(脱線回が面倒でしたら、「絶叫編」の最後の下りだけ読んでもOK)
山本玲というイレギュラーなエイリアン、女である男が住み着いてしまったため、いろいろと
ファンキーなことになってしまった大洗女子。
そのせいばかりではないだろうが、大洗女子はしばらく嵐に翻弄されることになる。
その一環であるこのエピソードは、当時の大洗女子生徒会長だった角谷杏によって
「永久開示禁止」とされた、一連の事件に関するものである。
結果的にこのことにいっさいふれなくとも、何の不都合もなく、あまりにもあさって過ぎる
話なので、むしろ放置推奨といってよいだろう。
いきなり全国大会にいってしまってもいい。いや、その方が平和だろう。
とくに深くコミットした西住みほの前で、この間に何があったか聞こうものなら
顔が別人になってしまうくらい恐ろしいことになるので、誰も彼もなかったことにしていると
いうことを申し添える。
6月半ば、大洗女子角谷執行部は、大洗女子の戦車道全国高校生大会への出馬を表明する。
そして生徒会長角谷は、河嶋、小山の両名を帯同して、日本戦車道連盟本部へと赴いた。
全国大会に出場できるのは、全国で16校。
彼女らは連盟役員からそう説明された。
理由は、一試合ごとの経費。広大な会場が必要で、日本以外の会場まで押さえる必要。
そこまでやっても、夏期休暇期間中に開催可能な試合数は、15回がやっとだということ。
そこまではいいだろう。
問題なのは、戦車道を授業でやっているどんな学校でも参加できるということではないと
いうことだった。
大洗女子でも20年前までは戦車道を正課としていたが、悲願の全国大会出場を果たせなかった
という理由で、経費節減のため廃止されたという経緯がある。
戦車道連盟はこの少ない試合数で意義のある大会とするために、強豪校と戦車道の発展に
寄与した学校、戦車道の草創期から活動していた学校を主体として、
出場校を事実上はじめから決め打ちしていた。
それは、黒森峰を頂点とする四強。戦前から戦車道を担ってきた知波単とアンツィオ。
戦後の学制改革直後、新制高校になった時点で戦車道を始めた8校。
必ずしも上位に食い込まないものの、強豪を苦戦させる試合巧者の継続高校。
ここまでの15校は完全に指定席で、残りひと枠だけが事実上の自由枠だった。
これには学校の財力も絡んでいる。
遠征費を工面できず、リタイヤ不戦敗となっては、会場費がまるまる損失になるからだ。
15校のどれもこれも私立校かつ財政的に余裕がある学校なのも、その裏付けとなろう。
問題は、残りひと枠の出場校をどうやって決めるかということだ。
連盟は「希望者同士が話し合って1校に絞ること」として、不干渉を通している。
もし、話し合いで決着がつかなければ、ジャンケンになる。
それでもまだ紛糾するというなら、または結局全校辞退した場合は、黒森峰をシードとして
15校でトーナメントを行うこととなる。
その話し合いの会場が連盟本部だったから、角谷たちは赴いたのだが、そこにいたのは
西呉王子グローナの代表者、白鳥霧、ただ一人だった。
「あなたがガブタ騒ぎのときに、ウチを助けてくださった白鳥さん?」
「ええ。初めまして、角谷会長。……もっとも、あれはウチにとっても利益になりましたから
バーターで出場権を譲れとはいいませんわ」
大財閥の息女らしく、これ見よがしな金持ち臭はまったくないけど、交渉相手としては
やっかいそうだね。と思いながら、角谷は周囲をひととおり見回した。
他の学校の代表がいない。たしか7、8校はいたはずなのに……。
「角谷さん。他の学校は待ってもこないかもしれませんわ」
どういうことだろう。彼女が裏でまた工作したのだろうか。
実際のところ白鳥は角谷がそう思ってもおかしくない相手だったが、
それならここに来る前に、出場権を譲れというだろう。
「ある学校が、出場権を手にするために妨害工作をしています。政治力もありますけど
あからさまな示威行動に出ていて、そのために皆、ここに来られません」
「ずいぶんと剣呑なお話ですね。どこの学校がそのような所行を?」
「花園青雲実業学園。です」
白鳥霧は、昨年度合併により大規模校となった学園艦の名前を挙げた。
しかしながら、関東の高校生にとっては、凶悪の代名詞がさらに恐怖をまとったにひとしい。
「『悪の花園』が、人間牧場の青雲を乗っ取って、巨大化したというあれですか」
「ええ。青雲学園は40年前の事件がいまだに尾を引いていて、当時配下にしていた2校を
吸収してもなお、無気力な学校でした。財力だけは維持してましたが。
その青雲を、政争で勝利した蔵王さんが吸収したのが、いまの花園青雲」
「花園自体が、蔵王センセが自分の実働部隊を養成するために作った
悪の吹きだまりですけどね。元青雲の方は難儀してるでしょう」
「花園側にあごで使われる奴隷と化してますわね。
私たち2校の前に奴ばらが姿を見せないのは、ともに今年戦車道を始めたので、
マークから外れていたからです。もっとも今日、彼らにも知れたでしょうね。
……うちはもし、彼らが恫喝に出てきたら、手を引くしかありません。
始まったばかりの戦車道を、食い荒らされるわけにはいきませんから」
そのときふいに廊下からドドドと激しい足音が響き、部屋のドアが激しく開かれた。
息せき切って駆け込んできた闖入者は、よほどあわててきたらしく、
肩で息をしている。
そこにいたのは、まさに異相としかいいようのない女子高生だった。
角谷がコイツがれっきとした女なら、山本だって生物学上の女の資格があるな。
などと思った程の異相だった。
「やあ、枢斬副会長。ひさしぶりだねえ」
飛びこんできた異相の女子高生に、平然と声を掛ける角谷。
角谷は、なぜか日本中の高校生徒会関係者を知っている。
それのみならず、各方面の強豪校とされる学校の関係者とのつきあいも深い。
「角谷会長。その様子では、もう話は聞いたようだわね」
「あんたんとこも、参加する気なんだ」
「ふふふ、そうなのよね。金田が作った凶悪な戦車がようやく20台になったから、
今年から戦車道を始めるのよ。で、悪の花園なんだけどさ」
枢斬は事情を知ってなおエントリーを強行するつもりらしい。
角谷は、まあコイツの学校なら、花園ともガチでやりあうだろうと思う。
一応共学校で、花園とは別な意味で凶悪校だ。私立きわめみち高校なる学校は。
「大洗は引かないよ。どうしても出なきゃならない事情がある」
あとの二人は、ふんふんとうなずく。
事情とやらを知っているのだろう。
「だから、今年はうちはエントリーを見あわせるつもりでいたのよ。
でも、花園が好き勝手やるというなら、黙ってるわけにはいかないわ。
エントリーを大々的に表明した上で、奴らに果たし状を突きつけてやったわ」
「つまり、全国大会は二の次で、花園と戦争がしたいのね」
「そういうことね。こっちも面子ってものがあるから」
枢斬は、みごとな口ひげをなでつける。
姫ぱっつんに三白眼、ごつい鷲鼻に眉毛なしの異相に、よく似合うヒゲだった。
きわめみち高校という学校については、角谷は他校のような隔意はまったく持っていない。
ただ、お互いに利用することもされることもないよう、釘を刺しているだけだ。
よくよく面倒なことだらけだねえ。代紋背負うってことは。
そう思った角谷は、やはり一つ釘を刺しておくべきかと考えた。
「できればあんたのところがむこうに攻め込むか、あんたのガッコを戦場にしてね。
そうしないと「西住」が関東に攻めてくるよ」
もちろんこの「西住」は、九州熊本の戦車道家元ではない。
もっともそっちの西住、つまりみほの実家が攻めてくるなら、関東丸焼けでは終わらない。
枢斬は「向こうの出方一つよ」と言うと、来たときのように騒がしく走り去った。
結局この日は、連盟側から「後日また場を設けるから」と言われて終わりになった。
――翌日。関東某県、きわめみち高校の地元。
バックがあるとは言え、そもそも裕福とは言えない団体ばかりなので、
きわめみち高校は、学園艦ではなく、陸地の学校だった。
別に城下町というわけではないが、山上にあるきわめみち高校を見上げる位置に、
きわめみち高校の生徒たちがたむろする、物騒な市街地があった。
その日の放課後。
きわめみち高校の生徒たちが、三々五々と町の中に散っていく。
しかし、その日は、いつもとちがうことがあった。
町の住民たちが、皆自宅にこもり、商店はコンビニに至るまでドアを閉じ、
シャッターを下ろして「閉店」の看板を掲げ、皆で息を殺していたのだった。
理由はすぐにわかった。
「悪の花園」の兵隊どもが、大挙して押し寄せてきていたのだ。
たちまちあちらこちらで、きわめみち高校の生徒たちは、花園の集団に袋だたきにされた。
この非常事態は、すぐにきわめみち高校に伝わった。
「長岡! 日の丸! いったいどうしたのよ!」
「スーザン副会長。花園が攻めてきやがった!」
「全校招集をかけてくれ! 町に散った生徒が襲われている!」
「――わかったわ。野郎どもは集合次第隊伍を組んで出撃。私らは校舎と戦車倉庫の守備!
あんたたちの学級委員の政はどうしたの?」
「とっくに単身で斬り込んでる!」
ゴーストタウンと化した市街地で、とうとう花園軍団と、きわめみち高校主力部隊が激突。
数的に劣勢なきわめみち高校だったが、古風な学帽にぼろぼろの洋ラン、首から太い数珠を
かけたひとりの生徒が奮戦し、なんとか市街地で持ちこたえていた。
しかし、花園の別働隊が後ろを襲い、彼らは包囲されてしまう。
そしてこの部隊自体が陽動部隊だった。
きわめみち高校全員が包囲されている横を、花園戦車隊30両が、きわめみち高校に進撃する。
学校には枢斬率いる数十名の女子生徒しかいなかった。
『スーザン副会長! そっちに戦車隊が向かった! 気をつけろ』
「わかったわ長岡。……全員聞け。やむをえず校舎は放棄する。
総員戦車倉庫に集結せよ! 戦車隊出動よ」
「でもスーザン。ここで戦車つぶしたら……」
「私らは花園とやりあうのが目的よ。向こうから来てくれたのなら結果オーライよ。
ぶつけてでも止めるわ。大会はアンジーにまかせる」
しかし、枢斬たちが戦車を動かす前に、M26パーシング20両、M24チャーフィー10両からなる
花園戦車隊は、学校の外壁を蹴破り、乗り越えて侵入を開始していた。
「スーザン。戦車にはまだ燃料も砲弾も積んでないわ」
「……大丈夫。戦車倉庫は外壁も扉も100mmの防火鋼板よ。榴弾では破れないわ」
そういうと枢斬は、奥から木箱をいくつか持ってくる。
中に入っているのは、旧陸軍の柄付き手榴弾だった。
枢斬は、手榴弾を6発、柄と弾頭にわけ、1発の手榴弾の弾頭のまわりに6つの弾頭をおいて、
ワイヤーでしばった。
「集束爆薬よ。これを戦車のエンジングリルに投げつければ、かく座させることができる。
みんな手分けして作って!」
「スーザン! 奴らが砲撃を始めたわ」
M26の90mm弾が、戦車倉庫めがけて100mの近距離から放たれる。
榴弾なら爆発するだけ、通常弾でも実際に貫徹はせず、はりつくだけ……のはずだった。
――しかし、それらの砲弾は外壁を貫徹して、室内で爆発した。
倉庫内にあるドラム缶が吹っ飛び、まき散らされたガソリンに火がついた。
燃料や弾薬に、次々と火がついていく。
中に収納されていた重戦車が、貫徹力に劣る徹甲榴弾に抜かれることはなかったが、
いまや戦車倉庫は、建物の形をした爆弾になろうとしていた。
枢斬は、全員避難を命じようとしたが、一歩遅かった……。
――そのさらに翌日。
今度は角谷が病院の中をどたばた走りまわって、枢斬を探すハメになった。
お供についてきたのは、かーしまと小山ではなく、西住みほとアキラだった。
その病院は、まさに野戦病院の様相を呈していた。
負傷した高校生たちが、ベッドに収容しきることもできず、廊下に転がされ、
うめき声があたりに満ちている。
なんなんだいったい。角谷は毒づく。
怪我しているのは、きわめみち高校の生徒どもばかりだった。
全員モンモンを背負っているから、すぐわかる。
花園の部隊と思われるのは、一人たりともいなかった。
「きわめみちともあろうものが、ここまで一方的にやられるの?」
やっと見つけた枢斬は、全身を包帯でぐるぐる巻にされて、霊安室に放置されていた。
変わり果てた姿になった枢斬に、角谷がさけぶ。
「おいスーザン! 傷は深いぞ、もうあきらめろ!」
「アンジー! いきなりごあいさつね! こんなケガ3日でなおるわっ!」
来る途中で角谷が見たきわめみち高校は、もはや「同高校跡」でしかなかった。
ぺんぺん草さえはえていない更地になっていた。
「よくあのありさまで人死にが出なかったよね。なにがあったんだよ。スーザン」
「……アンジー。やつら榴弾と称して、戦車に本物の徹甲榴弾積んでたのよ」
「何だって??」
マジもんの戦争かよ。徹甲榴弾? よくそこまでデタラメができるもんだ。
いくら相手がきわめみちでも、限度というものがありすぎるだろ。
いや、待てよと角谷は思う。
これは見せしめなんだろうが、逆らえば……。
「大統領。電話が鳴ってます」
アキラは、まわりに知り合いしかいないようなときは、角谷を大統領と呼ぶことがある。
角谷は、ポケットから自分の携帯を取り出し、ディスプレイを確認した。
相手は、白鳥霧だった。
『角谷さん。いましがた花園の使者がきました』
「そう、来たんだ。
……で、キリマンちゃん。なんて返事したの?」
『……遺憾ながら、辞退すると伝えました』
「ああ、賢明だ。……いま、きわめみちの近くの病院にいる。
きわめみちは、ズタボロにされた。スーザンと代わるよ」
「……霧。あいつら実弾装備の戦車で乗り込んできたわ。
うちの校舎もなにもかも全部吹き飛ばされ、学生は全員病院送りよ。
うちが相手だから、連中もここまでやらかしたんだと思うけど、
何をするかわからないという意味では、ヤクザも堅気もないわ。
手を引くべきだわ」
『そう……』
通話を終えて電話を置くと、枢斬は角谷に向き直った。
「うちでお金をやりくりして、やっとそろえたKV-4、20両も全部鉄くずになったわ。
アンジー。どうするの?」
聞き慣れない言葉が出てきたことで不審を感じたアキラが、戦士として敬愛する
彼の先輩にそれをたずねる。
「西住先輩。KV-4ってどんな戦車ですか?」
「うーん。私はメジャーな戦車しか知らないし、KVに3以降があるなんていま知ったわ」
答えたのは、枢斬本人だった。
「KV-4っていうのは、計画だけがあった旧ソ連の超重戦車よ。
主砲は107mm長砲身。全国大会にでれば優勝も狙えたわ」
角谷は、こいつらどこからそんな金持ってきたんだと思ったが、
口にしたのは、別なことだった。
「前にも言ったろ。うちは引かない。引けない事情がある」
角谷がそういったとき、彼女の後ろで別な声がする。
「……ひどすぎます。戦車をこんな使い方するなんて」
絞り出すような声を出したのは、西住みほだった。
意見の相違から家を出ても、彼女にとって戦車は大事なものだった。
その戦車が、応戦するいとまもなく、戦車道ではない戦いで一方的に壊され、
それに乗るべき者たちが、生身で攻撃を受けてここにいる。
力を誇示し、多くの学校を脅して、大会に出たいという希望を踏みにじる。
それどころか、花園戦車隊は、(一応)民間の学校で破壊の限りを尽くした。
冗談ではない、ふざけるな!
西住みほが引っ込み思案で、おとなしく優しい人物であっても、超えてはならない一線と
いうものがある。
みほは、我を忘れるほど怒っていた。
「大会に出たいと思う人たちを、力で押さえつけようなんて!」
アキラも、弱いものを一方的にいたぶるまねや、根こそぎすべてを暴力的に破壊する行為を
一番憎んでいる類の人間だった。
性同一性障害だけではなくそのこともあって、父親に反抗しているのだが。
彼は本当に怒ると、無表情をとおりこして、能面が笑っているような顔をする。
いまがまさにそうだった。
ルールを守らない武装集団が人を蹂躙する。彼が一番憎んでいる行為だった。
「わかったわ。私の祈りでは迷惑かも知れないけど……、君たちの健闘を祈る!」
ああ、こいつら連れてきて正解だったねえ。
角谷は今回も自分の判断が正しかったらしいと安堵し、盟友の一人に別れを告げた。
「あんたの仇もうってやるよ。じゃあね、スーザン。いずれまた地獄で会おう」
次の日、大洗女子学園生徒会長室。
そろそろ定期便のシャトルフェリーの来る時間だ。
角谷は西日の差し込む生徒会長室で、オフィスビルのような壁一面ガラス張りの窓から
こちらを目指してやってくる小型フェリーを見ていた。
すでに風紀のうちから大洗港に派遣した生徒が、柄の悪そうな100名ほどの集団が
そのフェリーに乗り込んだとの報告を受けていた。
「会長。入ります」
「いいよ。入ってきて」
ドアが開き、会長室に入ってきたのは、西住みほと山本玲だった。
「西住ちゃん。用意しろと言われたから取り寄せたけど、どーすんのこれ?」
それは、手錠だった。
本物かどうかわからないが、鍵つきの紛れもない手錠だ。
「アキラは衣装を用意してあるから、あっちで着替えてくれる」
アキラは指定された部屋に入った。
用意されていたのは、黒ずくめの軍装がひとそろい。
黒い軍帽には、髑髏の徽章。いわずとしれた一般親衛隊のそれだ。
しかし、ズボンの代わりにあったのは、アキラが死ぬほど恐れているミニスカだった。
さらに黒網タイツに黒の長靴……。さらに医療用(と思いたい)ニセバスト。
なんなんだいったい。
アキラが着替えて会長室に戻ると、なんとみほは、自分の手に手錠をはめていた。
それだけではない。
二人とも顔が変わっていた。
いや、角谷のシリアス顔なら、アキラはちょくちょく見ているが、今回のは
それとはまたちょっとちがう。しかも頬にはマジックで書いたらしい傷がある。
みほはとみると、普段のおとめちっく少女漫画に出てくる「何の変哲もない女の子」ではなく
なんとも名状しがたい顔をしている。
そして、実はアキラ本人も顔が変わっていたのだが、本人は全然気づいていなかった。
ニセバストでDカップ相当に大増量したアキラを見て、ふたりはそれぞれの意味で感心する。
学園艦のデッキに接岸するシャトルフェリー。
そこからは100名ほどの、明らかに荒くれらしい高校生が、タラップを登ってくる。
大洗艦の乗艦口に詰めていた風紀委員たちがただちに出入り口を封鎖する。
「花園からの来艦者に次ぐ! われわれは大洗女子学園風紀委員である。
諸君全員の乗船は認められない。君たちの代表3名にかぎり乗船を許可する。
従わない場合は、そのフェリーに乗って陸に帰ってもらおう。
これは、大洗女子学園生徒会長、角谷杏の命令である」
花園の者たちが何か言う前に、風紀委員長、園みどり子が身体を張って、
ハンドスピーカーで叫び、機先を制する。
「おい、どうするよ?」
「普通の高校の弱っちい、それも女だけなら、3人もいれば十分だ。
すぐ白旗を揚げるだろうよ」
花園側は、角谷の条件を受け入れた。
集団のリーダー格らしい3人だけで乗船。風紀委員たちの包囲の元、生徒会長室を目指す。
角谷の携帯が鳴った。発信者は園みどり子だ。
着信音は、3回鳴って止まった。
乗船者を3人にとどめることに成功した。というサインだ。
「さあ、招いた覚えもない使者のご登場だ。せいぜいもてなしてやろうか」
ほお傷のモデルの、どっかのデブのような凄惨な笑みを浮かべながら、
角谷は期待する。
ここを意気揚々と出て行けるくらい、骨のある奴らならいいんだがなと。
花園の使者は、野郎が二人と女がひとりだった。
どう見ても頭の悪いどっかのチンピラ風情にしか思えない。
角谷もみほも、いまは普段の顔をしている。
その方が、これから始まる茶番劇をより楽しめるだろうからだ。
花園の使者は、風紀委員に囲まれたままここまできたのだが、
彼らを部屋に通すと、その風紀たちがあっさり引き上げたので、
ゴトがやりやすくなったと早合点した。
会長室の中にいたのは、女が3人。
せいぜい中学生ぐらいにしか見えないドチビがひとり。
私は普通の女子高生です。ぶたないでくださいと顔に書いてあるのがひとり。
女にしてはタッパがあるが、イカレポンチなコスプレバカがひとり。
「お前がここの会長か?」
ごあいさつだねえ。知らない奴にお前呼ばわりされるおぼえはないんだが。
一行の女からお前呼ばわりされた角谷の返事も、また人を食ったものだった。
「何の用? 手短に頼むよ。私もバカの相手をしてるほどヒマじゃないから」
「このガキャあ。誰に向かってでけえ口叩いてると」
「吠えるな!」
角谷の顔がみるみる変貌していく。
みほも隠していた手錠をみせ、やはり顔が変わっていく。
判子絵みたいな顔が劇画面に変わっていくのを、連中はとりあえずシカトした。
女のチンピラが角谷に詰め寄ると、ドスのきいた声でこうのたまった。
「あのさあ、今度の戦車道の全国大会、参加辞退しなよ。
な。そうしないと、かわいいお顔に二目と見られんキズがつくよ。お嬢ちゃん」
「キズならもうここにあるけどぉ~」
角谷は自分のほっぺの、マスカラで書いた佐藤大輔キズを指さした。
「そんなんじゃねえ! モノホンのキズだぁ!」
芸のない脅しだねえ。
いかにもつまらんものを見たと態度で示した角谷は、返事の代わりに奥に向かって、
気のないけだるい声で「かーしま」と呼ばわった。
すると事務室に続く扉が開き、片ちんばのメガネをかけたおかしな奴が、
手押し車に空手の割り用瓦を40枚とブロックを2つもってきた。
角谷は、割り瓦40枚を全部持ち上げて、平行に並べたコンクリブロックの上に無造作に置くと
その一番上に手拭いをかけ、ニヤリと笑う。
それを見ているチンピラどもの目に、明らかなあざけりの色がうかぶ。
どうせ本物の瓦じゃないだろうと。
あんな貧相なドチビに、本物40枚が軽々と持ち上げられるものじゃない。
こいつらは、しまいにはへらへら笑い出した。
それを一瞥した劇画調角谷は、「ふん」と気合いを入れると、上体を反らし、
反動でいきおいよく自分の頭を猛スピードで瓦に叩き付けた。
それは、割る、という次元じゃなかった。
まさに瓦の山が全部炸裂したようにしか見えなかった。
無数の瓦のかけらが、チンピラどもに襲いかかる。
こいつらはとっさに顔をかばうのが精一杯、かけらを全身で浴びることになった。
数センチ大のかけらが自分たちの身体に叩き付けられ、突き刺さってはじめて、
それは本物だったのだと、ようやくこいつらにもわかった。
だが、さすがは「悪の花園」。そのくらいではひるみもしない。上っ面は。
「さあ、おたちあい」
自席に戻った角谷は、後ろの書棚の引き出しからりっぱな拵えのしてあるポン刀をとりだし、
鞘を払う。そして好物の干し芋をあてがう。だが干し芋は切れない。
「こいつは見てのとおり、刃引きをしていない美術刀だ。銃刀法に違反しないな。おい」
角谷によばれて、今度は高校生にしては豊満なボディーの持ち主が、1本のビール瓶を
配膳用の台車に乗せてもってきた。
それを見た角谷は、「西住ちゃん」と呼ぶと、美術刀を劇画調みほに放り投げた。
劇画調みほは、両手錠のままで器用にそれをキャッチする。柄をつかんで。
チンピラどもは、今度は何をする気か、予想もつかなかった。
マス・オーヤマの得意技「ビン切り」を、刃を引いていないそいつでやろうというのか?
ビンに正対したみほは、斜めではなく正眼に刀を構えると、上段に振りかぶった。
そこから一気に振り下ろされた刀は、目にもとまらぬスピードでビンに斬りかかり、
ビンの口でいきなりピタリと静止した。
そして信じられないことが起こる。
ビールビンの真ん中に線が走ったと見るや、ビンがきれいに左右に割れたのだ。縦に。
「流派がちがうからとってないけど、北辰の目録クラスかなあ。西住ちゃんは」
そんなことを聞いても、チンピラどもは舐められたら終わりとばかりに動じない。
「まだ納得できないかなあ。かーしま」
チンピラどもが二の句が継げずにいるあいだ、角谷がさらにどう猛な笑みを浮かべて命じる。
今度河嶋がもってきたものは、下に台車がついている移動可能なサンドバッグだった。
「アキラ。アレやってよ」
「えー。僕は徒手格闘は苦手なんですけど」
今度は奥に控えていた、見るからにイカレた黒ずくめの女王様がサンドバッグの前に出る。
黒いエナメルレザーのロンググラブの指先で少し押して、手応えを確かめる。
アキラは一歩下がって構えを作ると、無言で右手をサンドバッグに撃ちこんだ。
……サンドバッグは、全く動かない。
「くくくっ、なんだよ。それで終わりかよお~。女王様」
けたけた笑い出すチンピラども。しかし角谷は意に介さない。
「アキラぁ~。命奪崩壊拳になってないよ。突き抜けなきゃ」
「どうもこの格好だと調子が出なくて」
アキラはそのまま右手を引き抜く。
右手は拳を握っておらず、まっすぐ伸ばされた四本貫手だった。
サンドバッグに手首まで突き刺さっていた右手を抜くと、開いた穴から砂がこぼれ落ちる。
「じゃあ、貫手じゃない方の命奪崩壊拳、その2、いきまーす」
アキラは某伝承者の構えをとり、サンドバッグの裂け目に左肘をたたき込む。
今度はサンドバッグの反対側に大穴があいてそこから裂け目が広がり、サンドバッグは
真っ二つに切り裂かれ、盛大に砂をまき散らした。
フフフと笑いながら、ぱちぱちと拍手する角谷。
そのまま角谷は笑いながら会長席に着いて、三匹のチンピラに正面から向き直る。
「回答は、否だ。お断りだ。断固拒否だ。ノーだ。ノンだ。ネインだ。ニエットだ。
あ、イタリア語でもノーだったな。さて、どうするね」
「たたんじまえ!」
バカ三匹はおきまりの反応に出てきた。
これだから始末に困る。何のためにデモンストレーションやったのかわからないじゃんか。
そう思いながら角谷は、机の裏についていたボタンをひとつ押す。
するっと防弾素材の透明板が床からたちあがり、バカ三匹は盛大に衝突する。
角谷たちと、バカ三匹の間は完全に遮断された。
つづけて、シューという音とともに何かの気体がバカどもにふりそそぐ。
「クソっ!」
やばいことになったと察した男ひとりが、ドアを開けて出ようとするが、びくともしない。
「リモコンで鍵かけたんだよ」
「て、てめえなにしやがる」
笑顔でそんなこと言っても、迫力のないことおびただしい。
「笑気ガス。手術で全身麻酔に使うやつさ。これ吸うと顔がにこやかになるんだよ~。
そーらだんだん眠くなる~」
「き…さ…まぁ……」
一方、シャトルフェリーで待機中の花園ご一行は、いつまでたっても三匹が帰ってこないこと
に不審を感じていた。
「かまわねえ! 乗り込むぞ」
「応!」
「いてこましたるわ!」
殺気だったごろつきどもがタラップを駆け上る。
園以下風紀委員は、柵を破られまいと押さえにかかる。
角谷が乗船口に現れたのは、まさに男のひとりが柵を越えようとしていたその時だった。
「私は生徒会長、角谷杏。話し合いの結果を伝えに来たよ」
風紀と花園、両方の動きが止まる。
「大洗女子は、君たちに全面降伏する。全国大会は辞退することにした。
使いに来たお三方だが、まだ話があるから、君たちはそのフェリーで先に帰ってくれと
いうことだ。心配しなくていいよ。書面作って渡すまでの間、おもてなしするだけだから。
用が済んだら、我々で直接お送りする。もうフェリーの出航時間だ。では」
花園の連中は目配せすると、出航時間の迫ったフェリーに戻っていった。
園みどり子が、いいんですか? という顔をする。
「園、ヘリを呼んでくれ。連中をお返しして差し上げなければな」
それだけいうと、角谷はふたたび校舎に戻っていった。
「まったく、僕に無免操縦ばかりさせないでくださいよ」
笑気ガスを吸ってへろへろになったチンピラ3匹を尋問し、聞けることはすべて聞き出した
角谷たちはアキラの操縦するヘリに乗って、夜間飛行で花園の学園艦を目指していた。
「しかたないだろアキラ。パイロットが目的地は花園って言ったら逃げたんだから」
赤外線暗視ゴーグルをつけ、低空を慎重に操縦するアキラ。
ボロ布団で簀巻きにした上、鎖で縛り上げた例の三匹を見張る角谷とみほ。
「あ、見えてきましたよ。……ひどい悪趣味な船ですね」
「普通、学園艦と言えばフラットトップですよね。あいつバトルワゴンですよ」
角谷も、どれどれと海面をのぞき込む。
そこにいたのは、前半分が戦艦形態、後ろ半分は空母形態といった、
どう見ても変態としかいいようのない学園艦だった。
「本当にみっともないね。誰だよあんなふざけた船作ったのは。
……ん? あれ、シウスじゃないか? こいつ武装してるぞ。大丈夫か?」
「一応レーダー被覆下を、こうやって必死に飛んでますし、こっちが例の3人を届けるって
話はいってますから、撃たれるってことはないでしょう」
「いやー、とんでもないねえ。たぶんあれは巡航ミサイルのキャニスターだろ。
ほかにも短射程のミサイルとか、垂直発射システムのふたっぽいのもある」
「パゴダマストの根元の区画、フェーズドアレイレーダーじゃないですか?
イージス積んでます。なんだかな。ん?通信だ」
アキラは通信相手に、うん、とか、はい、とかを繰り返し、通話を続ける。
「はい、わかりました。……会長。高橋先生からです。
このヘリに積んであったWi-Fi親機を使って、あいつのサーバーのひとつを
ハックしたそうです。え? 死神先輩?」
『死神ゆーな!! こいつだけでは荷が重そうだから、手伝ってやってるんだ』
死神呼ばわりされる原因を箱根で作ったのは自分だろうに。それに最近の医者どもは
ハッカーまでやるんですか? あぶなくて受診できません。とアキラは思う。
「それで、いったいあいつは何なんですか? あんなタイプの船は見たことありません」
『蔵王って民族派がど変態なんだよ。なんでも紀伊級戦艦2番艦の尾張が、モルジブ海戦で
フリードリヒ・デア・グロッセとやり合ったときに、回らなくなった三番砲塔で
ムキになって撃ったせいで、バイタルパートが歪んで砲塔撤去、航空戦艦にする案を
再現した……。変態のやることは本当にわからん。意味不明だ』
「ヤマト型を50倍にした感じです。砲塔は連装砲ですが、ダミーですか?」
『ダミー砲身の中に、グスタフだかドーラだかの80cm砲の実物を仕込んでるんだとよ』
80mmじゃなく、80cm! あほかこいつら。1時間に何発撃てるのよ。
アキラは本気で頭が頭痛に見舞われた。
『いま、高橋がバックドア仕込んでいる。あとこいつの構造がどうなってるのか知りたい』
「レーダー照射うけてるんですけど。できればさっさと荷物降ろして逃げたいです」
『火器官制やレーダー関係は乗っ取った。お前たちはむこうのディスプレイから消えている。
気にせず小一時間ホバリングしてろ』
しばらくはやることもなくなったアキラが、ホバリングをオートパイロットにまかせる。
もう前を向いている必要もない。
ふと、気になったことが出てきたアキラは、その疑問を学園艦歴の長い角谷に向けてみた。
「会長。あのサイズならば台風の中でも単従陣組んで砲撃戦できますかねえ」
「できるわけないだろ。50万トンのタンカーだって、まっすぐ進むこともできない。
おまけに風速数十メートルの世界だ。数万メートル先の船に当たったら奇跡だ。
まして学園艦は船の構造じゃない。へたすりゃ高波に乗り上げ、真ん中から折れるぞ。
竜骨のない学園艦は絶対台風は回避。鉄則なこれ」
「やっぱり戦艦は男のロマン。とかいう人は変態ですね」
台風の中では、飛行機どころか巡航ミサイルでも空中分解は免れないだろう。
いま可能なことをすべて終えた高橋と死神からゴーサインが出たので、アキラは海面すれすれ
の高度から、甲板の高度まで昇った。
「お、あそこにチンピラがたむろってるねえ」
角谷が指し示す先には、花園の三下が4,5人いる。
「あそこにいったん降りて、荷物捨てたらすぐ離昇してね」
花園の生徒たちは、いきなり何の予告もなしに出現した大型ヘリの強力なダウンウォッシュに
吹っ飛ばされ、数メートル転がされた。
そこへ、「はい、お荷物持ってきました」という声とともに、布団に巻かれた物体3つが
乱暴にころがり落とされる。
それは、今日大洗に脅迫に行ったはずの3人の、かわりはてた姿だった。
3人を落としたヘリは、ふたたび強烈なダウンウォッシュを彼らに見舞って、
上空高く消え去っていった。
布団の中から救い出された3人は、すぐに学園長室に連れ込まれた。
花園学園長室では、大洗屈服ということで3人の幹部が祝杯を挙げていたところだった。
そこへ、大洗の降伏は擬態で、使者3人が簀巻きにされて送り返されてきたとの報告が来た。
「全国大会辞退の件は、完全に拒否する。
不服あらば、戦車道の試合で決着を付けたし。だと?
お前たちはこんなものを持たされて、簀巻きにされて送り返されてきたのかい?」
切れ長の目に理知的な顔をもつ女生徒が、彼らを問い詰める。
「わかっているのか? 今度の全国大会には、うちが日本中の高校を配下におけるか
どうかがかかっているということを」
いかにもこわもての使者3人組が、肩を寄せ合って震えている。
「花園に、すみません。ごめんなさいはないんだよ」
女生徒の手が一瞬、ひるがえる。
「……」
使者の3人は、この世のものではないような顔になっている。
彼らの首筋、皮1枚を切って。ナイフが飛んでいったのだ。
この女生徒、貴原有希のナイフは、決して標的に直撃することはない。
しかし、その正確きわまる投げ技は、標的になったものに死ぬ以上の恐怖をあたえるという。
使者3人は、失禁して失神した。
「おもしろいじゃない。受けてたってあげるわ。私たちの流儀でね。角谷さん……」
「学外から助っ人を呼んだ。みな身元はしっかりした連中だよ」
始業前の、朝の早い時間。
角谷はみほとアキラを呼んで、そう伝えた。
もう、ここまで来ているという。
角谷がドアの向こうに「入ってくれ」と声を掛ける。
最初に入って来たのは、アキラもよく知るスキンヘッドの中年と、その舎弟分。
「けーさん。ぐんまーの兵隊100人は堅いんじゃなかったの?」
「いやな、若いのが花園って聞いただけでブルっちまってな。だらしねえこった」
こたえたのは高橋医師の実弟ではなく、その舎弟という体格のいいおっさんだった。
「昔は兄ぃが声かければ、命知らずがいくらでもよってきたのによ」
「ザコばかりいてもしかたない。他にはどんなのがいるんだ? 杏」
「ん。もう来るよ」
角谷が「カモン」というと、今度はすでに大洗女子の制服を着た、髪の長い女子が現れた。
刀のつばで、片目眼帯をしている。
「柳生みつ子だ。よろしく……」
彼女は言葉を惜しむたちなのか、それきり黙ってしまった。
次に入って来たのは、長い髪をポニテにした女子。
「よろしく。名前は言いたくない」
「そりゃ、恥ずかしいもんね」
角谷のまぜっかえしに、キッとなるポニテ。
次に現れたのは、いい服を着ているのになぜかおかめの面をかぶった女の子。
「おかめ仮面です。よろしくねー」
「コイツこういう奴なんだけど、強いことは強いから。
なにしろ私より腕力あるからな」
角谷がそういうものだから、みほとアキラはあごが外れそうになった。
次に現れたのは、赤いワンピースを着た美少女だった。
彼女の名前に、角谷とみほは盛大にズッこけていた。
アキラは「それあきらかに男の名前だよ」と思ったが、賢明にも口にしなかった。
「さて、それじゃ手はずを決めようか」
「ちょっと待っとくれよ」
角谷を制したのは、やはり大洗の制服を着た女子。
ボサボサ頭に渦巻き眼鏡、しかし一番変なのは、時代錯誤としか思えないほど長いスカート。
まさに「引きずって」いるというレベル。
「誰だよあんた。呼んだ覚えないよ」
角谷にも覚えのない人間のようだった。
見た目にも重そうな鉄鞭を携えている。これが得物のようだ。
「あっしは、そこのアルゲマイネのお姉さんの知り合いの知り合いだ。
そういうことにしておいてやっちゃくれねえか?
名前は、そうだな。『フーテンタイガー』って呼ばれてるぜ」
フーテンの寅さんですか……。
僕の知り合いの知り合いってことは、Elle çaさんの?
Elle çaとは何者なんだろうか?
本気で頭を抱えたくなったアキラだった。