失われた約束の地   作:米山ともき

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 戦車道があるこの世界では、女だけが装甲戦闘車両に乗ることを許されていた……
 日本の大阪にエキスポ'70が来る頃の話。この国には、41歳の春を迎えたバカがいた。
 このバカはどうしても女しか戦車に乗ってはいけないという常識が理解できなかった。
 だからバカは戦車に乗りたくて、盗んだ戦車で走り出す。行く先? 何それ? おいしいの?
 この話は女の子もちょっとだけ出てくる、ハートフル・タンク・ギャグです。

――バカは、自由になれた気がするのだろうか


鉄の掟は誰がために
「男はなんで戦車に乗ってはいけないのだ!」 神よパパのために泣け! たったひとりのレジスタンス


 19XX年、僕らが生まれるよりずっとずっと前、アポロが月に行ったころ。

 

 あるところに、41歳の春を迎えた男のバカがいた。名前はまだない。

 

 その年の夏。ある月の出ていない夜、千葉港に碇を下ろした知波単学園。

 このバカは、すたすたと戦車格納庫に忍び込むと、そこにあった九七式中戦車のなかから燃料が満タンになっている整備済みのものを見つけて乗り込んだ。

 かつて終戦間近の昭和20年に陸軍少年戦車兵学校第6期生であり、16で復員するまで教育を受けていたバカには、チハの操縦なぞ造作もないことだった。

 こうしてバカはぬけぬけとチハを盗み出した。

 

「♪盗んだ戦車で走り出す、行く先は、大阪万博なのだ。これでいいのだ」

 その九七式中戦車は、千葉市幕張から京葉道路に乗って、江戸川を渡った。

 その頃には白々と夜が明けて、築地市場では仲卸たちが競り落とした魚を店に並べていた。

 

 そして、都内某所

 

「嵐も雪もまっぴらだ、炎熱極寒うんざりだ、砂塵に埋まって危うく死ぬところ。

 怒濤と逃げる我が戦車。なのだ」

「なんだあれは!」

「男が戦車に乗ってるだと?」

「きゃーっ!」

「いやあああぁぁぁ!」

「わー、あのおじさん、戦車なんかに乗ってるよ」

「おとこがせんしゃにのるのは、おんなゆのぞくのよりはずかしいんだよね」

「こいつの親が悪いんじゃねえ? 死ねばいいのに変質者って社会のゴミだよね」

「幼稚園で女の子が遊んでた戦車のおもちゃで遊ぼうとしたら、いまでも卑怯者よばわりだ」

「悪ガキどもに戦車に閉じ込められて、濡れ衣で停学にされたぞ俺」

 

 バカは周囲の通行人たちに問いかけた。

「みんな聞くのだ。男が戦車に乗ってなぜいけないのだ?」

「死ね、このクソバカ野郎」

「失せやがれ下衆め」

「ママー、あのひと、おとこなのにせんしゃにのってるよ?」

「見ちゃダメ! あの人はものすごく悪い人なんだから」

「マジで顔面原型無くなるまで殴ったろか」

「誰か警察呼べ! 破廉恥罪だ!」

「この卑劣漢が恥を知れボケェ!」

「もしもし、110番ですか? 戦車に男が乗って道路を走ってます! すぐ来てください」

 

 そうこうしているうちに、近くの派出所(当時)から、おまわりさんが拳銃構えて飛んできた。

「――あー、そこの戦車に乗っている男、無駄な抵抗をしないでおとなしく出て来い」

 このころのおまわりさんは、まだまだ高圧的だった。

 見ようによっては目玉がつながったようにもみえるこのヒラ巡査は、操縦手ハッチから顔を出している、鉢巻き腹巻きの、鼻毛のように見えるヒゲの、目が点にしか見えない中年男に拳銃を向け、さっさと降りるよう命じた。

 するとこの中年バカは、向こうを走る戦車道練習帰りの女子中学生たちの乗った戦車を指さして言った。

「――あれはいいのか?」

「あ、当たり前だ。あれに乗っているのはみんな女だ」

「なぜ男は戦車に乗ってはいけないのだ? 青島幸雄が国会でそういったのか?」

「ば、バカいうな! この世界では男は装甲に守られてはいけないのだ。貴様をタイホする!」

 しかし、バカは戦車から降りようとせず、こう言った。

「それは不公平なのだ。憲法では両性は平等なのだ。男だけ裸で戦うのは差別なのだ」

「ええい、しかたがない。貴様を道路交通法違反で現行犯逮捕する」

「道交法の附則では、戦車道で使用される戦車に限り、この法律の規定は適用されないのだ」

「ぬ、ならば銃刀法違反だ!」

「銃刀法の附則では、戦車道で使用される戦車に限り、この法律の規定は適用されないのだ」

「やむをえん! 正当防衛発砲するっ!」

 目ん玉つながりは、いつもなら理由もなく見境なく拳銃撃っているのに、警告してからニューナンブ5連発を撃った。しかし、いくらチハでも、拳銃弾が通るわけはなかった。

「ぱんつあほーなのだ」

 目ん玉つながりはあわてて飛びのき、九七式中戦車はさらに西進を続ける。

「やっぱりこれでいいのだ」

 

 その日の東京地方の天気予報では、光化学スモッグ注意報が出ていた。

 都心に近づくにつれて、スモッグとオキシダントのせいで呼吸が苦しくなる。

 やむをえずバカは、ハッチを閉めて、工場廃液で汚れまくった隅田川を越えた。

「♪エンジン回せば焼き付いた、敵弾素通し紙装甲、支援がないから前には進めない、

 敵陣見えたら回れ右。なのだ」

 遙か彼方にある聖ハレンチ学園(当時)では、今日も小学生たちと大日本教育センター(当時)の不毛な戦争が続いている。大日本教育センターの兵士たちは全部男なので、大人で数では勝っているのに、ハレンチ学園をいつまでも制圧できない。

「やはり男も戦車に乗らなければいけないのだ」と思うバカだった。

 当時ベトナムで戦う米軍兵士は、北ベトナム軍(当時)の戦車を攻撃することを禁じられていたので、ベトナム戦争はまだまだ終わりそうもなかった。

 

 そしてバカが乗った戦車は、とりあえず第三東京弁護士事務所に乗りつけた。

「弁護士の先生、男の兵隊だけ生身で突撃して蜂の巣にされるのは人権侵害なのだ。

 男にも装甲 に守られる権利の存在確認の訴訟を起こすのだ。

 最高裁に憲法判断してもらうのだ」

 

 担当弁護士は時間の無駄だと言わんばかりの態度で、こう言った。

「キミ。それはできない相談だよ。いいかい、戦争で装甲で守られるのは、女性固有の権利だよ。

 国際的にも男性はそれを侵害してはならないのだよ」

「では、引き受けてくれないのかなのだ」

「卑怯者の片棒を担ぐのはごめんだし、勝ち目のない裁判はお断りだね。帰りたまえ」

 バカは、けんもほろろに追い返された。

 

「仕方がないのだ……」

 バカは戦車の榴弾で、事務所を吹き飛ばした。

「これでいいのだ」

 

 当時の桜田門は、昭和初期から続く古い建物で、今の18階建てはこれから10年以上たってから建て替えられたものである。

 警視庁の機動隊は、この頃は常時出払っており、戦車たった1台の盗難事件に回せる集団はなかったが、当時のきわめてリベラルだった、戦前に父が政治犯として逮捕されている都知事はあくまで自衛隊の治安出動を拒み、警視庁の全力を挙げて検挙せよと命じた。

 しかし、バカの乗った戦車の行方は、杳として知れなかった。

 このころは毎日のように大学生が逮捕され、過激派が爆弾抱えてうろついていたので、それどころではなかったということもある。

 警視総監は警視流戦車道の婦警の動員を検討したが、実戦は想定していないとのことで、結局取りやめた。

 都知事は泣く泣く、自衛隊の治安出動を要請した。

 

 バカの戦車は予想を覆して都心を抜け、新宿区某所にあるバカの母校、バカ田大学に出現した。

 バカの出身学部はアホウ学部だそうだ

「♪敵軍押し寄せ来たならば、真っ先切って逃げだそう、もたもたしてるとしんがりやらされる、

 命あっての物種だ。なのだ。タリラリラーン。おお~い後輩たち、出てくるのだ」

 何人かの学生たちが出てきたが、ただ黙ってバカをにらみつけるだけだった。

「………」

「なんだお前たちその目は、なのだ」

「いくらぼくたちが親から見放されるようなバカであっても」

「男のくせに戦車に乗るような恥知らずなことはしないのです」

「先輩の名前はOB名簿から削除しました。というか初めからないですけど」

 バカは後輩たちからも「恥知らず」となじられた。しかしバカには、男が戦車に乗ってはいけない理由があるとはどうしても理解できなかった。

「お前たち、わしと一緒にバカ田大学第一応援歌『完璧のバカ』を歌って不条理と戦うのだ」

 そういうとバカは、調子っぱずれな歌を一人で歌い始めた。

「♪完璧のバカ、嘆く日輪、切れて点かない電灯の下、○○○の○○はアホ毛に萌えて、粗相の不始末、してるのは我ら、バカ田、バカ田、発射発射、バカ田。あれ? なのだ」

 ……さすがに後輩たちもドン引きしたのか、皆校舎に閉じこもってしまった。

 

「――ならば戦意旺盛な大学生たちに共闘を呼びかけるのだ」

 そんなわけでバカが乗った戦車は、頭狂大学牟田口記念講堂(当時)に乗り付けて、そこに立てこもる学生たちにアピールした。

「男の権利拡大を目指すのだ! 同志諸君、ともに戦うのだ。男も戦車に乗っていいのだ」

「お前、何を言ってるんだ? そもそも戦争など憲法(当時)が認めていない!」

「でも君たちは、今のこの国の政府を倒したら、君たちの軍隊を作るのだろうなのだ。

 そのとき男が戦車に乗れなければ、困るのはキミたちなのだ」

「ふざけるな、男が戦車などに乗って一方的にか弱い人民を蹂躙するなど、帝国主義そのものだ」

「ベトナムを見ろ! パレスチナを見ろ!」

「皆、この封建主義者を総括してやれ!」

「火炎瓶1ダースもってこい!!」

 過激派学生たちもまた、男が戦車に乗ることを破廉恥なことと怒り始めた。

「仕方がないのだ……」

 バカは機動隊の代わりに、榴弾砲撃で講堂ごと過激派学生たちを粉砕した。

「これでいいのだ」

「いいわけないだろうが!」

 今度は学生たちと対峙していた「鬼の第四」機動隊(当時)が催涙弾を雨と降らせた。

「ここにいても味方はいないのだ。バカだからこそ語れる真実っていっぱいあるのだ」

 

 バカが乗った戦車は、ついに国会議事堂までやってきた。

「♪障害物とか地雷原、うっかりはまって立ち往生、隠れてた敵がバンバン撃ってくる、

 知らない道は行っちゃダメ。なのだ」

 しかしそこにはすでに治安出動した女性戦車兵たちの乗る第13機甲大隊(当時)の61式戦車が手ぐすね引いて待ち構えていた。

 しかも相手は最も無慈悲と言われる西住流と占守島で激戦した池田流だった。

 もちろん西住しほは、生まれたばかりだったが。

 バカは叫んだ。「男にも戦場で装甲に守られる権利はあるのだ!」

 返答のかわりに61式たちは、ゆっくりと距離を詰めつつ、バカのチハを包囲しようとする。

 バカは九七式中戦車で必死に逃げた。目指すは市ヶ谷駐屯地だった。

 そこが最期の場所になると知ってか知らずか……

「この世はむずかしいのだ。わしの思うようにはならないのだ。でも、わしは大丈夫なのだ」

 

 市ヶ谷駐屯地とは陸自の呼称で、防衛庁(当時)での呼称は「市ヶ谷地区」

 防衛庁本庁(内部部局)のみならず統合・陸上・海上・航空幕僚監部が所在する日本国防衛の中枢である。

 ここには東部方面総監部(当時)が置かれ、駐屯する第32普通科連隊(当時)には緊急呼集がかけられていた。

 もちろん、バカが戦車でやってくるからだ。

 

 総監部前庭には、すでに64式小銃やM20 75mm無反動砲、89mmロケット発射筒M20改4型(ロケラン)(すべて当時の装備)を装備した普通科隊員たちが配置についていた。

 そこにバカが正面から堂々と乗り込んできた。

 バカは総監、幕僚以下隊員たちに語りかけた。

 

「君たち普通科の諸君は、ひとたび事あれば、戦車の盾となって死なねばならぬのだ。

 わしは、それを大いに憂えるのだ。

 なぜ戦車と装甲兵員輸送車、装甲車には女子しか乗ってはならぬの か? 誰一人として答えるものはいないのだ。諸君は塹壕が時代遅れとなった現代の戦場で、

 装甲に守られることもなく、砲煙弾雨をその身に受けて、戦場の露と消えるのだ」

「あーあー聞こえねえ」

「これから諸君は「戦車には女しか乗ってはいけない」という常識を覆す戦いを、わしと一緒に起こすのだ」

「バカかお前?」

「たしかにわしは、バカなのだ。だが考えて欲しいのだ。

 女子の普通科が頑丈な装甲兵員輸送車で前線を突破するとき、君たちは幌が付いただけのトラックで、野砲や重砲の弾丸が炸裂する中を虐殺されるためだけに疾走するのだ」

「すっこんでろ臆病者!」

「男の恥さらしが!」

「さっさと戦車から出てこい!」

「てめえの股間にぶら下がっているのは何だよオヤジ」

 バカの渾身の訴えに対する返答は、ここでも罵倒だけだった。

 バカは失望と苦渋を顔ににじませた。

「そうか、君たちもわかってくれないのか。わかったのだ。悲しいのだ。でもしかたないのだ。

 ♪ミハエル・ヴィットマンも男じゃないか、オットー・カリウスも男じゃないか、

 エルンスト・バルクマンも男じゃないか、西住小次郎も男じゃないか~」

 

 総監室では、総監と幕僚たちが話し合っている。

「――統幕は、なんと言ってきた?」

「この際、実力行使もやむを得ないかと。

 我が国に男のくせに戦車に乗りたいとほざく痴れ者が出たと外国に知れれば、国際社会での信用は失墜し、我が国の威信は地に落ちると」

 もはやこれ以上騒ぎが大きくならないうちに、すべてを闇に葬るしかない。と彼らは決めたようだ。

「マスコミ各社の反応はどうなっている?」

「なにしろ男が戦車に乗るという前代未聞の不祥事をしでかしたのです。

 過激派が市ヶ谷で自衛隊に破壊活動を行い、爆弾で自爆した。と報じることで一致しました」

 ついにバカの進退はここに窮まったのだった。

 

 前庭では、対戦車兵器への実弾配備が行われ、指揮官の命令ありしだい、戦車ごとバカを葬る準備が進んでいる。

 総監はバカに最後通牒を突きつける。

「あー、そこのバカ。もう手遅れだ。

 貴様は我が国を弱体化させようとする非友好国にそそのかされて、我々に武器使用をさせた外患誘致罪の容疑がかけられておる。

 よって貴様は確実に死ぬが、ここでおとなしく投降して縛に付けば、絞首刑に処して遺体は家族の元に返してやろう」

 しかし、バカは寂しそうにこう答えた。

「もはや目的は潰えたのだ。わしの家族を破廉恥罪の家族として生きさせるのも忍びないのだ。

 諸君、わしを撃つのだ。骨も残らぬ身元不明のバカとして葬るがいいのだ」

 

 総監は「よろしい、わかった」とうなずくと、幕僚にたずねた。

「知波単は何と言ってきておる?」

「男が乗ったようなけがらわしい戦車にはもう乗る気はないから、好きに処分してくれ。

 とのことです」

「よかろう、お望み通り奴の存在そのものを、奴の大好きな戦車もろとも消し去ってやれ!」

 これがこの世界で戦車に乗るようなまねをした男への当然の報いであると、総監は思った。

 たとえ総理大臣であったとしても、彼を抹殺することにためらいはないであろう。

 

「装填!」

 装填手が、それぞれの武器に成形炸薬弾を装填し、射手にしがみつくように伏せる。

「前方良し! 後方良し!」

 ロケランや無反動砲には必ず発生する後方へのブラストの被害を受けるものがないよう確認して、各射手は照準を合わせた。

「辞世である。♪武運がないのは知っている、ふるさとまではまだ遠い、

 降参したのに無視されて撃たれた、俺の棺桶 元戦車。なのだ……」

 バカはそれだけ歌うと、ハッチを閉じて、戦車の床に膝を抱えるようにして座った。

「ママ、バカボン、ハジメちゃん。ごめんなのだ。

 パパは自分で正しいと思ったことを叫んだだけなのだ。

 でも、誰も聞いてくれなかったのだ。

 誰も、男が戦車に乗ってはいけなくなったわけを教えてくれなかったのだ。

 そしてパパはここで死ぬのだ。

 でも……これでいいのだ」

 

 この時代には「謎カーボン」などという便利なものはまだなかった。

 

 今やバカの立てこもった九七式中戦車の周りをとりまく数十門の対戦車兵器は、射撃準備を終えて、射撃命令の下令を待つばかりだった。

 連隊長は、九七式中戦車に向かって敬礼を送り、そして命令した。

 

「――撃てぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ねえ西住、そんなん読んでて面白い?」

 ここは日本国東京都新宿区某所のとある大学、今日は開学300周年の記念式典。

 大昔から変わらぬ、創立者の名前がつけられた記念講堂の前で、西住と呼ばれた女子大生は、20世紀の文献らしきものを読みふけっていた。

「いや、嘘くさい。しかも途中で終わっている」

 彼女と群れている女子大生は2人。角谷と神成という。

「でも20世紀の文献といわれるものは、全部眉唾物ですわ」

「そうだね神成。この世紀にできたばかりの飛行機が、40年でジェット化されたとか」

「人類初の核兵器が、なんとレシプロ爆撃機によって投下されたとか」

「1939年には機銃二丁の豆戦車だったのが、たった5年で70トンの化け物に進化するとか」

「20世紀中頃には、マッハ3で飛ぶ飛行機」

「初頭には花火みたいだったロケットが急速進化して、大陸間弾道弾になったり、人類初の月着陸をやったり」

「せいぜい1万トンだった戦艦が、30年少々で6万トン以上になったとか、しかもそいつが宇宙戦艦に改造されて、光の速度を超えたとか」

「パンチカードの電算機が急速進化してパーソナルコンピュータになったり、全世界規模でのネットウエブが稼働していたとか」

「学園艦とか言う全長10km以上の構造物が、洋上を闊歩していたとか」

 彼女たちは、たかだか20世紀で実現できるわけのない都市伝説ばかりが伝わったと理解している。

「月着陸はなー、今の月面にそれを証明するものが何も残ってないから、劇場型詐欺だろうと言われているし、この本に書かれていることが事実なら、この大学の隣にバカ田大学なるものがあるはずだが、そんなものがあったなどという記録は全くない。2015年の地球規模の異変で、特に20世紀の信頼できる史料はすべて散逸。あとに残ったのはこんな与太話の類だけ。

 ……しかしだな、これを読む限り、20世紀にはすでに女尊男卑を目指す動きはあったということになるのか? 角谷」

「馬鹿馬鹿しいね、戦車に男が乗れないからどうだというのさ? 戦車にも歩兵戦闘車にも普通に男は乗ってるよ―――単なる標的でしかないけど」

 そういうと角谷は空を指さす。そこには3本の飛行機雲。いや、それを引きずっているのは飛行機ではない。

 

「インフィニット・ストラトス。女にしか乗れない最終兵器。アレの前ではすべてが無力」

「法でも政治でもなく、遺伝子が女尊男卑を決定づけたのですわ……」

 

 

 

 

 

   -こんなパパはいやなのだ- 完 完璧に完




 昔、バイク乗りの集まりで宴会をやったとき、誰かが尾崎豊の「15の夏」を歌った
 ただし、「盗んだバイク」を「自分のバイク」に替えて
 だけどそんなこと、故人に失礼だろう
 ましてその歌に歌われている、15歳の少年の気持ちに感情移入しているのなら、なおさら
「盗んだバイク」でなければ意味がない
 そして、そんな歌、いくらその人が好きだろうが、バイク乗りなら絶対に受け入れられない
だろう
 「自分のバイク」に替えようがどうしようが……
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