HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード44

そして、2-Sと2-Fの体育の授業が始まった。

全員で挑む2-Sに対して2-Fからは一誠、金剛四姉妹、初日に編入したエルザ。

 

「俺とエルザはともかく四人は格好の餌食だな。人質にされかねない」

 

「捕まっても私たちを気にせずに頑張ってくだサーイ」

 

自己犠牲とも言える金剛の額にデコピンした。

 

「もしも捕まっていたら助けてやるから安心しろ」

 

「イッセー・・・・・」

 

嬉しい言葉を言ってもらい歓喜極まる。一誠に抱きつきたい思いが高まるが金剛はぐっと堪えて我慢した。

するなら、この授業を終えたからだと決めて比叡、榛名、霧島という妹たちに目を向けまた一誠に顔を向ける。

 

「できれば妹たちも守って欲しいデース」

 

「分かってるよ。大切なお前とお前が大切にしている家族は俺が守ってやる。家族を大切に思っている人は好きだからな」

 

ああ・・・・・やっぱりこの男の子は・・・・・。金剛は熱い視線を一誠に飛ばす。

 

「・・・・・」

 

エルザはその様子を温かく見守っていた。誰でも優しく話しかけ心を温かくさせる。

それは時が経って成長しても変わっていないことに微笑ましく、そして嬉しい思いとなる。

だからこそ、兵藤一誠はフェアリーテイルというギルドの一員として馴染むのに一日も掛からなかった。

スッと握った拳を突き出した。

 

「相手がどれだけ強かろうと絆の強さで勝とうじゃないか」

 

「当然だ。一人も欠けずに勝つぞ」

 

一誠も拳を突き出した。二人の様子を見て金剛も拳を握って二人と同じように突き出す。

 

「私も力の限り頑張りマース!」

 

さらに比叡たちも場の空気を読んで拳を突き出す。

 

「―――勝つぞ!」

 

「「「「「おおっ!」」」」」

 

 

 

ドガッ!

 

「お前たちは余計な事をしてくれたな」

 

周りから軽蔑、蔑む視線が一誠たちと退学を賭けた切っ掛けを作った兵藤たちは向けられている。

今日編入してきた一人の少年は目を細め、殴った同族に言葉を掛ける。

 

「俺たちが負ければ何でも一つ命令できるだと?バカが、だからこそお前らのような愚か者の行動を監視する為に俺たちがここにいることを理解できないんだ」

 

「ただの降伏勧告をしただけじゃねぇか!それがこんなことになるなんて俺たちだって―――!」

 

「思いもしなかった?と言いたいのかお前。俺たちと同じ役割を担っている当主の息女の前で兵藤家としてあるまじき暴挙をすれば頭の良い奴、勘の良い奴は誰でも分かることだぞ。ああ、お前らみたいな脳の無い獣はどちらでも無かったか」

 

ゴミを見るような目で同胞に言い放つのは他の面々も同じだった。

 

「よりによって楼羅さまと悠璃さまになんて様を。許し難いですわ」

 

「当主がお怒りになるのも無理がないですわね」

 

「兵藤一誠だっけ。俺たちになんて命令をするのか正直考えるのも嫌なんだけど」

 

「こっちまでとばっちり来るんだろう?・・・・・最悪だぜ」

 

愚痴を漏らす兵藤は一人の少年にも話を振るった。

 

「おい、相手の口車に乗せられた赤龍帝。お前もの力が必要のようだぜ」

 

赤龍帝―――兵藤誠輝。誠輝は億劫そうに嘆息した。

 

「ふざけんな。誰が弱者に力を貸すかよ。俺は俺の戦いをするだけだ」

 

「・・・・・相変わらず兵藤の者としての自覚がないようだなお前は」

 

「はっ、兵藤家の教えは力が全て何だろう?力のない奴に構ってなんになる」

 

「典型的な力バカが。―――流石は元兵藤家に追放されていた親の子だぜ。今じゃその親は次期当主でその子供であるお前は晴れて次期当主の座に我が物顔で座っているお前が当主になっても誰が従うものか見物だ」

 

「従わないんなら力で捻じ伏せて従わせるだけだ雑魚が」

 

誠輝の発言で面々は隠すこともなく嫌悪感の色を浮かべる。

 

「とにかく相手が誰であれ連携は大事だ」

 

「連携?弱い奴らが一緒に頑張って倒そうってか?はっ、俺の足手纏いになるぐらいならお前らは戦わなくて良いんじゃねーの?」

 

侮蔑する誠輝に対し、不快感をますます強まって怒気が孕んだ瞳で睨みつける。

 

「やめなさい。同じ兵藤家の者が争ってどうするのですか」

 

「もう・・・・・男ってこんなのしかいないの?」

 

「てか、そろそろ時間だ。さっさと行こう」

 

呆れる二人の女子とは違う反応をする、腕に巻いた時計の針を見て授業を臨もうと促す少年の言葉に―――兵藤家は動いた。

 

 

 

 

―――理事長室―――

 

「さてさて、彼らはどう戦うか楽しみだ」

 

「今日だけは特別に学園全体に様子を見れるようにした」

 

「頑張れ坊主ー!」

 

 

―――職員室―――

 

「一クラスと六人って本当に異例な授業になるなこりゃ」

 

「数が多ければ一誠さまが負けると考えているのであればそれは愚かなことですね」

 

「心配はしてないようだな?」

 

「当然です。一誠さまは例え赤龍帝でも負けはしません」

 

「ほほう、それは面白い話しですなぁー」

 

「あなたは・・・・・」

 

「ですが、私のクラスの生徒は負けませんよ。皆優秀ですからねー?」

 

「あなたは世界を見たことがありますか?」

 

「世界?」

 

「あるお方の言葉です。―――世界に通じることができたら万にも通ずると。兵藤一誠はまさにそれです」

 

―――○●○―――

 

異空間に転移された場所はレプリカの学園ではなかった。レプリカの光陽町だった。

一誠と金剛は違う戦場に驚きを隠せずにいたがやることは変わりないと気持ちを入れ替えて

アナウンスの開始宣言と共に動いた。

 

一方、一クラス分総出でレプリカの光陽町に転移された兵藤たちはそれぞれ独自に動いていた。

チームワークも視野に入れて先に相手を見つけて打破する目論みである。

六人とはいえ中には悪神ロキを倒した一誠がいる。警戒する越したことではないが多勢に無勢と気が緩んでいた。

四方八方に移動する兵藤たちは屋根から屋根へと伝って移動したり、陸上選手よりも早く移動すると凄まじい身体能力を見せる―――が、唯一人間が抗えない現象があった。

 

レプリカの町が震動し出す。その原因は通路と言う通路に雪崩のような感じで進む膨大な量の水。

押し寄せてくる水はまさに津波。町にある全てを押し潰しては流し、町は浸水、冠水していく。

津波から避難すると家や建物の屋根に跳び移る。未だに誰一人としてリタイヤしていない兵藤たち。

が、移動する場所が限られてしまった。それでも兵藤たちは一誠たちを探し続けた。

 

「くそっ、地形を変えやがって」

 

一人の少年は沈没した町に愚痴を漏らす。辺りを見渡しても殆どの建物が津波によって沈んでいる光景や自分と同じように屋根の上から探している同族。どこだあの化け物は―――。

 

ジャラッ。

 

金属同士が擦れるような音が聞こえた。そして足が何かに摑まれているような感覚。

視線を下に落とすと魔方陣を踏んでいる足に大きな鉄球と繋がっている鎖が。

 

「な、なんだこれは!?」

 

「あー、さっそくトラップに引っ掛かったバカがいたか」

 

自分に向けられた言葉だと反射的に声が聞こえた方へ向けた瞬間、強く殴り飛ばされ水の中に落ちた。

 

「ぶはっ!?」

 

一度は水面から顔を出したものの、服が水を吸って更に重さを増すどころか、繋がれている鉄球の重みで少年は中々屋根に上がれず屋根にしがみ付く形でいる。その様子を腰を下ろして見ている一誠がいた。

 

「て、てめぇ!」

 

「俺にかまっている暇は無いぞ」

 

口角を上げて今の自分の様を見て嘲笑っているのが分かる。

 

「この町の水位を建物の屋根まで上げた。となると家を囲んでいる塀ですら精々お前を沈ませない為の浮輪か足場程度しかならないだろう。しかも縋る物がない場所では確実に溺れてしまう」

 

「―――っ!?」

 

「ついでに鉄球は水を吸い込めば吸い込むほど大きく重さが増す仕組みだ。―――どっちにしろ水の中に入った時点でお前の負けだ」

 

一誠の言っていることは事実だとばかり、足枷がどんどん重くなっていくのが感じるようになり、やがて少年の顔に焦燥の色が浮かぶ。

 

「じょ、冗談だろっ。おい、このまま俺はマジで―――」

 

「ああ、死ぬんじゃないか?お前の命なんてどうでもいいけど」

 

「ひ、人の命をなんだと!」

 

「人の命より人の人生を滅茶苦茶にしたお前たちにいい罰だ。っと、見つかったか。助かりたかったら他の奴らに乞え、じゃな」

 

一誠が逃げると追うように他の兵藤たちが自分の目の前に通り過ぎる。

 

「お、おい!俺を助けてくれっ!」

 

一人だけ足を停め、沈みかけている少年に振り返って言った。

 

「何やってんだ?遊んでないでさっさと上がってくればいいだろう」

 

「俺の足に鉄球が仕掛けられたんだよ!」

 

「鉄球?鉄球なんて昔足に鉄球を付けて泳いだ特訓をしただろうが」

 

最後に「アホくさ」と言い残して行ってしまい、

 

「ま、待ってくれ!頼む!頼むからよぉっ!?」

 

だが、非常にも誰一人として沈んでいく少年を流し目を送るだけで助けようとはしなかった。結局、顔をぐしゃぐしゃに泣き叫びながら水の中に沈んだ。

 

 

 

「換装!」

 

エルザ・スカーレットの魔法が発動する。魔法空間に収納した鎧と武器を自由に替え、装着できる魔法。

迫りくる兵藤たちに相手に立った一人で立ち向かうエルザは学生服から肩や腹部が露出し、胸を大きく開けた背中にニ対の銀の翼を展開している銀のドレスみたいな鎧を纏った。

 

「うほっ!良い女だ!」

 

「一気に倒さず捕まえて楽しむってのも有りだろう」

 

ゲスな笑みを浮かべる兵藤たちに真剣な眼差しを放ち魔法空間から出した二つの剣を構える。

 

「御託は良い。掛かって来い」

 

「上等だ!」

 

十人以上の少年たちが飛び掛かった。武器を持っている者がいれば持っていない者もいる。

無駄な動きが無いのは腐っても兵藤家の武術を骨の髄まで学んだからだろう。

 

「お前たちは魔法を使わないのか。なら、ただの人間と一緒か」

 

「なにをごちゃごちゃと―――!」

 

エルザが動き出した。兵藤たちに突貫し、擦れ違い様に五つの銀閃が宙に走った。

 

「天輪・五芒星の剣(ペンタグラムドード)!」

 

五芒星を描くような軌跡で斬撃を繰り返したエルザの斬撃を受け戦闘不能状態となった兵藤たち。武器ですら破壊してしまった。

 

「修行が足りんようだな。出直してこい」

 

光に包まれる兵藤たちに向けてエルザは次の相手へ跳び出す。

 

「いやー意外だな」

 

戦場の地形を変えた張本人たる一誠は漏らした。

 

「まさか、金剛の妹たちも同じ神器(セイクリッド・ギア)だったなんてな」

 

上空から落ちる雷に感電し続ける兵藤、炎に包まれてその身を焼かれ続ける兵藤、巨大な魚に具現化した水に襲われ呑みこまれ水中へ引きずられる兵藤、嵐に巻き込まれカマイタチで全身が切り刻まれる兵藤―――等々拷問染みた攻撃をしている一誠は水の上を走り、屋根の上に立っている兵藤たちに砲撃をしかけている金剛四姉妹を見て感嘆を漏らす。

 

「良い意味で予想外だった。さて、そろそろ本命が来るころだろう」

 

悲鳴と苦痛の演奏を聞き流し、周囲に目を配る。

 

「この―――!」

 

「あ、そこ踏まない方が良いぞ」

 

跳躍してきた兵藤から後退した一誠が指摘した時には既に遅くトラップが作動した。

魔方陣が出現して鋭く出てきた突起が兵藤の足、肩、腹部を貫いた。

 

「あーあー、だから言ったのに。ま、同情はしないがな」

 

どうせ治療されるんだからと光に包まれリタイヤした兵藤に対して思っていると、

一誠の目の前で水が人を模した巨人となった。

 

「これは・・・・・」

 

「へへっ、水を操れるのはお前だけじゃないぜ」

 

一人の兵藤が不敵に一誠の前に現れた。

 

「なーるほど、水系統の神器(セイクリッド・ギア)の所有者か」

 

「いくらお前でも呼吸ができない空間の中じゃどうしようもないだろう!」

 

水の巨人が襲いかかる。

 

「まぁ、こういう類の相手は何度もしてきた。対処方法は―――」

 

水を操っているであろう兵藤の背後に一瞬で回り、襟を掴んでは水の巨人に向かって投げ放った。

 

「操っている奴を攻撃すればいい」

 

『バカが!自分の首を絞めていることに気付かないのか!』

 

放り投げられ水の巨人の中にいる兵藤は再び捕まえようとした。どうやら所有者は水の中でも呼吸ができるようだった。

 

「逆だ。お前が自分の首を絞めている」

 

一誠の手が燃えだした。魔力で具現化した炎は水の巨人の手と同じぐらい大きくなり、炎は巨大な手となり水の手と掴みあった。―――水は火を消すってのに何を考えている?兵藤は訝しい顔で一誠を見た。しかし、炎の手は消えなかった。それどころか一誠はもう片方の手にも炎の巨大な手を具現化させて水の巨人の頭を掴むと激しく燃え盛った。

 

「お前、火は水で消えるのにっと思っているだろう?」

 

『・・・・・』

 

「考えは間違ってないけどさ。お前、そこから出た方が良いぞ」

 

何を言っている?兵藤はそう思っていた。水が火に負けるはずがないじゃないかと当然のように思っていた。

そう、次第に水の温度がどんどん高く、温かくなっていくまではそう思っていた。

 

「水は火に温まれてこそお湯になるんだ。じゃあ、水が温まり過ぎるとそれからどうなると思う?」

 

『お前、何を言って―――』

 

「水が熱せられて急激に気化し、高温・高圧の水蒸気となることによって引き起こされる現象。さて、その現象は一体なんでしょうか?」

 

そう言われて周囲の水の温度が肌に感じるほど熱くなった。そして―――気付いた。

 

『水蒸気爆発・・・・・っ!?』

 

「正解」

 

炎の手は形を崩し水の巨人を完全に包みこんだ。燃え盛る炎は水の塊を囲んで水を熱して―――轟くほどの音を発する爆発が発生した。

 

「火は水に弱いがそれでもそう簡単には消火できないことをわかんないのかなー?」

 

 

 

 

「・・・・・ソーナ、水を使う時は気をつけなさい」

 

「ええ、物凄く勉強と成りました」

 

現実世界では化学現象を起こした一誠にリアスとソーナは畏怖の念を抱いた。それを一誠は露にも知らないでいる。

 

―――○●○―――

 

六人の戦いぶりは目を張るものだった。エルザは剣の腕で兵藤たちを斬り捨て、金剛、比叡、榛名、霧島はコンビネーションで屋根の上にいる兵藤たちに砲撃、一誠は圧倒的な力で兵藤たちを一蹴する。一クラス分いる兵藤の数にこのまま勝てるのではないかと誰もが思った。

 

「残りはあいつらか」

 

数人の兵藤たちが一つの建物の屋根に集結して一誠たちと対峙した。相手は威風堂々とした態度で一誠たちを見返す。

 

「よくともまぁ、あれだけの数を余裕で倒せたもんだ。流石と言ったところか化け物」

 

「お前らもその化け物に倒されるんだけどその気分はどうだ?」

 

「俺たちを他の奴らと一緒にするんじゃねぇ」

 

「んはっ!それについては同感だ。俺も他の兵藤と一緒にだけはされたくない」

 

「理由は?」

 

求められた理由。一誠は言った。

 

「あんな自分たちは偉い、自分たちは兵藤なんだから何でもしていいと女性を強姦したり、奴隷のように扱い、傍若無人な振る舞いをする兵藤と同じだって誰が思われたい?」

 

「「「「「・・・・・・」」」」」

 

「言っておくが、この四人も兵藤の被害者だ」

 

金剛たちに向ける言葉。

 

「特に三人の妹は兵藤に自我を壊され、植物状態で一年間も病院に眠っていた。姉はそんな妹たちの為に身体を張って頑張って生きていたんだ。―――お前らには関係ないからと鼻で笑うだろうな」

 

一誠は言い続ける。

 

「お前らに体験、経験はしたか。大事なものを失い、奪われたその瞬間を。―――無いだろう?お前らは兵藤家だからな」

 

「・・・・・何が言いたい」

 

「力のない奴は力のある奴に淘汰されるのが世の常―――どこかの兵藤の奴の言葉だ。お前らもそうなんだろう?相手を見下しているのが分かっているんだよお前らの目を見ればよ」

 

兵藤たちから雰囲気が変わったのを肌で感じ取った。

 

「エルザ、金剛、悪いけどあいつらは俺がやる」

 

「・・・・・因縁があるのか?」

 

「一応、同じ名前を名乗っているからな」

 

指を音を鳴らして弾いたと同時にエルザたちは金色の球体の中に包まれ宙に浮き始める。

 

「思っていた状況とは違うが、それでも俺の願望は叶う」

 

「何が願いなんだ」

 

「決まってる」

 

一誠はハッキリと言った。

 

「ただの子供みたいにお前ら兵藤家に見返すだけだ。お前らを一人残さず倒せば俺は兵藤家の中で一番強いということになるだろうしな」

 

腕を伸ばし手の平を突き出した。一誠が攻撃すると察知した兵藤たちは一斉に散った―――が。

 

「・・・・・まだ攻撃しないんだけど」

 

何とも形容し難い気分となる一誠に『間際らしいっ!』と兵藤たちが怒気が孕んだ声で叫ぶ。

改めて一誠は金色の杖を発現して手にする。それから呪文のようにブツブツと呟くと一誠はブレたかと思えば分裂した。

 

「こいつは!」

 

「兵藤家のお前らじゃ絶対にできない力だ。さらに―――」

 

数人の一誠の分身が真紅の光に包まれると真紅のドラゴンを模した全身鎧へと姿を変えた分身たち。

 

「「「「「―――っ」」」」」

 

「こんなやり方もできるわけだ」

 

他の一誠の分身たちが動き始め、二人の兵藤家に抱きついた。

 

「なんだ!?くそっ」

 

「放しやがれ!」

 

抵抗をする兵藤たち。足掻いても、もがいてもビクともしない分身たちが同時にカッ!と一瞬の閃光が弾いたと思えば、

 

チュッドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

直径十メートルほどの大きな爆発を起こして兵藤を巻き込んでの自爆をした。

 

「魔力で構築した分身体だ。なら、その魔力を歪め、逆流させるとどうなる?それに考えが至った俺は歩く爆弾装置を完成した」

 

「お、お前・・・・・!」

 

爆発した分身たちを説明する一誠に戦慄する兵藤たちだった。

 

 

 

「・・・・・和樹さん。あんなことできますか?」

 

魔法使いの和樹に問う龍牙。直径十メートルの爆発は至近距離から食らったらただでは済まない。

 

「やり方次第ではできなくないけど、あんなこと考えたことがないよ」

 

魔法使いとして純粋な魔力での砲撃や属性攻撃、様々な魔法を放つことが主なスタイル。和樹もそうであり、方法はどうであれ、魔力を故意で暴発させて爆発を発生させる魔法技は初めて見た。

 

「とても厄介だな。魔力を暴発させるなんて普通は危険過ぎるのにあの方法でやるなんて」

 

「兵藤くん・・・・・」

 

カリンと清楚は黒板に展開している立体映像の魔方陣が写している映像から目を離さず授業が終わるその時まで見守った。

 

 

 

「さぁ、次は誰を爆発に巻き込ませようか」

 

二人の兵藤がリタイアした。一誠の戦い方に顔を強張らせる兵藤たちは警戒の色を濃くする。

 

「とんでもねぇ思考をしやがるっ」

 

「あの赤い鎧の奴も爆発すると考えると・・・・・」

 

「不用意に近付けれねぇな」

 

必死に対策を考える。ここまで魔法が厄介だとは改めて思い知らされた。

 

「お前、兵藤のくせに魔法を使いやがって!正々堂々と―――」

 

「よく言うぜ。俺のこと化け物と言っておいて何ほざいている?だが、正々堂々とやって負かしてやろうじゃないか」

 

真っ向勝負を臨む兵藤と体術勝負を始めた。一誠の頬を化するように兵藤の拳が突き出される。交わされた拳をカバーするように左足が薙ぎ払う気配を察知し避けるどころか兵藤の懐に接近し、握っていた拳を目では追いつけない速さの正拳を顎に打ち上げた。

 

「がっ・・・・・!?」

 

グラグラと脳や視界が揺れる。普通に立ってもいられず、思わずその場で四つ這いになった兵藤に声を掛ける。

 

「脳震盪を食らったらまともに立ち上がれることもできないだろう。今この瞬間、お前の命を奪うことなんて造作もないんだけどそこんとこ意識してる?」

 

「―――――」

 

首筋に当てられる冷たい感触。それは自分の命を狩る死神の鎌に彷彿させるのに十分だった。

恐る恐ると顔を上げると直ぐに暗くなった。目の前に迫る何かが視界を黒く遮って、一瞬の衝撃に襲われると意識が遠のいた。意識を狩った兵藤を水の中に蹴り落として残存している敵に向き直る。

 

「どうした、化け物一匹も倒せないんじゃお前らの実力は底が知れてるもんだぞ」

 

その挑発に兵藤たちは怒涛の勢いで迫る。まず、懐に飛び込んできた兵藤が一誠の腹部に拳を突き刺した。味方に続けとばかり、手足を一誠の身体に叩き込む。

 

「っ!?」

 

「いっでぇー!?」

 

兵藤たちの手足にダメージが逆に与えられた。予想だにしなかった一誠の身体の硬さ。

自分たちの手足から敏感に痛みが脳髄まで信号が送られて堪えるように殴った手や蹴った足を抑えて振るえる。

 

「バカだなー」

 

徐に上着を脱ぎ捨てた。

 

「この仙術の応用で鋼鉄と同等の硬さにした俺の身体にお前らの打撃なんて聞くか。サイラオーグか川神百代ぐらいの打撃力じゃなければ俺を崩すことなんてできやしないぞ」

 

一誠の上半身は健康的な肌の色とは真逆の黒い光沢を発する鉄の身体と化していた。

兵藤たちはそんな信じられないものを見る目で大きく目を張って見詰めるばかりだった。

 

「な、何だその身体は・・・・・!」

 

「言っただろう。仙術を応用したって」

 

拳も鉄のように黒くなり、横薙ぎに兵藤の横っ腹に叩きつけられた時、兵藤は自身の骨が砕ける音がリアルに聞こえては何度も水面や屋根にバウンドしながら吹っ飛ばされた。

 

「こ、このぉっ!」

 

武器を持つ兵藤たちが一斉に振り下ろす。黒い身体に斬り付け、叩きこむが一誠の皮膚の硬さは武器の強度を上回り、刀身が砕けた。目を張って呆然とした兵藤たちの頭を掴んで思いっきり頭蓋が陥没、もしくは罅を入れるほど握りしめた。激痛で悲鳴を上げる兵藤たちは一誠の手で屋根に叩きつけられて問答無用に騙された。上半身が屋根に埋もれ、微動だにしない仲間に他の兵藤たちは顔を青ざめる。

 

「あ、あんなの。先生たちから教わって無いよ!」

 

「―――そりゃそうだろう」

 

悲鳴染みた情けない声を発した兵藤の真後ろに回った一誠が正拳突きを繰り出した。

 

「兵藤家の威光と権力を嵩に、胡坐を掻いて好き放題やりたい放題していたお前らと、世界を旅して様々な人と出会い、格上の相手に師として修行をしてきた俺との差が開き過ぎているんだからな」

 

遠くに吹っ飛ぶ兵藤には聞こえないことを承知で告げる。

 

「・・・・・」

 

視界に二人の少女が懐に入ってくる。畏怖の念、自分に恐れ戦いているのにも拘らず果敢に攻めかかってくる。

両腕を大きく広げだす一誠のその行動に何の意味があるのか理解できないでいると―――。

前からずっとタイミングを計って隠れていたかのように屋上を突き破って出てきた一誠の分身体が行く道を阻み、

 

「あ―――」

 

直径十メートルの爆発に巻き込まれた。無慈悲な攻撃、隙を作ったら回避不能に近い爆発でまた兵藤がバトルフィールドから姿を消す。

 

カッ!

 

爆発で生じた噴煙の中で一筋の極光が。煙を吹き飛ばし、神々しい光を纏う刀身の剣を掲げる一誠の姿。

 

「ちょっ!」

 

「あれって、まさか―――っ!?」

 

ロキ戦で見た一誠の大技。見覚えがあるその大技の兆候に残存している兵藤たちは剣を振るわせないと攻めかかったり、許される限り遠くへ逃げると二手に分かれた。そんな兵藤たちに光が放たれ町を、敵を全員光に呑み込む。

 

「つ、強い・・・・・っ」

 

「ち、ちきしょう・・・・・っ!」

 

手も足も出ず、歯牙にも掛けれなかった自分に悔しさを抱いこの場からいなくなる。

 

「・・・・・」

 

肉眼で探しても見当たらない。なら、気で探知しようとした時だった。結界が壊されたことを気づいてエルザたちに振り替えれば、

 

「イッセー・・・・・ッ!」

 

金剛たち四人が兵藤たちに捕まってしまっていた。エルザは無事で仲間を人質にしている兵藤たちに苦虫を噛み潰したような表情でただ睨むしかできないでいる。人質を取った兵藤と―――誠輝、さらに全身ずぶ濡れの、水中に逃げ込んで一誠の大技を避けた兵藤たちが現れた。

 

「・・・・・これが兵藤のやり方かっ・・・・・!」

 

勝つ為なら汚い手を使う事を躊躇もしない―――いや、戦場に卑怯な言動は合法とされると世界で学んだ一誠は自分の傲慢さに恨めしく思う。

 

「さて、化け物」

 

誠輝は嘲笑う。

 

「抵抗したらこいつらはどうなるか・・・・・わかってんだろうなぁ?」

 

「・・・・・っ」

 

甘い奴は大抵、こんな状況であればどんな行動をするのか手に取るように分かる。案の定―――。

一誠は剣を遠くへ放り投げて無防備になる。それを見て誠輝が告げる。

 

「―――徹底的に甚振ってやれ」

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