HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

60 / 109
エピソード19

「さぁ、いよいよ決行の時だがさてはてどんな結果となろうかな?」

 

「もう分かり切っていることじゃないか。だが、少なからず相手の情報を得られる」

 

「だな。それで、彼と彼女は?」

 

「『剣士として我慢はできない』。それだけ言っておく」

 

「血気盛んな奴らだ。だが―――私も分からなくはない。なぁ?私の友よ。お前はどう戦うかな?」

 

 

 

 

トップ会談。

 

コカビエルの一件で三大勢力のトップが集うシンプルな話。それに関わった者たちも

同席することとなり、深夜の時間帯で行われる。とある広い装飾が凝っている

部屋の中に魔王フォーベシイ、神王ユーストマ、堕天使の総督アザゼルが当然のように

テーブルを挟むようにし座っている。

 

そしてこの場に一人の人間も同席していた。一誠はおろか、リアスたちグレモリー眷属や

シトリー眷属、サイラオーグすら知らない人間だ。

さらに学校の外ではトップ同士の会談というだけあって悪魔、天使、堕天使の軍勢が

地上や空中に厳重な警備をしている。

その中で三大勢力のトップ同士が顔を突き合いだして会談をしようと考えているのだ。

 

「んじゃ、会談をしようじゃねぇーの?」

 

アザゼルが開口一番に不敵の表情で面々に言った。フォーベシイやユーストマは頷く。

 

「だな。とは言っても。話すことはあんまりないんじゃないか?」

 

「コカビエルの件についてはアザゼルちゃんの監督不届きだってことは

分かっているからね。コカビエルは今は?」

 

「本来は俺直々にコキュートスの刑を執行するつもりだがよ。

どこかの甘ちゃんがまた戦いたいからよろしくとヴァーリに言ったらしくてな。

俺が開発した堕天使の力を人間並みにまで封じた道具を首に付けて監視のもとで以前と

変わらない生活を送らせてやってるよ」

 

「おやおや、それは心優しい子がいたもんだ」

 

「見当はついているがな」

 

明らかな意味深の会話は一誠が心中苦笑いをさせるのに十分だった。それから―――。

 

「関係は今のままでいいだろう?てか、あの二人はまだ来ていないのか」

 

「同席を拒否されたよ。まぁ、私たちだけでも問題ないということなのだろうけど」

 

「今更この場で戦争を起こそうなんて気はないしな。

アザ坊の言う通り。三大勢力は現状維持、または正式に和平を結ぼうぜ?」

 

「俺の楽しみを邪魔しなければ何だっていいさ。ちょっくら迷惑を掛けると思うがな」

 

「度が過ぎなければ別にいいよ」

 

「さて」とフォーベシイは静かに座っている男に振り返った。

 

「キミはどう思うかね―――八重垣正臣ちゃん?」

 

八重垣正臣。それが男の名前であると一誠たちは知った。正臣は重たげに口を開いた。

 

「私は彼女と一緒にこの町を見守っているだけに過ぎません。

今の私がどうこうと魔王や神王さま、堕天使の総督に進言をしても意味がない」

 

この会談に関心がないのか、関わろうとしないのか分からないがそう言うだけ言って

口を閉ざしたところで問われた。

 

「・・・・・彼女はどうしているかな?」

 

「元気ですよ。娘と家の中にいます」

 

「・・・・・そうか」

 

フォーベシイとユーストマと正臣とはどんな関係なのだろうか。気を掛けているようにも見える。

友達・・・・・いや、それよりも何か深い関係?何かしらの関係があるようだが、今は

そんな事を気にしている暇はなさそうだ。

 

「さて、場は和平を結ぶことで一致した訳だ。俺たち意外、第三者からも質問するか。

世界の力の均衡を大きく崩すことができる―――天龍、現白龍皇のヴァーリと真龍と龍神の

力を有する兵藤一誠にな」

 

『―――――っ!?』

 

場がざわめきだす。主に―――一誠の本当の正体を知らない者たちがそうする。

 

「真龍と龍神の力を有している・・・・・だと?」

 

「一誠くんがそんな・・・・・」

 

ルーラーを除いた教会組のイリナたちすら驚いていた。ポリポリと頬を掻く一誠は

アザゼルに向かって口を開いた。

 

「場の流れで俺の事を言わないでくれよアザゼルのおじさん」

 

「場の空気を読むことが重要なんだぞ?それを把握しないと空気が読めない奴だと

思われちまうぜ」

 

「・・・・・俺とヴァーリにどんな質問をするんだ?」

 

話を進ませればアザゼルは言った。

 

「この世界をどうしたい?」

 

それが二人に対する質問。ヴァーリと一誠は互いに顔を向け合い、

視線を交えるとアザゼルの問いに答えた。

 

「世界がどうなろうと私は関係ない。一誠の傍にいられるなら、強者と戦えるならそれでいい」

 

「俺もヴァーリと似た感じかな。特に兵藤家はどうでもいい」

 

と、二人は答えたのだった。つまらなさそうに息を零し、こうアザゼルは言った。

 

「だいたい予想していた答えを言いやがったなお前ら。

特に一誠、お前は兵藤家はどうでもいいというがあの一族は一応重要な立場でいるんだぞ?」

 

「知っているだろう?俺と同年代の奴らが学校で何をしているのか。

あんな奴らがこの国を支配するなんて考えるともう色々とダメだろう。

社会的にも人間としてもさ」

 

「・・・・・お前、メイドみたいになってねぇーか?その毒舌が特にだ」

 

「ありのままの事実を言っただけだよ」

 

嫌そうな顔を浮かべるアザゼルへ朗らかに言った。

 

「一誠ちゃん、今でも兵藤家が嫌いかな?」

 

「俺と親しく接したお爺ちゃんやお姉さん、悠璃や楼羅を除いてね」

 

「今の力で兵藤家を潰そうなんて考えているのか?」

 

「嫌いだけであってそこまでするほど恨んでも憎んでもない。

ただの仕返しをしたいだけだよ俺は。いまならできそうだけどな」

 

喉の奥から笑みの声を零し、アザゼル達を何とも言い難い気持ちをさせる。

 

「坊主が兵藤家の当主としてなってくれれば万々歳何だがな」

 

「なんで?」

 

「親しい者同士と仲良く末長く付き合いたいじゃないか。

誠ちゃんも一香ちゃんもそうしているようにね」

 

言いたいことが分かった。ユーストマとフォーベシイは違う勢力同士の壁を通り越して

仲良くしているように、兵藤家もできれば仲良くしたいのだろう。

 

「・・・・・兵藤一誠くん」

 

正臣の視線が一誠に向けられる。その意味深な視線を向けられる一誠は「ん?」と首を捻った。

 

「キミのご両親には深く感謝の念を抱いている」

 

「はぁ・・・・・」

 

何の事だかさっぱり分からないが、誠と一香のことだから自分の知らないところで

色んな事をしていたのだろう。誰かと喧嘩したりしては救ったりして、

はたまた何かを発見したりしてとそんなことを世界中に旅をしながらだ。

きっとイレギュラーなことも体験したはずだ。―――そう。

 

 

一誠にとって初めての感覚に襲われることもだ。

 

 

「・・・・・ん?」

 

「普通にいやがるなお前。初めての体験だったろうによ」

 

意識を若干呆れ気味なアザゼルに向けた。だが、先ほどとは打って変わって状況が変わっている。

一部の者がそのままの姿勢、表情で動かずにいるのだ。正常と言えるべきか一誠と

ヴァーリ、フォーベシイ、ユーストマ、アザゼルは普通に動いている。

 

「どうなってんの?」

 

「テロ攻撃を受けているんだよ」

 

テロ攻撃。いきなり何を言い出すんだと思うが、外から悪魔でも堕天使でも天使でもない

別の数多の気配を感じるためまさにその通りなのだろう。

 

「皆の状態は?」

 

「簡単に言えば停止されてんだ」

 

「停止?」

 

「『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』。

リアスの『僧侶(ビショップ)』が所有する神器(セイクリッド・ギア)だよ」

 

―――リアスにはすでに僧侶(ビショップ)の眷属悪魔がいるにゃん。

 

黒歌が言っていたリアスの眷属悪魔のことを思い出す。

 

「どうしてここにいない?」

 

「今の彼女ではコントロールができない時を司る神器(セイクリッド・ギア)の下僕を

任されないでいるんだ」

 

「コントロールができないって・・・・・・」

 

「無意識に周囲を停止させるなど危険極まりないからね。

彼女がもう少し成長した頃には封印を解く予定だったのだが」

 

「どうやら奴さんはそこを突いて、何らかの方法で禁手(バランス・ブレイカー)状態に

したんだろうよ。大方強制的にな」

 

現状動けるものは少ない。攻撃を受けているが学校への被害は出ていない。

アザゼルが軽く光の槍で迎撃するが一行に攻撃の手が止まることがない。

 

「リアスたちはどうすれば動く?」

 

「捕まっているリアスの劵族悪魔を奪還しないと無理だ。

神器(セイクリッド・ギア)の能力で停められているんだからよ」

 

「能力・・・・・?それって異能でもある?」

 

「あ?まぁ、似たようなもんだがそれがなんだ?」

 

今さらな質問をされ怪訝になるアザゼル。一誠は籠手を装着してリアスの頭に触れた瞬間。

 

「・・・・・?」

 

停止されていたリアスが、目の前にいる一誠が自分の頭にどうして手を置いているのか

不思議そうに目をパチクリしていた。

 

「一誠、その籠手は」

 

「能力や異能ならゾラードの力で無効化にできる。聞いていて試したけど効果は抜群だな」

 

「なるほどな。世界中修業してきた甲斐があったわけだ」

 

笑みを浮かべるアザゼルを他所に次々と停止されている面々に触れて能力を解いた時に

一つの魔方陣が出現した。その魔方陣はフォーベシイが静かに目を張ったほど。

 

「まさか、どうして・・・・・」

 

魔方陣から光と共に眼鏡を掛けた女性が現れた。

 

「ごきげんよう魔王フォーベシイ」

 

「カテレア・・・・・何故だ?」

 

「現在の冥界は良い意味でも悪い意味でも変わってしまった。敵対していた勢力と

手を結ぼうなどそんなことあってはならない。あなたは最高の魔王でしたが同時に愚かな魔王。

今倒すべき敵を倒さずどうするのですか」

 

「・・・・・あの時の戦いで私たち悪魔は数多くの同胞を失い、

私と同じ魔王であり友を失った。これ以上失うことが起きればそれこそ悪魔と言う種が

滅んでしまう。それだけはなんとしてでも回避しなければならない」

 

「それでもなおも、私たちが戦わなければならない理由があった。世界の覇権を巡った

戦争が高が人間によって終止符を打たれるなど我らはそんな弱くないはずがない!」

 

「人間は私たちの糧でもある。堕天使も天使、神もまたそうだ。

人間なくして我らは存続はできない。彼ら極一部の人間の提案にこの場にいる私たちは

心から賛同して今現在の形となっているのだ。だから堂々と人間界を闊歩することができ、

種の滅亡も完全に回避できたのだ。今でもこう思う時もあるよカテレア。

―――数千年も前からこうしていれば戦争など、しなくて済み掛け替えのないものだって

失わずに済んでいたはずと」

 

なぜだろうか・・・・・普段のフォーベシイとはまた違うフォーベシイを見た気がする。

一人の親としてではない、一人の魔王としてのフォーベシイを初めて見た気がしてならない。

過去に起きた戦争は習っているから分かっている。実際に戦場に立って悪魔たちを

率いていた一人だったフォーベシイの言葉は重みを感じさせる。

 

「カテレア。表にいる襲撃者たちと関わりがあると思っていいのだね?」

 

「ええ、ここであなたや神王、堕天使の総督の誰か一人でも倒せばあのお方の願いも

叶うでしょうし」

 

「あのお方?誰のことか説明してもらおうか」

 

「そいつは俺が説明してやる」

 

ここにきてアザゼルが口を開く。

 

「カテレア・レヴィアタン。現魔王の妹で戦争の維持を唱えたが為に冥界の隅に追いやられた

元魔王の後継者の一人だった悪魔。いま、お前さんが所属している組織の背景と

名前ぐらいは分かっているぜ?そしてバックに何かがいることもな」

 

「アザ坊。そいつは誰なんだ?」

 

「急かすなユーストマ。おい、一誠。お前なら知っているはずだぜ。

なんせ会ったことがある奴なんだからな」

 

「・・・・・会ったことがある?」

 

首を傾げ、今まで出会ってきた者たちの顔を脳裏に浮かべる。

 

「んー?」

 

「って、分かるわけないか。それよりもこの状況を打破することが優先だな。

おいフォーベシイ、ヤッっちゃっていいのか?」

 

一応の確認を取るアザゼルに対し、フォーベシイは最終警告とばかり静かに訊ねた。

 

「カテレア、私たちに牙を剥くというんだね?」

 

「あなたを倒し、現魔王レヴィアタンを倒した暁には私が新たな魔王となり

新しい世界を作りかえるのです」

 

「・・・・・キミの気持ちは分かった。アザゼルちゃん」

 

刹那。天井が吹き飛び、アザゼルとカテレアが外に飛び出した。

 

「魔王さま、これは一体・・・・・」

 

「現在、見ての通り俺たちは襲撃に遭っている。嬢ちゃん、お前の眷属悪魔を

利用されている状態でな」

 

「・・・・・まさかっ」

 

「停止していたキミたちを一誠ちゃんが解いてくれた。

しかし、また停止される可能性は大きい。魔王として命ずるよ。

キミたちグレモリー眷属とリアス・グレモリーは捕まっている仲間を救いに行くといい。

ここは私たちだけで十分だ」

 

魔王として命令したフォーベシイにリアスとグレモリー眷属たちは真剣な面持ちで頷いた。

 

「部室には未使用の戦車(ルーク)がございます」

 

「なるほど、キャスリングか。それなら一誠ちゃん、キミの魔力をちょっとばかし借りて良いかな?」

 

「ん、いいよ」

 

一誠の魔力を借りての転移。リアスとリアスの下僕たちは一つの赤い戦車(ルーク)の駒と

入れ代るようにこの場から姿を消した。

 

「さて、俺たちも襲撃してくる奴らを潰しに掛かるか」

 

「久々の運動だねぇ。まさか神ちゃんと共闘だなんて天龍の時以来だよ」

 

「だっはっはっ!おう、そうだなまー坊!」

 

護衛?なにそれ、美味しいもの?そんな感じに二人は襲撃者たちのもとへ飛びだして

行ったのだった。

 

「・・・・・あの二人、一応王さまなんだよな?」

 

「・・・・・止めなくて良いんですか?」

 

「できるならやっていたと思う」

 

轟音が聞こえてきた。あの二人の手に掛かれば襲撃者は赤子当然なのだろう。

 

「俺たち、どう動こうか?」

 

「決まっています。学び舎を襲撃する輩を倒すのです」

 

ソーナが真っ直ぐ一誠の問いを答えた。ですよねーと気の抜けた返事をした。

正臣の護衛としてサイラオーグを残し、他の面々は壊れた天井から外へ出た。

外には魔法使いが着ていそうなローブを身に纏っていて、魔方陣を足場にして宙に浮いていた。

 

「おー、もしかして魔法使い?」

 

「そうみたいですね。ですが、式森家よりは強くないかと」

 

「あ、戦った口だな?どうせ負けたんでしょ?どうだった?」

 

「・・・・・さぁ、学び舎を脅かす輩を倒しに行きましょう」

 

はぐらかした。ソーナが飛び出せばそのフォローと艶のある長い黒髪を靡かせながら

眼鏡を掛けた少女は片手に長刀を持って共に駆けだし、イリナたちも行動した結果、

未だに行動していない一誠とヴァーリだけとなった。

 

「そんじゃ、俺たちも行くとしようか」

 

「ああ、そうだね」

 

二人も魔法使いに攻撃しようと話し合い、ヴァーリは鎧を纏い、

一誠はエクスカリバーを手にした。そして―――。

 

 

ガッ!ギィンッ!

 

 

三方向からの攻撃を剣と拳、金色の翼で防いだ一誠だった。

 

「・・・・・ヴァーリ?」

 

「悪いな一誠」

 

白い全身鎧を装着しているヴァーリが一誠に対して謝罪した。

 

「私も一応こっち側でね。一誠の敵なんだ」

 

「―――――っ!?」

 

幼馴染が、一誠に攻撃した。それだけでも一誠の心に多大な衝撃を与えるのだが、

アザゼルのあの言葉が脳裏に浮かぶ。

 

『お前が友達だと思っていた奴が狙う』

 

と―――。ある意味アザゼルの言う通りとなった。

 

「ヴァーリ、なんで・・・・・どうして・・・・・」

 

「一誠、世界中を旅してどうだった?強者はいたんだろう?私も世界中の強者と戦って

みたくなったんだ。だからとある組織に入ることにしたんだ」

 

『すまないな兵藤一誠。こんなことになってしまったが、ヴァーリを許してやってくれ』

 

点滅する青い翼から聞こえる。どこか苦笑いしているような呆れているよう声音だった。

きっと、アルビオンもしょうがない奴だと思っているのかもしれない。

一誠の手の甲に宝玉が浮かぶ。

 

『変わった白龍皇だと思っていたが、まさかそこまでとは思わなかったぞアルビオンよ?』

 

『お前の宿主には負ける』

 

『今回は赤い龍帝じゃなく、赤い龍の神帝の子供だが相手にとっては不足ではないだろう』

 

『今代はイレギュラーなことが多い。だが、それも悪くはないだろう。こういう時もある』

 

「赤龍帝の代わりみたいな形だが一誠。私と宿命の戦いをしようじゃないか」

 

「できれば幼馴染と戦いたくなかったんだけどな」

 

「それに」と一誠はヴァーリから視線を外し、剣を携えている二人組の男女に視線を向けた。

 

「敵はヴァーリだけじゃないみたいだけど誰だろうなお前ら」

 

一つに束ねた金色の髪、赤いレザージャケットにへそ出しの豊満な胸を覆うチューブトップと

腹部に大きな傷跡があり丈がかなり短いジーンズの出で立ちの少女。

手には真紅の剣を持っていた。そしてもう一人は漢服を着込んでいる白髪の優男。

その男が口を開いた。

 

「僕はジーク。彼女はモルドレッドと言う。初めまして、いや、久し振りと言うべきかな兵藤一誠」

 

「ん?どこかで会ったか?」

 

「話しかけたことはないけどね。僕も教会の出身で、ほら、聖剣使いの彼女たちと

一緒だと言えば分かるかな?」

 

「・・・・・そういうことか。で、わざわざ挨拶に来たってことか?」

 

「いや、僕たちはキミと戦いに来た。その第二の聖剣エクスカリバーを持つキミとね」

 

ジークは朗らかに剣の切っ先で一誠を突きつつ発する。

 

「ライザー・フェニックスとの戦いを見させてもらったよ。

あの極光の斬撃、剣士として戦いたくなった。だからモルドレッドと共にここへ来たんだけどね」

 

「オレはそのエクスカリバーを奪う為に来たようなものだがな」

 

と、モルドレッドの目的がエクスカリバーの強奪だった。

 

「そのエクスカリバーがあればオレはあの男に・・・・・っ」

 

何かを呟いていたモルドレッド。一誠には理解できないが、固い決意があるようだった。

一誠は回避できない戦いだと悟り、三対一の戦いを臨もうと―――。

 

「一誠くんになにをしようとしているんですかぁっ!」

 

怒りの炎が剣と具現化してジークとモルドレッドを襲ったのだった。

攻撃した後、ルーラーが一誠の前に移動して守る姿勢になった。

 

「大丈夫ですか一誠くん」

 

「ああ、うん、まだなにもされていなかったからな。ルーラーのおかげで」

 

「そうですか、よかったです」

 

相手はルーラーの攻撃をかわしていたようで無傷で一誠とルーラーと対峙する。

 

「聖剣使いのルーラーか」

 

「あなたは・・・・・なぜここに」

 

「僕がここにいる理由は至極単純、兵藤一誠と剣を交えてみたかったから」

 

「敵として、ですか?」

 

「そうだね。僕は今、ある組織に所属しているから」

 

テロの組織であることは明白だが、アザゼルは何か知っていた様子を思い出し、

後で聞こうと思いつつルーラーとジークの会話のやり取りを静観する。

 

「教会を、天界を裏切ったのですか?」

 

「おや、意外と普通だね。怒るのかと思ったのだけれど」

 

「私も教会を止めて彼の傍に立ちたいと思っているので他人事とは思えませんから」

 

「ふふっ。主に対する信仰や愛よりも異性と共に在りたいという想いが強いのか。それも

またいいんじゃないか?」

 

「賛同してくれてありがとうございます。が、一誠くんの敵は誰であろうと私が許しません」

 

燃え盛る剣を構えるルーラーにジークも構えた。ジークの手には禍々しい

剣が握られているのを把握し、一誠はモルドレッドと対峙する。

 

『主、あの人間の持つ剣には気を付けてください』

 

―――大丈夫、気付いているよ。どんな剣なのかは知らないけど

 

『主が保有する封龍剣と同じ効果があると思っても良いでしょう』

 

メリアと話し終えた直後にモルドレッドが肉薄してくる。剣を振り下ろし一誠の剣と

モルドレッドの剣が衝突し合った。同じくしてルーラーもジークとぶつかり合う。

 

 

 

 

一方、リアスたちはオカルト研究部に無事転移を果たし、捕まっていた僧侶(ビショップ)

救出を完了していた。小柄で金髪、赤い瞳の女子制服を身に包んでいた―――。

 

「この子はギャスパー・ヴラディ。この格好だけど男の子なのよ?」

 

「嘘だぁあああああああああああっ!こんな可愛い女の子が

男なんかあるはずがないんだぁああああああああああっ!」

 

成神一成が真実を受け入れず絶叫するほどの男の娘だった。

 

「あ、あの・・・・・部長、皆さん。こんな迷惑を掛けて役に立たない僕を助けるなんて」

 

「ギャスパー。あなたは私の下僕悪魔。私の眷属悪魔は皆家族のようなもの。

だからあなたも私の家族なのだから助けるのは当然なのだからそんなこと言わないでちょうだい」

 

「で、でも・・・・・」

 

「今の自分が嫌いならあなたは成長しなければならないわ。今私が言えるのはそれだけ。

ギャスパー、自信を持ちなさい?あなたは私の眷属なのだから」

 

優しく諭すリアスはギャスパーの頭を撫でる。

 

「部長、私たちも加勢しに行った方が」

 

「ええ、分かってるわ。一誠が終わらせていればいいのだけれど」

 

力強く頼り甲斐がある自分と同じ色の髪を持つ男の顔を思い浮かべ、

部室を後にし旧校舎から外へ出た途端だった。リアスたちの前に何かが落ちて来て

轟音と共に土煙が発生する。驚き、動揺するリアスたちの視界にアザゼルの姿が捉えた。

 

「アザゼル、あなた・・・・・」

 

「おお、無事に助けたようだな。こっちはこっちで色々と面倒なことになったけどよ」

 

「面倒?あなたという者がなにを言って―――」

 

言いかけた言葉が咽喉につっかえて言えなくなった。アザゼルと戦っていたカテレアの

傍には白龍皇のヴァーリがゆっくりと降りてきたのだ。

 

「―――――まさか」

 

「そのまさかだ。まったく、予想もしないことが立て続けに起きやがる」

 

ヴァーリが敵となっているという事実にリアスたちが驚きの色を浮かばせる。

 

「あなた、イッセーを裏切ったって言うの!?」

 

「リアス・グレモリー。私は彼に裏切ったつもりはない。

ただ単純に、私も世界中の強者と戦って一誠のように強くなってみたいという思いで

こっち側になっただけに過ぎない」

 

「イッセーが敵になったあなたを悲しむと思わないの・・・・・!」

 

「それを言われると心痛むが大丈夫だ。

さきほど別れと再会のキスをどさくさに紛れてしてきたからな」

 

「「んなっ!?」」

 

リアスだけじゃなく朱乃も驚いた。マスク越しに唇を触れて鎧の中で深く笑んだ。

 

「熱く、濃厚に、私と言う存在を心と体に刻みつけてやった。少々手痛いのを食らったけどね」

 

『人間の女の怒りは凄まじいと私も分からされてしまったがな』

 

アルビオンですら付け加えるほどのことを受けたのだろう。だがしかし、ここにも二人ほどいた。

一誠に恋する乙女が二人。

 

「俺もヤキが回ったもんだぜ。あいつに夢中だったから俺が心配するようなことは

ないと思っていたんだけどよ」

 

「悪いなアザゼル」

 

「そう思うならこっちに戻って来いっての」

 

と、悪態付いたアザゼルが何かを察知して飛び退いた瞬間、ヴァーリに赤い閃光がぶつかった。

 

「っ!?」

 

その反動で吹っ飛び、地面を何度もバウンドしていくとようやく止まった。

赤い閃光の正体は一誠かと誰もが思ったのだが―――。その予想を嘲笑うかのように赤い閃光の

正体はカテレアの頭を掴みだすと地面に叩き付けた。

 

「・・・・・このタイミングでこいつも現れるかっ」

 

険しい表情を浮かべるアザゼルが唸る。

 

「赤い龍の帝王・・・・・『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』ドライグを宿す赤龍帝がよ」

 

『なっ・・・・・!』

 

ソレは赤い龍を模した全身鎧。身体の各部分に緑の宝玉が埋め込まれていて

白龍皇アルビオンを宿すヴァーリの鎧姿とは似ている。

 

「赤龍帝と白龍皇・・・・・まさかこんな形で」

 

「ですが、敵ではないようですわ」

 

「それでも警戒するに越したことじゃねぇわな」

 

カテレアが一撃で倒された。赤龍帝はカテレアを掴み上げ、顔を一瞥するとゴミのように

旧校舎の方へ投げ放った。

 

「おい」

 

アザゼルが赤龍帝を呼び意識を向けさせた。

 

「ここで宿命のバトルをするって言うならそうはさせる気はないぞ」

 

光の槍を具現化し、常闇のような十二枚の黒い翼を生やすアザゼルを赤龍帝は手の平に

赤い魔力の塊を作り出したと思えば、ソレを未だにいる襲撃者たちに散弾丸の如く

放って倒していく。その行為は味方であると示すのであるものの、

アザゼルたちは安心できずにいる。

この後、赤龍帝はどんな行動を移すのか把握できないからだ。

しばらくして砲撃を止めるとアザゼルたちに振り返る。

 

「大丈夫か?」

 

「・・・・・なんだと?」

 

「俺が心配しているんだ。答えろよ」

 

鎧越しから聞こえる男の声。訝しい気持ちで一杯だが、肯定の言葉を発する。

 

「お前、どうしてここにいる」

 

「その理由を言うと思っているのか?」

 

「このタイミングで現れる方が気にならないってのは無理な話だ。

なにを企んでやがる現赤龍帝」

 

「雑魚の親玉に赤龍帝の俺が言うと思ってんの?」

 

見下す態度をする赤龍帝に先ほどの仕返しだとばかりどこからか魔力弾が放たれてきた。

迫りくる魔力弾を容易くかわし、そのままリアスたちのところまで向かって行った。

 

「部長!」

 

朱乃が防御式魔方陣を展開して魔力弾を防いだ。

 

「・・・・・敵でもなければ味方でもないってか。面倒な奴と出会ったよ」

 

「俺は俺の好きなようにするだけだ。強者は絶対、弱者は強者の奴隷」

 

赤龍帝の言葉はどこかで聞いたことがあるものだった。

 

「・・・・・その言葉、兵藤みたいな言い方するわね」

 

「ハッ!この学校にいる兵藤は口だけが達者な弱いやつらばかりだ。

最近、どっかの馬の骨も知らない奴にやられているらしいじゃねぇーの?

同じ兵藤家として情けないったらありゃしねぇ」

 

「その言い方だとお前も兵藤か。今回の赤龍帝は兵藤家の奴だとはな。一寸先は闇か」

 

嘆息する。アザゼルも学校のことを把握しているからこそ

また一つ悩みの種が増えたなと他人事のように思った。

 

「おい、俺を誰だと思ってやがる。お前らを殺すことだってできる赤龍帝だぞ?」

 

「ああ、そんなこともできることはお前に言われなくても分かっているぜ」

 

「わかっちゃないな。俺は歴代の赤龍帝の中で最強なんだ。何ならここで証明してやっても良いぜ」

 

攻撃の構えになる赤龍帝の言動を見ては肩を竦めだすアザゼル。

 

「最強という言葉はお前じゃなくイレギュラーな奴の為にある言葉だ。

お前はただ運が良いだけの人間に過ぎんよ」

 

「ンだと?」

 

「俺はよーく知っているぜ?現在最強だと思っているドラゴンを宿す奴らをな」

 

意味深に赤龍帝から視線を外せば、

 

 

『一誠・・・・・殴られた箇所が痛いんだ。一誠の手で痛みを和らいでくれ』

 

『ちょっ!どこに触らせているんだよ!?』

 

『どこって一誠に対する想いが詰まった胸だが?触りたくなかった?』

 

『時と場所を考えろ!もう少し羞恥心を持て!』

 

 

鎧を解いて服の上からでも分かる豊満な肉の塊を触らしているヴァーリと

動揺する一誠がいた。

―――なにイチャついてんだお前ら・・・・・っ。イラァッとアザゼルの中で募る

何かが炸裂しようとした時、夜空に浮かぶ月をバックに人影が一つ、アザゼルたちのもとへ

舞い降りた。神速で一誠とヴァーリの間に入り込んでくるのは

三国志の武将が身につけるような鎧の出で立ちの女だ。

 

「ヴァーリ、迎えに来たぜ」

 

「美猴か。なにをしに来た?」

 

不満げに漏らすヴァーリは美猴という女に問うた。

 

「もう時間だから迎えに来たんだっての。それに―――」

 

美猴は一誠を見るや否や、

 

「久し振りじゃねーの一誠やーい!」

 

嬉々として一誠に飛び掛かった美猴だった。それにはアザゼルたちは目を丸くしていた。

 

「ああ、そういえばあいつ。あの猿の勢力の方にも行ってたんだっけか。

それなら納得できるんだが」

 

呆れ顔で「お前はどれだけ女と出会えば気が済むんだ」とポリポリと頬を掻くアザゼル。

ますます不満な顔となったヴァーリは一誠の顔をすり寄せる美猴をベリッ!

と擬音が聞こえそうなぐらい一誠と引き離した。

 

「せ、先生・・・・・あいつは一体」

 

「闘戦勝仏の末裔。分かりやすく言えば孫悟空の力を受け継いだ猿だ」

 

「孫悟空って・・・・・」

 

「ある意味お似合いだなヴァーリと美猴はよ」

 

「ハハハッ!オレっちは仏になった闘戦勝仏と違って自由気ままに楽しく生きるんだ」

 

朗らかに美猴は一誠を片腕で抱き締めながら発した。

 

「にしてもお前もデカくなったな!一緒にジジイから追いかけられた時が懐かしいってばよ」

 

「いや、あの時はお前に巻き込まれた形だったぞ!お前、何をしでかしたんだよ」

 

「ちょっくらジジイの秘蔵の酒を全部溢した☆」

 

「そりゃ怒るよ!それにテヘペロして反省すらしていないな!?」

 

ギャーギャーと騒がしく食って掛かる一誠とそれを楽しげに接する美猴。

第三者から見れば仲の良い友人みたいで、アザゼルたちは呆れ、

苦笑いして見守っていたところで、赤い魔力弾が放たれた。

 

「なーに、敵と仲良くしてんの?」

 

手を一誠と美猴な突きだしたままの状態でいる、攻撃した張本人が呆れ返っていた。

 

「敵を倒さないとダメだろう。そんなことすら解らないのか弱者が」

 

次の瞬間。ヴァーリが片手で赤龍帝の魔力弾をどこかへ弾いてみせた。

赤龍帝は顎に手をやって自分の攻撃を防いだヴァーリに向かって言った。

 

「だが、お前イイ女だな。決ーめた、俺の物にしてやる。この兵藤家次期当主の一人の

兵藤誠輝さまのな」

 

「なんだと?」

 

―――兵藤誠輝。それは―――。

 

「ああ」

 

もう一人の赤い龍にとっては―――。

 

「お前か」

 

殺意、敵意、憎悪。負の力が一誠を瞬く間に包み込み黒い何かが胸の奥から募り出す程の

因縁のある人物だった。赤龍帝、兵藤誠輝は一誠に視線を剥けると

顔の部分のマスクをシュバッと開き、顔を覗かせて嘲笑の笑みを浮かべた。

 

「久し振りじゃん。弱虫、あれから必死こいて強くなったかなー?」

 

「川神百代に負けた奴に言われてもな。そっちこそ子供だったから負けたなんて

言い訳できないぐらい強くなったんだろうな?」

 

「ハッ!この赤龍帝の力があれば神だって倒せるんだよ!

この力こそが今の俺の最強の力!俺の為にあるような力なんだよ!」

 

「赤龍帝ドライグ・・・・・可哀想にな。嫌な男に宿ってしまってよ」

 

「なんだ、天龍を宿す俺に妬みか?ちぃせぇ奴だな」

 

数年ぶりに再開する兄弟とは思えないほどの口の悪い会話の交差。

遠くから見ていたリアスたちには疑問が尽きない光景だった。

 

「イッセーと・・・・・知り合い?」

 

「知り合いどころじゃねぇさ」

 

アザゼルはリアスの呟きを拾って一誠に対し可哀想なものを見る目で答えた。

 

「アザゼル・・・・・どういうこと?」

 

知り合いどころではない。それはもっと深い関係なのだとばかりアザゼルは意味深にそう言った。

リアスの疑問を深く溜息を吐いてこう告げた。

 

「お前らは知らないだろうな。あいつには、一誠には兄弟がいるってことをよ」

 

『えっ!?』

 

一誠に兄弟の存在。アザゼルの発したその言葉は一誠たちの方まで聞こえていた。

結果、イリナとヴァーリ以外の面々は目を大きく丸くして驚愕の色を浮かべる。

 

「嘘、聞いたことがないわ。イッセーに兄弟がいるなんて」

 

「言えるような奴じゃないんだよ。一誠と兵藤誠輝の兄弟中は嫌悪と言っても

いいぐらい一方的に悪かった」

 

「ああ、そうだぜ。こんな弱くて惨めで何時も泣いていた情けないったらありゃしない、

この世に存在しなくてもいい弟だからよ。俺は本当に迷惑だったぜ」

 

肯定と誠輝も侮蔑を含んだ言葉を発する。

 

「あの時の男か。その嫌な態度と性格は磨きが掛かっているようだな」

 

「本当よ!今の一誠くんのことを知らないあなたなんか一誠くんに勝てるわけ無いわ!」

 

ヴァーリとイリナが誠輝に対して軽蔑した態度で接するほど印象が最悪の様子。

 

「あ?ンだったら試しに戦ってやろうか。この弱虫と俺とどっちが強いのか」

 

「・・・・・」

 

攻撃態勢の構えになる誠輝と無言で睨む一誠。両者がぶつかり合うのかと思いヴァーリと

美猴が離れた時だった。

 

「ほう、ドライグと出会えるとはな。やはり兵藤一誠と一緒にいることが正解だったな」

 

「ドライグ、久しい」

 

この場に連れて来ていなかったはずのクロウ・クルワッハとオーフィスが一誠の横に

現れた魔方陣の光と共に出現した。疑問を呟く一誠。

 

「どうして?」

 

「力の波動が変わったからな。様子見をしに来た」

 

「ん、そう」

 

一誠の肩に乗るオーフィスと一誠の隣に立つクロウ・クルワッハ。誠輝は目を細め突然

現れた幼女と女性に「誰だあいつら」と疑問を浮かべていた時、

左の籠手の宝玉が点滅しだした。

 

『相棒、戦うのは止めておけ』

 

「あ?俺に指図するんじゃねぇ!」

 

『相手が悪すぎる。戦えばお前が死ぬかもしれないぞ』

 

「高が二人程度増えただけで臆病風に吹かれたってのかドライグ!

不気味な力を感じるだけあって神を倒すことができるこの力なら

俺に敵う奴なんているわけがねぇよ!」

 

『相手がドラゴンの中で最強のドラゴンと邪悪な龍の中で筆頭の最強の邪龍だと

言っても戦いたいのか相棒は』

 

冷たく呆れているような声音が宝玉から聞こえてくるのは

赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』ドライグの声なのだろう。

 

「最強のドラゴンと最強の邪龍だぁ?仮にそうだとして何でそんなドラゴンが

あの弱虫の傍にいやがるんだよっ!」

 

「それだけじゃない」

 

一誠が呟くように発した直後。この場に幾重の巨大な魔方陣が出現して―――続々と巨大な

ドラゴンたちが顕現した。

 

『ドライグ。久し振りじゃねぇか』

 

『・・・・・アジ・ダハーカ、まさかお前までいたとは驚きだ。退治されていたのだと

思っていたのだがな』

 

『ハハハッ!封印の形で退治されたんだこれが。俺はこの兵藤一誠と出会い

共にいることを決めたんでな。後アポプスの奴もいれば邪龍の筆頭格が揃うんだが、

結局は会えずにいる』

 

三つの口が揃って口角を上げて会話の花を咲かせるアジ・ダハーカを余所に誠輝へ

一歩だけ近づく全身が金色のドラゴン。

 

『久しぶりですね』

 

「何のことだ・・・・・」

 

『覚えていないのは無理もないでしょう。私とあなたの最初の出会いは黄色い玉の姿で

あなたの手に収まっていたのでしたから。ですがあなたはこの主、兵藤一誠に兵藤誠と

兵藤一香から渡されたお土産を交換だと言って私を捨てた。あの時の黄色い玉が私だったのです』

 

メリアの話を聞くにつれ、誠輝は思い出した。あの時、古い箱に入っていた黄色い玉。

最初は何かの宝石かと思ったが、ただの石だと思い処分する為に一誠のお土産と半ば

強引に交換した。

 

「―――あの時の玉がお前だと!?何かの間違いだろう!」

 

『私は自ら封印を受け入れた。あなたが私を受け入れてくれば、私の力である創造の力を

振るえたでしょう。ですが、あなたは何も知らずに私を手放し、後に私は主である兵藤一誠に

力を貸し与えることに決めたのです。あなたとは違い純粋で優しい主。

ある意味、あの時の選択が正解だったのかもしれません。あなたに天龍が宿ったのですから』

 

「―――――っ」

 

キツく一誠を睨む。あの時、一誠に渡さなければこのドラゴンは自分の力となっていた。

それだけではない。

 

「(何なんだこのドラゴンたちはよ!あの弱虫の中に宿っているというのかよ!)」

 

「天龍を宿す俺に妬み・・・・・だっけか?」

 

一誠が口を開いた。

 

「別に妬んでいないし。俺には色んなドラゴンたちがいるし大勢の家族がいる」

 

不敵に微笑み両腕を広げながら真っ直ぐ誠輝に言う。

 

「お前の方がよっぽどちっぽけな存在だよクソ兄貴。天龍を宿したぐらいで最強気どりか?」

 

「なにっ・・・・・!」

 

「俺は世界中に修行をしてきた。弱い自分を許せないからだ。

この十年近く修行してきた結果。俺はあの時より確実に強くなり力も得た。―――ゾラード!」

 

『はっ!』

 

全身を輝かせ、光の奔流と化となって一誠に向かう。

 

禁手化(バランス・ブレイク)ッ!」『禁手化(バランス・ブレイク)ッ!』

 

そして眩い閃光に包まれた。程なくして閃光が収まり、一誠は黒と紫が入り混じった赤い

宝玉が身体の各部分にある龍を模した全身鎧の出で立ちで誠輝と対峙した。

 

「『禁手化(バランス・ブレイク)』、『幻想喰龍者の鎧(イリュージョンイーター・スケイルメイル)』これが俺の力の一つだ」

 

禍々しいオーラを滾らせ、誠輝に見せびらかす。

 

『・・・・・相棒、あれは拙い』

 

「てめぇ、またか!」

 

『相棒には分からないのか?あの鎧から発する異様なプレッシャーを』

 

「黙っていろ!どんな力を持っていようが赤龍帝として負けることは許されないんだよ!」

 

ドライグに叱咤し赤い魔力弾を具現化して放った。

それはビーム状みたく太さも極めて大きく、一人の人間ぐらい飲みこむことぐらい

容易いほどの極太だった。避ける素振りもしない一誠に魔力がぶつかる直前。

誠輝の魔力の塊は何の前触れもなく消失した。

 

「この鎧に籠る力は無効化。全ての能力を無に帰す」

 

「ふざけんなぁっ!」

 

魔力がダメなら接近戦だと、己の肉体で戦おうとし一誠に肉薄する。懐に飛び込んだ

誠輝の拳がうねりをあげて一誠の急所を狙ったが分かっていたとばかり

片手で誠輝の拳を受け止めた瞬間、赤龍帝としての鎧がガラス細工が甲高く割れたような

音を発し、解除されて誠輝の生身の肉体が表に曝した。

 

「俺に触れた能力は全て無に帰す。―――アジ・ダハーカ!」

 

一誠も鎧を解いて光の奔流と化となったアジ・ダハーカと一つになり、三つの鎌首、

三つの頭部、六つの双眸を持つ人型のドラゴンと化となった。

 

「なっ・・・・・!?」

 

『―――GYEEEEEEEEEEEEEEAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!』

 

誠輝の耳元で咆哮をした。耳の中が激しく振動し、鼓膜や他の気管に損傷を与える。

 

「ぐぎゃああああああああっ!?」

 

さらには三つの口で誠輝の身体に深々と噛みついて宙に放り投げた。

 

『ネメシス!』

 

『おう!』

 

ネメシスも加わり、宙にいる誠輝の周囲から数多の鎖が飛び出して縛りあげた。

 

「メリア!」

 

『はっ!』

 

トドメはこれだと一誠は金色の杖を掲げ、一誠の創造で具現化した

巨大な光の十字架が誠輝の頭上に浮かぶ。神々しいのにとても威圧感があり、

誠輝は焦心に駆られて食って掛かる。

 

「て、てめぇっ!俺を殺す気か!?俺を殺したらお前はどうなるか分かっているんだろうな!」

 

「知るか。兵藤家の次期当主なんて他にもいるみたいだし、お前と同じ立場の奴らから

すれば候補の一人がいなくて万々歳だろう」

 

「ふ、ふざけんなッ!」

 

鎖を強引に引き千切ろうとするが鎧を纏えない事実に更に焦る。

 

「んだよこの鎖はぁっ!鎧を纏えないってどういうことだよ!」

 

「えーと、兵藤家のある方角は・・・・・こっちか」

 

十字架を誠輝ごととある方角へ換えて構える。そして―――。

 

「んじゃ、弱くて惨めで何時も泣いていた弟に初めて負けた赤龍帝ちゃん。

自分が最強なんてよく恥ずかしいことを言ったな?一生覚えて笑ってやるからな」

 

「て、てめぇえええええああああああああああああああああああああっ!」

 

「バイバイ」

 

誠輝に鋭く十字架が突き刺さり、鎖が解かれていないままどこか彼方へと飛んで行った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。