読み取れる。
程なくして、
「キミ、名前はなんて言うの?」
「相手の名を伺う時はまず自分からだって言われなかったか?俺はそう言われたぞ」
「はは・・・・・それもそうだったね。僕は2-Cクラスの式森和樹。よろしくね」
「兵藤一誠だ」
「兵藤・・・・・?・・・・・それ、偽名?」
何故か疑われ、ますます懸念を抱く一誠。
「何でわざわざ自分の名前に嘘を吐く。本当に俺は兵藤一誠だ」
「・・・・・兵藤は魔法を、魔力を持っていない一族だって知っている?」
「知らないな。ただ、俺の母さんが式森だからそれに関係しているんじゃないか?」
「・・・・・そのヒトの名前はなに?」
和樹は追求すると、一誠は目を細めた。
「お前、俺からなにを言わせたい?なにを思って俺と接している?俺ばかり聞いて
自分のことを話さないんだな。まるで警察みたいに事情聴取をされている気分だ」
「・・・・・」
「俺からお前が求めている情報を得たとしても何の変化もないと思うぞ。
他人にあれこれと教えるつもりは無いけどな」
教室の扉に手を伸ばした時にその腕が和樹に摑まれた。
「昨日の放課後、十数人の兵藤家の男子が魔法で倒された」
「だからなんだ?」
「あれ、キミがやったんでしょ?あの場に残留していた魔力はキミから感じる魔力と同じだ」
「―――これか?」
一誠の腕から滲み出る真紅のオーラ。思わずその腕から手を放した和樹。
二人の間に緊張が走る。この一触即発の状態の中で一誠は溜息を吐きだした。
「確かにあいつらは俺がやった。だからなんだ?」
「・・・・・」
「知りたかったらそれなりの行動を俺に示せ」
扉を開け放って教室に戻った一誠。残った和樹は無言で自分のクラスへと戻った。
―――2-C―――
男子しかいないクラス―――ではなくこのクラスは女子も存在していて、
本来あるべき姿を保ったまま学校生活を送っていた。その理由は色々とある。
色々な理由の中で最も重要なのが兵藤家と対なる式森家が女子を兵藤家から守っていること。
兵藤家や男に毛嫌いしているF~Dのクラスにいる女子たちとは違い、
この教室にいる女子は式森家や男に感謝の念を抱き、平穏な学校生活を送っているのだ。
「お帰りなさい。用事は済ませましたか?」
黒髪に黒い瞳と朗らかに和樹へ言葉を投げる男子。その傍には桃色の髪をポニーテール、
眼つきは親譲りなのか鋭い鳶色の双眸で小柄な女子。大和撫子のような、
清楚な雰囲気を醸し出す長い黒髪に琥珀の双眸の女子も和樹に振り返っている。
「うん、ちょっとだけね」
「なんだ、まだ済ませていないのか?」
「そうだね。まだ気になることがあるんだけど取り敢えずいいや」
「和樹くんがそう言うなら問題ないよね」
「少し曖昧で私は好きじゃないがな。ハッキリとしていないならしてくればいいだろう」
桃色の女子は腕を組んで和樹を見据える。和樹本人も苦笑して「そうだね」と肯定する。
「それで『あいつ』に頼んだ件はどうなってる?」
「ええ、非公式新聞部というだけあって情報を直ぐに整えてくれましたよ」
少年はブラックファイルを和樹に手渡した。
ファイルを開くと―――一誠の顔の写真が張られ、様々なことが書かれている。
「兵藤家の人たちを倒したのはどうやら同じ一族の兵藤一誠という人らしいです。
色々と詳細は不明なのであの人はこれしか調べれなかったそうです」
「家族構成も不明か・・・・・」
「ええ、ガードが堅いようです。もしくは数日前に編入してきたばかりだからか情報が少ないかと」
「和樹くん、この子がそんなに気になるの?」
清楚な少女が不思議そうに訊ねてくるその言葉に首を縦に振って頷いた。
「そうだね。この写真の男は興味がないと言えば嘘になる」
「・・・・・まさか、恋―――」
「違うからねカリンちゃん!?だから清楚さんも「そうなの?」とそんな顔をしないで!」
「名前に「ちゃん」を付けるなって言っているだろう!私の風で吹っ飛ばすぞ!」
「やれやれ、少しシリアスだった雰囲気が何時も通りに戻ってしまいましたね。
和樹さん、人の趣味にはとやかく言いませんが―――」
「龍牙、キミもそう言うなら僕は本気で魔法を使いたくなるから言わないでくれないかな?」
目が笑っていない和樹の全身から迸る魔力に三人は口を閉ざした。
「授業を始めるから席に座れ」
と教室に入ってくるなりこのクラスの教師が言った。
「あー、フライングだが次の体育の授業の相手を発表するぞ。相手は2-Fだ。
女ばかりだからって気を抜くんじゃないぞー」
と、このクラスの体育の授業相手が早くも発表された。
「へぇ・・・・・」
和樹の口の端がつり上がり『知りたかったらそれなりの行動を俺に示せ』一誠が和樹に
向かって言った発言が脳裏に過ぎった。
「(兵藤一誠・・・・・分かったよ。行動で示そうじゃないか。
僕が勝ったら全て教えてもらうよ)」
―――○●○―――
午後となり体育の授業が始まろうとしていた。
2-Fの一誠は金剛と再びタッグを組んで授業に臨む。
レーティングゲームを応用したバトルフィールドに転送された二人に待ち構える敵は―――。
「人多っ!」
「OH・・・・・」
相手クラスは十六人、参加人数の規定は十六人の為、相手―――2-Cクラスが体育の授業に
参加した生徒の数は全員だった。対する2-Fはたったの二人、八倍の数で圧倒された。
そんな二人に対し、
「え・・・・・そっちはたったの二人?」
目を大きく見開いて信じがたい光景を目の当たりにした和樹が漏らしたほどだった。
「兵藤、今回ばかりはDEFEATかもネ」
「いーや、まだ俺は負けた気分じゃない!数じゃ負けているけどさ!」
「ポ、ポシティブ何だねキミ・・・・・。まぁ、それはそれで僕はありがたいけどね。
キミに勝って色々と聞かせてもらうからさ」
「なんだよ、まだ俺に訊きたいことがあるのか」
「そりゃね。兵藤家なのに魔法を使えるなんておかしいじゃん」
腕を上げた和樹に呼応して数多の魔方陣が展開された。
「取り敢えず、授業を始めようか」
和樹は腕を下ろした。その直後に巨大な火炎球、巨大な氷塊、巨大な嵐、轟く雷が一誠と
金剛に襲いかかる。
「もしかして全員魔法使い!?」
「僕のクラスの大半は女子も含めてそうだよ」
魔法の攻撃は成す術もなかった一誠と金剛に直撃した。誰もがこれで終わったと
雰囲気を醸し出すが、和樹は目の前に向いたまま警戒している。
「和樹、どうしたのだ?私たちの勝ちなんだろう?」
「カリンちゃん。相手は仮にも兵藤を名乗っているんだ。
多分、まだ戦いは終わっていないと思うよ」
「なんだと?あれだけの魔法を無抵抗に受けて無事のはずが―――」
桃色の髪の少女ことカリンは訝しい目で一誠と金剛がいる方へと視線を向けた時、
「うはっ、すんげー威力だったなおい」
「んなっ!?」
声が聞こえた。その場所はなんと自分の真後ろだ。
和樹も目を見開いて背後へ衝動に駆られて振り返ると
無傷の一誠と金剛が立っていた。
「い、何時の間に・・・・・」
「カリンちゃんって呼んだ辺りから」
何時の間にか一誠は黒いローブを羽織っていた。
そのローブは何なのか気になっているのを察したようで一誠は口の端を吊り上げた。
「これか?これは骸骨のお爺ちゃん・・・・・ああ、冥府の神ハーデスって言えば
分かるか?このローブは身に纏った者の姿や気配を隠すことができる面白いものなんだ。
クリスマスの日に骸骨のお爺ちゃんから貰ったんだ」
改めてローブを纏うと目の前に一誠が消えた。一拍して再び一誠は姿を現した。
「な?」
「・・・・・冥府の神ハーデスって・・・・・本当に会ったことがあるのかい。
それがもしも本当ならそのローブは魔法道具Aランク並のものじゃないか・・・・・っ!」
「魔法道具Aランクってなんだそれ?」
「魔法使いの世界じゃ魔法が付加されている道具の価値のことだよ。最高はSランクだけど」
ご丁寧に和樹は金剛に透明ローブを渡している一誠に説明した。
「ふーん・・・・・じゃ、これはどのくらい価値がある?」
歪ませた空間から古ぼけた分厚い本を見せ付けた。
「これ、魔導元帥ゼルレッチから渡された本人直筆の魔法の本だって
クラスメートの魔女から聞いたんだけど」
刹那―――。
『な、なんだってぇっ!?』
和樹だけじゃなく、式森家の魔法使いらしき男子や女子が大声で驚愕した。
一誠は思った。やっぱりこれは魔法使いたちにとっては貴重なものらしい。
「ちょっ!あの伝説の魔法使いの一人と会ったことがあるのかい!?」
「え、あ、ああ・・・・・そうだけど」
「兵藤家のキミが、魔法使いでもないキミが、式森家でもないキミが
どうしてあの魔法使いと会えるんだ・・・・・!」
「そう言われても・・・・・世界中で修行していた中で時計塔にいたお爺ちゃんと
会って・・・・・」
「あの人にお爺ちゃんって呼ぶほど親しいのかキミは!?」
もう目の前の存在が訳分からないと頭を抱える和樹だった。
「・・・・・和樹、お前たちにとっては凄い魔法使いなのは分かるがそろそろ戦わないか?」
「・・・・・うん、そうしよう。取り敢えず勝って後で本を読ませてもらおうかな」
「何気にぽろっと欲望が出たな」
半ば呆れたカリンはレイピアを一誠に突き付け―――。
「ん?もう一人はどこに行った?」
「さぁ?あれを纏ったら俺しか分からないから教えてやらないがな。ところで・・・・・カリンか」
「なんだ?」
「や、俺が子供の頃にハルケギニアで会った桃色の髪の女の人と同じ名前だなって思って。
それにお前、どこかで会ったような感じがするんだが俺の気の所為か?」
そう言われたカリンは目を細め、一誠の話をオウム返しした。
「ハルケギニアに来たことがある?それは何時のことだ?」
「数年ぐらい前だな」
「・・・・・・」
数年前・・・・・と過去のことを思い出して・・・・・一度だけ衝撃的な
出来事が会った事を思い出した。突然現れた頭が三つある巨大なドラゴン。
ドラゴンから現れた赤い髪の子供に伝説の騎士の二人。
「―――思いだした。あの時の子供か!あの伝説の衛士隊である二人の子供の!」
「・・・・・あー、やっぱり見覚えがあるわ。お前、あの時の桃色の髪の女の子だったな」
「え・・・・・なに?二人とも知り合いだったの?」
若干置いてけぼりの和樹は言わずにはいられなかった。
「和樹、こいつは私に任せてくれ」
「へ?いやいや、カリンちゃん。いきなりどうしたんだよ?
目が爛々に輝いているし・・・・・」
「行くぞ兵藤!」
「聞いてないし」と突っ込む和樹を遮るようにカリンは杖に風を纏わせて巨大な竜巻を発生させた。
金色の杖を発現させ、地面に突き付けた一誠は一言。
「錬金」
周囲一帯が水となり、和樹だけじゃなくカリンの体勢を崩し竜巻が一誠に直撃する寸前に消失した。
一誠は宙に浮かんで水に呑みこまれずに済んでいる。
「んなっ!?」
「この大規模な錬金は見たことが・・・・・!」
「そんでサンダー攻撃と」
「「ちょっ!?」」
ビガッ!ガガガガガガガガガガッ!
水に伝わる電撃。水の中にいた和樹とカリンはモロに直撃し、感電してしまった。
「って、僕がこの程度で負けるわけがないだろう!」
「おおっ?」
感電しながらも水の中から脱出した和樹。カリンは光に包まれこの場から消失した。
「式森家を舐めるなよ!魔法抵抗力や魔法に関する攻撃には強いんだから!」
「んじゃ、物理的攻撃と防御力は低いんだな?」
「そう思うならやってみなよ」
「ああ、やらせてもらおうか。―――金剛!」
強く金剛の名を発した。宙にいた魔法使いたちに轟音と煙が発生する。
「なっ・・・・・!」
「この水は金剛の戦場を作ってやったに過ぎない」
HAHAHA!と笑い声が聞こえてくる。振り返ると仲間が見えない敵の砲撃に食らっていて
戦場から退場させられていたり、防御魔方陣で攻撃を防いでいたりとしていた。
だがしかし、その魔方陣に罅が生じており、何発か防いでいると魔方陣は砕け散り味方に直撃する。
「主砲の砲撃ってパンチよりも凄い威力があるんだよな」
「・・・・・やってくれるね。だけど、次はこっちの番だよ」
水上に魔方陣が出現し、水は瞬く間に凍っていく。
一誠がそれに目を丸くして、素早く金剛に近づき水から離した直後に全てが凍った。
「龍牙!」
「出番ですか?」
魔方陣を足場にしていた一人の男子が和樹のもとに。一誠と金剛も氷の大地に降り立った。
「本気で戦わないとダメっぽい」
「珍しいことを言いますね」
龍牙は意味深な笑みを和樹に向けながら浮かべこう言った。
「現式森家当主の息子であるあなたがそんな事を言うなんて」
・・・・・式森家の当主の息子?和樹に目を丸くし真意を問おうとした矢先、
和樹が一誠に声を掛けた。
「お互い腹を割って話していないからお互い様だよね」
「・・・・・ま、そうだわな。お前が式森家の当主の息子だってことも驚いたがどうでもいい」
「へぇ?」
「―――俺は兵藤家の皆に見返してやることで忙しいんだからな」
その意味はどういうことなのか知る由もない。
一誠の過去すら無知な和樹と龍牙は臨戦態勢の構えに入って一誠と金剛と対峙する。
「和樹さん、まずは僕からでも?」
「金剛、援護を頼む」
「うん、新たな強敵で張り切っちゃいそうだ」
「OK!」
互いの味方に話しかけ、前衛の二人が氷の大地を蹴って引き寄せられるように一誠と
龍牙は相手の懐に飛び込む。龍牙の手は歪ませた空間から、一誠の手は歪ませた空間から。
「「―――」」
一本の剣を取り出して相手に向かって振るった時、
二つの剣はぶつかり合い―――一誠の身体に突然傷が生じて血が噴き出した。
「接近戦なら負けませんよ」
「その剣に何かあるな?」
「どうでしょうか?僕自身の能力かもしれませんし」
「なら、確かめるまでだ」
飛びだす一誠が龍牙の目の前に消えた瞬間、龍牙は剣を後ろに構え、
振り下ろされた剣を受け止めた。再び一誠の身体に傷が生じダメージが蓄積する。
それでも一誠は剣を振るうことを止めず、自信が傷を負おうとも関心ながいように龍牙へ剣を振るう。
「・・・・・っ」
しかし、一誠が隙を作った。これを見逃さない龍牙が防御から攻撃に変えて剣を振り下ろした。
「金剛!」
「YES!」
今まで見守っていた一誠の味方が主砲を構えた。
龍牙は意識を一誠に向けさせて支援攻撃を成功させるコンビネーションだったのかと悟り、
一誠から金剛へと振り返り次に来る主砲の砲弾に備えて――。
「ナンチャッテ!」
「・・・・・はい?」
「本命はこっちだ」
「残念デシター!」と両腕を☓の形に構えていた金剛の言動に豆鉄砲を食った鳩のような顔を
している龍牙へ不敵の声を発した一誠に振り返る。
丁度一誠の真後ろに全身が鎖で縛られている和樹が見えた。
―――金剛を呼んだのはフェイントだったのか!全てはこの為に・・・・・!
「魔法使いの攻撃は面倒だから縛らせてもらった。あの鎖を解かない限り魔法を使うこと愚か、
魔力すら放つこともできない。そういう能力の鎖だからな」
「なら、鎖を斬るまでです」
「できるといいな」
再び構える両者。龍牙の剣と交える度に傷付く一誠は分が悪い。
しかし、一誠の目には諦めの色が浮かんでいない。今までこの体育の授業で何十、
何百と戦って来た中で五指の強さを誇っているかもしれない相手に対してこちらも
本気で戦いを望まないといけない。だからこそ龍牙は呟いた。
「『
「っ・・・・・」
眩い金色の光に包まれていく中で全身に金色の鎧が装着する龍牙。本気になったと肌で
感じ取った一誠は剣を亜空間に仕舞って己自身の肉体で戦うことに切り替えた。
「その姿・・・・・ドラゴン系統の
「天龍や龍王ほど知名度はありませんが、僕の良き相棒です」
「どんなドラゴンなのか後で聞くとしようか」
龍牙へ肉薄する一誠。飛び掛かってきた一誠からドラゴンの翼で宙へ飛び距離を置いたら、
「アターック!」
金剛の主砲の砲撃を食らった。しかし、
「利きませんよ」
「ハイッ!?」
食らったと思った砲弾を剣で一刀両断した。
無効化にした龍牙の剣術の芸道に金剛は身体全体で驚きを表現するのだった。
「・・・・・なんだろう、その反射神経と反応速度。昔のあの男に思い出す」
苦い顔で漏らした一誠。昔のあの時の出来事と関係する人物の顔の男が鮮明に浮かびだす。
「おや、誰のことですか?」
「さーな。名前までは知らない。ただ、やたらと剣の扱いが凄くて反射神経と反応速度が
凄い裏社会の男だったな。黒髪で目つきが鋭くて、情の欠片のない人だった」
「・・・・・なぜでしょうか。ボクも凄く身近に心当たりがいるんですが・・・・・」
「そうか、それは奇遇だな」
「ええ、そうですね」
一誠と龍牙が「ははは」と笑った後に
「お前はあの男の関係者かぁっ!」
「あなたはあの人を退けた子供の人でしたかぁっ!」
互いは相手に向かって叫んだのだった。どうして分かったのかは二人とも答えれない。
ただ言える事と言えば―――「そう思った。それか第六感で」だろう。
「あなた、なにあの鬼の人を追い払ったんですか!どこまで凄いんですか!」
「知るか!こっちは友達の命が懸っていたんだぞ!必死になって当たり前だ!」
剣と拳が交じり合う。攻防の繰り返しの戦いが行われ、どちらも拮抗の状態で勝負がつかない。
そうこうしているうちに―――。アナウンスが流れた。
『制限時間の三十分が過ぎました。2-Fと2-Cの戦いの結果はドロー。引き分けです。戦いを止めて戻ってきてください』
次の瞬間、バトルフィールドは光に包まれた直後、この戦いを見守る為の立体の魔方陣の映像に砂嵐が発生して見守っていた教師は騒然とし事態の把握に急いだ。