<<Chrono Drive Online>>(仮)   作:Wisadm

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3.実力の一端

 

ズッダーンッ!! と、ものすごい爆発音がして俺は飛び起きた。

 

「おわっ!?なんだ?何の音だ?敵襲か!?」

 

見るとなぜか誰もいなくなっていた草原で筋肉ムキムキな半ズボンのマッチョメンと、中学生くらいの歳の魔女帽子をかぶった金髪ツインテール少女が戦っていた。 

いや、正確には、見た感じレベルが高いマッチョメンが、少女を大剣で襲っている様にしか見えない。

よく見なくても、いろんな意味で犯罪だった。

 

それにしても、このゲームにはPK.はなかったはずなのだが、攻撃をガードした少女のヒットポイントが減っているということは、どうやらPK.ができるようにシステムが変更されたようだ。

次からは俺も気を付けるべきかな。

 

さて、助けるにしても問題がある。

「いやいや、さっさと助けろよ」という人もいるかもしれないが、しかし、少し考えてみてほしい。

確かに俺はあの少女を助けること“は”できるんだろう。

しかし、例えばあれは実はパーティプレイの不和から来る私情のもつれかも知れない。

もしそうだとすれば、俺が助けたせいでそれ以上にめんどくさい事態にならないとも限らない。

最悪俺まで巻き込まれるだろう。 

そんなのはごめんだと心からそう思う。

そうさ、別に俺は心優しいスーパーヒーローなんかじゃないんだから。

 

しかし、そんな如何でもいいことを考えている余裕があったのはそこまでだった。

またしても、ズッダーンッ!!という音がして、俺はすぐにそっちに向き直った。

すると向こう側からものすごい勢いで金色っぽい何かが飛んでくるのが見えた。

避けられないと思いとっさに受けの体制をとったのはいい。

でも、飛んできたものを見た瞬間、俺は唖然としてしまった。

 

飛んできたものが、さっきまでマッチョメンと戦っていた金髪ツインテな魔女っ娘だったからだ。

とりあえず、今からは避けられないのでしっかりと受け止める。あまりの衝撃に肋骨が何本かヤバイ感じがしたが、ゲーム内なので、まあ大丈夫だろう。

HPが半分消え去ってはいたが…

 

「お、おい。大丈夫か…?」

 

恐る恐る声をかけて、ゆすってみる。

同時に少女のHPバーも確認するが、数ドットしか残っていなかった。

よかった…ダメージの受け損は嫌だよ俺は。

 

「え、う、はい、なん…と…か…ッ!?」

 

なんだかよく分かてないような戸惑ったような反応だったが、なぜか顔を赤くして俯いてしまった。

 

「え、あの、俺なにかした?」と、心配になって聞いてみるが、「ひゃ、いや、あの、その、うぅ… と、とりあえず、降ろして…」とさらに顔を赤くしていく。

 

そして、俺は気付いてしまった。この少女がなぜ赤面していたかに。

飛んできた少女を受け止めたとき、なんというか、その、

 

――お姫様抱っこのような形になってしまっていたようだ。

 

そら、赤面もするはな…恥ずかしいもんなぁ。俺はそう思いつつ、急いで、かつ慎重に少女を降ろした。

きっと俺も顔が赤いんだろうな。

 

「おいこら、テメェら… なにイチャついてやがんだぁ?ああぁ!?」

 

突然の大声に驚きそちらを振り返ると、そこにはさっきのマッチョメンがいた…

 

「おい、にぃちゃん。その女こっちによこして、さっさとどっかいけや。そしたらにぃちゃんは見逃したるさかい」

 

あんたは、どこのちんぴらだよとツッコミたくなるセリフだが、無視して少女に向き直り、聞きたかったことを聞くことにした。

 

「あのさ、助けてほしい?」

 

こんなことを聞くって事は、俺はきっと助けたいって心のどこかで思ってたんだろう。

まあ、巻き込まれたくないのも事実なんだけど、今回はもう遅いしな。

 

すると少女は少し何かを迷うようなしぐさをした後、口を開いた。「助けて」と。

 

そう言われた時、誰かを助けられるのは意外と嬉しいと思ってしまった。

どうやら俺は、スーパーヒーローになりたい人種だったらしい。

 

「わかった」そう言って少女を安心させようとして不敵に笑った。

それから、アイテムポーチから初期装備の杖を取り出そうとして思い直し、切り札のひとつである『指輪』を取り出して自分の右手の薬指にはめ、マッチョメンと少女の間に立つようにして振り返った。

 

「それで?なに?その娘にほだされて俺とやるの?参考までに言っとくけど、俺はもうレベル15だぜ?にぃちゃん今レベルいくつよ?」

 

現状でレベル15、自分より14もレベルが上だと聞いて俺が思ったのは、それくらいなら計算上何とかなるだろうということだけだった。

 

「俺か?さっき始めたばかりだからまだ1だけど?」

 

それを聴いた瞬間、マッチョメンの強面な顔が我慢できないという顔になった。

 

主に笑いを…

さて、ぶっ殺しますか…

 

レベル1だと伝えた後笑い続けるマッチョメン…

さすがにウゼェぞ…

 

「ぷ、おいおい、にぃちゃん? それで勝てるとか本気で思って…「バインド」」

 

まあ、そういう反応が欲しくて言ったんだけど、笑い方がムカついたので、俺はその声をさえぎるように呟いた。

マッチョメンがそのまま硬直しているところを見るとバインドが成功したようだった。

このマッチョメンが、何を思ったのかは知らないが大剣持ちの重装備なのにStr.特化型ではないはずだ。

 

これは俺の予想なんだが、もし予想通りならこのマッチョメンはAge.特化型だ。

相手のAgi.が高いとどんな攻撃をしようと避けられてしまうことがあり、少し心配していたがきっちり利いているからよしとする。

 

俺がAge.特化型だと思った理由はマッチョメンの攻撃にある。

もし仮にこのマッチョメンがStr.特化型なら少女がマッチョメンの攻撃をガードした時点で勝敗が決しているはずである。

この時点でStr.特化型でないのは確実なのだ。

そしてもうひとつ、大剣を振ったときの剣速が速かった事だ。

武器を振る速度はStr.とAge.で決まるので、Str.特化型でないならほぼ確実にAge.特化型のはずだ。

 

時間もないのでこのまま攻撃に移ろうと思う。素早く近づき軽く拳を握り相手の鳩尾の辺りに拳を当て、『絶招』と呟き一気に打ち込む。

握った拳にシステムアシストがかかり、凶悪な威力の突きが人体の急所に入り、めり込む。

しかもそれだけでは終わらず、完全に硬直しているためにその威力が逃げずに対象を襲う。

さらに、このゲームにはあまり知ってる人がいないが、『侮り』というバッドステータスが存在する。 

このバッドステータスは、まず中々かかることのないものなのだが、相手を侮っていると陥ることがあり、相手を侮っていれば侮っているほど発生確率は上がるらしい。

発生すると相手が強いと認めるまでHPとMP、SP以外の全てのステータスが30%下がるのだ。

いくらレベル1の攻撃だろうとこれだけの補正の嵐に、無手(つまり武器無し)の時に力を発揮するスキル無手格闘のレベル200の補正と無手格闘の奥義『絶衝』を併用すれば一発で終わらせられるはずだ。

その証拠にマッチョメンは声を上げることもなく、ポリゴンになって砕け散った。

 

これが今回レベル15の相手を一撃で沈めた切り札のひとつ、『指輪』を使ったコンボの全容である。

今の説明のどこに指輪が使われているのかは、魔法を使うためにである。

魔法を使うためには杖か魔道書が必要なのだが、この指輪はそれらを装備しなくても魔法が使えるようになるという効果が付与されているのだ。

 

(さて、勝利宣言といくか。この場合なんて言えばいいだろ?俺は目つきが悪いから少女を怖がらせないようにネタかギャグだろうか?

何か小粋なやつは…うん、これがいい。これにしよう。)

 

 

 

「…汚ねぇ花火だ」

 

うん、なんだろ、ほんとなんなんだろ。

もうね?馬鹿かと。死ぬのかと。

もう、あれだね 穴があったら墓にしたい。

…ゴメン、何言ってるのか自分でも分からなくなってきた。

 

いや、そんなことより、マズイぞ。

助けたのは良いけど相手は『女性』なのだ。

あの鬼畜な妹の光瑠や、腹黒幼馴染の愛理と同じ『女性』なのだ。

きっともうあの少女の中では今回の騒動で得た情報で俺のことをどうやって強請(ゆす)るかを考えたりしているんだ…

 

普通の人がまず至ることのない思考に至るあたりに、影斗の苦労の歴史がうかがい知れる。(主に妹と愛理に関すること)

 

「あ、あの…!」

 

「は、はい!?ごめんなさい!強請らないでください!」

 

突然話しかけられたので、つい思っていた言葉が飛び出してしまった。

 

「え?」少女は何言ってんのこの人といった顔で見てくる。

 

「あれ?」

 

神よ、俺は何を間違えたのでしょうか?

きっと生きてることとか言われるんじゃないだろうか…

 

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